24日から仕事が忙しくなるので投稿が遅れるかもしれませんが、よろしくお願いします。
では、どうぞ!!
三日月がロキ・ファミリア入団の話をしている間、一度自室に戻り愛剣と防具を脱装したアイズは、ティオナ達に引き連れられ上階の浴室へ向かった。
「・・・アイズの服ってさぁ、結構大胆だよね」
「着ないと舌を噛み千切る、ってロキが言うから・・・」
ティオナの言葉にアイズは脱衣を進めながら、眉を下げがちにして答える。
大きく背中が開かれている薄手の服は鎧を外してしまえば、瑞々しい肌が丸見えだ。アイズの性格に似つかわしくない露出の多い服に疑問を感じたティオナは、その答えだけで「あぁそういうことねー」と納得する。
主神が面倒なこだわりを持っていると苦労するというのが、【ファミリア】の通則だ。
「レフィーヤ、とっと脱ぎなさい。後がつかえるわよ」
「あ、はい・・・」
全く出し惜しみせず裸体になるティオネに対し、レフィーヤは遅々と服を脱いでいく。
恥じらいが全くないアマゾネスと、極力肌を人目に晒さないようにするエルフの、種族としての性の違いが如実に現れていた。これもまた様々な種族が同じ屋根の下で共同生活する、【ファミリア】の光景の一つでもある。
アイズはそれを眺めながら、服を脱いで浴場へと向かった。
浴室、と言っても十人も入れば飽和する室内はほぼシャワー室と言っていい。奥に石造りの湯船が存在するが、それも少人数用のものだ。
「アイズさぁ、何か落ち込んでる?」
「・・・・・?」
「なーんか、ミノタウロスの群れを追いかけにいった後から、暗いような気がしたからさー」
ティオナの指摘にアイズは内心で驚いた。そんなに顔に出ていたのか、とも感じた。
・・・・・正直に言えば、少し落ち込んでいる。
ベートには始終笑われ、三日月には恥ずかしい所を見られてしまったが、助けた相手に悲鳴を上げられ全力疾走で逃走されるなど流石のアイズも初体験だった。
斬り結んだ敵が尻尾を巻いて逃げ出していったことならば、数えきれないほどあるのだが・・・・。
ミノタウロスを八つ裂きにした自分はそんなに恐ろしかったのだろうか───と考え、少しだけ、本当に少しだけ、悲しくなる。
それに──────
私が隣に立ちたいと思った三日月と一緒に居いられなくなるというのが一番悲しいのかもしれない。
アイズはシャワーヘッドの前に立ち、勢いよく熱湯を浴びながら、誰にも気づかれないようにほぅと小さく吐息をした。
しばらくの間、四つの水が流れる音が響いていく。
「・・・・・むむむっ」
「なに唸ってるのよ」
姉の声を無視するティオナは、シャワーを浴びながら自分達の胸元を凝視した。
そして─────
「レフィーヤの裏切り者ぉ・・・・」
「ええっ!?」
「無視しなさい、レフィーヤ」
ティオナの恨めし声が紡がれる中、更に立て続けに。
がらっっ、と突如開かれる扉から、獣のような影が飛び出した。
「うおーっ!?安心せぇティオナー!うちが大きくしたるーッッ!」
「今日の晩御飯なにかなー」
後方からのロキによる奇襲をあっさりと往なし、足払いをかけるティオナ。
目にも止まらぬ速さで繰り出された足払いは、ロキの足をスパァンッと刈られ、ゴッッと頭から鈍い音をたてながらタイル状の床に墜落した。
「ごふぅっ・・・・う、腕を上げおったな、ティオナ」
「ロキ、邪魔ー」
「くぅぅぅっらなんやこの仕打ちッ───レフィーヤァ慰めてくれぇぇぇぇぇぇ!!」
「え、ちょ、きゃあああああああああ!?」
既に慣れきった対応でアイズ達は浴室を後にする。
服を脱ぐ暇すら惜しんで侵入してきた女神に多少の危機感を覚え、後輩を生け贄に。
悩ましい声とともに助けを求める悲鳴が散る中、アイズ達は己の着替えを優先させるのだった。
「酷いですよぉ・・・」
「ごめんごめん、あたし達もロキの相手をするの面倒臭くてさー」
長い食卓がいくつも並ぶ大食堂。
身を洗い一度自分の部屋に戻った後、アイズ達は夕餉を取っていた。
ロキの「飯はいるもん全員でとる」という方針のもと、朝夕の食べ始めは見回り以外の団員が揃ってから行うので、食堂は大変こみ合っている。
椅子と椅子の間を通って移動するのも一苦労だ。
遠征帰還直後というのもあって騒ぐ元気はないが、待望の酒食をむさぼる団員達は絶えず賑やかであった。
居残り組の者に今回の遠征の武勇伝を聞かせるなど、どの卓でも会話に花が咲く。
誰もがようやく心から肩の力を抜いていた。
「ティオネ。この後って、これからの打ち合わせとかあるの?」
「団長が今日はゆっくり休め、って。また明日からよ」
「さっすがフィン!」
食べ終えた者から食器を片付け、ポツポツと大食堂から出ていく中。
晩酌をしていたロキが、思い出したように立ち上がった。
「忘れとった。皆ー!!今日、新しく団員が入る事になったんやわ!皆仲良くしたってぇな!!」
「新しい団員・・・?」
アイズは首を傾げてロキの方を見る。
今日、新米冒険者が入るのだろうか。
周りを見渡して見るが、ティオナ達も知らなかったようで様々な反応をしている。
そしてロキが言った。
「入って来てええでー!」
その言葉に反射して私は食堂の出入り口を見る。
そこには──────。
「・・・・・えっ?」
予想していなかった人物に私は呆然とした。
そう、そこにいたのは遠征の時に何度も助けてくれた私の憧れ。"私だけの英雄"。
その強さに憧れた。その意志の強さに魅入られた。
だから追いつきたいと思った。彼の隣に立ちたいと願った。
そんな彼が────。
「えーっと・・・三日月・オーガスです。まぁ、よろしく」
同じファミリアに入った事に私は感極まった。
表情に出さないようにしているが、どうしても口元が歪んでしまう。
これ程嬉しい事はない。
周りからの声も様々な声が溢れている。
「嘘ー!!三日月じゃん!!」
「あの子、別のファミリアの子じゃなかったの?」
「何でアイツが入るんだよ!?」
「むむむむ・・・・!」
ティオナ達は三日月が入る事に色々と感情が押さえきれていないようだった。
すると三日月は此方に気付いたのか、此方へ歩いてくる。
私と正面から向かい合うように並んだ三日月は口を開いた。
「仲間が見つかるまで、此処に住む事になったからよろしく。金髪の人」
「・・・うん、よろしく。三日月」
私はそう返事をして手を三日月の前へと出す。
「ん?」
三日月は彼女から差し出された右手に疑問を抱くが、すぐに握手を求めていることが分かった。
「俺の手、今汚れてるけど」
かつてクーデリアに言った言葉をアイズに言う。
「そんなの関係ない」
アイズはそう言って三日月の手を握った。
握り返されるその手はとても強く、
大きかった。
こんなに小さな身体なのに彼の手はとても大きかった。
私は絶対に彼に追いつく。
私はそれを胸に秘めて、私は笑った。
感想、誤字報告、評価よろしくです。
因みにハシュ◯に関しては一応出そうと考えてます。