やってしまいました……。
【何を】とは言いませんがやってしまいました……。
ともかく、本編をどうぞ!
【ラタトスク】での一件から、次の日。
俺はいつも通り高校に登校していた。
昨日は記憶の整理などで忙しく碌に眠れていないのだがそこは最早バグで済まない程のスペックを誇る身体である。
一日程度寝ていなくても睡魔に襲われることも無かった。
そして、別に習い直す必要もない高校の授業を聞き流し、帰りのホームルームが終わったその時、隣に座る鳶一に声をかけられた。
「来て」
「え、ちょっと!」
ガシッ、といきなり手を掴まれたかと思うと鳶一に引っ張られる。
どうやら声をかけられた、では済まないようだ。
手を引かれて教室を出て行くと、後方から女子のキャーキャーと騒ぐ声が聞こえて来た。
おそらく変な噂が独り歩きするのだろうが……相手が同性じゃないのがわずかばかりながら救いだろうか。
これで相手が殿町だったりしたら……想像するだけで背筋が凍る。
鳶一は無言のまま階段を上り、しっかりと施錠された屋上の扉の前までやってくると、ようやく俺の手を離した。
「昨日、何故あんなところにいたの?」
何の前置きもなくただ淡々と本題を聞いてくる鳶一。
その視線は俺の瞳を捉えていた。
「ちょっと妹が逃げ遅れてたみたいでね。街中に探しに出たんだよ」
さらりと嘘を憑いてしまったが仕方がない。
本当のことを言う時は今ではない。
「そう。―――見つかったの?」
「うん。まぁね。
おかげさまで見つけることが出来たよ」
「そう。良かった」
鳶一はピクリとも表情を変えないままにそういった。
まるで人形と話しているようだ。
「―――昨日、あなたは私を見た」
またも何の前置きもなく新たな話題に入る鳶一。
「確かに君を……」
「誰にも口外しないで」
俺が言葉をいい終える前に鳶一は有無を言わせないような迫力でそういった。
俺は苦笑しながら分かったよ、と返事を返した。
「それに、私のこと以外も―――昨日見たこと、聞いたこと。
全てを忘れた方がいい」
「『全てを』……か……。
君が言っているのはあの女の子のことかい?」
「………………」
鳶一は無言で、俺を見詰めているだけだった。
無言の肯定。そう捉えていいはずだ。
「ねぇ、鳶一さん。あの女の子って……何かな?」
【精霊】についての知識などいくらでも引き出すことができる。
しかし、それはあくまで知識。
実際に刃を突き合わせている鳶一たちなら、どんな考えを持っているのかが知りたかったのだ。
「あれは【精霊】」
鳶一は、短く答え、そして再び口を開く。
「私が―――倒さなければならないモノ」
「……そうかい……。
その【精霊】というのは悪い奴なのかい?」
俺はそんな質問を投げかけてみた。
すると微かにだが、いつも表情を崩さない鳶一が唇を噛みしめた気がした。
「―――私の両親は、五年前、精霊のせいで……死んだ」
鳶一の瞳に微かに憎悪の炎が灯された。
【復讐】、やはりそうなのだろうか。
「私のような人間は、もう増やしたくない」
しかし、そういった鳶一の瞳には憎悪の炎は灯っていなかった。
【復讐】と【救済】と言ったところだろうか。だが、違う気もする。
ただ、ひとつ言えるのは、
「優しいんだね、鳶一さん」
それだった。
俺のその言葉に鳶一は何を言うわけでも無かった。
ただこちらを真っ直ぐに見詰めていた。
そして俺は、ふと思い浮かんだことを聞いてみる。
「そう言えば鳶一さん。【精霊】とかそういう情報って、言ってもいいモノなのかな?
