ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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第十九話

「あーもう!しつこい!!」

 

ティオナはそう叫びながら手にした大双刃で食人花を叩き斬る。

食人花は動きを止め、倒れるが量が量だ。

一体倒せば別の個体が出てくるのできりがない。

 

「どれだけでてくるのさ!きりないじゃん!!」

 

倒しても倒しても湧いて出てくるモンスターの群れにティオナはそう叫び、大双刃を振り回す。

モンスターは次々と斬り裂かれ、灰と化していくが、それよりも更にモンスターの数は増えていった。

そんなジリ貧の中に一人の影が乱入した。

 

「おおおおおおらぁぁぁ!!」

 

その人影はティオナの後ろにいたモンスターを手にしたハルバードで叩き割る。

 

「えっ?」

 

ティオナは後ろを振り返ると、薄い茶色の装甲が特徴的な鎧の人物だった。その鎧はまるで三日月のような鎧にティオナは困惑する。

 

「えっと・・・ありがとう?」

 

困惑気味のティオナの言葉に昭弘は言った。

 

「気にすんな。それより挨拶は後だ。まずはコイツらをやるぞ!」

 

「う、うん」

 

三日月ではない暑苦しい男の声に更に困惑する。

モンスターの群れに突っ込む昭弘にそれを追いかけるようにティオナは駆け抜けていった。

それが、ティオナと昭弘の出合い(?)だった。

 

◇◇◇◇◇

 

三日月と別行動となったアイズは広場に向かっていた。

激戦区となっているだろうが、遠目でフィン達がいるあの場所が街の安全地帯でもあるからだ。

 

「まずは、他の冒険者を助けないと」

 

アイズはそう呟きながら、食人花モンスターへと斬りかかる。

あっという間に斬り倒されるモンスターだったが、アイズの内側は不満しかなかった。

 

「・・・まだ足りない」

 

まだ、自身の中に眠る悪魔はアイズにその力を貸そうとしない。

その事がアイズにとっての苛立ちの原因となっていた。

まるで、“誰かが悪魔の力を抑えている“ような感じにアイズはそう感じたのだ。

と、遠くの方から凄まじい轟音と、大炎の極柱が中央から連続して昇った。

 

「あれは・・・リヴェリアの魔法?」

 

アイズはそちらに視線を向ける中、周りから夥しい火の粉と共に、うぉぉぉぉぉっ、と歓声も響いてくる。

アイズはリヴェリアが多くのモンスターを撃破したのだろうと悟った。

 

「・・・もっと強い奴を倒さなきゃ」

 

アイズがそう呟くと同時、アイズはふと後ろを振り返る。

 

「・・・・?」

 

街が、空が、燃え立つように赤く染まる最中。

火のかけらが降りそそぐ水晶の道に、一人の影が、アイズの前に現れた。

脚具、籠手、胸甲。

手足の先から胸元まで厚い黒鎧に包まれた冒険者。

アイズは目を細めると同時、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「ア、アイズさん!!」

 

その声にアイズは視線をそちらに向けると、そこにいたのはレフィーヤだった。その隣には犬人である獣人の少女が立っている。

逃げ遅れた冒険者だろうか?と、アイズの後ろから黒鎧の冒険者がアイズの懐に踏み込む。が────

 

「ッッ!」

 

アイズは咄嗟に“蹴り“を入れた。

 

「えっ?」

 

黒鎧の冒険者は瓦礫に突っ込んでいくが、レフィーヤはアイズの行動にそう呟く。

“アイズらしくない“のだ。先程の行動は。

本来のアイズであれば手にしたサーベルで迎撃しようとするだろうが、アイズは蹴りを入れて相手を迎撃した。

その事が、レフィーヤに疑問を抱かせた。それともう一つ違う所があるとすれば・・・

 

「雰囲気もアイズさんらしくない・・・」

 

正直に言ってその辺りは分からないのだが、どこかアイズらしくない。その雰囲気にレフィーヤはボソッと呟く。

そんな中、アイズは鎧姿の冒険者を観察する。

自身が後ろに視線を向けただけで懐にまで入れるその敏捷性といい、手際の良さといい、アイズは問いかける。

 

「・・・貴方が、ハシャーナさんを殺した人?」

 

遠方から木霊するように冒険者達の声が届いて来る中、アイズは目の前の人物を睨みつける。

情報によれば女性とのことだが、アイズの勘が目の前の人物がハシャーナ殺害の犯人であると告げている。

アイズ達が見据える中、鎧姿の冒険者が口を開いた。

 

