年下少女漫画家とドキドキ!? 共同生活! 作:チャンドラ=グプタ
最寄駅から電車に乗り継ぎ目的地の近くである駅に降りる。
「この辺も懐かしいな……」
かつて、俺が歩いているのは瞳のところでアシスタントする前に住んでいたところの近くである。この辺の通りには安い定食屋や古本屋などがあり、よく気分転換に利用していた。
やがて、目的地に到着し、建物の中へと入った。
「いらっしゃいませ」
久しぶりに聞いた高めの高音が鼓膜に響く。
「お久しぶりです」
「あら、健二くん。久しぶりね!」
明梨さんが驚いた様子を見せた。久しぶりに元バイト先に顔を出そうと思ったのである。
「明梨さんも元気そうで何よりです」
「そうね。それより、漫画読んだわよ。面白かったわね、『エレメントドラゴン』! あれ、連載されるの?」
おお、明梨さん。俺の読み切りの漫画、読んでくれたのか。とても嬉しい。
「いえ、それとは別の新しい漫画を描いてます」
「そうなんだ。もう、連載決まってるの?」
「いえ、まだです。けど、必ず連載してみせますよ」
「そう。楽しみにしてるわ。私も健二くんがバイトを退職してからね、色々と考えたのよ。私も夢に挑戦しようと思うわ」
「明梨さんの夢ですか?」
「ええ。またゲームを作ろうと思っててね。昔、ゲーム会社で働いていたんだけど、知り合いに新しく立ち上げるゲーム会社を立ち上げる人がいて一緒に働いてみないかって誘われてね。挑戦しようと思ってるわ」
初めて聞いたな。明梨さん、ゲーム会社で働いていたのか。確かに休日はよくゲームしているとは言っていたが。
「そうなんですか……俺はいいと思います! 頑張ってください! ゲーム完成したら教えてください。俺、絶対にプレイしますから!」
「ふふ、ありがとう。健二くんも漫画、頑張ってね」
「はい!」
元バイト先を後にした俺は近くのお店でご飯を食べ、瞳の家に戻り千尋さんがやってくるのを待つことにした。すでに瞳は起床しており、机の上で何かを描いている。
インターホンの音が聞こえた。おそらく、千尋さんだろう。玄関に向かって確認すると、予想通り千尋さんであった。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。それじゃ、失礼するわね」
千尋さんが家に上がり込み、椅子に座ってもらった。俺と瞳も千尋さんと対面するように座り、完成させた『ビーウォーズ』という漫画の三話目までのネームを渡す。
「それじゃ早速、読ませてもらうわね」
「お願いします」
千尋さんはいつもより、ゆっくりと時間を掛けて一ページ一ページ読み込む。その間、静寂が部屋を満たし何とも言えない緊張感が漂っている。三話目まで読み終えるのに二十分ほど時間が掛かった。
「読み終わったわ」
「ど、どうだった?」
瞳が恐る恐る千尋さんに漫画の出来を尋ねる。俺もかなりドキドキしている。
瞳と一生懸命話し合い、完成させたネームだ。自分でも面白いという自覚はある。しかし、プロの編集者である千尋さんを納得させられるものかはまだ不明だ。
「すごく……面白かった」
ニッコリと千尋さんが微笑んだ。ちゃんと目も笑っている。この場合は裏のない賛辞と捉えてもいいだろう。
「ほ、本当ですか!」
「ええ。異世界転生モノっていうのかしら。私もあまり担当したことのないジャンルだけど、今のジョークにしては斬新な設定だと思ったわ。あとは細かいところを直していけば充分に連載を狙えると思う」
「分かりました。早速ですが、どこを直せば良いでしょうか?」
「そうね……まず、主人公が異世界に転生するまでの過程をもう少し詳細に描いて……」
