ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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投稿!!

今回はアイズのヴィダール使用話です!!

ちなみに、ちょっと違った形ですのでよろしくです!

マキオンでヘビアやってて思ったこと。極めると、本当に狙われねぇ・・・


第二十話

「な、なに?」

 

レフィーヤは戸惑いの声を上げる。だが、それも無理もない。なぜなら、アイズの身体の周りから黒い靄がアイズを包み込むように現れたからだ。

 

「────っ!」

 

鎧の女はそんなアイズに対して距離を取る。そんな中、レフィーヤはアイズに叫ぶ。

 

「アイズさん!!」

 

だが、レフィーヤの声はアイズに届く事はなかった。

アイズを包み込んだ黒い靄は次第に薄くなっていき、そして────アイズが黒い靄をかき消した。

 

「────っ!」

 

「・・・・え?」

 

女とレフィーヤはお互いに違う反応を見せた。

女の方は警戒と強烈な殺気を。レフィーヤは困惑と驚きを隠せない顔を作る。

そこに現れたアイズは一言で言えば、黒かった。

白と青を基調とした服は黒と紫が混じった青色に染まり、白銀の鎧は光沢のある青に変化していた。

そして何より変化があるのは、左右の腰部に装備された大型のバインダーだった。そこには剣の柄らしきモノが収納されており、恐らく剣帯になっているのだろう。

二人がそんなアイズの変化に戸惑う中、アイズはポツリと呟く。

 

「・・・これが、三日月と一緒の力・・・私の力・・・」

 

形は少し違うが、間違いなくこれは三日月達と同じものだ。

アイズは表情を変える事はなかったが、これで三日月と同じ土俵に立てる事を思うと嬉しかった。

だが────

 

「・・・ん、でもちょっと気持ち悪い」

 

アイズの身体が不調を訴えかけてくる。

つい先程まで、“アイズの頭の中に前の人物の記憶“が流れこんできたからだ。

そして、その中には“三日月に殺された“人の記憶もあった。

その記憶を本当に体験したように見せられたものだから、アイズは吐き気や精神的にもキツイものがあったが、アイズは自身に言い聞かせるように呟く。

 

「・・・でも、私は“貴方達じゃない“」

 

アイズはそう言い切って、腰のバインダーに収納されている〈デスペレート〉ではなく、〈バーストサーベル〉を抜き放った。

その行動に女は身構える。

アイズはゆっくりとした動作でサーベルの切っ先を女に向け、そして────

一瞬で女の懐へ飛び込んだ。

 

「なっ!?」

 

アイズの目にもの止まらぬ速さに女は驚愕する。

一瞬のすきに入り込まれたが、女はアイズの手に持つ〈バーストサーベル〉による突きを捌いていく。

一方アイズは若干内心では不満を漏らしていた。

 

「・・・使いにくい」

 

アイズのメインとした〈デスペレート〉はレイピアだ。突くことや切り払う事をメインにした剣に対して、アイズの手に持つ〈バーストサーベル〉はエストックと呼ばれる刃が無い突く事に特化した剣だ。

刃がない剣で切り払ってもダメージがないのは分かってはいるが、こうも突きだけに特化した武器はどうにもまだ慣れない。

その事がアイズにとってハンデとなっている。ゆえに、攻めようにも攻める事ができないのだ。

劣勢ではないものの、優勢でもない。膠着状態に対し、アイズはレフィーヤ達の為、早期決着に持ち込んだ。

対人戦では三日月以外使ったことのない、己の魔法を。

 

「【目覚めよ】」

 

紡がれた呪文が気流を呼んだ。

アイズの唇が大きな一声を打つと同時【エアリアル】が発動し、剣に、全身に風の力が付与される瞬間────。

 

「────っ」

 

アイズは自身の魔力が、“普段魔法を使っているより”急激に減ったの感じて顔を顰めた。

爆発的に高まった速度とその風の暴風によって、敵を押し返す。

 

「なっ!?」

 

女の左眼が驚愕するように開かれる。

咄嗟に防御するも相手の体は耐えきれず、凄まじい勢いで後方へ飛ばされた。

巻き起こる風の咆哮。斬撃の余波、その風圧によって敵の兜が宙を舞い、肉の仮面が裂けて飛ぶ。

ガガガガガガッ!と石畳を削りながら大きく後退した冒険者の女はやっとのことで停止すると、顔をゆっくりと上げた。

血のように赤い髪。

兜を失い流れ出た鮮やかな細糸の束は、もともと長髪だったのか、雑に切り落とした跡が残っている。

そして、貴石のごとき緑色の瞳。

千切れかかった包帯を残した顔半分、あらわになる女の素顔。白い肌の美貌は、その切れ長な左眼を愕然と見開いていた。

 

