ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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壁 ω・`)チラッ


壁 ω・`)っスッ

壁 ===

約二週間ぶりの投稿になります。
大変お待たせして申し訳ありません。
仕事やら引っ越しの準備で忙しかったので長くなってしまいました。
それでは、どうぞ!!

後、三日月っぽくなかったらごめんなさい。


第十二話

三日月達がギルドでハッシュと遭遇しているその頃、ティオネ達は【ディアンケヒト・ファミリア】で換金を済ませていた。

 

「あー、今度アミッドと顔が合わせづらいなー・・・ティオネやりすぎだって」

 

「これくらいもらっておかないと割には合わないわよ。アミッドだってわかってるわ」

 

「だからってさぁ・・・・」

 

三日月が単独で倒したカドモスのドロップアイテム、『カドモスの皮膜』を高値で売りつけるのはどうかと思う。

『カドモスの皮膜』を入手した経緯を知るティオナ達は、ティオネにそれぞれが思うところの視線を送る。

 

「アミッドさんの知らないところで、また厄介な冒険者依頼がくるかもしれませんね・・・」

 

「うわ、ありそう!あそこの神様が腹いせにーって!」

 

報酬を含めた十分な金品を抱えながら、ティオネ達はメインストリートを歩いていく。

時刻は正午には遠いものの、ダンジョンへ向かったのか冒険者の数はすっかり減っていた。残っているのは、本日は休業と思しき無装備の同業者達だけだ。武器や防具を見て回って、純粋に買い物を楽しんでいる。

するとティオナは思い出したかのように、ティオネ達に言った。

 

「そういえばさ、アイズ達遅くない?確かそんなに時間かかんないでしょ?冒険者登録って」

 

「そう言われれば・・・確かに遅いわね。一度見に行ってみましょうか」

 

「賛成ー」

 

「はい!」

 

ティオネ達はそう言ってギルドがある方向へ歩いていく。そしてしばらくするとその館が見えてきた。

そしてアイズと三日月を見つけるが、その隣に一人の青年がいた。

その青年は三日月に対しては久しそうにしていたが、対してアイズはその青年に余り良い顔をしていない。

 

「あれって三日月の言ってた仲間・・・なのかな?」

 

ティオナの呟きにティオネは言った。

 

「でしょうね、でないとあんなに仲良いわけないでしょうし・・・・」

 

「アイズさん・・・結構機嫌が悪そうですよ?」

 

レフィーヤの言葉にティオネは言う。

 

「最近、三日月とずっと一緒にいるから本当の仲間との距離感とかに嫉妬してたりしてね」

 

「・・・なっ!?」

 

レフィーヤは驚愕してアイズを見るが、その言葉を訂正するように、ティオネは言う。

 

「冗談よ。でも最近、アイズの機嫌が悪くなる時があるから気になるのよね」

 

そう呟きながらティオネ達はアイズ達の元へと向かって行った。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「ねぇ・・・三日月、この人誰?」

 

アイズは無表情でハッシュを睨み付けるように三日月に言う。

その問いに三日月が答えるのではなく、ハッシュが答えた。

 

「俺は、三日月さんの弟分みたいなものっすよ」

 

「貴方に聞いてない」

 

ハッシュの答えにアイズはそう言って三日月を見る。

三日月はアイズに言う。

 

「あー・・・俺の世話係?」

 

「・・・・っ」

 

三日月の一言に言葉が詰まる。

三日月の身体は右の上半身が動かない。

だからかつてのいた場所では、三日月の世話をする人が彼なのだろう。

だからこそ、私は彼を妬んでしまった。

ただ、羨ましかったのだ。

三日月の隣に居られる彼が。

私の事など知らずにハッシュが三日月に言った。

 

「そう言えば・・・三日月さんって何処かのファミリアに入ったんすか?」

 

「まあね。でないと皆を探せないし、金とかも稼げないからね。ハッシュはどうするの?」

 

「そっすねー。三日月さんが居るなら俺もそこに入れて貰います」

 

私はハッシュの言葉を聞いて────

 

「分かった」

 

「ん?」

 

「えっ?」

 

私は反射的にそう言ってしまった。

三日月とハッシュは私の方を見つめてくるが、言ってしまった勢いに任せるしかない。

 

「入れてくれるんすか?」

 

「私が頼めばロキも良いって言ってくれる・・・と思う」

 