「だったらどうした?」

 

その声を聞いた瞬間、レフィーヤは目を大きく見張り、アイズは目を更に細める。

高く響いたその声は外見通りのものではなく────“女性のものだったからだ“。

 

「あ、貴方は男性の筈じゃあ・・・!?」

 

明らかに男性の顔立ちである相貌をまじまじと見つめながら、レフィーヤが戸惑いの声を上げる。

包帯で半分隠れているとはいえ疑う余地がない。薄ら寒いほど表情と言えるものが存在しないが、浅黒い肌の精悍な顔は間違っても女性には見えなかった。

無表情な相手は淡々と話す。

 

「引き剥がしただけだ」

 

「えっ・・・・・?」

 

「“死体から顔の皮を引き剥がして”、被っているだけだ」

 

レフィーヤは、絶句した。

アイズでさえもその発言に息を呑む。

 

「ポイズン・ウェルミスの体液に浸せば人の皮の腐敗は防げる・・・知らなかったか?」

 

抑揚のない口調で告げられる彼、いや“彼女”の言葉に、寒気が背筋を走り抜けると同時、“アイズの中に眠る悪魔“がアイズに訴えかける。《契約》をしろと。

 

「それじゃあ、その顔はハシャーナさんの・・・?」

 

そこまで言いかけたレフィーヤは顔を蒼白にさせ、口元を押さえる。

肉の仮面を被っている人物────鎧の女は否定も肯定もしなかった。今更答える必要などないというかのように。

アイズは注意深くその顔面を観察する。今も顔半分に巻かれている包帯は、恐らく仮面の大きさが合わない為に生じている歪みを隠す為のものだろう。

 

「ああ、くそ、きつくてかなわん」

 

女はアイズ達を無視し、苛立ったように身につけている鎧をぬぎ始める。

プレストプレートを掴み、砕く。あっさりと破壊して取り外すと、剥がれた鎧の内からインナーに包まれた豊満な胸がまろび出る。襟巻きや他の鎧の一部も強引に引き剥がし、白い首筋やそのしなやかな肢体をあらわにした。

男の顔の印象、先入観が強すぎた。その見た目から女性などと欠片も怪しまれることなく、容疑者の候補から外れていたのだ。

そしてぐずり、と。

腐敗防止の作用が切れたのか、肉の仮面の一部が音を立てて溶ける。そして肌が剥がれたところから白い女性の肌があらわになった。

やがて彼女は兜、膝当て、籠手を残した状態で、顔を上げる。

 

「いい加減、宝玉を渡してもらう」

 

そう告げ、女は腰に装備している長剣を抜き放った。

次には一気に飛び出し、アイズへと襲いかかる。

 

「っ!」

 

「ああ、やはり強いな」

 

 

ガギィィン!!

衝突する。

レフィーヤ達のもとから疾走し自らも斬りかかるアイズ。《デスペレート》が相手の長剣とぶつかり合い、火花を散らせる。

己の高速度に反応してみせたアイズに女は目を細め、そこから更に連撃を繰り出す。

 

「「・・・・っ!?」」

 

言葉を失うレフィーヤ達を置き去りにし、激しい剣戟が巻き起こる。

振り下ろされる長剣、横に滑るサーベル。剣と剣が打ち鳴らされ、銀の斬撃が宙を何度も行き交う。

狭くない道の中で何度も立ち位置が入替った。

────強い!!

眼前の敵の実力にアイズは瞠目する。

磨き抜いてきた自身の剣技に引けを取らない戦闘技術にアイズは驚愕する。篭手の拳撃が黒い残像を生み、長剣と足刀がアイズの身体を断とうと弧を描く。アイズはサーベルで応戦しつつ、輝く金の長髪がなびいて回避の軌跡を刻んだ。

そんな中、アイズは内心焦る。

 

このままいくと、“負ける”。

 

今の状態でギリギリのラインだが、このままさらに相手がギアを上げてくるとなると厳しくなってくる。

もし負けたら?

三日月に今度は本当に“私はいらない”と言われてしまう?

そんなのは“絶対に嫌だ”。

だから────

 

「ねえ、ちょうだい。“貴方の力”。対価は・・・“私自身で払うから”」

 

アイズは悪魔に自分を対価に力を求めた。

それにキマリスは答える。そして────忌まわしきあの怪物の力もアイズは手にした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「これは・・・私のレギンレイズ!これがあれば私は無敵だ!」

 

そしてどこぞのアホも事を起こそうとしていた。




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