ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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第十七話

「う・・・」

 

闇の中、アイズは目を覚ます。

 

「ここは・・・?」

 

アイズは周りを見渡しながらそう呟くが、周りに見えるのは闇だけだ。アイズは若干不安を抱きながら歩いていく。

そしてふと、足元に違和感を抱く。

 

「?」

 

冷たいドロッとした液体に脚を入れたかのような感触にアイズは足元を見た。

 

「・・・・っ!?」

 

アイズは驚愕し息を呑む。違和感の正体は大量の血だった。

辺りを見渡して見れば、そこにあるのは大量の死体と巨大な金属の塊、そして海のように広がった血だ。

アイズはその真ん中に一人立っていた。

 

「────っ!!」

 

アイズはこの場所にいるのが怖くなり、走り出す。

だが、足元に広がった大量の血が足を絡めてうまく走る事が出来ない。

そんなアイズを何者かが、アイズの足首を掴んだ。

 

「・・・・・!?」

 

急に足首を掴まれた事により、アイズは転倒する。

 

「・・・ケホッ、ケホッ!」

 

血の池に身体全身を浸かりながら、アイズは咳き込んだ。

口の中が鉄の味で充満する。だが、そんなことを気にする余裕はなく、アイズは今も自身の足首を掴むものに視線を向ける。

 

「・・・・・ひっ!?」

 

アイズは自身の足を掴んでいたもの正体に悲鳴を上げた。

そう、それは───“血まみれになったレフィーヤだった“。

アイズはさらに周りを見渡す。その周りに沈んでいる死体は全て自身が知っている人達のものだった。

フィン、リヴェリア、ティオネ、ティオナ、ガレス、ベート、にロキ・・・自分の家族が血の池に沈んでいる。

そしてその先に二人の人影があった。

 

それは一人の”少年と少女だった“。

 

黒髪の小さな少年と長い金髪の少女が手を繋いで、血で濡れた道を歩いていく。

 

待って。と、アイズは言葉を出そうとするが声が出ない。

 

そんなアイズの後ろで赤い一つの光が光る。

アイズが後ろを振り向くとそこにいたのは────

巨大な、一つ目の“悪魔“だった。

そしてアイズの身体がズブズブと、血の池に沈んでいく。

 

「・・・!?やだ・・・!?」

 

沈んでいく自身の身体にアイズはもがき、抜け出そうとする。が、“もう遅い”。

アイズは更に沈んでいく身体を必死に動かす。だが、身体の半分以上が沈んでしまっているアイズには何も出来なかった。

アイズは右腕を少年と少女に必死に手を伸ばす。

助けてと、そう叫ぶ。だが、その少年達には聞こえていないのだろう。その少年達は自身に気づかないまま、闇の中に消えて行った。

そしてアイズは顔に絶望の表情を浮かべながら沈んでいった。

そして全て忘れていく。

此処であった出来事を────。この先起こりゆくであろう、未来図を。

 

アイズの意識が覚める。

 

「あれ・・・?確か私は・・・」

 

力を求めて敵だった鎧姿の相手に手を伸ばしたはずだ。

それから────意識を失っていたのか。と、アイズは激しく痛む頭痛に頭を抑えながら立ち上がる。

周りを見渡すと、ヴィダールの残骸が一つもない。

だが、ヴィダールが“自分の中にいる“と言う事がアイズは感じた。

 

「・・・これで、私も三日月みたいに強くなったのかな」

 

そう呟くアイズだったが、三日月達が心配しているだろうし、早く戻らないと。そう思いながら、アイズは来た道を引き返していった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

三日月がアイズ達がいる場所に戻る道中、バルバトスが何かに反応した。

 

「ん?なんだ?」

 

三日月が反応がある場所に視線を向けると、そこにいたのは昭弘だった。

 

「あれ?昭弘?」

 

三日月はそう呟き、昭弘の元へと向かう。

うまくスラスターを使いながら木々の間をすり抜け、昭弘の前へと着地した。

 

「・・・っ、三日月か!?」

 

「どうしたの?昭弘?」

 

何か焦っているような昭弘に三日月はそう聞き返す。

そんな三日月に昭弘が言った。

 

「悪い三日月。あのアイズってヤツがどっか行っちまった!!この辺りの方角に向かったんだが、どこにもいねえんだ!!」

 

「分かった。俺も探す」

 

昭弘の言葉に三日月はすぐに頷いて跳躍しようとする。

が、その時だった。

 

ガサガサ!!

 

「「・・・・・!」」

 

ガサガサと茂みが揺れる。二人は警戒しながらその茂みを見つめる。すぐに戦闘が出来るよう構える二人はその茂みを見つめていると────

 

「・・・三日月?」

 

茂みから出てきたのはアイズだった。

 

「アイズ?」

 

三日月が訝しげにアイズを見る。どこか“普段のアイズ”と違っているような気がしたからだ。

だが、それも一瞬の出来事でアイズ“はいつものように”三日月に言った。

 

「三日月?よかった・・・無事で。みんな心配してるよ?」

 

「アイズも大丈夫?ケガはもうない?」

 

あれだけの大怪我をしていたのだ。きっと何処かまだ怪我が残っているはず・・・と思ったのだが、アイズは首を縦に振って言った。

 

「うん、私は“もう大丈夫”だよ」

 

アイズはそう言って、“不自然なくらいに傷がない”一度砕かれた右手を見せる。

 

「そっか、ならよかった」

 

三日月はそう呟いた瞬間────。

 

ドオオン!!

 

「「「!!」」」

 

リヴィラの街の方から大きな瓦解音が聞こえてくる。

そんな様子を遠目で見た三日月達は、それを見て言った。

 

「襲撃?急いで戻るよ。昭弘、アイズ」

 

「おう!」

 

「うん」

 

三日月の言葉を聞いて二人は返事をし、走り始めた。

その時、三日月と昭弘は知らなかった。

アイズの背中には“キマリス”の紋章があることを。

 

 




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