ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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ハシュ○を起動させる要因を今回出します。まだ起動させませんが。デート・ア・オルフェンズもよろしくです!

ではどうぞ!


第十一話

収まらない声々が石の壁に、青い水晶の柱に吸い込まれていく。

その場にいる多くの冒険者が取り乱す中、騒然となっている洞窟の宿は混乱の一途を辿っていった。

ダンジョン18階層『リヴィラの街』、ヴィリーの宿。

頭部を失った遺体が晒す【ステイタス】を、アイズ達はそれぞれの表情を浮かべながら見下ろしている。

 

「・・・ほ、本当に、この人は力ずくで殺されてしまったんでしょうか?その、毒とか・・・」

 

「見動きを取れなくなったところで、息の根を止められたってこと?」

 

尋ね返すティオネに、レフィーヤはぎこちなく頷いた。

と、今の今まで遺体を見ていた三日月がアイズ達に言う。

 

「コイツ、多分首の骨が折れてる」

 

「・・・え?」

 

三日月の言葉にアイズは三日月を見る。それに対して三日月は飛散した頭部の下、首周りに視線を向けたままアイズ達に言った。

 

「ほら、ここ。首周りにアザが出来てる。多分、手かなんかで首を絞められたんじゃない?首はどんなに鍛えても意味ないから、多分油断してる時に一撃でやられた感じか」

 

三日月の言葉にアイズ達が呆然とする。

 

「聞いてる?」

 

三日月は返事がないアイズにそう言って此方に視線を向けてくる。

 

「・・・えっ、う、うん。詳しいんだね三日月」

 

「こういうのは、仕事で良くあったからね。コイツの様子を見れば分かるよ。それで、犯人は分かりそう?」

 

「ンー、今の所はまだ情報不足だね。ことに乗じることで油断させていたとはいえ、第二級冒険者の寝首をかける女、か・・・」

 

「・・・【イシュタル・ファミリア】のところの戦闘娼婦?」

 

フィンの言葉にティオナが考えを口にする。だが、フィンは「ンー」と死体から視線を離さず口を開いた。

 

「そうだったとしたら分かりやすくていいんだけどね、まぁ、疑ってくれと言っているようなものかな」

 

「そうよ、あからさま過ぎるじゃない」

 

フィンの返答にティオネが声を続けた───その直後だった。

室内にいた取り巻きの一人が、半狂乱でアイズ達に指を向ける。

 

「そ、それらしいこと言ってるけどっ!!今ちょうど街にやって来たって顔をして、本当はお前等の誰かがやったんじゃないか!?」

 

その発言を皮切りに、ボールス達は一斉に振り向いた。

泣く子も黙る第一級冒険者達に疑惑の目が向けられる。第二級冒険者を実力で殺害できる有力な容疑者は、確かにこの場ではアイズ達を置いていないだろう。

「え〜?」とティオナは心外とばかりの表情を浮かべ、ティオネは反感のこもった眼差し、リヴェリアも片目を瞑り、レフィーヤはというとすわとばかりに慌て始めた。フィンは苦笑しながら頬を指でかく。

アイズも困ったように、少々身動ぎした。三日月はというと、自分には関係ないと言わんばかりの顔である。

 

「こいつらがやったとすると・・・」

 

「ああ、まずフィンとそこのガキはありえねぇ・・・」

 

アイズ達を取り囲む冒険者の輪。怯えたようにじりじりと距離を取るヴィリーに、緊張で喉を鳴らすボールスが頷く。小柄な小人族であるフィンと、片腕が使えない三日月は案の定、男であるため真っ先に容疑者から除外される。

冒険者達は順々にアイズ達を見る。目撃されている謎のローブの女は、外衣の上からでもわかる豊かな体つきだ。

アイズ、レフィーヤ、と視線が移り、リヴェリアとティオナに彼等の目が止まる。

薄い胸周り・・・とりわけ露出の高いティオナの体格を凝視した彼等は、うむ、と一様に頷く。

 

「こいつはないな」

 

「ああ、ないな」

 

「うぎーっ!?」

 

両手を振り上げ暴れようとするティオナを羽交い締めにするアイズ。

ばたばたと部屋の一角が騒がしくなる中、冒険者達の疑いの目は、最後にティオネへと向けられた。

 

「・・・お前なら、男なんていくらでも誑し込めるだろうなぁ?」

 

ボールスの言葉が響く中、他の冒険者の視線がティオネにまとわりつく。

 

「───あァ?」

 

そんな彼等に対し、ティオネは。

目を開き、途轍もない表情で、憤怒の炎を爆発させた。

 

「私は団長のものだって言ってんだろ!!」

 

「てめーらなんて知るか!!」

 

凄まじい罵詈雑言が続けざまに炸裂する。

竜のごとき形相を浮かべるティオネはがなり立て、踏み出した一歩で床を踏み砕いた。

どうどうと、今にも飛びかかろうとする実姉を今度はティオナが抑える中、逆鱗に触れた冒険者達は例外なく、盛大に青ざめる。

 

「・・・あー、ボールス。ご覧の通り、彼女達には異性を誘惑できる適性がない」

 

「お、おおぅ・・・疑って悪かった。す、すまん」

 

情けない声でこくこくと頷くボールス。

自身も疲れきったように伏し目がちになるフィンだったが、気を取り直して、あらためて室内を見回す。

 

「ンー、三日月ちょっといいかい?」

 

「・・・なに?」

 

近くにいた三日月にフィンは質問をしてみる。

 

「君だったらこの状況をどう見る?君の意見を聞いてみたい」

 

フィンの質問に三日月は頭をかきながら言う。

 

「あんまり、そういうの得意じゃないんだけど?」

 

