ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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短いですが、投稿です。

さぁ、ここで三日月の心境を書いてみました。
ではどうぞ!!


第二十三話

三日月は頓着するこの戦闘に苛立ちを覚えていた。

あの、青いヤツ。アイツが強いのは分かってる。

前もそうだった。やたらしつこかったギャラルホルンのあのパイロット。

アイツらのせいで仲間が死んだ。シノが死んだ。昭弘が死んだ。そして・・・オルガが死んだ。

そんなことがないように、俺が戦っていたのに結局全員守れなかった。俺が最後に出来なかった。

後悔した所で仕方ないし、した所で変わらない。

これから先、俺が弱かったらそんなのが続く?

 

俺はオルガの命令を果たさなきゃいけない。オルガの目指した場所に皆で行かなくちゃいけない。

だから──────。

 

「おい、バルバトス。"使ってやるからもっとよこせ"」

 

三日月はバルバトスにそう言う。

そしてそれに答えるように─────

 

 

バルバトスもまた、その言葉に────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

何で、とレフィーヤは思った。

上空の太陽を遮る長大な体躯。黒い影が、何度も立ち上がろうと試みているハッシュの体を覆いつくす。嫌悪しか喚起しない食人花は生え渡る牙から粘液をボタボタと滴り落とし、ハッシュの横にたらしていく。

周囲の悲鳴が遠い。逃げ遅れた市民達は青ざめ、今まさにハッシュが喰われようとする光景を見て立ちすくんでいた。恐慌を来たしかける彼等の腕をギルド職員や冒険者達が取って急いで避難させていく。

ハッシュが顔を歪めて食人花を睨み付ける。

レフィーヤは今まさに食べられようとする彼に、嫌だ、と思った。

腕よ足よ体よ動けと念じる。どこでもいいから動いて立ち上がれと、震えるのみで一向に起き上がれない全身へ鞭を打つ。しかし時は無情だった。レフィーヤの再起を待たず、醜い大口が彼に迫ってくる。

あぁ、とレフィーヤは嘆いた。

目の前の光景がレフィーヤの瞳に写す。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

同じだ。また、同じ。

きっと。

きっとまた、自分は────。

 

『アアアアアアアアアアアアッ!?』

 

視界に、金と、銀の光が走り抜ける。

敵の首を斬り飛ばした壮烈な剣の閃きと、美しい金の髪の輝きが、彼女の瞳を焼いた。

きっとまた、自分は───彼女に助けられる。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

絶叫を轟かせ、断たれたモンスターの首は建物の一角に突っ込んだ。

全力で振り抜いたレイピアをきらめかせ、勢いよく石畳に着地したアイズは後方を振り返る。

ハッシュに食いつく既のところで切断したモンスターの体は勢いよく仰け反り、ぐにゃりと折れ曲がりながらその場に崩れ落ちた。

 

「アイズ!」

 

ティオナ達を襲っていた触手もまた力を失ったように地面に落下する。

間一髪だった、とこの場所に急行してきたアイズは思う。

他の脱走したモンスターを討った際、全く情報にないこの謎のモンスターの姿を遠方から確認したアイズは───ティオナ達がそうであったように───突き動かされる形でこの戦場へと進路を取っていた。魔法を酷使し飛び込みざま斬撃を見舞ったことでハッシュは九死に一生を得たが、少しでも遅れていたら彼の命は危なかったかもしれない。

こちらに向かってくるティオナ達を視界に入れつつ、ハッシュとレフィーヤの方を見やる。

未だに倒れている青年とエルフの少女の安全を案じたアイズは、すぐさま駆け寄ろうとしたが。

微細な地面の揺れが、その足を止めた。

 

「・・・・・!」

 

すぐにその揺れは大きな鳴動に変わった。

アイズが剣を構える中で、辺りの石畳が隆起する。

 

「ちょ、ちょっとっ」

 

「まだ来るの!?」

 

ティオナ達の悲鳴を皮切りに、黄緑色の体が地面から突き出した。

アイズを取り囲むように、三匹。

閉じた蕾を一斉に開花させ、見下ろす格好でその巨大な口を彼女に向ける。

生暖かい呼気に頬を打たれながら、眦を鋭くするアイズがいざ斬りかかろうと────前触れなく。

 

"ビキッ!"

 

という亀裂音の後に、レイピアが破砕した。

 

「─────」

 

「なっ───」

 

「ちょ───」

 

手の中にある得物が壊れる光景に、アイズだけでなくティオネとティオナも言葉を失った。

風の出力とアイズの激しい剣技に耐えかね、細身のレイピアがとうとう音を上げたのだ。

今の今まで景気良く向こう見ずに───いや愛剣のつもりで取り扱ってしまった。根元から折れた刀身は張り詰めていた弦が切れたようにそこからひび割れ、砕け散り、いかに限界を超えていたのかを物語る。散っていく銀光。

 

いけない、怒られる。

 

借りた代剣をあられもなく破壊したアイズは、まず先にそんな事を思ってしまった。

 

『────────!!』

 

食人花が蠢く。

三匹同時に襲いかかってきた相手に、アイズは跳躍して回避しようとしたその時。

 

空から───

 

黒い人影が二人、土煙を上げて墜ちてきた。

 

「──────────」

 

一瞬、思考が停止する。

その一瞬の内に─────。

 

"グチャリ"

 

生々しい音をたてて、二匹の食人花が千切れとんだ。

 

「えっ?」

 

「な、何っ!?」

 

「ちょっと!?」

 

あの一瞬で起きた出来事にアイズとティオネ達は訳が分からず、そう呟いた。

何かが落ちてきたのは分かるが、その後何が起こったのかが分からない。

土煙が晴れてくる。そしてそこにいたのは

 

「三日月?」

 

"バルバトスらしき"鎧と、もう一人、青色をベースとした鎧を纏った謎の人物。その見た目はバルバトスにどこかに似ていた。

その二人が私達の事をはじめから居なかったように刃の無い剣と巨大過ぎるメイスで斬り結ぶ。

 

ガゴォォン!!

 

巨大なメイスと剣が衝突する。

火花が飛び散り、足元の石畳が二人を中心にひび割れた。ギリギリと金属が鳴り響く中、ヴィダールが距離を取り、片手で握られたハンドガンで三日月を正確に狙って撃っていくが、その攻撃に三日月は手に持った巨大メイスを盾にして防ぐと、それをヴィダールに向けて投擲した。

その攻撃を回避したヴィダールは足を変形させ、三日月目掛けて振り下ろす。

徒手空拳になった三日月はその攻撃に対して両手で受け止めた。

そして─────。

 

"キュルルルル"

 

「えっ?」

 

アイズは"バルバトスに装備されていた"ソレ"を見て再びそう呟く。

背中から伸びた"ソレ"はまるで猟犬のようにヴィダールをしつこく追いかける。

何度も弾いていくが、それでも追いかけ続けていき────

 

"ガコン!"

 

と金属が突き刺さる音ととともにヴィダールは壁へと叩きつけられた。

建物に巨大な穴が空き、ガラガラと音をたてながら瓦礫が落ちていく。

そしてその瓦礫の中からヴィダールは飛び出すと、不利だと理解したのか空高く飛翔していった。

その二人の戦いに私達は言葉を発することも動くことも出来きず、モンスターに至っては身動ぎすら出来ていなかった。

そんな私達に気付いていないのか三日月は足元に力を入れる。

 

「逃がすわけないだろ」

 

三日月はそう言って追いかけようとした時。

 

「三日月?」

 

私の声に三日月は足を止めた。




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