ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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どうも皆さんこんにちは。知らない人は始めまして。
皆さん読者様のリクエストに答える為にだんまち、鉄オルのクロスオーバーになります。
だんまちに関しては知識不足の部分がございますが、原作小説を見て知識を増やしていきたいと思います。
キャラに関してもまだ、分かりきってない部分もありますのでご了承ください。
では、どうぞ!



第一章
第一話


強さとはどうやって手に入れる事が出来るのだろうか。

一つが人として強くなること。そしてもう一つが人間をやめること。

ある少年は誰よりも人間らしかった。

悪魔に自分の身体を渡しても、人間をやめる事になったとしても、守りたいものがあった。

彼はもう一人の少年の命令を約束を果たす為に走り続け、そしてその生を終えた。

そしてその生が終わる最後に、彼ら二人は本当の居場所にたどり着いていた事を知った。

 

"此処じゃない何処か。俺達の本当の居場所に"

 

戦場にしか居場所がなかった彼らにとって欲しかったもの。それは……

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「……何処だろ? ここ」

 

三日月は左目しか見えない目で周りを見渡し、周囲を確認する。

薄暗い洞窟のような、迷宮のようなその場所は三日月にとって知らない場所だった。

 

「右足は動く……右腕は無理か。それにバルバトスも何か変な感じになってるし……」

 

この場所にバルバトスは無いのに、阿頼耶識からバルバトスの状態が分かるようになっていた。

 

「俺、死んだんだけどな……」

 

三日月はそう呟いて再び周りを見る。

 

「……俺が此処にいるって事はオルガや皆も此処にいるのかな?」

 

前に昭弘が言ってた生まれ変わりと言うやつなのだろうか?だったらオルガや皆も此方にいるはずだ。

 

「……探すか」

 

三日月はそう言って薄暗い迷宮の中を歩いていった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「なんかさぁ、今日はあんまりモンスターと出くわさないよね」

 

「避けられるに越したことはないでしょう。戦わなくて済むなら、願ったりだわ」

 

「そういうんじゃなくてさ……うーん」

 

アイズ達はモンスターと遭遇し戦闘を消化していた。

現在は順調と言えるペースで51階層を進んでいる。

ティオナを先頭に、アイズ、レフィーヤ、そして後方を警戒し殿を控えるティオネ。四人一列の隊列を組ながら、彼女達はダンジョン特有の緊張感に晒されていた。

モンスターが姿を見せないダンジョンは無音をはらみ、同時にその静けさが不気味でもある。

いつ何が起きるかわからない迷宮は剣呑な気配をあちこちにひそませていた。

不揃いかつ巨大な段差、T字路に、三つも四つも枝分かれする道、錯綜する迷路。

不審な前兆を見落とさぬよう全方向に意識の網を張り巡らしつつ、地図を頼りに目的地までの順路を選ぶ。次層───52階層に繋がる階段への正規ルートを外れ、階層の奥へ向かっていく。

 

「そろそろね……泉に着く前に、注意事項を確認しとくわよ」

 

幅のあった通路が間隔を狭め出し、ティオネがそう切り出した。

歩みは止めずにアイズ達は冒険者依頼の要点を確かめ合う。

 

「あくまでやることは泉水を確保すること……でも恐らく、カドモスとの戦闘は避けられないわ」

 

「あの、カドモス、というのは、その……」

 

「うん、すごく、強いよ……」

 

「力だけなら、階層主より上かなー」

 

特定の階層にのみ、更に必ず一体しか現れない巨大モンスターを、冒険者達は畏怖を込めて階層主と呼んでいる。

ギルドからの正式名称は、『迷宮の孤王』。

モンスターの親玉とも言える階層主はその層域では群を抜いた強さを誇る。

迷宮を攻略する上での最難関であり、多くの冒険者が力を結集させて討伐する存在だ。

Lv,6相当の階層主を引き合いに出され、ごくりとレフィーヤは喉を転がす。

 

「や、やり過ごすことは、できないんですか?」

 

