ソード・オラトリア・オルフェンズ   作:鉄血

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結構ギリギリで投稿です。
だんまちは結構難しいですね。ガンダムとクロスオーバーさせるの。
三日月っぽくなかったらごめんなさい。
では、どうぞ。



第三話

三日月は後ろから迫ってくるもう何度目かわからない芋虫型のモンスターの攻撃を回避し、そのモンスターの頭に砲撃を撃ち込む。

汚い花火のように黒と紫の混ざったような液が周りを巻き込みながら"ジュウ"という音を立てて溶かされていった。

一匹、一匹プチプチと確実に潰していくが、その数は減る所か増える一方だった。

 

「一体何時まで続くんだ? これ」

 

三日月はそう呟き、もう一匹の頭を吹き飛ばす。

今回は彼らに攻撃が行かないように行動してはいるが、それもいずれはボロが出るだろう。

後ろがゴチャゴチャうるさいが、それは構わない。

問題は……。

 

「はやくしてくれないかな。流石に俺でもカバーしきれないけど……」

 

三日月はそう言って残弾を確認する。

また、いずれはすぐに補充出来るようになっているとはいえ、もうそろそろ尽きる頃合いだ。

その時は、メイスで殴りにいかないといけないだろう。

だが、コイツ相手に殴りにいくのはあまりよくないと先の戦闘で経験している。

だったらなるべく長く時間稼ぎをするだけだ。

すると、後ろから声をかけられた。

 

「ミカヅキ」

 

「ん?」

 

三日月は後ろを振り返ると、そこにはアイズがいた。

 

「なに?」

 

三日月はアイズにそう言うと、アイズは三日月に平行するように走りながら言った。

 

「この先の広場で迎え撃つ事になった……」

 

「……分かった。で、そこでどうするの?アンタ達の武器じゃすぐに無くなるんだろ?」

 

「……魔法で殲滅する事になってるから、出来るまでの時間稼ぎをする」

 

「魔法? よく分かんないけど、それでまとめてコイツらをやる感じ?」

 

「うん」

 

アイズがそう言ったその後──────

 

自分達の前から叫び声が上がる。

 

「ベート、ガレス、ティオナ! ラウル達を守りつつ敵を駆逐しろ! あの新種は僕とアイズと彼でやる───かかれ!」

 

どうやら前でもなにやら非常事態があったらしい。

そして、この事態を見越していたかのようにフィンが命令を出していた。

指針を得て混乱を免れたベート達は、迎撃せんと壁に向かって走り出した。

それに連動するかのように。

凶悪な産声を響かせながら、三十以上のブラックライノスが壁面を破って現れる。

 

「レフィーヤ、後退して詠唱を始めろ。この戦闘は君にかかっている。これ以上犠牲も、彼にも負担をかけさせられない。急ぐんだ」

 

「……! わかりました!」

 

レフィーヤもまた、与えられた役目に大きく頷いた。

その紺碧の瞳から気負いの影も、迷いも振り払い、後方へと下がる。

その後ろ姿は見届けず、フィンは最後に、金髪の少女と白い悪魔のような鎧を纏った彼の隣へと並び立った。

 

「アイズ」

 

「わかってる」

 

目配せしてくるフィンに、アイズは頷く。

 

「それと、君」

 

「……なに?」

 

「巻き込んで悪いね。本当だったら僕達でやらないといけないことなのに」

 

「……別に気にしてないよ。それに提案したのは俺の方だし、最後まで付き合うよ」

 

三日月は自分よりも小さい青年にそう言って、前を見る。

 

「すまない、感謝するよ。それと……君の名前を教えてくれないかい? 戦闘中に君呼ばわりだと分かりずらいだろう?」

 

フィンの提案に、三日月は少し考えるような身振りをした後に言った。

 

「三日月・オーガス」

 

「三日月・オーガスか。僕はフィン。フィン・ディムナだよ」

 

フィンは三日月にそう答えると、三日月は返答を返してきた。

 

「んじゃ、足引っ張んないでね。小さい人」

 

