ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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無理矢理投稿!!

ちょっと疲れた・・・。

若干雑な戦闘シーンであんまり先には進んでいないように思いますが、すみません!
ではどうぞ!!

後、三日月っぽくなかったらごめんなさい。


第四話

三日月達が新種のモンスターを食い止めている中、ティオネ達もラウルの怪我の治療を最優先にしながら、レフィーヤ達の防衛戦が行われていた。

「ラウルッ、ほら、しっかりしなさい!」

 

「無理っす、ティオネさんっ。俺もう駄目っすっ、このまま死にます」

 

「そんなことほざいてるなら私が息の根を止めるわよ!?あんたが全快しないと、団長を助けにいけないのよッッ!」

 

「あ、すいません殺さないで・・・!?」

 

弱音を吐くラウルに、ティオネは解毒薬と回復薬で治療を取りかかっているティオネの冗談に聞こえない罵倒を背中で聞きながら、戦況を見極める。

通路口から現れるモンスターはようやく終わりを見せようとしていた。

アイズ、フィン、三日月は敵を圧倒しているが、数の暴力では覆っておらず、未だ予断は許されない。

戦闘が長引けば、長引くほど、それだけ勝利の天秤はモンスター側のもとに傾くことになる。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ】」

 

アイズや三日月達が戦闘を繰り広げるのを遥か前方に、レフィーヤは詠唱を行う。

その瞳は使命に燃えていた。緊張や怯えは勿論ある。

だが、それ以上に、隠れた憧れを抱くあの少女から託された言葉がある。

次は助けてほしい、と。

報いなければならない。彼女達の働きに応え、今度こそ。

この『魔法』をもって、彼女達を救うのだと。

意を決したレフィーヤは、己の声を力強く紡いでいった。

 

「【帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢】」

 

透き通るような玉音が進むにつれ、足もとに展開された魔法円が輝きを増していく。

基本アビリティから派生した、発展アビリティ『魔導』。

魔法を極めし者が【ランクアップ】を通じて発現することのできる、『スキル』とは別枠の魔力特化項目。

威力強化、効果範囲拡大、精神力効率化。魔法を使用する上で様々な補助をもたらす魔法円は、『魔導』のアビリティを手に入れた上位の魔導士の証だ。

なお、この後三日月に『威力は高いけど、チンタラ喋ってる間に狙われるから無駄』と切り捨てられるが、それはまだ先の話だ。

構築される何重もの円に、複雑な体系の紋様。

立ち上る山吹色の光に、レフィーヤの美しい相貌が照らされる。

 

「【雨の如く降りそそぎ、蛮族共を焼き払え】」

 

最後の詠唱文を唱え、魔力が爆発的に強まった。

レフィーヤはきッと双眼を吊り上げる。

 

「撃ちます!」

 

叫ぶと同様に照準、ラウルやティオネが待機する後方を除いた、ルーム全域。

撤退するアイズ、フィン、三日月、そしてティオナ達を捉えたレフィーヤは、杖を構え魔法を行使する。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

夥しい火の雨が連発される。

燃え上がる鏃型の魔力弾は宙に弧を描き、モンスター目掛けて殺到する。燃焼する音と風切り音を轟かせながら敵に命中していき、モンスター達の絶叫も呑み込まれた。爆撃と言って相違いない広範囲魔法にルームが赤く染まり、瞬く間に炎の海が生まれる。

ブラックライノスが、芋虫型のモンスターが、灰すら残さず燃え尽きていった。

 

「ほらっ、やっぱり通用するじゃん!一発だよ、一発!レフィーヤすごい!」

 

「あ、ありったけの精神力をつぎ込んだのでその・・・・・」

 

「景気良すぎんだろ、リヴェリアと言いエルフどもはよぉ・・・くそっ、毛が焦げちまった」

 

「がははっ、ここまで来ればスカッとするわい」

 

レフィーヤとティオネ達を守るように三角形を作っていたティオナ、ベート、ガレスが戻ってくる。

唯一魔法の範囲外にいた後方の敵は、ガレスが全て倒し終えていた。

敵を掃討しティオナに褒めちぎられていると、やがてアイズ達も帰ってくる。

 

「・・・・ありがとう、レフィーヤ」

 

「あ・・・・は、はい!」

 

感情の乏しい顔を、アイズは確かに綻ばせた。

向けられた小さな笑みとその言葉に、レフィーヤは瞠目して、すぐ感極まるように相好を崩す。紺碧の瞳を潤ませ、そっと目尻を拭った。

ほんの一時、場が祝勝の雰囲気に包まれる。

 

「・・・・・」

 

「団長?どうしたんですか?」

 

火の粉が舞い上がる中で、押し黙っているフィンにティオネが歩み寄る。

視界の隅では一命を取りとめたラウルが腹をさすっていた。

三日月は、纏っているバルバトスの顔を入り口へと向けながら、一言も喋ることなくじっと見つめている。

三日月の様子を見て、フィンはティオネに言った。

 

「このルームに逃げ込む前・・・危うく挟撃されかけたあの時、モンスター達は前からやってきた。そしてあの道は、50階層に到達できる正規ルートだ」

 

「・・・まさか」

 

「ただの杞憂ならいいんだけど・・・そうも言っていられないか」

 

虫の知らせを感じるように、自身の右手、親指を見下ろすフィン。

ぺろりと指の腹を舐めた彼は、愕然とするティオネを見上げた。

 