聞いた俺が言うのもなんなんだけどね」
「………………」
鳶一は一瞬黙ると思い付いたように一言。
「問題ない」
「そうなのかい?」
「あなたが口外しなければ」
「……それは問題ないと言えるのかい?」
俺がそう言うと鳶一は全く表情を変えずに
「あなたが口外しなければ」
「…………そうかい」
同じ言葉を繰り返した。
「……じゃあ、もし俺が話したら?」
「………………」
俺の言葉にまた、一瞬だけ言葉を止める鳶一。
「困る」
「そうかい……それは大変だね。
約束しよう、絶対に口外しないとね」
コクリ、と鳶一は首肯した。
そしてその会話を最後に、鳶一は俺から視線を外し、階段を下りていった。
「両親が【精霊】のせいで死んだ……か」
俺は壁に背中をあずけ寄り掛かるようにして呟いた。
世界を殺す災厄とさえ呼ばれる【精霊】だ。
そういうことも―――あるのだろう。
「……『仕方が無い』……そう言えば終わりだけど……」
両親の死を体験した者に仕方が無いなど言える訳が無い。
「この問題もゆくゆくは解決しないとね……」
そう、結論を出した俺は階段を下りようと体を起こした時。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーッッ!!」
下の廊下の方から、女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。
「……ッ!?な、なんだ?」
俺は慌てて階段を駆け下りて悲鳴の聞こえた場所に近寄った。
廊下には数名の生徒が集まっており、そしてその中心には白衣を着た何やら見覚えのある女性がうつぶせで倒れていた。
「えっと……これってどういう状況かな?」
俺が一人の女子生徒に声をかけるとあたふたしながら口を開いた。
「し、新任の先生らしいんだけど……急に倒れて……っ!」
「そっか……じゃあ、俺がこの人を保健室に―――」
連れていくよ、そういう前に倒れていた白衣の女性がガシッ、と俺の足を掴んだ。
「うわぁっ?!」
「……心配はいらない。ただ転んでしまっただけだ」
そういいながら、女性は廊下にべったりとつけていた顔面を、ゆらりと上げる。
「……やっぱり貴女でしたか……」
長い前髪に、分厚い隈。眼鏡をかけていたりするが、その特徴的な顔を忘れる訳が無い。
「……ん?あぁ、君は―――」
女性―――【ラタトスク】の解析官・村雨令音が、のろのろと身を起こした。
しかし、この起き方はやめて欲しい。
まるで一昔前のホラー映画にでも出てきそうだ。
「何をしているんですか?こんなところで」
「……見て分からないかい?教員としてしばらく世話になることにしたんだ。
ちなみに担当教科は物理、二年四組の副担任も兼任する」
白衣の胸につけていた教員を示すネームプレートを指しながら令音は言った。
ちなみにそのすぐ上の胸ポケットからは、傷だらけのクマさんが覗いていた。
「ふむふむ……そうでしたか。
では、これから宜しくお願いしますね?村雨教諭」
「……うむ」
俺は簡単に挨拶をかわすと、今までぽかんとした表情で見ていた女子生徒たちに向かって口を開いた。
「この人は大丈夫みたいだから心配しないで?
念の為俺が保健室に連れて行っておくからさ」
「え、えっと……じゃあ、私たちも手伝うよ!」
「ふふふっ。ありがとう。
でも今回はその気持ちだけ貰っておくね?」
俺がニコリと微笑むと女子生徒たちはいえいえ!と言い、顔を紅く染めながらフラフラとした足取りで歩いて行った。
……殿町の言ったランキングはあながち嘘ではないようだ……。
「……それはさておき……村雨教諭行きましょうか?」
俺はそう言って令音に手を差し伸べて立ち上がらせる。
「……ん、悪いね」
「いえいえ、とりあえず歩きながら話しましょうか?」
俺がそう言うと令音は首肯し歩き出した。
令音の歩くペースに合わせながら転ばないように気を配る。
「それはそうと、村雨教諭」
「……あぁ、令音で構わないよ」
「そうですか?学校ではこちらの方がいいと思ったんですが」
「……いや、いいよ。
……私も君を名前で呼ばせて貰うよ。
連携と協力は信頼から生まれるからね」
令音はうんうんと頷き、俺の顔を見た。
「えぇっと、君は……ヨルムンガンド、だったかな」
「誰が北欧神話に登場する毒蛇の怪物ですか。俺は夜鶴ですよ。
そもそもなんでピンポイントで変な名前にするんですか、『よ』しか合っていませんよ」
名前を間違える所から既に信頼も何もなかった。
「……さてヨル、早速だが」
「なんですかその華麗なスルーは……
……まぁ、変な愛称じゃないだけ良いとしましょうか……」
俺は溜息混じりにそう呟いた。
「……ちょっとばかり君に用があってね。このまま物理準備室に向かおう」
「分かりました」
そう言って俺たちは目的地に向かった。
「……ん?」
それは職員室の近くを通りかかった時だった。
俺はここにいるはずのないモノを見つけて立ち止まった。
「……どうかしたかね?」
「いや、見覚えのあるモノが目に映ったんでね……」
俺の視線の先には、担任である岡峰教諭が歩いていたのだが―――その後ろに、どうも見覚えのある、髪を二つ結びにしたちっこい影がついて回っていたのだ。
「あ!」
俺の視線に気付いたのか、ちっこい影―――琴里が表情をパァッと明るくした。
「おにーちゃぁぁぁぁぁん!」
瞬間、琴里が、吸い込まれるように俺のお腹に突撃してくる。
「おっと……!」
俺は琴里がお腹に当たる寸前で手を差入れて琴里の突撃の勢いを殺し、優しくキャッチした。
「おー!凄いなおにーちゃん!」
「お兄ちゃんを舐めたら駄目だよ?