「随分不安な言い方だなおい・・・まあでも三日月さんに付いていけるだけいいか」

 

ハッシュはそう言って頷く。

 

「でも、三日月の世話は私がするから」

 

私はハッシュにそう言って三日月の手を取る。

すると三日月は私に言った。

 

「別にいいよ。そういうのはハッシュに任せてあるし、俺の世話なんかしなくても」

 

「・・・・でも」

 

「アイズには、アイズのやることがあるでしょ」

 

「・・・・っ」

 

「俺の事なんてハッシュに任せるから、早く行くよ」

 

三日月は私にそう言って歩いていく。

 

「行くよハッシュ」

 

「うっす」

 

その後ろをハッシュが追いかける。

私はハッシュのその後ろ姿を見て─────。

 

───────ずるい───────

 

私はそう思った。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

ティオネ達と合流したアイズと三日月達はアイズの要望によって【ゴブニュ・ファミリア】の所へと向かっていた。

ちなみにティオネ、レフィーヤ、ハッシュは一度ホームへと向かっている。

ハッシュに関しては冒険者として活動するために一度ロキに頼みにいくのだそうだ。

 

【ファミリア】の活動内容は多岐にわたる。

オラリオは迷宮都市の名を冠するだけあって、迷宮探索で生計を立てる探索系【ファミリア】が数の大半を占めるが、【ディアンケヒト・ファミリア】のように商業系の派閥も少なくない。このオラリオを一歩離れれば、王国、帝国などと大国を築き上げる国家系【ファミリア】も存在するほどだ。

主神同士のいがみ合いなどによって物騒な勢力争いが盛んに勃発するため、あるいはそれを回避するため、戦力の充実という点はほとんどの派閥の共通項であるが。

【ファミリア】の行動理念は、主神の趣味と実益を兼ねたものと言っていい。

 

「相変わらず陰気臭い所あるよね、ここ。何かじめじめしてるって言うかさぁ」

 

「ん、と・・・・」

 

「あはは、ごめんごめん。さ、入ろう」

 

アイズとティオナ、そして三日月が訪れたのは、石造りの平屋だった。

場所は北と北西のメインストリートに挟まれた区画だ。

路地裏深くということもあって家屋はごちゃごちゃと入り乱れ経路も細く狭い。雰囲気は華やかとも言いがたい。知る人ぞ知る、と口にすれば聞こえはいいが───有り体に言ってしまえば、ティオナの言葉通り陰湿としていた。

 

【ゴブニュ・ファミリア】。

 

武器や防具、装備品の整備や製作を行う鍛冶の派閥。

知名度や勢力規模は同業大手の【ヘファイストス・ファミリア】をぐっと下回るものの、作り出す武具の性能そのものは勝るとも劣らない、まさに質実剛健の【ファミリア】だ。依頼を受けてから武器作製に取りかかることが多く、コアな冒険者が多いのも特徴の一つでもある。

扉の横に飾られているエンブレムには、三つの槌が刻まれていた。

 

「ごめんくださーい」

 

「ください・・・・」

 

入り口をくぐり、工房という言葉がしっくりくる建物の中に入る。

室内は外と同じように薄暗く、炉に陣取った鍛治師や道具を用いて彫金を施す者など、複数の職人たちがそれぞれの作業に従事していた。

 

「へぇ・・・」

 

三日月は物珍しそうに周りを見渡している。

すると奥から一人の男がやって来た。

 

「いらっしゃぁい・・・・って、げえぇっ!?【大切断】!?」

 

「ティオナ・ヒリュテ!?」

 

「あのさぁ、二つ名で悲鳴を上げるの止めてほしいんだけど・・・」

 

まるでモンスターに遭遇したかのような相手の反応に、半眼でぶすっとするティオナ。

にわかに【ゴブニュ・ファミリア】の団員達は慌ただしくなる。

 

「親方ァー!壊し屋が現れましたー!?」

 

「くそっ、今日は何の用だ!?」

 

「また武器を作ってもらいにきたんだけど」

 

「ウ、ウルガはどうした!?馬鹿みたいな量の超硬金属を不眠不休で鍛え上げた、専用武器だぞ!?」

 

「溶けちゃった」

 

「ノオォォォォォォ───────!?」

 

