ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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投稿です!!


今回は、ある奴が出てきます。ではどうぞ!!


第二十一話

かの■■は突如街中に現れた。

誰もいない街の一角で灰の海が広がっている。そしてその中心に立つ■■が一体、佇んでいた。

青と黒を基調とした装甲に腰には大型の剣帯が二つ装着されており、背中と両足に奇妙な噴出口が見えている。

 

『──────』

 

紫色のその両目が光輝く。

 

『・・・ゥ?』

 

檻から逃げ出したモンスターの一匹がその■■に気付くが、もう遅い。

その■■は剣の柄を取り出し、剣帯へと突き刺すとその剣帯がスライドし、鈍く光る刀身が現れる。

 

『──────』

 

その■■は凄まじい勢いと共にそのモンスターの真正面へ現れると────。

 

"グチュリ"

 

嫌な音を立てて、そのモンスターを貫いた。

 

『ヴォォァ!?』

 

モンスターが痛々しい悲鳴を上げる。

だが、そのモンスターはその■■を逃がさないように、刃のない刀身を掴み拘束する。

─────が、

 

──ガコン──

 

金属が外れるような音と共にその刀身が、"根元から外れた"。

 

─────そして。

 

"ボゴォォォン!"

 

その刀身が爆発した。

跡形もなくそのモンスターが四散する。

魔石も、灰も跡形もなく残らず、そこに残ったのは焦げあとのみだった。

 

「なんだ!?さっきの音は!?」

 

「こっちから聞こえたぞ!!」

 

冒険者の声が遠くから聞こえてくる。

その■■は背中と脚のブースターを吹かせ、その場から消えた。

かの■■いや、意識のない彼の目的はただ一つ。

忌まわしき子供、三日月への復讐だけだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ガネーシャのとこの子達はなにやってるん、ミィシャちゃん?」

 

「え、えっとぉ、市民の安全を最優先に動いてます。私達と連携してら東地区から避難を」

 

「ふむ・・・・こんな状況でまともな情報なんて期待できんし、モンスターの方はやっぱりアイズに任すか」

 

どこか舌足らずのギルド職員の話を聞き、ロキは周囲を見回す。

闘技場を囲む広場はようやく統率の取れ出した動きを見せていた。黒のスーツを着たギルド職員が各々の役割に奔走し、武装した【ガネーシャ・ファミリア】の団員と頻りに検討し合っている。他にもごく僅かながら協力に応じた冒険者の姿もあり、指示を仰いだ側から広場から走り去っていった。

街の遥か彼方からは、今もモンスターの遠吠えが響いてくる。

 

「ロキ!」

 

「おっ?」

 

自分のもとに駆け寄ってくるティオナ達に、ロキはよく来たと手を上げる。

既にただならぬ状況を周りの様子から察している彼女達は、詳しい説明を求めてきた。

 

「簡単に言うと、モンスターが逃げおった。ここらへん一帯をさまよっとるらしい」

 

「え、不味いじゃん、それ!?」

 

「ん、不味いなぁ」

 

驚くティオナに対してロキは平然とした態度を崩さず。

なに暢気に言ってんの、と詰め寄られる中、彼女は苦笑しながら指示を出す。

 

「ティオナ達は、アイズがモンスターを討ち漏らしたら叩いてくれへんか?そうやな、うちももう移動するから、 見晴らしのいいとこにでも陣取っといて」

 

「あ、ロキ!ちょっと待って!」

 

「ん、なんや?」

 

ロキがそう言って去ろうとするが、ティオナはそれを呼び止めた。

 

「三日月とハッシュがどっかに行っちゃったんだけど、ロキは知らない?」

 

「三日月?三日月ならついさっきモンスターのとこに行ったで?ハッシュもな」

 

ロキの言葉に三人は唖然とする。

三日月達の行動の早さに脱帽するしかない。

すると今度はレフィーヤがロキに言った。

 