「アイズ達を集めろ。全速でキャンプに戻る」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

50階層と51階層を繋ぐのは傾斜面の岩壁だ。

50階層西端の壁に大穴が空いており、ほぼ崖という名の険しい坂が続いている。51階層に向かう際には一足飛びに駆け下りていけばいいが、帰還する際には少々手間をかけて上っていかなくてはならない。

岩壁の至るところに付着する黄緑色の粘液に誰もが危機感を募らせながら、アイズ達は手を使わず跳躍の連続で坂を駆け上がる。

そしてアイズ達のその先には三日月がバルバトスの背中に装備されているスラスターを吹かしながら、誰よりも早く飛ぶように跳躍していく。

 

「ほんとにあの子の鎧ってなんなんだろ?空飛んだり、やたら固かったり、遠距離で攻撃したり、腐食液で腐食しないって万能すぎない?」

 

「はっ、知るかよそんなもん」

 

ティオナはそう呟くが、ベートは下らなさそうにして吐き捨てるように言う。

 

「もうすぐキャンプだ!急ぐぞ!」

 

フィンがそう言って先の大穴から飛び出すと、聞こえてくるのは人のかけ声と、けたたましい炸裂音だった。

 

「キャンプが・・・・!」

 

灰色の森を駆け抜けながら、野営地の方角から上る黒煙にティオナが反応する。

速度を一層上げ、アイズ達は大樹林を走破する。

 

「リヴェリア、みんな!?」

 

森を抜けた先に広がるのは開けた平地と、野営地を構えた一枚岩、そして岩に取り付く巨大な芋虫の群れだった。

モンスター達はその多脚で張り付くようによじ登り、頂上で防衛を行うリヴェリア達に腐食液を浴びせている。

崖際で腐食液を防いだ団員達が、すぐに溶け出していく盾を放棄していく。

 

「矢を放て!」

 

「これが最後です!?」

 

「構わん、撃て!」

 

リヴェリアの号令のもと、よじ登ってくるモンスターに向かって数人の弓使いがなけなしの矢を放つ。

命中した先から矢は腐食して折れていくが、攻撃を受けたモンスター達はぐらりと壁から足を離し、落下をしながら数匹を巻き込んで地面へと叩きつけられる。

 

「まだあんなに・・・!?」

 

「キャンプを包囲されていないのがせめてもの救いか」

 

レフィーヤの悲鳴の横で、フィンは冷静に状況を把握する。

例のモンスターは知能が低いのか、太い列を作り同一方向から一枚岩をよじ登ろうとしていた。

進行箇所が集中したおかげで、居残り組の他団員達はリヴェリアの指揮のもと、拠点の防衛を続けられている。

 

「っ!」

 

仲間の危機を前に、アイズは飛び出した。

単独行動でモンスターの列の横っ腹へと奇襲する。

魔法を発動し、風を纏い、剣を振り抜く。

 

「アイズ!?」

 

モンスターを一匹仕留めるとともに、どよめきが周りから上がる。

 

「・・・三日月くん」

「・・・・なに?」

 

交戦するアイズを端にフィンはその場で立っている三日月に言う。

 

「アイズ一人で戦わせるのは危険だ。図々しいとは思うが、良かったら君も手伝ってくれるかい?お礼はちゃんとする。今は一人でも戦力が欲しいんだ」

 

「・・・・・・」

 

フィンの頼みを三日月は少し考える。

確かに、自分がこの場で断ってもいい。だが、この場で断ると、オルガや皆を探せなくなる。

それにここから出るという点も達成出来なくなる。

なら、答えは一つしかなかった。

 

「・・・分かった」

 

三日月はそう言ってアイズのいる戦場へと跳躍する。

そして─────

 

"ゴシャァ!!"嫌な音をたてながらアイズの近くにいた芋虫型のモンスターの顔に目掛けてソードメイスを叩きつける。

腐食耐性が高い"高硬度レアアロイ"で出来たバルバトスの武器や装甲なら問題なく戦う事が出来た。

 

「・・・・・えっ?」

 

アイズは驚くように三日月を見る。

なぜなら彼との契約は此処までの筈だ。それなのになぜ?

アイズはそんな疑問を浮かべたが、三日月はそんなことを気にせず、アイズに言う。

 

「アンタ・・・俺を外に出してくれるんだろ?だったらそれまでアンタ達を助けるよ」

 

「・・・いいの?」

 

「・・・別にいいよ。仕事だし」

 

三日月はそう言って、近づく芋虫モンスターに砲撃していく。

 

「・・・・ありがとう」

 

アイズは小さな声で三日月に言ったが、三日月はその言葉に反応することはなかった。

 

「フィン・・・彼は?」

 

リヴェリアがフィンに三日月の事を聞いてくる。

フィンはリヴェリアに言った。

 

「彼は、52階層のカドモスの泉でアイズ達と会ったんだ。彼の力がなかったら此処まで早く来れなかったよ」

 

「カドモスの泉で・・・?一人でいたのか?」

 

「そうみたい。アイズ達がそう言ってる」

 

「・・・・彼は味方と考えていいのか?」

 

疑い深そうに三日月の戦闘を見るリヴェリアにフィンは言う。

 

「・・・ああ。でなきゃ、僕の頼みも聞いてくれないだろうしね」

 

フィンはそう言って、考えるのを止め、剣を抜く。

 

「反撃と行こう」

 

そう言って、フィンも戦場へと駆けていった。




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