深夜十一時。
三日月、昭弘、ハッシュは三人で【ロキ・ファミリア】へ続く道を歩いていた。
「悪いね、昭弘。手伝ってもらって」
「気にするな。それにこっちはベルに良い特訓になったんだ。ハッシュも腕を上げたな」
「は、はい。三日月さんがいない間も、練習やダンジョンに行ってたんで大分やれるようになりました!」
「特訓相手がガレスだっけ?アイツからも聞いたけど中々やるようになったってさ。良かったじゃん」
三日月の言葉にハッシュは「はい!」と頷くと、ハッシュは自身の手に持っている袋を見ながら昭弘に言った。
「それはそうと、昭弘さん。これ本当に貰っていいんすか?結構な量ですけど・・・」
茶色の袋の中に入っているのはじゃが丸くんだ。それもかなりの量である。
ハッシュの問いに昭弘は頷いた。
「ああ。こっちだってお前等から金や魔石を貰って、だいぶ楽になったんだ。だからその礼だ」
「殆ど、あの白いのとハッシュに任せてたけどね。魔石とかも拾ったのものあの小さい女だし」
三日月はそう言うと、昭弘は何とも言えない顔をする。
「まぁ、そうなんだが・・・ベルのヤツも俺がいない間に結構無茶をしてな。今は大丈夫だが、このあとも無茶をしなきゃいいが」
昭弘のその言葉に、三日月は「無理でしょ」と答えながらデーツを口に入れる。
「ああ言う奴は自分から首突っ込むタイプだからアイツ自身が強くならないといつか死ぬよ?」
「・・・分かってる」
三日月の言葉に昭弘はそう返事を返し、街頭の光が灯る道を歩いていく。そんな中、三日月は【ファミリア】の異変に気が付いた。
「ん?」
「どうした?」
「どうかしました?三日月さん?」
足を止めた三日月に昭弘とハッシュは立ち止まり、三日月に問いを投げる。
その二人に対し、三日月は口を開いた。
「・・・明かりがついてない」
「え?・・・あ、本当っすね。いつもなら明かりはまだついてんのに・・・」
ハッシュがそう呟きながら扉を開けると、その光景を見て絶句する。
「どうした?」
昭弘は怪訝そうに顔を覗かせると、目の前の光景を見て言葉を漏らした。
「お、おい。どんな状況だ?こりゃあ・・・」
「・・・?どうしたの?」
三日月はそんな二人の反応に首を傾げながらも、ハッシュ達の間にある隙間から目を覗かせる。
そして目に写る光景を見て、感想を漏らした。
「なにこれ?」
黄昏の館のエントランス、そこには【ロキ・ファミリア】の顔見知った面々が死屍累々のように倒れ伏している。
部屋の彼方此方に穴が空き、ガラス細工は割れ、机はひっくり返り、椅子とおもしき残骸も彼方此方に転がっている。
そして、中央にいるのは顔を真っ赤にしながら船を漕いでいるアイズが一人。
と、三日月は近くで倒れ伏す、フィンの背中を揺らす。
「生きてる?」
三日月から投げられる言葉から数秒した後、フィンはゆっくりと顔を上げた。
「・・・ああ、お帰り三日月・・・」
かなりボロボロになっているフィンに三日月は言った。
「何があったの?」
他の二人が倒れ伏している皆を担いで部屋から移動させている中、三日月はフィンに状況を聞く。
「アイズが・・・お酒を飲んだんだ」
「酒?」
三日月はそう返すと、フィンは頷く。
「ああ、アイズはお酒を飲むと悪酔いするんだ・・・。前に飲んだ時、ロキを半殺しに仕掛けた事があったからアイズには飲まないように言っていたんだけど・・・どうやら勝手に飲んだみたいで・・・止めようとしたけど、【ヴィダール】まで使ってきてこのざまだよ」
「そういうことか」
三日月はフィンから話を聞いて状況を把握する。そんな三日月は立ち上がり、フィンに言った。
「もうすぐ昭弘達が他の皆を部屋から移動させる頃合いだから、フィンも後少し待ってね。俺は、アイズを何とかして見るから」
「・・・ああ、頼んだよ」
三日月の言葉を聞いて、フィンは安心したように倒れ伏した。
ロキ・ファミリア屈指の英雄もこんなザマだ。面倒事上ないだろう。
三日月はそう思いながら、船を漕ぎ続けているアイズのもとへ向かう。
