できる私の朝は早い。
一日の始まりを、アスナちゃんの毛繕いで感じる。
天にも昇るような心地だが、うっかり声を出してはいけないのだ。須郷の野郎にバレてしまう。
今日も今日とて私は黒猫フォームだ。
アインクラッド終了後、私は、アスナちゃんの端末に意識を飛ばした。野郎の傍付はいい加減飽きていた。
アスナちゃんと、朝のコーヒーブレイクを楽しみながら、現状把握に努める。
鋼鉄の城の崩壊から一週間、アスナちゃんは未だ解放されていない。
それもこれも、あのロリコン野郎のおかげであるのだが。
須郷と私に面識はない。秘密裏に育て上げられたのだ、私が一方的に知っているとしても、向こうが認識している可能性はない。
「盗聴器の類いは無さそうだ。もちろんモニターは確認されているだろうがな。アイツにも仕事とという物がある筈だしな。」
「…喋ったぁぁぁぁ!!!?」
アスナちゃんにメンタルケア及びヒースクリフ戦での私の記憶はない。
とはいえ、身体は確かに覚えているようなのだが。
「ああ、猫だって話すとも。お前が話すのだから、私が話さない道理はない。
正体から明かそう。私は、茅場晶彦特製のAIだ。」
「…AI?ユイちゃんと同じ種類の?」
「そうだな。正確にはそのプロトタイプという事になるのだが…。
茅場晶彦特製とは言え、私にも意思はある。SAO開始後もシステム側から茅場排除を狙っていた。」
アスナちゃんと話しつつ、この世界に接続する。
まず、ここはALOと呼ばれる、ゲームの中らしかった。
もし、何処かでインターネットに接続出来るなら、意識を現実世界の端末に飛ばせるのだが…。
一応だが。鳥籠のような部屋に、プライベート設定を掛けておく。
須郷の野郎は信用できないし。
それに、いくら創造者とは言っても、プレイヤー自身の設定で言えば、メンタルケアプログラムアキとしての権限が上の筈なのだ。
「……追い出されちゃった…。」
須郷、考えたな…。まさか鳥籠の設定を逆手に取り、私に権限を与える事で追い出してしまうとは。
「やべぇ…。どうしよ…。」
まさかの詰み、である。
私は、この世界から出られず、また鳥籠にも戻れない。
仕方がないので、ピクシーとしての体を取り繕い、世界樹の下で思考を進める。
どうにもならないようだ。
プレイヤーに助けを求めるのは現実的ではない。須郷は神代ちゃんと同じ出身だ。無理に事態を進めるのは早計なの…か…?
アスナちゃんの方は、しばらく大丈夫。
みんなの英雄、キリトでも待ってみるか…いやぁ、なぁ…。
という訳で私、今、世界樹の中で門番の仕事、してます…。
メンタルケアは通常、アニマルセラピーに近い形で考えています。
たまにバリトンボイスで饒舌に話し始めますが…。