二人の生徒会長 氷霧の姫たちは叢雲と共に   作:竜羽

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「二人の生徒会長」に投稿していたやつとは少し変わっています。違いを探すのも面白いかも


一章 二人の生徒会長
双子生徒会長 二人の男子


インフィニット・ストラトス。通称IS。

日本のとある天才科学者、篠ノ之束の手によって開発された女性しか乗れないという欠陥を抱えながらも、従来の兵器を超越する圧倒的な性能を持つこのマルチフォーム・パワードスーツは宇宙開発という本来の目的を外れながらも世界に広まり、今やISに乗ることのできる女性を優遇する女尊男卑の風潮が広がっていた。

そんな中、IS操縦者を育成する世界唯一の教育機関IS学園にて、物語は始まる。

 

 

 

 

 

IS学園の中に存在する第三アリーナには全校生徒が集まり、そこで行われているIS試合に釘付けになっていた。

 

閃光が走りアリーナの中が爆炎に包まれる。

ナノマシンにより一気に過熱化された水が起こす気化爆発が空気を震わせるなか、爆炎から二人の水色のISを纏った少女が飛び出す。

二人は爆炎から飛び出て相手を視界に納めるとそれぞれその手に持ったブレードとランスを構えてぶつかり合う。

激しく火花を散らしながら鍔迫り合いを行う二人の少女。彼女たちは互いにとてもよく似ていた。

外側にはねたくせのある水色の髪。真紅に染まった瞳。整った顔立ちに、抜群のプロポーション。身に纏うミステリアスな雰囲気。精々見分けるための違いと言えば髪の長さぐらいだ。一人は肩のあたりまでのショートカット。もう一人は腰までありそうなロングの髪の先端をリボンで結われている。

そして、二人の駆るISもまた非常に似ていた。

通常、シールドエネルギーで形成される防御フィールドや、操縦者の命を守るために存在する絶対防御という二段構えの防御機構を持つISは装甲が少ない。だが、二人の水色のISは世界に発表されているどのISよりも装甲が少なく華奢な印象を与える。

だが、そんな華奢なISの周りをまるでドレスやマントのように覆うフィールドが存在する。

水だ。

それぞれのISに装備された『アクア・クリスタル』と呼ばれるパーツから展開される、ISからのエネルギー伝達で制御されたナノマシンによって構成される水のフィールドが装甲の代わりになっているのだ。

互いに似たISなのだが、流石に全て同じではない。

ショートカットの少女のISは左右と後ろにひし形のアクア・クリスタルを浮かせ、自分の周りに水のフィールドを展開し、身を護るドレスのようにしているのに対し、ロングヘアーの少女のアクア・クリスタルは背中に二基存在するスラスターに組み込まれており、水のフィールドもスラスターからまるで翼のように展開されている。

 

前者は防御的で、後者は攻撃的な印象を与えている。

 

ガキンッ!と甲高い金属音を響かせ、互いの得物をはじき二人は距離を取る。

二人のランスには四門ガトリングガンも装備されているのだが、二人とも今までの試合で全弾撃ち尽くしている。故に二人とも新しい武器を展開(オープン)する。

ショートカットの少女は水を纏った蛇腹剣『ラスティー・ネイル』を展開するとそのままふるう。

通常の武器ではありえないが、ISというオーバーテクノロジーによって武器として使えるようになった蛇腹剣はその名の通り、剣を鞭のように伸ばし、蛇のような動きで相手に襲い掛かる。しかも、水を纏ったおまけつきの攻撃だ。

それに対し、ロングヘアーの少女は大鎌『マーメイル・サイス』を振るい絡め取る。

それは承知の上だったのかショートカットの少女はすぐにラスティー・ネイルを振るう。横に振るわれたラスティー・ネイルにつられて、マーメイル・サイスとともにロングヘアーの少女も引っ張られる。体勢が崩れたと思った瞬間、瞬間加速(イグニッション・ブースト)で加速。再び展開(オープン)したランス『蒼流旋』を、ラスティー・ネイルを持ってないほうの手に持って突撃する。