それよりなんで高校に?」
「ちょっと用事があってなー!」
俺の腕にしがみつく琴里を引き剥がしながらそういった。
そして、前に視線を向けると琴里の後を続くように岡峰教諭がトテトテと歩いて来た。
「あ、五河くん。妹さんが来てたから、今校内放送で呼ぼうとしてたんですよぅ」
「そうなんですか?ありがとうございます岡峰教諭」
俺はお礼を言ってから琴里を見てみる。
琴里は来賓用のスリッパを履き、中学校の制服の胸に入校証をつけていた。
どうやらきちんとした手続きをしてから学校に入ってきたらしい。
「おー、先生ありがとー!」
「はぁい、どういたしましてぇ」
元気良く手をブンブンと振る琴里に、岡峰教諭がにこやかに返す。
「やー、もうっ、可愛い妹さんですねぇ」
「まぁ、自慢の妹ですよ」
ちょっとだけ苦笑を浮かべながらそう返した。
岡峰教諭は琴里と笑顔で「バイバイ」と手を振り合うと、少しご機嫌気味に職員室の方へ歩いて行った。
「……さて、琴里も物理準備室に用があるんだよね?
一緒に行こうか」
「おー!そーだなー!」
そういったことは俺の手を引くと走り出した。
―――東校舎四階、物理準備室―――
「さ。入ろー、入ろー♪」
「ハイ・ホー、みたいなリズムだね、それ」
目的地に着いた俺は琴里に促されるままにスライド式のドアを滑らせた。
そして、すぐに、眉根を寄せて目を擦った。
「……ちょっと令音さん?」
「……何かね?」
俺の言葉に、令音は小首を傾げた。
「なんなんですか、この部屋」
物理準備室なんて、滅多に入る場所ではないし、実際俺も中に何が置かれているのなんて皆目検討もつかないが……これだけは言える。
―――此処は物理準備室ではない。と
何しろ今俺の視界に入っているのは、いくつものコンピュータにディスプレイ、その他見たことのない様々な機械で埋め尽くされている名目上【物理準備室】の部屋なのだから。
「……部屋の備品さ?」
「いやなんで疑問形なんですか……。
というかそれ以前に、此処は物理準備室でしょう?もといた先生はどうしたんですか?」
ここには確か善良で目立たない初老の物理教諭・長宗我部 正市教諭が居た筈なのだ。
その長宗我部教諭の姿は今、何処にも見当たらない。
「……あぁ、彼か。うむ」
令音が顎に手をやり、小さく頷いた。
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
そして、そのまま数秒が過ぎる。
「まぁ、そこで立っていても仕方が無い。入りたまえ」
「俺はうむ、の次が聞きたいんですが?」
「まぁ、そこで立っていても仕方が無い。入りたまえ」
今度はすぐにそういった。
どうやら教える気はないようだ。
令音は先に部屋に入ると、部屋の最奥に置かれた椅子に腰掛けた。
次いで、俺の脇から琴里が部屋に入って行く。
そして、慣れた手つきで白いリボンで括られていた髪をほどくと、ポケットから取り出した黒いリボンで髪を結び直す。
「―――ふぅ」
するといきなり、琴里の雰囲気が変わった。
どうやらリボンの色で雰囲気を変えているらしい。
俺はとりあえず、中に入ると一番手前にあった椅子に腰掛け、言葉を待った。
「何?なんでそんなに無言で座っているの?馬鹿なの?死ぬの?」
「辛辣だね……。
それよりも、今日の用事ってなんなのかな?」
俺は苦笑いしながらそう聞いてみる。
すると、琴里は鞄から小さなバインダーのようなモノを取り出すとそこから一つのチュッパチャップスを取り出して開封すると口に含んだ。
それにしても、まさかの飴玉専用ホルダーとは……俺の妹は一体何を目指しているのだろうか……。
「夜鶴が本当に女性の扱いに慣れているのかを確かめようと思ったのよ」
チュッパチャップスを口に含みながらもしっかりとした喋りだ。
琴里はニヤリと笑って更に続ける。
「本当は訓練がしたくなかったから言っただけかも知れないでしょ?」
「まぁ、もしそうだったとしてどうやって確かめるんだい?」
俺は琴里を見詰めながらそう言うと今度は令音が口を開いた。
「何、簡単なことだよ。
一度実践して貰えばいいんだ」
「実践……ね……。
で、一体俺はどうしたら良いんですか?」
令音は思考するような仕草をすると一言言った。
「……とりあえず、岡峰珠恵教諭を口説いてみたまえ」
「分かりました…………なんて言えるわけないでしょうっ!」
流石の俺もつい叫んでしまった。
あまりに軽い感じで言ったのに中々ハードなことを言う。
「何?出来ないの?あなた女性の扱いに慣れているんでしょ?なら、良いじゃない」
