年下少女漫画家とドキドキ!? 共同生活!   作:チャンドラ=グプタ

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パーティ

 他の漫画も読んでいると、瞳がリビングにやってきた。すっぴんのジャージ姿で髪はボサボサである。色気の欠片もない。

 

「おはよう」

「おはよう……ってか、もうお昼過ぎだぞ?」

 漫画家という職業柄、昼夜逆転するのは珍しいことではない。

 俺もかつては生活リズムが大きく狂い、出来るだけ規則正しい生活を送るよう努めていた。

「もう、そんな時間か……健二くん、お腹減ったからなんか使ってくれない?」

「はいはい、ラーメンでもいいか?」

「任せる」

 

 俺はキッチンに向かい、冷蔵庫にある食材でラーメンを作ることにした。ここに来てからというもの、料理技術も随分と向上したものである。

 麺を茹で、チャーシューとモヤシを入れラーメンを完成させた。醤油スープの香ばしい匂いが漂い我ながらとても美味しそうである。

 出来上がったラーメンを瞳の元へ持っていった。

 

「お待たせ」

「おお、すごく美味しそうだね」

 瞳のテーブルにラーメンを置き、その場から離れようとした。

「あれ? 健二くんは食べないの?」

「俺はさっき外で食べてきたからな」

 

 俺は席に戻り、読みかけであったジョークを読むことにした。小さい頃から『イチピース』も読んでいるが相変わらずの面白さだ。あと五年くらいで終わってしまうとの噂だが、本当かどうかは微妙なところである。

 

「健二くん。わざわざジョーク買わなくても私のを渡すのに」

 連載作家には発売日前に編集から本誌が渡される。当の俺も連載していた頃は編集から本誌をもらっていた。

「いーんだよ。買って読んだ方がワクワクがあるからな」

「ふーん、そんなもんかね」

 

 なんだかんだ言っても読む前のワクワク感。これは今でも変わらない。

 自分の好きな漫画の展開が今週はどうなっているのか妄想を膨らませながら買うのが堪らない。

 

「あ、そうだ。健二くん。千尋から今度の土曜日、ジョーク作家のパーティがあるって言われたんだけど一緒に来てくれない?」

「え? パーティ?」

 

 俺も一度だけ行ったことがあったのだが、ジョークでは新年会と評して豪華なパーティが行われる。しかし、それ以外では特にパーティを行われる機会はほとんどなかったはずだ。

「うん。今年、ジョークが五十周年みたいで、盛大なパーティをするみたい。千尋に訊いたら健二くんも連れて行っていいってさ」

 パーティか……ジョークのパーティだからタダで美味しい料理を食べることができるだろうが、連載していない俺が行っても惨めになるだけだろう。

 ってか、千尋さんパーティのこと打ち合わせの時何も言ってくれなかったよな。言えよ。

「いや、俺は遠慮しておくよ」

「え? なんで?」

 瞳は心底心外そうな驚いたような声を上げる。どうしてそんなに俺に参加してほしいのだろうか。

「どうしてって……俺、連載してないしな。ネームも来週までに直さないといけないし」

 案に行きたくない様子を瞳に見せる。できればこういうパーティは連載が決まってから行きたい。

「カギリリス先生に会えるかもよ」

 行く気がない俺であったが、瞳の言葉を訊いてハッとした。そうだった。五十周年パーティと言えば、カギリリス先生も来る可能性が高い。

「マジか……本当に来るのか?」

「多分、来ると思うよ。それに漫画家だけじゃなくて、声優の人とかも来るし行こうよ!」

「そうか。けど……瞳、どうしてそんなに俺に付いてきて欲しいんだ?」

 俺が理由を尋ねると、瞳は「そ、それは……」と言葉を詰まらせ、俯いた。

「し、知り合いの人がほとんどいないのはちょっと心もとないかなって……」

 あーなるほどそういうことね。理解した。要するにボッチは嫌だということか。

「分かった。とりあえず俺も参加するから」

「ありがとう!」

 

 こうして、あっという間にパーティの日がやってきた。出迎えようの車が家の前にやってくるため、俺と瞳は下で車が到着するのを待っていた。

 

「やばい……なんか緊張してきた」

 

 瞳は家にいるときはラフな格好をしているが、今日はしっかりとした服装をしていた。まぁ、しっかりとは言ってもあくまで私服ではあるのだが。ちなみに俺も私服でる。

 スーツのような堅苦しい服装で参加する先生はあまりいない。

 やがて、家の前に大きな黒い車がやってきた。車の扉が自動で開く。

 

「お待たせしました。岩泉様。白河様。どうぞお乗りください」

 運転者に乗車するよう促され、俺と瞳は後ろの座席に座る。十分くらいの間外の景色を眺めているうちにパーティ会場に到着した。

「到着いたしました。どうぞ足元にお気をつけください」

 

