年下少女漫画家とドキドキ!? 共同生活!   作:チャンドラ=グプタ

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妹来襲

 瞳とお出かけしてから二日経過し、俺と瞳は無言のまま仕事をしていた。仕事場には只ならぬ緊張感が漂っていた。というのも、本日はジョークの順位が発表される日なのである。

 瞳は毎週、順位をドキドキしながら待っているが今回はそれだけではない。

 

 今週号は郡山先生の漫画が掲載されている号である。一体、郡山先生の漫画は何位なのだろうか、俺もソワソワしてしまう。

 

 すると、プルルと瞳のスマホから着信音が鳴り響いた。

「もしもし、うん。そっか。分かった。健二くんにもそう伝えておくね」

 瞳は着信を切る。瞳はゆっくりと俺に近づいてきた。

「健二くん、一志くん。三位だって」

「そ、そうか……」

 三位。読み切りにしてはかなりいい順位と言ってもいいだろう。これは正直なところ厳しいかもしれない。

「どう? 勝てそう?」

「やってみないと分からない……けど、勝つさ。必ずな」

 気を取り直してアシスタントの仕事に戻った。後は天命を待つのみ。

 

 そして、あっという間に俺が描いた漫画、『エレメントドラゴン』が掲載される週がやってきた。

 俺と瞳は漫画を読みながら待っていた。俺はカギリリス先生の『ロボット・プラネット』を一巻から読み直している。改めて読み直すと伏線が散りばめられていてとても漫画作りに参考になる。

 

「いやー、やっぱり面白いね。エレメントドラゴン」

 今週号のジョークを読んでいた瞳が俺の漫画を賞賛してくれた。

「もう何回も読んだだろ。そんなに面白いと思うか?」

「うん。一志くんの漫画にも勝ってると思うよ」

「そ、そうか……」

 瞳にそう言われると自然と自信が湧いてくる。すると、机に置いてあるスマホが振動した。確認すると、着信先は千尋さんからであった。俺はすぐさま電話に出た。

「もしもし。健二くん?」

「お、お疲れ様です。千尋さん。何位でしたか?」

「三位よ」

「三位……」

 

 鸚鵡返しに呟いた。ショックというわけではないが、郡山先生と同じ順位ということになんとも言えない感情が心を満たす。

 本来であれば手放しで喜んでもいい順位なのだろうが、同率であることを知った郡山先生はどう反応するだろうか。

 

「勝負のことを気にしてるんでしょうけど、普通に喜んでいい順位だと思うわ。とりあえず、連載ネームを描いて欲しいからとりあえずは連載用のネームを作ってくれる?」

「は、はい。分かりました」

 俺は一度電話を切ろうとした時、千尋さんは「あ、そういえば」と思い出したように呟いた。

「さっき、健二くんの妹が仕事先聞いてきたから住所教えておいてから。後で訪ねてくると思うわ。それじゃ」

「は?」

 

 言いたいことを言い残した千尋さんはすぐに電話を切った。

 おいおいおい、妹が来るだと!?

 

「け、健二くん! どうだった?」

「すまない……瞳、三位だった」

「そ、そっか! 良かったじゃん!」

 俺にはすぐに分かった。無理に笑顔を作っていると。やはり、俺が郡山先生に勝てなかったのを悔いているのだろう。

「本当……ごめんな」

「何を謝ってるの? 負けたわけじゃないしさ」

「けど、俺。今回だけは絶対に勝ちたかったんだ。瞳の為に……」

「健二くん……」

 

 情けないことにいつの間にか自分の目から涙が溢れていた。千尋さんから順位を聞いた時、ショックじゃないと自分の中では思っていたのだが、勝てなくてやはり悔しい。

 こんなに悔しい思いをしたのは打ち切りを宣告された時以来である。

 

「健二くん! 私は誰がなんと言おうと健二くんの漫画は面白かったと思う……だからさ、この悔しさを連載にぶつけようよ! それで今度こそ、一志くんに勝って」

「ああ、そうだな」

 俺は手の甲で涙を拭った。この借りは必ず、連載で返してみせる――そう心に誓った時、ドアの方からインターホンの音が聞こえてきた。

「はーい! 誰だろう……千尋さんかな?」

 瞳は駆け足で玄関に向かった。そこで俺は思い出した。妹のことを。

「お、おい! 瞳!」

 俺は慌てて、瞳を呼び止めようとした。しかし、もう遅かった。瞳が玄関の扉を開ける。

 扉の外には小柄で桃色髪の少女――俺の妹である白河奈緒が無表情で立っていた。

 

