ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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第十三話

「【剣姫】。貴方の立直な意見が聞きたいのですが、この依頼についてどう思いますか?」

 

「・・・どういう、意味ですか?」

 

歩いている最中、唐突にアイズはアスフィにそう言葉を投げられ、疑問を持ちながらも聞き返す。

そんなアイズにアスフィはさらに言葉を続けた。

 

「リヴィラ襲撃の件に関してルルネから大まかな経緯は聞いています。謎の宝玉に執着する、黒ローブなる人物の依頼・・・今回の騒動も危険なものだと思いますか?」

 

モンスターの大量発生は、『宝玉』にまつわる何らかの前触れであると、黒衣の人物からはそのように示唆されている。

あわや街を壊滅手前まで追い込んだ先日の事件に匹敵するほど、今回のクエストは危険性を孕んでいるか意見を求めてくるアスフィに対し、アイズはどう答えようかと考えていると、ふと三日月が見張りをしているのが見えて、アイズは三日月に声をかける。

 

「・・・三日月」

 

「・・・・なに?」

 

「三日月はこの依頼をどう思ってる?」

 

振り返る三日月に対し、アイズは先ほどアスフィに聞いた内容を説明すると、短く答える。

 

「別に、アイズが思ったことでいいんじゃない?俺がその事にどうこう言う事じゃないし、言った所で大して変わんないでしょ」

 

「・・・・そっか」

 

三日月ならどんな意見が出てくるのか少しだけ期待していたアイズだったが、そこまで甘くはないらしい。

少しは自分で考えろと言う事なのだろうか?

アイズは少しだけ考えながらも冒険者としての考えを口にした。

 

「危険・・・だと思います」

 

その答えを聞いたアスフィは、溜息を堪えるような表情を浮かべた。

 

「本当に、厄介なことに巻き込まれてしまいましたね・・・」

 

話を横から聞いているルルネが肩身を狭そうにするが、アスフィはもう彼女を責めようとはしなかった。ただ、パーティのリーダーとして一層気を引き締めたようだ。

散発的に襲いかかってくるモンスター達を連携して相手取りながら、アイズ達は24階層の正規ルートを進んでいく。

安全階層18階層の中央樹を通じて進出する19階層から24階層の層域は、『大樹の迷宮』だ。

木肌でできた壁や天井、床は巨大な樹の内部を彷彿させる。燐光の代わりに発行する苔は無秩序に迷宮中で繁殖し、青い光を放っていた。

一方で出現するモンスターは既階層以上に一癖も二癖もあり、24階層となればLv.2最上位の能力、そして何よりパーティの密度が求められるようになる。一部の例外を除くが。

 

「・・・・・!」

 

「全員、止まってください」

 

前方の通路にひそむ気配に、アイズを始めとするした冒険者達は反応した。ただちにアスフィが片手を上げて、パーティの進行をとどめる。

進路の先は巨大な十字路だった。発光する苔の密度が僅かに落ちている中、薄闇の中を無数の影が蠢いている。

目も当てられないほど、広い通路内を埋めつくしているモンスターの大群だ。

 

「うげぇ・・・」

 

アイズの隣でルルネが呻いた。

うじゃうじゃといる数え切れない醜悪な怪物が、巣穴のごとく溢れ返るその様は背筋を寒くさせるのには十分だった。

本当に不自然な集まり方をしていると、アイズは観察しながら思う。

これだけ特定のエリアに集まり、行列を成している光景には出会った事がない。

 

「アスフィ、どうする?」

 

「どうせ駆除しなければいけません。ここで始末します」

 

近づいてくる多数のモンスターを前に、ルルネが問いかけると、アスフィは「戦闘準備」と団員に呼びかけた。

パーティの者達は各々の得物を構え、前衛壁役の者が盾とともに前へ出る。

 

「後衛は詠唱を開始。接敵する前に数を───」

 

「待って」

 

そこで、アイズの声がアスフィの砲撃指示を止めた。

怪訝そうな顔で振り返る彼女に歩み寄り、端的に告げる。

 