三人で打ち合わせを開始した。
千尋さんのアドバイスを元に時間を掛けて、さらに数日程時間を掛けてネームを改良していく。
なんとか完成させたネームを千尋さんに渡し、連載会議に渡してもらうことにした。
「連載決まれば良いね」
「そうだな」
十一月の中旬。今日は連載されるかどうか、決まる運命の日である。俺も瞳もソワソワしながら、千尋さんの連載を待っていた。
「それにしても一志くんの漫画すごい人気だね」
俺と同時期に読み切りで掲載された『電脳ゲーム ブラックルーム』は前作『ギャンブル王 匠』と入れ替わる形で連載となり、ここ最近のジョークについて高い順位を保っている。
「そうだな。負けてられないな」
郡山一志先生にもカギリリス先生にも負ける気などない……といってもまずは連載を獲らなければ始まらないのだが。
するとテーブルの上に置いていたスマホが振動した。
「健二くん! 電話きたよ!」
「あ、あぁ!」
昂ぶる気持ちを抑えながら、俺は電話に出た。
「もしもし、健二くん?」
電話越しから千尋さんの声が耳に届く。
「千尋さん! どうでした?」
電話に出て、すぐに結果を尋ねた。しかし、千尋さんは沈黙したまま言葉を発しない。
「健二くん。本当に頑張ったわ」
恐ろしく低い口調であった。声を聞いてすぐに察してしまった。
今回はダメだったのだろう。
「そうですか……また頑張ります」
俺は電話を切ろうとした。
「ちょ、ちょっと! 連載になったのよ! 分かる!?」
千尋さんが声を荒げた。なんだよ、連載獲れたのか。暗い雰囲気で言ってきたから勘違いしてしまった。
「そ、そうですか! すごく嬉しいです!」
テンション高めに叫ぶと、隣にいる瞳が「よし!」とガッツポーズをした。
「私もよ! まぁ、連載にならないはずがないって思っていたけどね。明日、連載に向けての打ち合わせをお願いして良いかしら? 十時くらいにどうかしら?」
「大丈夫です!」
「それじゃ、明日よろしくね!」
千尋さんは電話を切った。俺と瞳はその場でハイタッチをした。
「やったね! 健二くん!」
「ああ!」
用意していた祝福用のケーキを瞳とともに食べた。もしもダメだったら残念会用のケーキとなるはずだったものである。
次の日、約束通り千尋さんが十時にやってきた。
「まずは二人共、連載おめでとう。だけど、本当の戦いはこれからよ」
「そうですね!」
「それで千尋。連載会議用に描いたネームから修正するの?」
「そうね……連載会議で出た意見としては一話目が少し駆け足気味っていうのがあったわ」
駆け足気味か……確かにそうである。
「でも、主人公が蜂になって終わる。この引きだけは絶対に変えるわけにはいかないよ」
瞳がハッキリと主張した。
「俺も同意見です。出来るだけ読者に駆け足気味だと思われないように改善してみます!」
「いや、でも……今のままでも充分に面白いっては言われているのよ」
「最高の形で一話目を迎えたいからね。直すよ」
「そう。二人が言うのなら止めはしないわ。一応言っておくけど新年会は必ず出てね」
新年会か。俺が連載を獲った時以来だな。
「カギリリス先生は出ますか?」
「多分、奥さんの方は生まれたばかりの子供の面倒とかあるから出れないと思うわ」
「では、夫の方が出るというわけですね」
できれば二人に会いたかったがしょうがないか。
「多分、そうだと思うわ」
「健二くん、本当にカギリリス先生に会いたかったんだね」
「そりゃあな。小学校頃からのファンだからな」
会ったら絶対にサインを貰おう。
「二人とも取り敢えず新年会には絶対に出てね! 絶対だからね!」