親方ー、親方ーっ、と悲鳴が散っていく横を歩き去り、アイズは奥の部屋に入る。

部屋にいるのは老人の外見をした、一柱の男神だ。

皺の刻まれた顔は整っており鼻梁も高い。白髪を生やし、口もとを隠す程度に白髭も蓄えている。

恰幅のいい体はたるむことなく筋肉が引き締まっており、どこかドワーフを思わせた。

短剣を丹念に磨いていた神、ゴブニュは、ちらりと横目で視線を送り「何の用だ」と低い声音で問いかけてくる。

 

「整備を、頼みにきました」

 

アイズの注文は、常に主神であるゴブニュ自身へ一度通すことになっている。

彼の眼鏡にかなったのか定かではないが、とにかく依頼を出す際は『俺を通せ』とそう厳命されているのだ。

 

「・・・・・また派手に使ったな」

 

手渡された〈デスペレート〉をじっくり眺め、ゴブニュはそうこぼす。

不壊属性の剣は決して壊れないものの、一方で切れ味、威力の低下は発生する。

普通に扱っていればそのような事態も滅多に起きるものではないのだが、生憎アイズは普通の範疇にとどまれない。

 

「刃がやけに劣化しているな。何を斬った?」

 

「何でも溶かす液と、その液を吐くモンスターを、何度も・・・・・」

 

寡黙な鍛治神は目を細め、〈デスペレート〉を観察し続ける。アイズも進んで話す方ではないので、静寂が続く。

鈍った光沢を放つ剣身から、ゴブニュは磨耗の兆候を正確に読み取っているようだった。

 

「もとの切れ味を取り戻すまで時間がかかるな。代剣を出してやるから、しばらくそれを使っていろ」

 

おもむろに切り出されたゴブニュの提案に驚いたアイズは、武器は自分の方で用意すると言おうとしたが。

その眼差しに、発言を制される。

 

「半端な武器ではどうせすぐに使い潰す。素直に甘えておけ」

 

「・・・・・・」

 

全く言い返せず、アイズは強引に代剣を押し付けられることとなった。

腰を上げたゴブニュが別室から持ってきたのは、細身のレイピアだった。レイピアの中でも刀身は長めで、全体的に装飾は抑えられているが、鍔の部分はナックルガードとなっている。

アイズはそのレイピアを鞘から引き抜いた。

磨き抜かれうっすらと輝やきを放つ刃を見つめ、かなりの業物だということを察する。

単純な威力なら〈デスペレート〉を上回っているだろう。

 

「あいつらには整備を急がせる。五日経ったら来い」

 

「わかりました・・・ありがとうございます」

 

『神の力』を封印しているゴブニュには、鍛冶神としての技術はさておき特別な力は一切ない。

作業をこなすのはあくまで団員達の役目だ。ペコリと頭を下げるアイズに彼はふんっと鼻を鳴らし、もといた場所へと戻る。

するとアイズの後ろから────

 

「へぇ・・・この部屋も凄いな」

 

三日月が周りを見渡しながら入ってくる。

 

「む?」

 

「あっ・・・三日月」

 

ゴブニュとアイズは部屋に入ってきた三日月を見つめる。

普段、他の人も入らないような場所へと入って来ているのだ。この男神も困惑するだろう。

──────そして。

 

「おい、坊主」

 

「ん?」

ゴブニュの言葉に三日月は反応する。

 

「お前のその気配・・・いや、まさかな・・・」

 

そうこぼすゴブニュに三日月が言った。

 

「何、アンタ。何か用?」

 

「いや・・・何でもない。悪いな」

 

そう言って彼はそれまでの作業を再開させた。

何時もとは違った反応にアイズは困惑しながらも、三日月と一緒に部屋から出ようとした時。

 

「まて、坊主」

 

後ろから再度、三日月を静止させる声がかけられる。

 

「何?」

 

三日月は再び体の向きを変えてゴブニュへと視線を向ける。

 

「名は?」

 

「あ?」

 

「お前の名だ」

 

「・・・・・・・」

 

ゴブニュの問いに三日月は少しだけ黙り、そして言った。

 

「三日月・オーガス」

 

「そうか・・・・・坊主、悪いな」

 

「ん」

 

ゴブニュの返答に三日月はそう返して再び歩いていく。

この男神は一体、三日月に何を感じたのだろうか?

アイズは疑問を抱えながら三日月の後を追っていった。

 

 




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