 車に降りてパーティ会場である高級ホテルへと入る。パーティが行われるのは十一階の大宴会室。エレベーターで向かうと、すでに会場内は人で溢れかえっていた。

 

「うわ、たくさん人がいる……」

 瞳は人の数の多さに圧倒されていた。

「そうだな。新年会の時よか人が多そうだ」

「お疲れ様。二人とも」

 千尋さんが俺たちに話しかけてきた。千尋さんはネイビー色のスーツを着ていて、いかにも『デキる女』のような雰囲気を醸し出している。

「お疲れ様です。千尋さん」

「健二くんが参加してくれて助かったわ」

「まぁ、会ってみたい先生もいたので……打ち合わせの時、パーティのこと教えてくれてもよかったじゃないですか」

「あははは。私もすっかり言うの忘れててねー」

 全く。普段の仕事はちゃんとこなしてくれるのにたまにこういう風に抜けているところがある。

「千尋。パーティは途中退室あり?」

「岩泉先生……せっかく来たのにそんなこと言わないの!」

 

 やはり瞳はこのパーティに乗り気ではないようだ。あからさまに行きたくなさそうなので、俺も理由を聞いてみたりしたのだが、「知らない人が多いから嫌だ」の一点張りであった。

 

「分かったよ……ちょっと私、トイレ行ってくる」

 瞳は少し不機嫌そうな態度を示しながらトイレへと向かう。

「健二くん。あの子からパーティに行きたくない理由とか聞いた?」

「ええ、まぁ……知らない人が多いから嫌だって言っていましたが違うんですか?」

「それもあるだろうけどね。実はあの子、前にある漫画家と付き合っていたのよね」

 驚きの事実を知り、頭が真っ白になりそうであった。今、なんて言った?

「な、なんですって?」

「だからあの子、前に漫画家と付き合っていたのよ」

 

 瞳の元カレ……全然そんな雰囲気を持っていなかったが付き合っていたことがあるのか。

 いや……確かによく考えてみれば私生活こそあれだが可愛らしい容姿をしているし不思議ではないか。

 

 だが、あれほど漫画に真摯に向き合っている姿を四六時中見ていると。とても恋愛に興味があるなど思えないように見えた。

 

「そうだったんですか……あの、相手が誰か訊いてもいいですか?」

 すると、千尋さんは辺りを確認し、俺に近づいてきた。

「いい? 他の人には言わないでよ。勿論、岩泉先生にもね」

「分かりました」

「岩泉先生が付き合っていたのはね『ギャンブル王 匠』を連載している郡山一志先生よ」

 それを訊いて、とても驚いたと同時にまあ妥当かもしれないと感じた。

 年齢的にも二人は年が近い。

「郡山先生なんですね。しかし、会うのが気まずいから岩泉先生は行きたくないってことなんですか?」

「そうね。郡山先生、結構束縛が激しかったみたいでね。漫画に専念したいっていう理由で別れたんだけど、別れた後もひっきりなしに連絡が来たみたいよ。あまりにしつこいみたいで一時はノイローゼ気味になっちゃって……」

「ストーカー化したってことですか?」

「簡単に言えばそうね」

 

 なるほど。そりゃ確かに行きたくもなくなるな。だったら無理に連れてくる必要もないような気がするが。

 

「あの子には酷だと思ったけどね、今日はアニメ関係者もいるし、どうしても出てもらう必要があったのよ。アニメ化の話もチラホラ出てるしね」

 俺の考えを汲み取ったのか、千尋さんは瞳を無理やり連れてきた理由を説明した。

 それにしてもアニメ化か。すごいな。

「そうですか。そういえば、カギリリス先生って今日は来てるんですか?」

 今日、パーティにやってきた一番の理由がカギリリス先生に挨拶することである。今すぐにでも挨拶に行きたいくらいだ。

「え? 来てないわよ」

 なん……だと……わざわざネームを前倒しで完成させたってのにそりゃないだろう。

「な、なんでですか!」

「なんでって……その……もうすぐ赤ちゃんが生まれそうなみたいで」

「は?」

 カギリリス先生が来ない理由が全く分からない。赤ちゃんってなんだ?

「そういえば健二くんは知らなかったのよね。カギリリス先生、原作と作画を分けて作業する二人組の作家でね、しかも夫婦なのよ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるそうよ。だから、今日はパーティどころじゃないみたい」

 

 カギリリス先生……どこぞのバ○マン。の主人公のように二人組の漫画家だったのか。

 

「そうだったんですか。会えなくて残念です」

「まぁ、また連載勝ち取って新年会で会うといいわ!」

「そうなるよう頑張ります……」

 めちゃくちゃ会いたかったのに。萎えるなぁ。

「うん! それじゃ、私は準備に戻るから悪いけど適当に時間潰してて!」

 千尋さんは再びパーティの準備へと戻った。

 さてと、俺も知り合いの作家に挨拶するかな。新年会の時に挨拶した先生も今日は何人か来ているはずだ。

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