千尋さんが新年会に出るよう強く念を押してきた。噂によると、特別な理由で新年会を欠席した漫画家の担当は何か罰ゲームをやらされるらしい。
編集者も実に大変である。
十二月中、俺たちは作業に追われた。一話目を何とか改良し、そこから原稿に取り掛かる。
魔道具といった小道具の描写、中世風の建物の絵に力を入れていたらあっという間に時間が過ぎていく。
「あー、何とか終わったなぁ……」
大晦日もほとんど仕事で終わり、すでに新年が明けてしまっている。
「だね。仕事納めが年越しになるとは思わなかったよ」
「ま、全くだな……」
「ねぇ、健二くん。初詣行かない?」
「これから?」
「うん、どうかな? 家の近くに神社があるんだけどそこにさ」
「いいな、行くか!」
俺たちは身なりを整え、初詣へ向かうことにした。深夜であるが元旦ということもあってか、神社には予想以上にたくさんの人がいる。
参詣者の列に並ぶ、順番を待つ。
「健二くん、何円入れる?」
「えーと……五円かな」
「そっか。私はどうしようかな……」
「穴が空いた硬貨は縁起が良いっては言われているから五円か五十円にしたらどうだ?」
「そうだね……じゃあ、八円にするよ」
「八円そうか」
理由は何となくだが察した。俺たちの漫画に関わる数字である。
「健二くんは何て願うの?」
「そうだな……健康に過ごせますようにって願おうかな」
「漫画のことは願わないの?」
「それは……神様の力じゃなく、自分の力で達成したいだろ」
我ながら面倒くさい性格だとは思う。だが、漫画に関しては神様にも願ったりしたくない。
「健二くんらしいね」
「瞳は何を願うつもりなんだ?」
「秘密」
瞳は意地悪く微笑む。ちょうど順番がやって来たため、俺が五円、瞳が八円を賽銭箱に投じた。
鈴を鳴らし、二拝二拍をし、心の中でお願いをする。
――健康でいられますように。そして……
――隣にいる大好きな人と末長く一緒でいられますように。
願いごとを心の中で言い終えると、最後に一礼した。お参りを済ませた俺たちは家に向かう。
この一ヶ月はずっと働きづめであった。明日はしっかりと休むことにしよう。新年早々、寝正月となりそうだ。
「さっきさ……私、健二くんとずっと一緒に入られますようにってお願いしたんだ」
ドクンと心臓が大きく鼓動する。俺と同じ願いをしたのか。
「お、俺も……瞳と末長く一緒でいられますようにってお願いした」
瞳は手を握って来た。
「私たち、やっぱり相性バッチリだね。漫画も……恋愛も」
「そうだな」
正月三ヶ日が過ぎ、俺と瞳は都内の某高級ホテルに訪れていた。すでにジョークで連載している先生達が会場にいた。
「や、やばい……なんだか緊張してきた」
どの先生も何と言うかこう……雰囲気が違う。ギラギラしている。
「緊張しすぎだよ! もっと気楽に行こう!」
「そ、そうは言ってもな……」
「お、誰かと思えば二人組の先生じゃないか!」
背後から声がし、振り向くと一志が立っていた。
「か、一志くん……」
瞳は俺の服の袖を掴むと、ひょっと俺の背中に隠れた。そんな瞳の様子を見て、一志は明らかにショックそうである。
「お、おい瞳……さすがに今の態度はひどいぞ」
「そ、そうだね……ごめん。一志くん」
瞳は一志に頭を下げた。一志は複雑そうに瞳を見つめる。
「いや、いいんだ。元はと言えば俺のせいだしな。お前らほど相性の良いカップルもそうそういないだろうし、もう諦めてるよ」
「一志くん……」
「それより、随分と人気みたいだな『電脳ゲーム ブラックルーム』」
