ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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ちょいと短いですが、投稿です!よろしく!


第十ニ話

三日月は街の外に出て周りを見渡す。

 

「・・・この辺か」

 

さっきからバルバトスが反応している。この辺りに“何かいる“。

周りには木々がまばらに生えているが、“生き物の気配がない“。

 

「・・・・・石?」

 

三日月はそう言って、魔石を拾い上げる。

あのモンスターを倒した時しか出ないコレがなぜここにある?

と、その時だった。

 

「・・・・・っ!」

 

三日月が眉を寄せ、上を見上げる。

その木々の間にソイツはいた。

ソイツは三日月に向けて“巨大な鎌状の武器を振り下ろした“。

 

ガゴォォォォン!!

 

金属同士がぶつかる音が周りに響き渡る。

ビリビリと衝撃が腕に走るのを感じながら三日月は一瞬で展開したバルバトス越しでソレを見た。

フード状の装甲の隙間から見える黄色い眼光を放つ双眼に、特徴的な赤い二本角。片方が欠け、鎌状になった大型のバトルアンカー。そしてその黒い装甲でまるで幽霊、または死神を思わせるようなソレは・・・。

 

「コイツも“ガンダムフレーム“か」

 

三日月はそう呟き、巨大メイスを構える。

 

『────!!』

 

「────────殺る」

 

ここに二体の悪魔が交差した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「三日月・・・何処!」

 

アイズは街中を走り回る。屋根から屋根へ。路面から、細道へ。疾走し駆け抜ける。

三日月の強さなら此処までする必要はないだろう。だが、アイズの中の嫌な予感がグルグルと渦巻いていた。

三日月が何かに関わろうとしている。そのよくわからない感覚が先程からアイズに訴えている。

そしてアイズが、門をくぐり外へ出て更に加速しようとしたその時────。

 

「────────っ!?」

 

バスッ!

 

アイズの足元の地面に魔力弾が突き刺さった。

先程の攻撃を回避出来たのは、ただの偶然だった。

とっさの事にアイズは後方へ跳んだが、アイズの視線の先は先程、自身に攻撃を仕掛けた相手に向けられていた。

特徴的な二本角に深い青色の装甲、一部の黒い装甲の間にフレームが見え隠れしている。

ソレはかつて三日月と街中で“互角に戦っていた“あの怪物だった。

 

「────っ!!」

 

アイズはすぐに腰の剣帯から《デスペレート》を引き抜き、すぐさま戦闘態勢に入る。あの三日月と互角で戦えるような相手だ。かなりの強敵だろう。けど────

 

「どいて。私はやることがあるから」

 

『────────!!!』

 

アイズはヴィダールに向けて駆け出す。

それと同時にヴィダールも咆哮するように顔をアイズに向け、バーストサーベルを片手にアイズに突貫した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ボールスによって封鎖命令が下された『リヴィラの街』の中は、いつにないざわめきと動揺が伝播していた。

騒ぎは一向に収まらない中、力自慢のドワーフ達によってアーチ門前に鎮座していた大岩が押し出され、二つの出入り口である北門と南門が塞がれる。

白と青の水晶の街はら今や冷たい牢獄と化していた。

 

「集まるのが早かったね」

 

「呼びかけに応じねえ奴は、街の要注意人物一覧に載せるとも脅したからな。そうなりゃどこの店でも即叩き出しだ。この街を今後も利用してえ奴等は、嫌々でも従うってもんよ」

 

「それに、一人でいるのは恐ろしい、か」

 

ああ、とフィンの呟きにボールスが頷く。彼等の視線の先で揺れ動いている人集りは、程度の違いはあれその顔に恐怖を抱えていた。

既にボールスの口から第二級冒険者が殺害された事は伝えられている。第一級冒険者に匹敵する殺人鬼が街のどこかに潜伏しているとなれば、個人行動に危惧を抱くのは当然の成り行きだった。

場所は水晶広場。

街の中心地であり、見通しのいい開けた空間には街中でも最も広い。広場中央には大きな白水晶と青水晶の柱が寄り添っており、その側には血塗れの全身型鎧を始めとしたハシャーナの私物も運び込まれている。

周囲には水晶や出店が立ち並ぶこの広場で、冒険者一同は集結していた。

 

「お前等以外の第一級冒険者が見つかりゃあ、分かりやすかったんだがな・・・」

 

「最初から騒動を起こすつもりでいたんだろう。変装しているか、あるいは公式のLV.を偽っているのか・・・安易に疑われない対策の一つや二つは取っている筈だよ」

 

「相手も馬鹿じゃねえか」

 

双子水晶の下で冒険者達を見回すフィンとボールス。

ざっと数えても、集まった人数は街の住人を合わせ五百に届く。迷宮の拠点として賑わう『リヴィラの街』の平均的な総人数と比較すると、少なくもなければ多くもない数だ。

 

「・・・アイズ達は?」

 

アイズ、ティオナ、三日月の三人の姿が何処にも見当たらないのを確認して、フィンはそう言った。

 

「アイズとティオナは三日月を捜索しに単独行動してる。三日月に関しては今も行方が分からないままだ」

 

フィンの言葉にリヴェリアはそう答えると、フィンは目を丸くする。

 

「三日月が行方不明?どういう事だい?リヴェリア」

 

「言葉通りだ。三日月が突然姿を消した。もしかしたら何かしら手がかりを見つけたのか、それとも・・・」

 

「共犯者・・・とでもいいたいのかな。リヴェリア」

 

あくまでも予想だと返すリヴェリアに、フィンはレフィーヤに言った。

 

「レフィーヤ、君はアイズ達を探しに行ってくれないかい。単独行動でもしかしたら、という事もあり得る」

 

「わ、分かりました!」

 

フィンの命令にレフィーヤはそう言って走り出す。

そしてボールスに言った。

 

「ハシャーナを襲ったのは女冒険者だ。そこから相手を探してくれないかい?ボールス」

 

「そういうことならまかせておけ!」

 

ボールスはそう言って他の冒険者に指示を出す。

 

「ようし、女ども!?体の隅々まで調べてやるから装備を脱げーッ!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!』

 

ボールスのその要求を聞き、全ての男性冒険者達が歓声を上げる。そんな彼らに対して、ふざけんなーッ!死ねーっ!と女性冒険者達からは罵倒の声が飛んだ。

 

「・・・やれやれ。これじゃ時間がかかりそうだな」

 

フィンはそう呟いて肩を落とした。

 

 




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