「無理ね。あの竜が泉を番人みたく守ってる間は。泉水だけ回収して逃げ出そうなんて考えていると、死ぬわ」

 

「あたし吹き飛ばされちゃって、身体中がぐちゃぐちゃになったことあるしねー」

 

けらけら笑って語るティオナに、レフィーヤは追い打ちとばかりに血の気を奪われた。

 

「カドモスを仕留めて安全を確保、泉水の採取はそれからよ」

 

「わ、わかりました……」

 

「ティオネ・・・作戦は?」

 

「定石通りいくわ。アイズとティオナ、私の総がかりでカドモスを抑え込む。レフィーヤはでかい魔法を撃ち込んでちょうだい。怯んだところを、後は私達で一気に畳かける」

 

「レフィーヤ、今度はばっちりお願いねー!」

 

「は、はいっ」

 

やがてアイズ達は足を止めた。先程から一本道だった通路はもう一寸先ほどで終わりを迎え、開けた空間へと繋がっている。『ルーム』と呼ばれる広間だ。

このルームに『カドモスの泉』が存在する。

 

「……」

 

ティオネが無言でアイズ達へ視線を配る。頷き合った彼女達は、ティオネを先頭にして隊列を組み直す。

足音をひそませ、残り僅かもない距離を進んだ。待て、とティオネが手の平をアイズ達に向けながら、ゆっくりと通路の先を窺おうとする。

彼女が合図を出せばそこで一斉に突入だ。誰もが息を凝らしパーティ全体にぴりぴりとした緊張感が生まれる。

唇を引き結ぶレフィーヤは杖を強く握りしめ、ティオナも普段のおちゃらけた態度を消す。

アイズは前方だけを強く見据えていた。

身を低くして、彼女達はティオネの合図を待つ。

 

「……?」

 

異変、いや違和感に最初に気付いたのは、アイズだった。

眉を怪訝そうに曲げて、無遠慮な動きでその場から立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっと、アイズっ」

 

「……おかしい」

 

「え?」

 

「静かすぎる」

 

レフィーヤの呟きに反射的に答えながら、アイズは身を進める。

ルームを覗き込もうとしていたティオネも追い越し、その先へと足を踏み入れる。

途端、彼女は目を見開いた。

 

「なに、これ……」

 

「荒らされてる……?」

慌ててアイズの後に続いたティオナ達も、呆然と動きを止めた。

ルームには、林に届かない密度で疎らに木々が生え渡っていたが、そのどれもが無残にへし折られ、あるいは押し潰されている。周囲の地面や壁も何かが暴れ回ったかのように罅割れて粉々になっており、多くの破片が散乱していた。

何よりそれらの光景の随所には、溶かされたような跡や"魔法か何かによって焦げたような跡"がある。

一部分を濃い紫に変色させている木々からは、今も上がる黒煙と一緒にえも言われぬ異臭が漂っていた。

 

「くっさ……」

 

ティオナが顔をしかめながら鼻もとを腕で覆う。

困惑の表情を浮かべながらアイズ達はルームの奥に進んだ。これまで以上に神経を尖らせ警戒しながらも、倒された木々の間を抜ける。

至る場所が破壊しつくされた光景の中、そこだけは、聖域のように守られていた。

美しい青色の水面を揺らす清冽な泉。

ルームの最奥に位置し、壁にできた割れ目───小さな岩窟から、僅かな量の水が不定期に湧き出ている。

青いきらめきを宿す神秘的な泉水は、草花が広がる窪みに徐々に溜まっているところだった。

そして、そんな美しい泉の前でうずたかく積もる、大量の灰。

 

「これって……」

 

「……カドモスの、"死骸"?」

 

ティオネのこぼした呟きが、やけに大きく響き渡った。

その莫大な量の灰は記憶にある竜の巨体の規模とほぼ等しい。間の主を失って静まり返る周囲の状況と照らし合わせてみても、まず間違いなく、これがカドモスで"あったもの"だ。

魔石を失ったモンスターの末路を見下ろしながら、アイズ達は立ち尽くす。

 