「まぁな。来週はセンターカラーの号だし、悪いがお前らには一位は渡せないな」
「いや、一志くん! 悪いけど、一位は絶対に貰うから!」
さっきまでの態度が嘘のように瞳が宣戦布告した。
「ああ、絶対にお前らには負けないからな。やっぱり瞳はこうでなくちゃな」
「あ、え……えっとその……」
さっきの宣戦布告を恥ずかしく思ったのか瞳はアタフタしだした。
「それじゃ、俺ちょっと別の先生のところに挨拶に行ってくる」
一志はその場を後にした。
「一志くん、本当に手強そうだね」
「そうだな」
「実際に手強いわよ」
「うわ!」
ふと背後から声がし、振り返ると千尋さんが真後ろに立っていた。全く気配がしなかった。忍者かこの人。
「千尋。いつのまにいたの?」
「会場の準備で忙しかったんだけど、二人を見かけたからね。それより、『電脳ゲーム ブラックルーム』、アニメ化の話も出てるらしいわよ」
「ま、マジですか……」
いや、あの人気だと驚くことでもないのか。むしろ、来てない方が不思議なくらいだ。
「ええ。だからこそ、こっちもアニメ化を目指すわよ!」
千尋さんは腕を大きく振り上げた。
「千尋、ちょっと気が早くない?」
「全く早くないわ! 二人の漫画ならいけるから!」
そう言ってもらえるととても心強いが、まずは本誌で人気を捕るところからであろう。
「あ、それと郡山先生の漫画、アニメ化の話が出てるってことは内密にね。まだ言っちゃいけないことになってるから。それじゃ、私準備に戻るわね!」
千尋さんはそそくさと会場の準備へと戻った。言っちゃいけなかったのか。
「しまった、カギリリス先生が来ているか聞くの忘れてた」
「確か、あの人じゃなかったかな」
瞳は数メートル斜め前方にいる見た目三十代くらいの男性を指差した。白いワイシャツに黒いズボンを着用しており、スマホを真剣な様子で見つめていた。
目つきがやや鋭く、どこか不思議な雰囲気がある。
「そういえば、瞳はカギリリス先生と会ったことあるんだっけ?」
「まぁ……話したことはないけどね」
「それじゃ、挨拶しに行くか」
「そうだね」
ついに憧れの人と会話が出来る――そう考えると心が躍った。ゆっくりと距離を詰め、恐る恐る話しかけることにした。
「す、すみません!」
「ん?」
スマホを注視していたカギリリス先生が俺たちの方を見た。
「来週号から連載になります。白河健二と言います。あの……俺、小学校の時に『ロボット・プラネット』を見てずっと先生のファンになりました!」
長年の思いをカギリリス先生に伝えると、目の前にいる憧れの人は「おお!」と感嘆の声を上げた。
「そうなんだ! ありがとう。僕も自己紹介させてもらうよ! 原作を担当している鍵村絵留(かぎむらえる)って言います! よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
深々と頭を下げた。すごく良い人そうだ。
「初めまして、岩木瞳って言います。健二くんと二人組で漫画をしています」
瞳も鍵村先生に対して、自己紹介をする。
「瞳ちゃんだよね! 前に桃仁少年連載してた! うちの妻もすごく面白い漫画だって褒めてたよ!」
「ありがとうございます!」
「担当の千尋さんから奥さん、出産されたった聞きましたけど今日の新年会は欠席ですか?」
「あー、そうだね。今、子育てで忙しいからね……僕も手伝ってはいるけどなかなかね」
鍵村先生は「あはは……」と苦笑した。
「そうですか。できれば奥さんにも挨拶をしたかったんですが」
「さては……狙っているのか?」
鍵村先生から只ならぬ威圧感を感じる。これはまさか……覇王色の……?