「今の風・・・そうか、お前が『アリア』か」

 

その呟かれた名前に────アイズは金の双眸を大きく見張る。

ドクンッ、と胸を揺らす一際高い鼓動の音。声も発せぬ程の衝撃が全身を襲い、何故、という言葉が頭の中を埋め尽くした。

どちらも驚愕を浮かべる中、一瞬、奇妙な沈黙が両者の間に走る。

 

『────ァァァァアアアアアアアアアアッ!!』

 

そこで、突如。

地面に転がっていた宝玉が────雌の胎児が、叫喚を上げる。

 

「!?」

 

背後からの甲高い叫び声にアイズは即座に振り向いた。

同じくその声を聞き、焦燥をあらわにした赤髪の女が、動き出すより早く。

胎児は宝玉の中でもがくように身体を動かし、その極小の手が、異様な眼球の埋まる頭部が、緑色の膜を突き破った。

 

『アァァァァァァァ!!』

 

あたかもアイズの魔法がきっかけだったかのように活動を開始した胎児は、その小さな身体のどこにあるのか、自分の総身の何倍以上もの飛距離を飛礫のように飛んだ。

 

「────っ!!」

 

アイズは自身の顔に迫った不気味な眼球を撃ち落とそうとして、腰部に装備されたハンドガンを取り出そうとするが、使い方が分からず、断念して回避行動に入る。

魔力を大きく消耗し、重くなった身体に鞭を入れながら回避すると、胎児はそのまま宙を飛び、全身から液体を滴らせながら。

水晶の壁に埋まる食人花のモンスターへ、“寄生した”。

 

「なっ────」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?』

 

アイズの赤髪の女の間、瀕死だった筈の食人花が絶叫を上げる。

長躯の一部に張り付いた胎児はあたかも刻印するかのようにモンスターの体皮と同化していき、さらにそこを中心に変化が始まった。

血管が浮き出るかのように赤い脈状の線が長躯を走り抜けていき、それと連動するようにモンスターの叫びが高くなっていく。

道の片隅でレフィーヤは凍りついていた。悶え苦しみながら変化を続けるおぞましいモンスターの姿が彼女の瞳の中に映りこんでいる。

 

『────────ォォォォッ!?』

 

のたうち回るモンスターは未だに変容の途中で前触れもなく襲いかかってきた。

無作為に暴れ狂い攻撃を仕掛けてくるその巨体にアイズは走り抜け、レフィーヤと隣で気絶している少女をを拾い上げる。

そして風で一気に駆け抜けようとした瞬間。

 

「────っ!?ケホッケホッ!?」

 

アイズは突如気分が悪くなり、レフィーヤ達を降ろして“吐いた”。

 

「アイズさん!?大丈夫ですか!?」

 

レフィーヤが心配するように声を掛けてくるが、アイズはそれどころではなかった。

アイズは一度楽になろうとして、呼吸を落ち着けようとする。

 

「はあ、はあ、はあ・・・う・・・」

 

魔法を使おうとした瞬間、まるで“マインドダウンした“ような症状にアイズは足を膝に突く。

 

「アイズさん!!私がアイズさん達を運びますから、手を貸してください!!」

 

「・・・レフィーヤ?」

 

「いいから、はやく!!」

 

レフィーヤの言葉にアイズはレフィーヤに自身の身体を渡す。

そして一緒にこの場より離れていく中、アイズの瞳に写ったのは────羽化を遂げたかのように、モンスターの体皮を被った女体の姿が見えた。

 




さて、今回の話ですがまず、ヴィダールとバルバトスについて。
今回の話でアイズが使うヴィダールはモビルスーツとしての姿ではなく、あくまでも鎧としてヴィダールとして扱わせていただきました。
理由ですが、一応設定としては、三日月達とアイズの認識の違いを表しています。
三日月達はモビルスーツとしての認識をしている為になります。
アイズの場合は鎧としてのヴィダールと認識しているので、今回の作画のようになりました。
ちなみに、最後のアイズがダウンした理由はヴィダールを使っている間は魔力がほぼ無いに等しい状態の為、マインドダウンを起こした原因になってます。
それプラス、設定でナノラミネートアーマーで魔力を弾く事になってしまうので余計に相性が悪くなってます。
また、変形機構も一部オミットされなくなっていますが、その分ステータス上昇効果や敏捷値などが上がっています。


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