「それでも、一応ね」

 

三日月はフィンの言葉に「んー」と唸りながら辺りを見渡す。と、三日月の視界に派手に荒らされたバックパックがあるのに気づく。

 

「ん?」

 

「どうしたんだい?」

 

三日月の反応にフィンが聞き返す。

 

「いや、なんでアレ荒らされてるんだろうって?」

 

三日月はそう言って荒らされたバックパックに近付く。

物色された跡のあるバックパックにフィンは呟いた。

 

「ローブの女は、ハシャーナの特定の荷物を狙って近付いたのかもしれないね」

 

「おー、分かりやすくていいなぁ。それでハシャーナの野郎はまんまと色仕掛けに乗って、殺された訳だ」

 

「この荷物の状態を見るに・・・焦っていたというより、相当苛立っていたようだな」

 

フィン、ボールス、リヴェリアと声が続く中、アイズも荷物のもとまで歩み覗き込む。

強引に引き裂かれているバックパックは中身をかき出され、周囲にはいくつかの道具も散乱していた。確かに焦って中身をぶちまけたというよりは、どこか乱暴にものに当たっていた感情が品々から見え隠れしている。

 

「その特定の荷物が見つからず、癇癪を起こして死体に当たった・・・筋は通りますね」

 

「なんかティオネみたいだねー」

 

「私だってこんなことしないわよ!?」

 

一緒にするなとティオネがティオナに吠える。

喚く彼女達を放っておき、フィンは何か手がかりはないかと荷物をあさる。

 

「ンー?」

 

破損したアイテムや回復薬が多く占める中らフィンが取り出したものは、一枚の血塗れの羊皮紙だった。

見守っていたアイズの横から、ティオナ、レフィーヤが顔を出す。

 

「なにそれ?」

 

「冒険者依頼の・・・依頼書ですか?」

 

羊皮紙を開くと、大半の文字は飛び散った血で汚れ、碌に読むことはかなわなかった。

それでも真っ赤に染まっている紙から、いくつかの文字を拾い上げる。

 

「30階層・・・単独で、採取・・・内密に・・・」

 

フィンの唇から紡がれる言葉を聞き、アイズ達の思考が膨らんでいく。

やがて一同の推理を代表するように、フィンが独り言のように呟いた。

 

「ハシャーナは依頼を受け、犯人に狙われる『何か』を30階層に取りに行っていた・・・?」

 

周囲に染み渡るように、一度部屋に静寂が訪れる。

 

「・・・ボールス、一度、街を封鎖してくれ。リヴィラに残っている冒険者達を出さないでほしい」

 

要請を行うフィンのもとに、部屋の者達の視線が集まる。

石のような顎をさするボールスは、眼帯をつけた顔をしぶそうにする。

 

「まだ犯人が何気ない顔で街を出歩いているってか?オレ様だったら、とっくにトンズラこいてるがなぁ」

 

「ハシャーナほどの人物が極秘に当たる依頼・・・犯人がさがしていたものは、よほどの代物だった筈だ。殺人まで犯している。もしまだ確保できていないとしたら・・・手ぶらでは帰れないだろう」

 

それに、とフィンは続けると、ぺろりと右手の親指を舐める。

 

「きっとまだいると思うよ・・・勘だけどね」

 

「わかった」

 

神妙な顔で、ボールスは頷き、部屋の者に指示を出す。

 

「北門と南門を閉めろ。それから街の中の冒険者達を一箇所に集めるんだ。従おうとしねえ奴は、犯人だと決めつけて取り押さえちまってもいい。ヴィリー、新しく街に来た冒険者には事情を話して別のところにまとめとけ」

 

「わ、わかったっ」

 

ボールスの部下達が慌ただしく動き出す中、ティオナ、ティオネ、レフィーヤ、そしてアイズはその様子を外から眺める。

 

「なんだか、すごいことになってきたね」

 

「うん・・・」

 

「ここまできたら、ハシャーナの弔い合戦ね。絶対に犯人を捕まえるわよ」

 

「は、はいっ」

 

アイズはティオナ達に相槌を打ちながら周りを見渡す。が、その視界に三日月がいなかった。

凄く嫌な予感がアイズの中に渦巻いていく。

 

「・・・三日月!」

 

突如いなくなった三日月にアイズは部屋から飛び出すが、そこには誰もおらず、水晶がうっすらと光輝くだけ。

 

「・・・アイズ?どうしたの?」

 

ティオナが不思議そうに声をかけてくる。そんな彼女にアイズは言った。

 

「三日月が何処にもいない」

 

「あれ?本当だ。どこに行ったんだろ?」

 

ティオナはそう言ってキョロキョロと周りを見渡すが、アイズはそんなティオナを置いて走り出した。

 

「ちょっ!?アイズ!どこいくのさー!?」

 

「三日月を探しに行く」

 

「もー!!待ってよー!!」

 

アイズの返答にティオナも走り出した。

 

「一人で探すより二人で探した方が早いから、一緒に探すよ!」

 

「・・・うん」

 

アイズとティオナは二手に分かれ、三日月を探し始める。

リヴィラの街は、今まさに揺れ動こうとしていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

???

 

「・・・ここは、何処だ?」

 

一人の男が目を覚ます。立派な軍服姿の褐色肌のその男は周りを見渡す。

何もない平原に、遠方に巨大な都市が広がっていた。

 

「ここは、地球か?ギャラルホルンの統括地では無さそうだが・・・」

 

男はそう呟き、腕を組むがすぐに考えるのを止めて言った。

 

「考えても拉致がない。なら、とりあえずは進むのみ!」

 

男はそう言って歩いていく。その都市に。

 

厄災が眠るその場所へ。




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