三日月の言葉を隠さない返答に、フィンは苦笑して言う。

 

「努力はするよ」

 

フィンがそう言って、芋虫型のモンスターを観察するように見る。

と、横からアイズは呟くように詠唱をする。

 

「【目覚めよ】」

 

長短文詠唱を引き金に、『魔法』を発動させる。

 

「【エアリアル】」

 

風が生まれた。

形として視認できるほどの大気の流れが、踊るようにアイズの体を包み込む。

砂金のごとき輝きを放つその金の髪が風を纏い、波打った。

 

【エアリアル】

 

それはアイズが使用できる唯一の魔法。

体や武器に風の力を纏わせることで対象を守り、攻撃を補助し、速度を上げる、『風』の付与魔法。

迷宮の淀んだ空気を押しのける清涼な風の加護を宿しながら、アイズは腰に納めていた剣を引き抜く。

しかしそれを装備はせず、「フィン」と呼びかけ隣の少年に預けた。

 

「『不壊属性』か……疑うわけじゃないけど、通用すると思うかい?」

 

「多分……」

 

「頼りないね」

 

苦笑を浮かべながらフィンは自身の背の丈ほどある〈デスペレート〉を持ち、代わりに予備の片手剣をアイズへと渡す。

アイズが剣を受け取って前を向くのと、戦車のような巨体が通路口を破壊しながら突破してくるのは、同時だった。

 

『────────────────ッ!!』

 

破鐘のような雄叫びを上げ、モンスターが眼のない顔をアイズ達へと向ける。

生理的嫌悪感を感じさせるその黄緑の体躯は、胴からブシュッと頻りに体液を散らしており、ずるずると進む側から足元の地面を溶かしていた。

ティオナが武器と引き換えに傷を負わせた、あの大型だ。

 

「風であの腐食液を防げないようなら無理はしないでくれ。レフィーヤの準備が整うまでの時間を稼げれば、それでいい」

 

「うん」

 

「余計な心配だとは思うけどね」

 

「俺はどうすればいい?」

 

二人の会話に三日月は割って入るように言う。

そんな三日月にフィンは言った。

 

「君は、あのモンスターがこれ以上後ろに行かないように止めておいてくれないか? もし厳しそうなら、無茶はしなくてもいい」

 

「分かった」

 

三日月はそう言って芋虫型のモンスターに一発、銃弾を叩きこむ。

また、汚い花火となって周りに飛び散るモンスターの残骸に、嫌悪感を催しながらも三日月は次々と撃っていく。

ティオナ達が既に戦端を開いている中、おぞましいモンスターの大群に向かって、アイズはヒュンッと剣を鳴らす。

風が揺らめく。

 

「───先に、行くよ」

 

アイズはそう言って地を蹴る。

爆風めいた音と砂塵を巻き起こし、アイズの姿がかき消えた。

全身に付与した風の力で得た猛烈な加速。

文字通り疾風と化し、アイズはモンスターの群れへ一直線に突き進んだ。

それに少し遅れる形で、三日月も突き進む。

 

『!』

 

その高速の突貫に反応できたのは、先頭の大型のみだった。モンスターは勢いよく開口し、既に至近距離に迫られているにもかかわらず、腐食液を放出する。

アイズは斜め下から剣を振り抜いた。

神速の一閃が、纏った風のうねりを盾に、紫液を弾き飛ばす。

防御不可能な敵の攻撃を、銀の軌跡が切り裂いた。

 

『─────』

 

肉薄する。

切り開かれた腐食液の間を疾り抜け、敵に次の行動を許さないまま、アイズはその懐へと入り込んだ。

硬直するモンスターに袈裟斬りを入れても、風に護られた剣は、胴体を深く斬りつけても溶けることはなかった。間髪入れず傷口から体液が飛び散るが、アイズの体を取り巻く気流がその全てを吹き飛ばす。攻守一体の風の鎧は越えられない。