「……私達以外の【ファミリア】が、カドモスを倒したんじゃあ……?」

 

おずおずと、レフィーヤが口を開く。

真っ先に考えられる意見に、ティオネは緩慢な動作で頭を振った。

 

「こんな深い階層に来られるパーティは限られている。特定の【ファミリア】が私達と遠征期間を被らせているなんて、聞いていないわ」

 

「……それに」

アイズが呟き、小さな砂漠と化している足元の灰へ膝を折る。

伸ばされた手が灰を払いのけ、埋もれていたあるものを持ち上げる。

 

「ドロップアイテムが、回収されていない……」

 

彼女が拾い上げたのは、金色に輝く翼の皮膜、その一部分だった。

 

『カドモスの皮膜』

 

彼の竜を撃破しても滅多に発生することのない、希少なドロップアイテムだ。これを換金するだけでも大規模パーティの装備を全てまかなえるほどの、莫大な資金が手にはいる。

一度の迷宮探索で少なくない金を飛ばす冒険者が、この飛びきりの戦利品を回収せずに放置するとは考えにくい。

 

「えっと、つまり、どういうこと?」

 

「"何か"がいたのよ、ここに。カドモスを殺してのける、冒険者じゃない"何か"が」

 

沈黙が落ちる。

問いを発したティオナも応答したティオネも口を閉ざし、アイズは金色の皮膜にうっすらと反射する自分の顔を見つめる。

レフィーヤがみなの心の内を代弁するように、その細い二の腕をさすった。

 

「……嫌な予感がする。早く戻りましょう」

 

とティオネが言った瞬間──アイズの持つ『カドモス皮膜』に映った自分の顔の後ろから光が走った。

 

「…………ッ!」

 

アイズはすぐに〈デスペレート〉を引きぬきながら振り返る。そして─────

 

ガギィィィィィィン!!!

 

金属同士がぶつかる音と同時に、アイズの腕に凄まじい衝撃が走った。

「……ッゥ!」

 

その凄まじい衝撃にアイズは顔を歪める。

 

「アイズ!!」

 

「アイズ!?」

 

「アイズさん!?」

 

三人がそう叫ぶが、答える事は出来ない。

気を抜けば確実にやられる。

そういう感じが、この相手からひしひしと伝わってくる。

目の前でつばぜり合いをしているその相手は一言で言えば異質だった。

大きさは自分より少し大きいか、同じくらいの人型。

悪魔を思わせるフルフェイスのヘルム目の部分はモスグリーンのガラス質の目が光っている。

全身金属で出来た鎧の後ろや腰回りには穴のようなものが空いている。

そして爪のように鋭い両手に握られているのは小型の二振りのメイス、両腕には穴が空いた突起が出ていた。

 

「っっ!!」

 

ギリギリと競り合いを続けるなか、ティオナがその二人の間に目掛けて大双刃を振りかぶる。

白い悪魔はティオナの動きに気付いたのか、アイズを足で蹴飛ばすと、その勢いを利用して距離を取る。

距離を取った悪魔はとてつもないスピードで、"上空を飛びながら"両腕に装着されていた突起状のモノの先端を此方に向けて"魔法の弾丸のようなモノ"を発射してきた。

殆ど目に見えないスピードで発射される弾丸は正確に私達を捉えてくる。

 

「ちょっと!! どうすんのこれ!? メチャクチャヤバい奴じゃない!?」

 

「それくらい見れば分かります!!」

 

「もしかして、カドモスを倒したのはコイツなのかしらね!!」

 

三人はそう言って攻撃を防いでいるが、それもいつ突破されるかわからない。

おそらくこの人がカドモスを倒したのだろう。

Lvも自分と同じかそれよりも上。

もしファミリアに所属している人なら確実に有名になっているであろう。

そもそも、この51階層を一人で来ている事自体が異常なのだ。

ティオネ達の会話を聞いていると、その悪魔は凄まじいスピードで私の後ろを取り、両手のメイスで攻撃を仕掛けてきた。

 

ガゴォォォン!!

