ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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しばらく長期休みなので、連続投稿じゃあ!!

最近アークナイツにはまって楽しんでる鉄血です。
では、どうぞ!!

三日月っぽくなかったらごめんなさい。


第十四話

"ピシリ"と酒場の空気が凍る。

三日月の無意識とはいえ、アイズにあーんをしているのだ。その光景を直接見た【ロキ・ファミリア】の団員達が目を見開いて石像のように動きを止めていた。

 

「・・・・ん?食べないの?」

 

一瞬にして静かになった酒場に三日月は周りを見渡すが、すぐに気にする事なくアイズの前にスプーンを差し出す。

 

「・・・えっ・・・じゃあいただきます」

 

「ん」

 

アイズはそう言って差し出されたスプーンにのった料理を"はむっ"と口の中へと入れる。

周りの視線がとてつもなく痛い。アイズは自分がやった事に対し、羞恥心が沸いてくる。

今頃、自分の顔は真っ赤になっているだろう。アイズはとても気まずい雰囲気になり顔を伏せる。

そして次の瞬間──────。

 

「「「「「えええええええええええぇぇぇぇぇぇッ───────!?」」」」」

 

酒場全体から悲鳴が上がった。

 

「ん?」

 

その起きた悲鳴に、この悲鳴を起こした元凶である三日月はあまり気にする事なく、先程アイズに差し出したスプーンを使って料理を食べていた。

すると先程までアイズがいた席からレフィーヤが恐ろしい形相で三日月達の元へと歩いてくる。

ロキとベートに至ってはリヴェリアとティオナ達に拘束されていた。

 

「ちょっと何やってるんですか貴方!?」

 

「ん?」

 

「さっき、アイズさんと・・・アイズとあ、あーんして・・・ッ!?」

 

動揺と困惑、その両方を混ぜたようなレフィーヤの様子に三日月は何も気にする事なく淡々と言った。

 

「食いたそうに見てたからやっただけだけど、駄目だった?」

 

二人の会話が微妙に食い違っている。

周りも動揺の為かその食い違いに気づいていなかった。

 

「駄目です!!私だってアイズさんとしてみた・・・じゃなかった、とにかく、駄目なものは駄目ですから分かって下さい!!」

 

本音が一瞬出かけたレフィーヤに三日月は言った。

 

「分かった」

 

三日月はそう言ってレフィーヤから視線を逸らすと、隣にいるハッシュに言った。

 

「ハッシュ、水持ってきて」

 

「う、うっす!」

 

ハッシュはそう言って椅子から立ち上がり、カウンターへと向かっていく。

レフィーヤはそんな三日月を睨み付けながらも自分のいた席へと戻っていった。

そして徐々に酒場の賑やかさが戻ってきた。

最も、周囲から聞こえてくる声は三日月に対しての疑問など様々な話題が飛びかっていた。

そんな事件がありつつも、酒場からは笑い声が途絶えない中、ふとどこか陶然としているベートが何かの話を催促するように言った。

 

「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

ロキを中心に遠征の話題で盛り上がっていた時の頃だ。

やけ酒でもしたのか、やけに機嫌の良さを滲ませる彼に、アイズは小首を傾げる。

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

────彼が何を言わんとしているのか、理解した。

自分が助けた、あの白髪の少年。

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」

 

「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」

 

ティオネの確認に、ベートはジョッキを卓に叩きつけながら頷く。

普段より声の調子が上がっている彼に、アイズは何か嫌な予感を覚えた。

耳を貸すロキ達に当時の状況を詳しく説明するベートは、次には口に出してしまう。

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ冒険者が!」

 

───止めて、と。

 

アイズは反射的に心の中で呟く。

 

「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際へ追い込まれちまってよぉ!可哀想なくらい震え上がっちまって、顔をひきつらしてやんの!」

 

「ふむぅ?それで、その冒険者どうしたん?助かったん?」

 

「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」

 

今、自分がどのような顔をしているのか、アイズにはわからなかった。

三日月も表情を変えてはいないが、雰囲気はあまり良くはない。

胸の奥でささくれ立とうとするこの感情をどう表現していいかわからない。何故こんなにも心が乱れかけているのか、頭の隅にいる昨日の白髪の少年に三日月に問いかける。

彼に幼心の自分の記憶を重ねて、自問する。

 

「それでそいつ、あのくっせー牛の血を全身に浴びて・・・真っ赤なトマトになっちまったんだよ!くくくっ、ひーっ、腹痛えぇ・・・・!」

 

「うわぁ・・・・・」

 

ティオナが顔をしかめながら呻いた。

それだけで悲しくなった。

 

「アイズ、あれ狙ったんだよな?そうだよな?」

 

「・・・・そんなこと、ないです」

 

目に涙を溜めているベートに、アイズはそれだけを喉からしぼり出した。

聞き耳を立てている他の客達の忍び笑いが、耳朶に噛みついてくる。

 

「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ・・・・・ぶくくっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」

 

「・・・・・くっ」

 

「アハハハハハッ!そりゃ傑作やぁー!冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!!」

 

「ふ、ふふっ・・・・ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない・・・・!」

 

どっと周囲が笑いの声に包まれる。

レフィーヤが、ロキが、ティオネが、誰もが堪えきれず笑声を上げた。

 

「・・・・帰るよ、ハッシュ」

 

「えっ、いいんすか?勝手に帰って?」

 

「話を聞いてハッシュだってあんまりいい気しないでしょ」

 

「まあ、確かにそうっすけど・・・んじゃ、先に帰るって言っときますね」

 

「ん」

 

三日月やハッシュにとっていい気分ではないのだろう。

そんな会話を聞いて、私は自分の周りだけ大きな穴が開いたような感覚を感じた。

自分一人を残して、世界が遠くなる。

と、ハッシュがこちらに来て私と近くにいたティオナに言う。

 

「あー、すんません。俺と三日月さん、先に帰らせてもらいます。場所は分かるんで大丈夫です」

 

気まずい表情でハッシュが私達に言う。

すると隣にいたティオナが言った。

 

「あー、うん。ごめんねー・・・あんまりいい気分になんないよねー・・・三日月に言っといて、あれ酔ってああなってるだけだから気分悪くしないでって・・・」

 

「はい、わかりました」

 

ティオナは顔を若干しかめながらハッシュにそう言った。

そして私もハッシュに言う。

 

「・・・・ねぇ」

 

「ん?なんすか?」

 

「私・・・今どんな顔してる・・・?」

 

私はそれが聞きたかった。

私は今、どんな表情をしているのか?どんな目をしているのか彼等に聞きたかった。

すると奥から三日月がやって来て、私達の話を聞いていたのか言った。

 

「今のアイズ、酷い顔してるよ。」

 

「・・・・そっか。ありがとう」

 

三日月の答えに私は顔を下げる。

そしてそんな私を見て─────

 

「・・・・・・・」

 

ただ、無言で私を抱き締める。

 

「・・・・えっ?」

 

「うわぁ・・・」

 

「・・・周り見てます」

 

突然の三日月の行動にティオナ、ハッシュ、私は困惑する。

 

「前にアトラが言ってたんだ。泣いてる奴がいたらこうやって慰めろって」

 

「・・・・・」

 

「あの白いヤツだって精一杯頑張ってるんだ。他の奴が口出すことじゃないよ」

 

三日月はそう短く言って私を抱きしめ続けた。

彼の言葉が、私の心に深く刻みついていた。




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