「私に行かせて」

 

「は?」

 

装備する《デスペレート》を振り鳴らしたアイズは、一気に駆け出した。

 

「お、おいっ!?」

 

「ほっといたら?別にいつものことだし」

 

アスフィ達が呼び止めようと声を出す中、三日月は一人、アイズに好きにやらせればと言う。

泡を食ったルルネの叫びが背を叩いたのとほぼ同時、モンスターの大群とアイズの戦端は開かれた。

開戦一番、大薙された銀のサーベルに沿って、複数の断末魔が弾け飛ぶ。

 

『オオオオォ────────────ッッ!?』

 

掃討が始まった。

凄まじい斬撃の渦が殺到するモンスターを切り刻み、絶命へと至らせる。三体の敵を巻き込む一度の斬撃、回避行動の中に織り交ぜられる回転斬り、空中へ身を躍らせた美しい金の髪をモンスターが扇げば顔面を一閃された。

おしよせる群れに対し、アイズは真っ向勝負、正面からぶつかり合う。

少女が前進する度に周囲からモンスターの姿はかき消え、埋め尽くされていた通路にはぽっかりと空間ができあがった。代わりに大量の屍と灰が地面に残る。

まるで剣の結界だ。近付く怪物は問答無用で八つ裂きにされ、首が、胸部が、胴体が切断される。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・もう全部彼女一人でいいんじゃないですかね」

 

「・・・帰っちゃう?」

 

「そういうわけにもいかないでしょう・・・」

 

団員達と一緒に固まる中、アスフィがポツリと呟き、ルルネが尋ねる。アスフィは頷き返すのをなんとか堪えて返答した。

視界の中で一方的な殲滅戦を繰り広げるアイズの姿に、【ヘルメス・ファミリア】は『自分達は必要ないのではないか・・・』と心の声を一つにしてしまう。

 

「っ!」

 

遥か後方で呆然とするアスフィ達の視線を浴びながら、アイズは剣撃の手を緩めない。

モンスターの攻撃を一度も直撃させず、しかし時にはわざと防御を重ね、徐々に体の動きを加速させていく。

 

「!」

 

『ギッッ──────!?』

 

疾駆とともにモンスターを葬り、通路の端に辿り着いた途端、壁を蹴りつけ宙へ。

空中を舞っていた飛行モンスター『デッドリー・ホーネット』を両断する。

素早い敏捷性を誇る巨大蜂の体躯が二つに分かれ地面に墜落するのと同時、アイズは落下中に二頭の剣鹿を仕留めた。

寄って集ることもできないモンスター達に、自ら走り寄って斬り払う。

 

単身ならば第二級冒険者でさえいのちを一つ二つ落としてもおかしくない過酷な戦場でなお、アイズは無傷で在り続け、モンスターを圧倒し続ける。

そして、ゴブリンの上位種である『ホブゴブリン』の断末魔を最後に、戦闘は終了した。

大型級の巨躯が地響きとともに地面に倒れた後、アイズは愛剣を鞘へと収める。

 

「・・・終わったよ」

 

アイズはそう言ってアスフィ達へ振り返ると、“戦闘態勢に入っている三日月“を見て、アイズはピタッと足を止めた。

バルバトスの手に持つレールガンの銃口がアイズへと向けられていたのだ。

そして──────

放たれる砲弾と共に、轟音がダンジョンの中を駆け巡る。

レールガンの砲弾はアイズの顔の隣を通り過ぎ、いつの間にか後ろにいた『ボブ・ゴブリン』の上半身を粉砕した。

 

「──────」

 

飛び散った大量の血が目の前にいたアイズに雨のように降り注ぐ。

アイズはかつてベルの時と同じように全身を真っ赤にして滴らせながらその場で立ち尽くす。

アスフィ達が呆然とその光景を見つめる中、三日月がアイズに申し訳無さそうに言った。

 

「ごめん」

 

「・・・・・うん」

 

返り血で真っ赤になったアイズはそう頷くしか他に無かった。




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