それに対し、ロングヘアーの少女も瞬間加速(イグニッション・ブースト)を発動。マーメイル・サイスを手放し、その場を離脱する。

体勢が崩れた状態で瞬間加速(イグニッション・ブースト)を発動させるという、一歩間違えば危険な離れ業をやってのけたことに観客が沸き立つ。もっともそれはショートカットの少女も予想していたのかラスティー・ネイルを収納(クローズ)すると一瞬で展開(オープン)する。これによってマーメイル・サイスに絡まっていた状態から、もとの剣の状態で現れるのだ。

そのまま今度は上から下にたたきつけるようにラスティー・ネイルを振るう。

 

「はっ!」

 

だが、振り下ろされたラスティー・ネイルはロングヘアーの少女がその手に展開(オープン)した二振りの水色の刀身をした刀『羽々斬(ハバキリ)』に受け止められる。そのまま背中の翼のように展開されていた水が動き、斬り刻む。

ラスティー・ネイルを使い物に成らなくすると、そのまま刀を構えて斬りかかる。

対するショートカットの少女も蒼流旋で受け止める。

 

戦いはまだまだ続く――

 

 

 

 

 

「試合時間一時間二十四分。結果は引き分け。最後の更識姉の『ミストルティンの槍』に対し、更識妹が懐に飛び込んできて暴発。その余波で『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)と『霧纏の水精(ミステリアス・ウンディーネ)』はダメージレベルCの半壊状態」

 

学園長室。そこではこのIS学園の教師の一人である織斑千冬が、先ほど試合をしていた二人の少女を正座させて淡々と手元の資料を読んでいた。内容は昨日行われた試合の結果とそれによる――被害状況だ。

 

「貴様らは馬鹿か?更識姉妹」

 

「「うっ」」

 

心底呆れたとでもいう言葉に二人はそろってばつの悪そうな顔をする。

 

「なんだあれは?モンドグロッソの本戦か?生徒たちの自信をまとめてへし折りおって。三年生など卒業前なのに何とも言えない顔をしていたぞ。つくづく規格外な姉妹だな」

 

「……織斑先生に言われたくありません」

 

スパァンッ

 

「何か言ったか?更識姉」

 

「ッッッ!!?」

 

余りの痛さに床にうずくまりもだえるショートカットの少女――更識刀奈。

彼女の双子の妹である更識流無はその様子に背筋を凍らせながら千冬のほうを見てみると、彼女の手には先ほど読んでいた資料ではなく出席簿が少し煙を上げながら握られていた。

いつの間に取り出したのだろうか?

モンドグロッソ初代優勝者世界最強(ブリュンヒルデ)は化け物なのか?

 

「なんだ?更識妹も何か言いたそうだな?」

 

「いえ、まったくそんなことはありません!」

 

「ちっ、そうか」

 

まさかの舌打ちに一言突っ込みたかったが薮をつついて鬼を出すなどという愚行を侵すつもりはない。

 

スパァンッ

 

「ッッッ!!?」

 

「今何か失礼なことを考えただろ」

 

「り、理不尽!!」

 

「ほう?もう一発くれてやろう」

 

スパァンッ

 

「ッッッ!!」

 

ゴロゴロ転がり痛みにもだえる流無。そして痛みから回復した刀奈はそんな流無を見て笑う。

 

「あははっ!馬鹿丸出し!」

 

「っくぅ、このば刀奈…」

 

流無も刀奈をにらむ。二人の間に剣呑な空気が漂うが、

 

「やめろ馬鹿どもが」

 

スパパァンッ

 

「「ッッッ!!!!??」」

 

ゴロゴロゴロゴロ。

 

しばらく、二人は今日一番の痛みに仲良く悶えたのだった。

 

 

 

 

 

「もうよろしいですか?」

 

千冬による二人の説教?が終わったのを見越して今まで三人のやり取りをほほえましく見ていた初老の女性、学園長が話しかける。

話しかけられた三人は姿勢を正し、学園長に向き合う。

 

「先の生徒会長を決める勝負。引き分けというIS学園設立以来初めての事態となりました」

 

そう、二人の試合は、このIS学園の生徒の中で最強の実力をもつ者にのみなることを許された生徒会長を決めるものであった。

 

「先代の会長へ勝負を挑み勝利を収めた更識刀奈さんと更識流無さんのうち、勝ったほうが生徒会長になるはずでしたが、お二人が引き分けたことで我々も対応を決めかねています」

