ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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ゼハァァトォォォォ!!

友人に後ろからそう叫んだら、その友人にお前の裏声は鳥○さんに似すぎだから止めろと言われました。


第十話

「フェルズ」

 

祭壇に重々しい声が響いた。

古代神殿の最奥部を思わせる石造りの広間。辺りに満ちている深い闇を、四炬の赤い松明が切り裂いている。

ギルド本文なし地下に設けられた、主神の祈禱の間である。

ローブとフードを被った巨身の神は祭壇中央の神座に腰掛けていた。火の粉が舞う松明の炎に囲まれるウラノスは、黒衣の人物、フェルズにその蒼色の瞳を向ける。

 

「何故【剣姫】に依頼を出した」

 

アイズ達が24階層調査の冒険者依頼を受託し既に数時間。やるべきことを終えこの祭壇に戻ってきたフェルズに、身じろぎ一つせず構える老神は問いかけた。

不動と厳粛の姿勢を崩さない彼の声音は、詰問のそれではなく確認に近い。以前、剣姫の主神であるロキに無用な疑いをかけられるのは望むところではない、と発言したのはフェルズ本人である。ウラノスはリスクを取ってまでアイズに接触したその真意を尋ねていた。

神座の正面に立つ黒衣の人物は答える。

 

「例の『宝玉』に対して、【剣姫】は過剰な反応を示したらしい」

 

冒険者依頼を授ける際、ルルネから聞き出した情報をフェルズは語った。胎児の宝玉を受け取った際に卒倒したほどの、アイズの反応をだ。

それを聞いたウラノスは、ぴくり、と眉を微動させる。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインと宝玉には何か因縁があるのは、と判断してのことだ。宝玉の正体を解明する糸口になるやもしれない」

 

フェルズの考えを聞くウラノスは押し黙っていた。まるで自らも思考を働かせているように無言の時が続く。

やがて彼を見つめていたフェルズは「それに」と言葉を繋ぐ。

 

「30階層での食料庫の一件はこちらだけで何とかなったが、同志達にも大きな被害が出た。彼等にこれ以上負担をかけさせるわけにはいかない」

 

30階層────ハシャーナが宝玉を収拾できた経緯に触れるフェルズ。

闇に塞がれたフードの奥からなおも声が続られる。

 

「前回は“番人”はいなかったが、30階層の件で相手も神経質になっているに違いない。あらゆる事態に備え、【剣姫】を含めた十分な戦力を揃えた」

 

「番人・・・例の調教師が出てくるか」

 

恐らくは、と答えるフェルズに、ウラノスは両ノ目を瞑る。

 

「ヘルメスの方は私から言い含めておこう」

 

「すまない、ウラノス」

 

アイズと同様、冒険者依頼に遣わされている【ヘルメス・ファミリア】の処置を受け持つと告げるウラノス。多くの冒険者を危険な案件に巻き込んだことに罪悪感を抱きつつ、フェルズは顔を上げた。

 

「そう言えば・・・“彼”はどうします?」

 

「あの“悪魔“か。“放っておけ“」

 

ウラノスの言葉にフェルズは首を傾げる。

 

「よろしいのですか?」

 

「構わん」

 

ウラノスはそう言ってフェルズを下がらせた。

そして────────

 

「そうか──あの“悪魔“が“貴様の家族“か」

 

ウラノスはこの場にいない人を思い出してそう呟いた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

広い大空洞だった。

地上から遠のいたダンジョンの奥深く。中層域に位置する階層の最奥。

湿った空気と、異臭が漂っていた。

モンスター達の体臭でもなければ、血の香りでもない。怪物の腹の中に放り込まれたとしてもきっと嗅ぐことはかなわないだろう、肉の腐ったような────昆虫を引き寄せるような腐臭。

死臭にも似た臭いが充満する一帯は、ダンジョンの一角でありながら、冒険者はおろか凶暴なモンスターの雄叫びも届いてこない。

まるでダンジョンそのものから切り離されたように、迷宮の騒がしさとは無縁だった。

不気味な静寂の中では、人が動き回る複数の足音と、何かが蠢く音、そして低い破鐘の鳴き声が断続的に響いている。

薄暗い空間は、血の色にも似た赤光によって照らし出されていた。

 

「・・・・・」

 

赤光に焼かれる横顔が、シャリ、と奇怪な色の果実をかじる。

地面に伸びる影は、美しい肢体と豊満な双丘を持つ女性の体のものだ。

鋭い眼差しを浮かべる瞳は緑色。額にかかる前髪────光の色と同じ赤い髪が、揺れ動く。

アイズ達が調教師の女と呼ぶ、赤髪の女に違いなかった。

 

「────おいっ、モンスターがダンジョンに溢れて冒険者の間で騒ぎになっている、大丈夫なのか!?」

 

そんな女のもとに、駆け寄ってくる者がいた。

大型のローブで上半身を隠した男だった。口もとまで覆う頭巾の上に額当てを装備し、顔を隠している。

声を荒げる相手に対し、女は冷ややかな反応を返した。

 

「うるさい。騒ぐな」

 

「食人花を貸してやる。有象無象どもはお前達で何とかしろ」

 

視線も合わせず、突き放すように告げる女の言葉に、相手は舌打ちとともに踵を返す。

薄闇の奥へ頭巾の男が消えると、入れ替わるように、今度は別の人影が現れる。

赤い光に照らされるのは、全身を白ずくめ衣装で包んだ男性だった。

 

「冒険者達に感づかれるとは、運がないな」

 

頭部にモンスターの白骨を利用して作られた鎧兜。相貌をはっきり見せない出で立ちはいっそ薄気味悪かった。

 

「放っておいていいのか、レヴィス?」

 

赤髪の女────レヴィスと呼ばれた彼女は、すぐに視線を前に戻す。

 

「冒険者にいくら感づかれようが知ったことではない」

 

「闇派閥の連中に押し付ける気か?」

 

「ああ。私はここを動かん」

 

レヴィスは薄闇の奥で動きを見せる無数の人影を関心なさそうに眺める。

彼女のことを側で見下ろす男は、そこで語気を強めた。

 

「30階層のように、『彼女』を狙う連中が来たらどうする?」

 

ドクンッ、と音を立て赤い光の源が揺れ動いた。

 

「恐らく、地上では一部の者が我々の動きを察知しているぞ?」

 

精鋭がこの場所を襲撃してくるやもしれない、という男の懸念に対し。

レヴィスは端的に告げた。

 

「潰すだけだ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

「財布・・・すっからかんだな」

 

「計画性なさすぎなんですよ」

 

焚き火を二人で囲みながらシノとヨナは野宿をしていた。

焚き火の炎が二人の顔を照らす。

 

「ノルバさん・・・私達、狩りや採取をしないとしばらくご飯抜きの可能性が・・・」

 

「・・・マジかよ」

 

ヨナの言葉にシノは短く答えるのであった。




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