ニヤニヤとした笑いを浮かべながら俺の方を見ている琴里。
これはやらないといけない雰囲気みたいだね……。
俺は観念したように溜息を吐くと、口を開いた。
「……分かったよ。やればいいんだね?」
「……よし」
令音は小さく頷くと、机の引き出しから小さな機械を取り出して俺に渡して来た。
次いでマイクと、ヘッドフォン付きの受信機らしきモノを机の上に置く。
「これは何ですか?令音さん」
「……耳につけてみたまえ」
俺は言われるままに、右耳にはめ込んだ。
すると令音はマイクを手に取り、囁くように唇を動かした。
『……どうかね、聞こえるかな?』
突然耳元で令音の声が響いてきた。
どうやらこれは小型の通信機のようなモノらしい。
「これは凄いですね……」
『……よし、ちゃんと通っているね。
音量は大丈夫かい?』
「えぇ。大丈夫ですよ」
俺が首肯すると、令音はすかさず机の上に放ってあったヘッドフォンを耳に当てた。
「……ん、うむ。こちらも問題ないな。拾えている」
「へぇ……この中に集音マイクまで搭載されているんですね」
俺は右耳の機械をつつきながらそういった。
俺がそんなことをしていると、今度は琴里は机の奥から、もう一つ小さな機械部品のようなモノを取り出した。
ピン、と指で弾くと、そのまま虫のように羽ばたいて宙を舞う。
「ん~……これはカメラですか?」
「……よくわかったね。これは超小型の高感度カメラだ。これで君を追う。
くれぐれも虫と間違って潰さないようにしてくれ」
「了解です。
……じゃあ、行ってきますね?」
俺がそう言っていると、ぼむ、とお尻を蹴られた。
そこには琴里が仁王立ちしており腕を組んでいた。
「わかったから早く行きなさいこの鈍亀。
ターゲットは今、東校舎の三階廊下よ。近いわ」
「ん。ありがとう琴里。
じゃあ、今度こそ行ってくるね」
俺は覚悟を決めて物理準備室を出て行った。
(……まぁ、最悪記憶を操作したらいいしね……とりあえず……本気で口説いてみせるかな)
そんなことを心の中で考えて階段を下りていく。
俺が廊下を曲がるとすぐそこに岡峰教諭を見付けた。
俺は気持ちを切り替えて声をかけた。
「岡峰教諭じゃないですか」
「あれ、五河くん?どうしたんですかぁ?」
のんびりとした優しそうな声でそういった岡峰教諭はくるりとこちらを振り返った。
「いえ、岡峰教諭が可愛かったのでつい声をかけてしまいました」
「ふぇっ?!そ、そんなぁ~照れますねぇ」
岡峰教諭は嬉しそうに頬を染めると後頭部を掻きながら笑顔を作って見せた。
「ところで、その洋服似合ってますね。
何処で買ったんですか?」
「これは【フリージア】ってお店で買ったんですよぉ~。
私のお気に入りなんですぅ~」
岡峰教諭は服の裾を軽く摘むようにしてそういった。
「岡峰教諭の雰囲気にピッタリマッチしていますね。
とても可愛らしいです」
「ふふ、ありがとぉございます」
はにかんだような笑みをうかべて嬉しそうにそういった岡峰教諭は手を頬に当てていた。
「あの、岡峰教諭。時間は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよぉ。何でですかぁ?」
「いえ、ちょっと話したいことがありまして」
「そぉなんですかぁ?」
岡峰教諭は首をこてん、と横に倒した。
さぁ……ここからが本番だ。
「実は俺、最近学校に来るのがとっても楽しいんです」
「本当ですかぁ?それはいいことですねぇ」
「はい。それは…………岡峰教諭、貴女が担任になってくれたからです」
「え…………っ?」
岡峰教諭は、俺の言葉に驚いたように目を見開いた。
「な、何を言っているんですかぁもぅ。
どうしたんです急に」
そういいながらも満更でもないといったような表情を浮かべる岡峰教諭。
「実は俺、前から岡峰教諭のことが―――」
「ぃやはは……だ、駄目ですよぉ。
気持ちは嬉しいですけど私先生なんですからぁ」
出席簿をパタパタしながら苦笑する岡峰教諭だったがその頬が紅く染まりニヤけているのは隠せない。
「俺、本気なんです。本気で貴女と―――」
「えぇっと……困りましたねぇ」
「本気で貴女と、結婚したいと思っているんです」
―――ぴくり。
俺が結婚の二文字を出した瞬間、岡峰教諭の頬が動いた。
やっぱりこの言葉が鍵みたいだね……。
そして、岡峰教諭はしばしの間黙った後に、小さな声を響かせた。
「……本気ですか?」
「えぇ。岡峰教諭。俺は貴女と結婚したいと思うほど貴女が好きなんです」
そう言うと、岡峰教諭は俺の服の袖を掴んで上目使いに口を開いた。
「本当ですか?