そして、アイズの肩を揺らした。
「アイズ、こんなとこで寝てると風邪ひくよ」
「・・・んぅ・・・」
肩を揺らされたアイズはそう寝言を呟いたまま、目を覚まそうとしない。そんなアイズを三日月は更に揺らす。
「アイズ、寝るなら自分の部屋で寝てよ。ここじゃ邪魔になるから」
「・・・んぅー?」
揺らされるアイズは二回目の三日月の言葉に目を覚ました。
寝ぼけ眼のアイズの瞳が三日月を映す。
そんなアイズに対し、三日月は言った。
「ほら、部屋行くよ」
そう言いながら、三日月はアイズの身体を起こそうとする。
そんな三日月に対し、アイズは────
「・・・みかづきぃ」
両手を三日月の身体に回し、ギューと抱きついた。
「は?」
三日月もこれには困惑する。
アイズはかなりの酒を飲んだのか、ものすごく酒臭かった。だが、そんな三日月に対し、アイズは三日月に言う。
「三日月・・・わたし・・・つよくなった?」
三日月にそう聞いてくるアイズに困惑しながらも、三日月は答えた。
「まぁ、最初にあった時よりは強くなってるよ。後は、アイズがどう思ってるかだけど」
そう答える三日月にアイズは表情を崩し、眠そうな顔をしながらも笑みをつくる。
「そっか・・・わたし・・・もっとつよくなって・・・それで・・・三日月の・・・」
眠気の限界がきたのだろう。
アイズは目を閉じると、三日月を抱きまくらにしながらそのまま寝息を立てて眠ってしまった。
「・・・・ちょっと?」
三日月は言うが、アイズはそれに反応する事なくすぅすぅと眠ってしまっている。
「三日月さん・・・って、何やってんすか?」
「アイズが離してくんないからしばらくこの状態でいいよ。下手に起こすと多分フィン達の二の舞だから」
三日月の言葉にハッシュは「うっす」と頷いてその場を後にする。そしてすぐに昭弘が此方に気付き、三日月に言った。
「三日月、全員部屋に連れて行ったがお前はどうする?」
「ありがとう昭弘。俺は別にこのままでいいよ」
「分かったよ。なら、これは此処に置いとくぜ」
昭弘はそう言って、机の上にじゃが丸くんが入った袋を置くとそのまま、出口へと向かった。
「じゃあな三日月。明日また来いよ」
「うん。またね」
三日月は短く返事を返し、昭弘を送り出す。
「・・・寝るか」
三日月はアイズの抱きまくらになりながらも、三日月は目を閉じて眠った。
◇◇◇◇◇
朝日が登る。
「・・・・頭が痛い」
アイズは頭痛で目が覚める。昨日はお酒を少し飲みすぎた。
昨日の記憶が何もないが、それほどまでに飲んでしまったのだろうか?
アイズは身体を起こそうとした時、目の前に見える黒い髪にアイズは目を開ける。
「三日月?」
アイズは自身の胸の中で眠る三日月にアイズは困惑の声を上げる。
その困惑する声に三日月が目を開いた。
「・・・・・」
三日月とアイズの目が合う。
アイズは三日月の青い瞳を見つめる中、三日月が口を開いた。
「おはよう」
「えっ?・・・お、おはよう」
状況がまだ分かっていない中で、アイズは三日月の挨拶を返す。
「えっと・・・どういう状況?」
「昨日帰ってきた後、酔ったアイズに抱きまくらにされただけだよ」
「・・・・・」
アイズは三日月の言葉に押し黙る。
三日月から聞かされてた昨日の事にアイズは顔を赤くする。
とそこに────
「おはよー、アイズ。昨日アイズが酔った後、大変だった・・・よ?」
ティオナがソファで三日月を抱きまくらにしているアイズを見て、動きを止める。
「おはよう、ティオナ」
三日月だけは普通に挨拶を返すが、ティオナとしてはそれどころではない。
アイズ達の状況を見て、ティオナは言う。
「えーと・・・お楽しみの邪魔だったね。レフィーヤ達には言わないから、楽しんでね?」
そう言って回れ右をするティオナにアイズは身を固める。
そして────
廊下の向こうからロキ達の絶叫が黄昏の館に響いた。
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