「ね、狙ってませんよ!」
「あははは! 冗談だよ。面白いな君は!」
鍵村先生は俺の肩を軽く叩き、笑い焦げる。なかなかノリが軽そうな人である。
「それに、隣の彼女が君の恋人なんだろ?」
「え、えっとその……」
「隠さなくなって良いよ。何となく分かるんだ。君たちは僕と妻の若い頃になんだかそっくりだ」
「そう……なんですかね」
「それは光栄です。鍵村先生。ですが、私は先生にも順位で負ける気はありません」
「お、おい……瞳」
先輩の先生に向かって流石に不躾な態度だと思った。しかし、鍵村先生は全く気にする様子はない。
「そうか。だけど、僕も……いや僕たちも簡単に上の順位を行かれるつもりはないよ。楽しみにしてるよ。若いお二人さん」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「そうだ、せっかくだし妻の写真を見せてあげるよ」
鍵村先生はスマホを取り出し、写真を見せてきた。
眼鏡を掛けた長い黒髪女性が微笑を浮かべながら、赤ん坊を抱いている写真である。
「優しそうな人ですね」
写真を見て抱いた第一印象を呟いた。
「健二くん、こういう人が好みだったの?」
瞳がジト目でこちらを見ている。
「そ、そういう訳で言ったんじゃねーよ!」
「あはははは……優しいか。うん、いやぁ……うん……」
多分、これはあれだな。尻に敷かれているのだろう。
「健二くん、せっかくだし連絡先交換しようよ! 都合の良い時にでも遊びに来てくれ!」
「い、良いんですか!?」
なんと、カギリリス先生の連絡先を入手できるとは。今日は幸運の日か。連絡先交換したら、そのまま新年会帰ってもいいまである。さすがにしないが。
「うん、君たちが良ければだけど」
「お願いします!」
こうして、俺は鍵村先生と連絡先を交換した。
その後、新年会が始まったのだが、カギリリス先生の連絡先を入手して舞い上がっていたことでテンションがハイになっていたためか、あまり新年会の内容を覚えていなかった。
新年会も終わり、一月中旬の月曜日。今日はジョークの発売日である。そして、俺たちの漫画『ビーウォーズ』の一話目が掲載される号である。
時刻は夕方、そろそろ千尋さんから順位が知らされる頃であるが、まだ連絡は来ていない。
「お兄ちゃん、遊びに来たよ!」
はるばる、仕事場に制服姿の奈緒が現れた。突然の訪問に思わず顔が強張った。
「健二くん! 奈緒ちゃん、私たちの漫画読んでくれたんだって!」
奈緒の隣にる瞳が嬉しそうに報告した。この二人、結構仲が良いんだよな。よく連絡しているらしい。
「うん。『ビーウォーズ』、すごく面白かった! 二話目どうなるの!?」
「さすがにそれは言えないよ」
「えー、教えて欲しいな。瞳さん、ダメ?」
瞳は苦悶の表情を浮かべた。そこまで悩むことでもないだろう。
「奈緒ちゃんの頼みでも……それはできないかな」
「そうですか。まぁ、しょうがないですよ!」
「それより、なんだその手に持ってるの?」
奈緒は右手に何やら大きな箱を持っていた。
「お祝い用にローストチキンとケーキを買ってきたんだよ! お父さんに頼んで出してもらったんだ!」
「お、おぉ……そうか」
「もう順位は分かったんでしょう? 一位?」
「いや、まだ出てないが……」
すると、インターホンの音が玄関から聞こえた。俺は玄関へと向かうと、扉の外には千尋さんが
「ち、千尋さん……どうしたんですか?」
いつもなら電話で順位を教えてくれるのだが、なぜか家にやってきた。
「千尋!? どうしてここに?」
「編集者さん?」
「お疲れ様。健二くん。郡山先生。それと……」
「いつも兄がお世話になってます! 一志の妹の白河奈緒です」
「あら、健二くんの妹さんね。お久しぶりです」
「そ、それより千尋さん。どうしてここに?」
「順位出たからお知らせしようと思ってね。『ビーウォーズ』……なんと一位よ!」
「一位……」
全身の血が沸騰するほどの興奮と幸福感が湧き上がる。
一位と聞き、瞳も奈緒もハイタッチして喜んでいた。
「しかも、票数は四百四十票。この十年間の中でも歴代最高だそうよ!」
「や、や……やったーーーーーーーー!」
近所迷惑も考えず、その場で俺は叫んでしまった。
「お祝い用に高級ワインも買ってきたし、今日はお祝いよ!」
「千尋さん以外、未成年なんですが……」
「細かいことは良いのよ! 健二くん、付き合いなさい!」
本当にこの人は……だが、この人のおかげで素晴らしいパートナーとも出会えた。
漫画家生活を続けていけばきっとこれからも苦難は訪れるだろう。
だが、瞳や千尋さん、奈緒といった周りの人がいればきっとどんな苦難も乗り越えていけるか。
まぁ、とりあえずは新連載一話目で一位になったことを手放しで喜ぶとするか。