五河くんが結婚出来る年齢になったら私、三十歳越えちゃうんですよ?それでもいいんですか?」
「歳の差なんて関係ありません」
「本当ですか?信じても良いんですか?」
ウルン、とした瞳でそういう岡峰教諭。
不覚にも可愛いと思ってしまった俺。
「……えぇ。信じて下さい。
俺は貴女が……珠恵が好きなんです」
ニコリと笑って名前を呼ぶ。
するとぼふん、という効果音が聞こえるほどに顔を真っ赤にした岡峰教諭。
「……じゃぁ……お願いしますぅ……」
とろんとした瞳で俺を見詰めながら岡峰教諭はそういった。
『……完璧に落としたわね……夜鶴』
耳の機械――インカム――から琴里の声が漏れて来て俺は気がついた。
やり過ぎた……と。
これ程までに落としておいて記憶を操作するなんて真似はできそうにもない。
出来る人間がいるのなら出てきて欲しい。
俺が手加減ゼロの 【スター〇イト〇レイカー】を放ってあげよう。
俺は 【
「岡峰教諭」
「珠恵って、呼んでくれませんかぁ……?」
間延びしたような声が可愛く聞こえる。
「珠恵、一つ知っておいて欲しいことがあるんだ」
「なんですかぁ?」
俺は岡峰教諭……いや珠恵から少し離れて口を開く。
「俺は人間ではないんです。
……それでも……良いですか?」
「ふぇ……?どういう……ことですか?」
珠恵の顔に困惑の表情が浮かんだ。
しかし、俺は口を開くのをやめない。
「そのまんまの意味です。
俺は人間ではない……そうですね……ある意味化け物です。
それでも貴女は受け入れられますか?」
珠恵はオロオロとし始める。
更に俺はもう一つ伝える。
「そして、俺には他にも付き合っている人が居ます。
そんな俺でも受け入れられますか?」
それを言うと珠恵はピタリと動きを止めた。
「……それは弄んでるんですか?」
真剣な声でそう聞いてくる。
「いえ、違います。俺は全員愛していますよ。
ただ、俺の生きている所は【一夫多妻】が普通なんです。
貴女には受け入れられないかもしれない。
それなら俺を拒否してください。
その時は―――
―――貴女から俺の記憶を消しましょう」
俺がそう言うと珠恵は目を見開いた。
それもそうだろう。
俺は拒否すれば記憶を消す、と半ば脅迫のようなことをしているのだから。
「……どうしますか?」
俺はそう珠恵に聞いてみるとしばらくの間沈黙し、当たりには静寂が流れた。
「―――私は」
珠恵はいきなり口を開き始めた。
その口から告げられるのは【拒絶】か【受諾】か。
「私は…………受け入れます」
珠恵は優しい声でそういった。
「五河くんが何者であっても……好きになっちゃいましたから」
「……そうですか」
俺はそう短く言うと珠恵を抱きしめた。
「では、これから宜しくお願いします」
「はい。分かりました」
満面の笑みを浮かべた珠恵だった。
その後、俺は月に一度しか呼び出せないみんなを呼び出し、珠恵を紹介したのだった。
ちなみに俺が神様なのも伝えたがまさか気絶するとは思わなかった。
そして、呼び出したみんなに言われたのは
『ハーレム願望のないハーレム所有者ってただの誑しなんじゃないか』
だった。
箱庭で散々言われたが久々に聞くとなかなかにくるものがあった。
「俺のハーレムってあとどれだけ増えるのかなぁ……」
本編はどうでしたでしょうか?
気に入らない人がいたのならすみませんでした……。
恋愛の話がまさか【問題児】より先にできてしまうとは思いませんでした……。
そして、タグにハーレムを追加させて頂きますね……。
では、宜しければ感想などお願い致します!
また、次回お会いしましょう♪