文化祭と言えば秋、秋と言えば食欲、ということでテーマは『食』!ぜひお楽しみください。
バルバレに収穫の季節が来た。穀物や果物が思い思いに実を結ぶ、豊穣と繁栄の時節。年間を通して温暖な遺跡平原も、今ばかりはいつにも増して日差しも風も柔らかい。これから数か月の間、巨大市場は自然の恵みをうけてより一層の盛況を見せる……筈だったのだが、今年は様子が違った。
「折角の収穫期だってのに……、これで今月何回目だ?」
「五回目だな、儲かってはいるが使う暇が無い」
賑わってはいる、確かに賑わっているが、それは商人たちの声ではなく、狩人達とギルド職員の慌ただしい足音が折り重なってそう錯覚させているだけだ。バルバレは今、大発生を起こしたモンスターの対処に追われきりきりまいの有様だった。通常、ハンターが
大型の飛竜種を一頭狩りでもすれば、それだけで一月過ごして十分お釣りが出る金額にもなる、不要な依頼を受けるのは、無為に命を投げ出す行為にも等しい。余程の事情がなければ、四度を超えて以来を受けることは無いと断言しても良い。
その上で、ノイルとリアの財布は既にパンパンに詰まっていた。二人だけではない、遺跡平原周辺の地域全体からの依頼が急激に増加したことで、狩人達の懐はでっぷりと肥えている。そして同時に、
「退いてくれ!!」
けたたましく車輪を鳴らして、ガーグァが牽く車が通りを駆け抜けていく。微かに鼻孔に入り込むのは濃密な血と腐った泥の臭気。騒がしさとは対照的に道行く者の表情が一様に優れないのは、『それ』を否応なく意識しているからだろう。
「これで何人だ」
リアの問いに、ノイルがぺらぺらとノートを捲る。薄汚れたその中に挟まった新しい紙を抜き出し、赤い筆跡を指差した。
「昨日計上されただけでも二十人はいる、さっき通ったので四人足して、計上されていないのが更に四人と仮定すると……、大体三十人」
「仮定の四人は?」
「知り合いが帰ってきていない、四人組だった筈だ」
淡泊、簡潔、さらりと数えられる命の数。そんな中でも食事にありつけるか否かも、狩人に『向いているか』どうかの一条件なのではないかと、ノイルは脳の片隅で思考した。
「こっち水!足りねえぞ!」
「姉ちゃん肉追加!」
「サラダ持ってきて!」
「オーダーまだか!」
喧々囂々、騒然、喧騒。泥と血と鉄の臭いを掻き消すは油と香辛料の香り、疲労を暈すは酒精、悲嘆を塗り潰すは食の快楽。兜を外さないリアをして口中が湿るを禁じ得ない即席の饗宴が此処にある。知っての通り今は収穫期、竜や獣に阻まれ市場は例年に比べて品薄だが、狩猟区にほど近いこの詰所では話が違う。文字通りの『取り放題』と言ってもそう間違いではない。
「リア、これいるか」
「ん……、そうだな、二切れほど」
たっぷりの果実と一緒くたに焼き上げられたガーグァ肉を鉄串で押さえ、ナイフで丁寧に切り分ければだくりと熱い汁が溢れ出す。「あち、あち」と摘まみ上げた一切れを口に放り込むと、思わず頬が緩んだ。
「……ノイル、それ多めに取っておいてくれ」
片手で肉を取り分けながらもう片手で肉を頬張る姿は行儀が良いとはお世辞にも言えないが、吸い込むように無言で食事を続けるノイルを見ると、リアをして腹の虫の癇癪を難しかったらしい。皿から目を離さない彼の頬を軽く突いて、葉を重ねただけの皿
「次の車出すぞ!!そこ邪魔だ、飯はテーブルで食え馬鹿!!」
主菜副菜の区別すらなく、ただ腹を満たし喉を潤す狩人達の後ろで、それすら