 

再び〈デスペレート〉とメイスがぶつかり合う音が耳に入り、それに遅れてビリビリとした痺れが腕に響く。

すると、その悪魔から声が聞こえてきた。

 

「さすがにあのトカゲと違って結構やるな。アンタ」

 

聞こえてきたのは、子供の声だった。

 

「……え?」

 

「じゃあ、そろそろ終わらせようか」

 

悪魔がそう言ってもう片方のメイスを振り上げた瞬間────

 

『───あああああああああああああああ!?』

 

「……なんだ?」

 

いきなりだった。

臓腑の底から引きずりだされたような絶叫が、アイズ達のもとに届く。

ことの重大さを直感させる凄惨な人の悲鳴。入り乱れた迷路に次々と反響し、鼓膜をあらゆる角度から何度も打ちすえる。聞き覚えのあるその声音に、弾かれたように顔を上げるアイズ達は叫ぶ。

 

「今の声っ!」

 

「ラウル……!」

 

悲鳴の方角へと向かいたい所だが、この悪魔を相手に向かうことは出来ない。

アイズは、ティオネ達を先に行かせようとした瞬間。

 

「さっきのアンタらの仲間のやつ?」

 

アイズの前からそう言った言葉が飛んでくる。

 

「……うん。だから、貴方に構っている暇はない」

 

アイズがそう言うと、悪魔は急に距離を取って言った。

 

「……んじゃ、行けば?」

 

「……え?」

急な彼の発言にアイズは戸惑いを隠せなかった。

そして彼は言う。

 

「アンタは仲間を助けたいんだろ。だったらそっちに行けば? 俺はどうやって外に出れるか探すだけだから」

 

「……なら、何で私達を狙ったの?」

 

なら始めから攻撃をする事なく声を掛ければ良かったと思うアイズに悪魔は答える。

 

「……アンタ達があんな殺気ばら蒔いてたら敵かと思っただけ。でも、違うみたいだから謝るよ。ごめん」

 

「謝ってゆるされると思ってるんですか!! アナタ!」

 

レフィーヤがそう言って悪魔に詰め寄るが、その悪魔はそんなレフィーヤに言う。

 

「じゃあ、アンタ達の仲間を助けたら許してくれる?」

 

「……え?」

 

「俺だってオルガや仲間を探したいだけだから外に出る出口を探してるんだ。ならアンタ達の仲間を助けて外に案内して貰えばいいかなって思っただけ」

 

彼の提案にティオネは言う。

 

「……信じていいのね?」

 

「別に信じるかはアンタらの決める事だよ。筋は通さなきゃいけないってオルガは言うだろうし」

 

「……分かったわ。貴方の提案を飲むわ」

 

「ティオネさん!?」

 

レフィーヤは目を見開いてティオネを見るが、ティオネは苦虫を噛み潰したかのような顔をして言う。

 

「ここは、提案をのんで団長達を助けに行くべきよ」

 

「……でもっ!」

 

レフィーヤはそれでも食い下がるが、その間にティオナが割って入る。

 

「はいはい! 今はこんなとこで喧嘩してる場合じゃないよー! 急ぐよ!」

 

そう言ってティオナは走り出す。

 

「分かってる!」

 

「ちょっ、待ってください!?」

 

二人もそれに続いて走りだし、私と彼だけがその場に残る。

 

「……んじゃあ、案内してくれる? アンタ」

 

「……うん、分かった。それと私はアイズって名前がある。貴方は……?」

 

私は彼に名前を聞くと、彼は簡潔に答えた。

 

「三日月・オーガス」

 

「……三日月・オーガス……」

 

アイズは彼の名前を口にする。

彼の後ろについて行けば、今よりも強くなれるかも知れない。

 

「んじゃ、頼んだよ」

「……うん」

 

私はもっと強くなりたい。それだけを目指して。

 

 

 




感想、誤字報告よろしくです。
あと、活動報告の方でキャラや原作についての情報収集など行っておりますのでよろしくお願いします。

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