アイズは金色の両目を細めると、さらに加速し剣の柄を握る右手が、ぶれた。

───『アイズ・ヴァレンシュタイン』。

最強の一角とも名高い、金髪金眼の少女の本名。

この迷宮都市オラリオ屈指の剣士として名を連ねる、第一級冒険者。

その二つ名を、【剣姫】。

 

『──────────────────』

 

仮借のない、連続攻撃。

凄まじい速度と鋭さ、剣筋でモンスターを細切れにしていく。

切り刻まれたモンスターは絶叫を上げ、マーブル模様の体液を至る箇所から噴出させながら崩れ落ちる。

肉体の均衡を失ったそのモンスターは、黄緑色の表皮をぶくぶくと膨れ上がり、勢いよく破裂する。

 

「あぶなっ!?」

『オオオオオオオオオオオ!?』

 

まるで爆弾のように腐食液が周囲へと飛散した。

アイズ達から離れた位置で交戦するティオナのもとまで届き、被液したブラックライノスが悲鳴を上げながらのたうち回る。

 

「やれやれ、倒したら倒したで爆発するとは」

 

溜め息を半ばつきながら、フィンも芋虫のモンスターに接近する。

中型と言える大きさの相手は、胴体をひねり、エイにも似た広く平たい扁平状の腕で薙ぎ払おうとしてくるが───フィンはその小さな体を活かして、やすやすと回避する。

そして身に付けている腰巻きを翻し、地に伏せるような態勢で間合いを埋め、アイズの〈デスペレート〉をその疣足に見舞った。

 

「よし、いけるね」

 

モンスターの悲鳴とともに迸る体液を完璧に見切りつつ、溶けだしていない剣を見て頷く。

体液に晒された〈デスペレート〉は剣の腹から煙を上げてはいるものの、その刃は微塵も欠けていない。

モンスターの腐食液にも耐えうる特殊武装に一笑しながら、フィンはさらに斬撃を繰り出した。

モンスターの短い多脚のみ狙いを絞り、二つ三つと切断。片側半分の脚を失ったモンスターはバランスを失い、地面へと倒れこむ。

魔法の恩恵を受けているアイズには劣るが、フィンの動作は俊敏かつ要領が良く、何よりの一切の無駄のない行動へと踏み切る躊躇がない。

それは自分より巨大な相手を倒すために身に付けられた知恵と、勇気だ。

敵の無力化のみを念頭に置き、小人族の少年は戦場を駆け抜ける。

 

「っっ!」

 

アイズは近くにいたモンスターを切り捨てて、三日月を見る。もし、苦戦しているようならそちらへと向かおうと考えていたアイズは、三日月のいる方へと顔を向けると、そこはとても一言では表せない惨劇だった。

モンスター一体一体の頭や胴体がまるで鈍器で殴られたかのように潰され、腐食液がモンスターの口や傷口から周りへと流れている。

頭が弾け飛んだモノ、潰されたモノ、貫かれたモノ、踏み潰され原型を留めていないモノがあちこちに転がっていた。

そしてその光景を生み出した悪魔をアイズは見た。

どこにしまってあったのか、まるで刃のない大剣のような武器で芋虫型のモンスターの頭が"ブチュッ"と音を立てて潰れる。

その際の勢いで腐食液が悪魔の頭にかかるが、腐食することなく、まるで血がついたかのように"ベチャリ"と白い装甲につくだけだった。

武器の刃のない大剣も、溶けることなく原型を保ったまま、健在している。

向かってくるモンスターを容赦や情けなどかける事なく、無慈悲に淡々と始末していく。

戦闘と呼べるモノではなく、圧倒的な力でねじ伏せ、一匹一匹確実に潰して殺して回る。

アイズが圧倒的スピードで敵を倒すのなら、三日月は力でねじ伏せる。

アイズはそんな三日月の姿を見て、羨ましいと思った。

私も強くなりたい。ただ、純粋に強く。

アイズはそんな思いを抱きながら、三日月をその金色の瞳で見ていた。

だが、一つだけ忘れてはいけない。

純粋な力や暴力では、成せないこともある。

そう、かつての■■■■■・■■■■のように。




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