『────────!!』
三日月の姿を見たヴィダールは視線をアイズから三日月へと向けて突撃する。
人間らしくない常識外れた動きで三日月を翻弄するようにバーストサーベルを突きだす。が────。
「ごちゃごちゃうるさいよ。“オマエ”」
三日月はそう言いながらバルバトスの巨大な手でバーストサーベルを“握り潰した“。
その事にヴィダールはまるで驚くように距離を取ろうとする。
が、その瞬間を三日月は見逃さなかった。
「ふっ!!」
三日月は手にしていた巨大メイスをフルスイングでヴィダールに叩きこんだ。
ガギィン!!と火花と金属音が辺りに撒き散らされる。
それと共にヴィダールが勢いよく森の奥まで吹っ飛んでいった。
それを見た三日月は一瞬だけアイズ達に視線を向ける。
そして彼女の近くにいた昭弘に三日月は言った。
「じゃあ、昭弘。アイズが回復するまで“守ってあげて“」
「おう、まかせろ」
三日月の言葉に昭弘はそう答えると、その言葉を聞いた三日月はヴィダールを吹き飛ばした方向へとスラスターを吹かせてその場から跳躍していった。
◇◇◇◇◇
三日月の言葉に“ビキリ”とアイズの内側から何かがヒビ割れる音が聞こえた。
「・・・・ぁ」
アイズは小さく声を上げる。
そしてアイズは三日月の言葉を理解した。
“邪魔”。つまり、“私が一緒に戦った所で足手まといになる“。
三日月はそう言ったのだ。
「おいお前、大丈夫か?」
昭弘がアイズに声をかける。だが、アイズの耳に昭弘のその声は届かなかった。
三日月の言葉がアイズの中をグルグルと渦巻く。
そして────
「・・・・もっと強くならなくちゃ・・・・」
三日月に見捨てられないようにもっと。誰より強くならなくちゃいけない。
アイズは誰にも聞こえない声でそう呟き、フラフラとした足取りで歩いていく。
「お、おい!どこ行くんだよ!?」
昭弘は立ち上がり、止めようと手をかける。が────。
「────うるさい」
「・・・・・!」
アイズは昭弘にそう言って振り向く。そんなアイズに昭弘は眉を顰めた。そしてアイズは、昭弘に言った。
「ねえ、貴方のその力・・・“どうやったら手に入れられる?“」
アイズは昭弘にそう聞いて見る。
「・・・・・っ、いえねえ」
昭弘はアイズにそう答えた。何故なら答えてしまったら最後、この女が元に戻れないような気がしたからだ。
「・・・・・そう。ならもう貴方に聞かない」
アイズは昭弘にそう言って足取りを進める。
「おい!どこに行くつもりだ!」
「・・・貴方に関係ない」
昭弘の静止を止めずにアイズは三日月が跳躍して行った方向へと歩いて行った。
◇◇◇◇◇
三日月は眼の前にいるヴィダールを見てポツリと呟く。
「コイツ、すばしっこいから苦手なんだけどな。まあ、なんとかなるか」
三日月はそうぼやきながらも、ヴィダール目掛けてテイルブレードを射出する。
テイルブレードはしなりながら、ヴィダールに随時するように伸びていく。そんなテイルブレードにヴィダールは手に持ったハンドガンで応戦していきながらも、三日月目掛けて牽制するように射撃をする。
「無駄」
その牽制射撃を三日月はあえて受け、三日月はヴィダールに急接近し、巨大メイスをヴィダールへと叩き込む。
“ゴシャ!!“と鈍い音と共に金属音と火花が辺りに散った。
三日月の攻撃をもろに受けたヴィダールは三日月を蹴り飛ばして距離を取り、さらに三日月から距離を取ろうとする。が────
「今度は逃がすわけないだろ」
三日月はそう呟くと、テイルブレードがヴィダールの背中のスラスターを貫く。
爆煙が上がる中、三日月は巨大メイスから違う武器に持ち替える。その武器は一言で言えば巨大だ。
先程手にしていた巨大メイスとほぼ大きさは同じだが、先端部分が金属製の巨大な塊で出来ていた。
そして真ん中辺りから開閉出来る継ぎ目の部分からチェーンソーが獲物を求めるようにその刃をギラリと覗かせている。
まるで肉食恐竜のアギトのように見えるソレはかつて“グレイズ・アイン”の時に使った“レンチメイス“だった。
未だに爆煙が上がる中、三日月はレンチ・メイスを片手に煙の中にいるであろうヴィダールへ向けてスラスターを吹かせる。
そして爆煙の中にいたヴィダール目掛けてレンチメイスを全力で振り下ろした。
『!!』
それにすぐに気づいたヴィダールであったが、動くことよりも早く、三日月はヴィダールを地面へと叩きつける。
三日月の全力攻撃がクリーンヒットしたヴィダールの装甲がフレームが破損し、砕け散る。
そんなヴィダールに三日月はさらに追撃をかけた。
レンチメイスのコンテナが展開され、そしてその中からはチェーンソーがギラリとその刃を煌めかせる。
そしてヴィダールを逃げられないように挟み込むと、そのままチェーンソーを起動させた。
“キュイイイイイイイイイイイイ!!“
チェーンソーの刃が高速回転し、挟み込んだヴィダールを解体していく。周りに火花と金属片を撒き散らし、腕を脚を切り落とした後、三日月はそんなヴィダールにレンチメイスを叩きこんだ。
ドゴォォン!!という音とともに周りに土煙が巻き起こる。
「・・・これだけやっとけば、もう動けないだろ」
パラパラと土が落ちる中、三日月はスクラップにヴィダールを一目みた後、アイズ達がいる場所へと帰っていった。
そして誰もいなくなった森の中、スクラップにされたヴィダールに近づく一人の人影。
そして、その人影はスクラップになったヴィダールを見てポツリと呟いた。
「・・・ねぇ、私を強くして。強くなれるなら何でもいいから。三日月に振り向いて欲しいから。だから貴方の力、私にちょうだい?」
アイズはそう呟いてヴィダールに手を伸ばし、そして────意識を失った。
アイズ、(病み堕ち化?)なお、しばらく続く模様。
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