「じゃあ、アイズさんはもう、モンスターのもとに向かったんですか?」

 

「いや、まだ行っとらん」

 

「はぁ?じゃあどこにいるのよ?」

 

レフィーヤとティオネの疑問に、ロキは指一本で答えた。

遥か頭上高い闘技場の一角を指を示す。

 

「あそこ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

風の音が響いている。

美しい金の長髪をあおられながら、アイズは闘技場の上から街の光景を俯瞰していた。

本来立ち入る事のできない闘技場の外周部。もはやまともな足場でさえない天頂部分の縁はこの付近一帯の中で最も高度が高い。この場からは、東のメインストリートから入り乱れる街路の隅々まで一望することができた。

街に散らばったモンスターを追って闇雲に走り回っても非効率、時間の浪費は避けられない。

───高所から敵の位置を掌握してから、早急に狙い撃つ。

アイズが耳打ちされた、ロキの一計だ。

 

「・・・・見つけた」

 

肉眼で捉えることは勿論、地上にはダンジョンにはない風の流れがある。魔法の一部を乗せ咆哮の振動が敏感に感知するアイズは、瞬く間にモンスターの位置を割り出していく。

近辺で確認できたモンスターは計七匹。現時点で脱走したと情報のある九匹の内、あと二匹が見当たらない。

時間もかけられないので捜索を諦めたアイズは、腰から抜いていたレイピアに風を纏い直す。

 

「【目覚めよ】」

 

縁の端に足をかけ、背中から打ち寄せる観衆の大音声に押されるように、体を前に倒した。

人工の断崖から身を躍らせる、一時の浮遊感。

傾いていく視界の中で、最も距離の近いモンスターをその金の瞳で射抜く。

全力で仕留める。

 

「リル・ラファーガ」

 

蹴りつけられる壁。

自身を弾丸のように発射し、アイズは長距離からの突撃を敢行した。

 

「!?」

 

「なんだっ!?」

 

貫く。

街路の中心を行進していた『トロール』を背後から砲撃かながら粉砕する。

巨人のモンスターを相手に取ろうとしていた冒険者達は一斉に驚愕し、そのあまりの轟音に逃げ遅れていた市民達も肩をはね上げる。

 

(一つ!)

 

大量の灰が爆散する中、凄まじい勢いで石畳を抉り削っていくアイズはすぐさま反転する。突風とともに十字路を疾走し───道の先に見えたモンスターを、次には斬殺する。

 

『───ガッッ!?』

 

(二つ!)

 

止まらない。

三階建ての屋根へ跳躍し、いくつもの建物を一足飛びに駆け抜け、目標を視界に入れると同時に地面へと降下する。石畳を走る影に反応し降り仰いでくるモンスターめがけ、一撃で仕留める。

 

(三つ!)

 

金の疾風と化したアイズは剣を提げ、街中を駆け巡っていった。

 

◇◇◇◇◇

 

 

その頃、三日月は裏路地に逃げたモンスターをソードメイスで仕留める。

 

「まず、一匹」

 

三日月は仕留め終わったモンスターを目にする事なく周りを見る。さっきからバルバトスが何かに反応するかのように自分に伝えてくる。

 

「何か、嫌な感じだな」

 

三日月は薄々なにかを察知してはいるが、それが何か分からない。おそらくバルバトスもこれと関係があるのだろう。

 

「まあ、考えても仕方ないか」

 

そう言ってスラスターを吹かせようとした瞬間。

 

「!!」

 

空から黒い影が落ちてきた。

三日月はその影を避けて距離を取る。

 

「・・・なんだ?」

 

砂煙の中に何かいる。

三日月は警戒しながら砂煙が晴れるのを待つと、だんだん晴れてきた。

そして青色の装甲が特徴的なそれを見て──。

 

「コイツ・・・・あの時の」

 

三日月は見覚えのある。そしてコイツの動きも。

 

『────────!!』

 

機械じみた咆哮と共に二体の悪魔が交差した。

 

 




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