「で、モンスターは片付けてもらったけど・・・アスフィ、これからどうする?」
死屍累々たる周囲─────モンスターの死体の山を流石に放ってはおけず、サポーター他が手分けして『魔石』の摘出作業に取りかかる中、ルルネがアスフィに意見を求めた。
全身に返り血を浴びたアイズも顔を上げ、今後の動向に耳を傾ける。
「あの黒ローブのやつの話を信じるなら、食料庫に何かあるんだろう?24階層にある食料庫は三つ・・・南西に南東、後は北だ。どこのエリアから回る?」
ごそごそ、とポーチをあさってルルネは一枚の羊皮紙を取り出した。
入り組んだ広大な迷宮が描かれた24階層の地図だ。
こうしてあらためて見ると、やはり広い。
下部の層域に下りれば下りるほど広大になるダンジョンにおいて、この24階層は既に都市の総面積の半分には届いているだろうか。階層最奥に存在する食料庫をもし三つ回る羽目になれば、モンスターとの遭遇も踏まえると、とても骨が折れる作業になるだろう。
リーダーの判断をパーティが待つ中、アスフィは口を開いた。
「モンスターがいるところを進みます」
「?」
「モンスターが押し寄せてくる方向へ向かえば、その近辺に恐らく原因がある筈です。食料庫が大量発生の端を発しているというのなら、我々はモンスターが教えてくれる方角に進むだけでいい」
おお、とアイズと三日月はアスフィの説明に納得をした。
モンスターの大量発生の源は食料庫にあるとアイズ達は既に当たりを付けている。なら、怪しい一帯をくまなく調査する必要はなく、方角さえ割り出せれば候補が絞れるのだ。
行列となってモンスターが押し寄せてきたのは、十字路のとある方角の先・・・・・。
「・・・北か」
三日月の呟きに、全ての者は苔の光がうっすら続く北側通路の先を見据える。
「それにしても食料庫か・・・あそこからモンスターが沢山産まれてるってオチかな。どう思う、【剣姫】?」
「わからない・・・けど」
「けど?」
「多分・・・そんな単純なものじゃないと思う」
アイズはルルネにそう言って地図を見る。
そんなアイズにルルネは少し気まずい顔で言う。
「あのさ、少し気になってる事があるんだけど・・・」
「・・・?」
アイズの視線がルルネに向けられる。
「その・・・さ、【剣姫】。何時までその状態でいるの?」
「・・・え?」
ルルネの言葉にアイズは目をキョトンとする。
そして、視線を自身の返り血だらけの身体に向ける。
「流石に言うのもあれだけど、今の【剣姫】かなり血生臭いよ。早いとこ何かで拭いたら?出発する前に」
「・・・うん」
ルルネの言葉にアイズは頷いてルルネから布の切れ端を貰い、一旦近くの泉へと向かった。
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