 

 

「いやー、まさか健二くんの妹がやってくるなんてね。本当、驚いたよ!」

 瞳は奈緒がやってきたのをなぜか嬉しそうにしていた。俺は憂鬱で仕方ない。

「どうも初めまして白河奈緒です。いつも兄がお世話になっております」

「こちらこそ初めまして、岩木瞳です! よろしくね、奈緒ちゃん」

「それでお兄さん。どういうことか説明してくれる?」

「えっとな……だから、ここでアシスタントしてるんだよ」

「泊まり込みで?」

 奈緒が鋭い眼光を向けた。相変わらず睨む表情が父さんそっくりで怖いな。

「そ、そうだな……」

 恐る恐る泊まり込みでアシスタントしていたことを認めると、奈緒がドンと右手で机を叩いた。びっくりした。

「ダメだよ! そんなの。男と女が二つ屋根の下で暮らすなんて、何かあったらどうするのさ……は、今すごく良いアイディアが浮かんできた。メモメモ……」

 奈緒はポケットからメモ帳を取り出し、何かを書き込んだ。

「な、何をメモしているんだ?」

 奈緒は突然立ち上がると、右手を額にかざし、厨二病全開のポーズを決めた。

「お兄ちゃん。実は私ね、小説家を目指すことにしたんだ!」

「は? 小説家だと?」

 そんなこと初めて聞いた。確かに奈緒はいつも小説を読んでいるイメージはあったのだが。

「うん。最近、書き始めたんだ!」

 誇らしげに小説を書き始めたことを語る奈緒。奈緒が一体、どんな小説を描いているのか少しばかり気になってきた。

「へぇ……どんなの描いているんだ」

「えっとね、恋愛ものなんだけど読んでみる?」

「ああ。少し読ませてくれ」

「あ、私も読みたーい!」

 

 奈緒は自身のスマホを渡した。どうやら『ミッドムータンノベルズ』という小説投稿サイトに小説を投稿しているようである。

 タイトル名は『覗いたさきにあるもの、それはシスター』である。俺は瞳と共に早速一話目を読んでみた。

 

「……」「……」

俺と瞳は小説を読んで思わず黙り込んでしまった。というのも、この作品、ガッツリエロ小説である。内容は近親相愛で血の繋がった兄妹があんなことやこんなことをするという話。

 性描写を惜しげも無く描かれており、十八歳未満の人には絶対に見せてはいけないものだ。

「ど、どうかな……?」

 奈緒は恐る恐る小説の感想を訊いてきた。どうもこうもない。

「エロ小説じゃねぇか!!!」

「あ、うん。そうだよ」

 

 奈緒はあっさりと認めた。ここまで清々しいともはや何も言う気力がなくなる。

 瞳の様子を確認すると、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

「お前、官能小説家を目指しているのか?」

「そう。私は兄妹ものの官能小説で一気に成り上がろうと思うんだ」

「そんなの、父さんと母さんが反対するに決まってるだろ」

「うん、反対されたよ。だから、家でしてきたんだ」

「お、お前な……」

 

 家出したからわざわざ俺のところに来たってことか。ちょっとだが悲しい。

 奈緒がやってきた時、手にはやけに大きなスーツケースを持っていた為、何かおかしいと思ったのだが。

 

「いや、純粋にお兄さんに会いたかったてのもあるんだよ。本当に」

 今更フォローになっていないフォローをする奈緒であった。

「そうか。来てもらって悪いが帰ってくれ」

「だが断る」

「いや、悪いが仕事で忙しんだ。頼むから帰ってくれ」

「だが断る。こんな美人さんと一緒に暮らしていたら間違いが起こるに決まっている」

 だが断るじゃねぇよ。意地でも帰らせるべく、立ち上がろうとすると瞳は俺の肩を掴んできた。

「ちょっと待って、健二くん」

「な、なんだよ……」

「ここはしばらく家に置いてあげない?」

「えぇ!?」

 瞳の提案に俺は狼狽した。

「瞳さん! いいんですか」

 すると、瞳は俺の耳元で小さく囁き始めた。

「親御さんと喧嘩中みたいだしさ、お互い頭が冷えるまで置いておこうよ」

「だ、だがな……」

「健二くん。家族と入れる時間は大切にすべきだよ」

 諭すような口調で瞳が告げる。親がいない瞳に言われると何も言うことができない。

「わ、分かったよ……」

「ありがとうございます! 瞳さん。私、家事全般得意なので必要なことがあったらなんでも言ってくださいね!」

「うん、よろしく!」

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