 

「うちの生徒が申し訳ありません」

 

千冬が頭を下げると学園長は微笑む。

 

「いえいえ。なかなか面白いお二人ではないですか。双子の姉妹揃って自由国籍権を持ち、ロシアの最優秀国家代表候補生であり、同型の第三世代ISを学生チームで作製、完成させる。これ以上ない優等生です」

 

「それ以上に問題を起こしますがね」

 

千冬の言うとおり、刀奈と流無の二人は優秀なのだが、それ以上によく問題を起こしていた。

二人とも双子だからなのか性格がよく似ており、人をからかったり、場を引っ掻き回し騒動を大きくして楽しんだりする。二人の所属するクラス、一年一組の担任である千冬からしたら頭が痛いものなのだが、なぜか生徒たちからの支持が厚く、今回の生徒会長を決める戦いにしても、生徒会長権限を使って好き勝手やって横暴なふるまいをしていた三年生の先輩を流無と刀奈の二人が叩きのめしたことが発端だったりする。

 

「ふふふ。若い人の特権ですよ。それで生徒会長の話ですが」

 

学園長の言葉に流無と刀奈の二人は背筋を伸ばす。

 

「お二人は成績も一年生トップですし、ISの操縦も先ほどの試合から同等の実力を持っています。故にどちらが生徒会長になってもいいのですが、それだと後々禍根を残すことになります」

 

それは何も二人に限った話ではなく、二人のカリスマ性から人気を二分している二人を慕う生徒たちのこともある。

 

「ですので、お二人にはこのまま生徒会長になってもらいましょう」

 

「「……は?」」

 

学園長の言葉に、更識姉妹はそろって呆然とするのだった。

 

 

 

 

 

正史なら一人だった対暗部用暗部の家系『更識家』の長女。

しかし、この世界では双子として生まれた。

姉である更識刀奈とその妹、更識流無。

二人はよく似ていた。

だが、そのせいなのか、やることなすことがどうしてもほとんど同じになり、いつしかどちらが上か競うようになった。

それから常に互いを意識し、あらゆる物事で競い合う姉妹関係が出来上がった。

そして、その結果、二人がIS学園史上初の二人の生徒会長として名前を残してから数か月後。

世界で初めてのISを動かすことのできる男が見つかった。

 

一人は織斑千冬の弟、織斑一夏。

 

そして、もう一人……。

 

 

 

 

 

「くあぁぁー。……眠い」

 

「やはり速めに寝るべきだったのではないですか?私は何度も進言しました」

 

「あーだから悪かったって。起こす時手間かけたのは何度も謝ってるだろ」

 

IS学園一年一組の教室。そこでは異様な空気に包まれていた。

 

本来女性しか動かすことのできないIS。故にその操縦技術を学ぶIS学園も女子しか入ることはできないのだが、今年ばかりは例外だった。

 

なにせ、ISを動かすことのできる男子が二人も入学したのだから。

 

一人は織斑一夏。

最前列の真ん中という目立つ位置に座り、緊張でガチガチになっている。

 

そして、もう一人。

最後尾の廊下側に座る少年。

黒髪黒目の一夏と違い、若干茶色い髪に赤い瞳。顔はイケメンと言えるが、それはどこか悪人に近い感じで笑う顔は何やらあくどい雰囲気を持っている。

その少年は自分の後ろに座っている少女と話をしていた。

この少女も、美少女揃いのIS学園においては別格の美しさを持っており、蒼穹のごとく澄み渡った蒼い髪と瞳。そして、小柄だがまるで人形のような人離れした美しい見た目をしている。

 

そんな二人はとても仲が良さ実に言葉を交わしている。しかも、会話の内容から一緒に生活しているようだ。

 

周りの生徒は彼らの事が気になって仕方がなく、その結果、教室中が異様な空気に包まれているのだ。

そんな空気の中、教室の自動ドアが開き一人の人物が入ってきた。

緑色の髪に、メガネをかけた童顔の女性だった。背もあまり高くないので生徒と思ってしまうが服が制服で無いところから彼女が生徒ではなく、教師であることがわかる。

 

「みなさん、ようこそIS学園へ。私の名前は副担任の山田真耶です。みなさん、これから三年間IS学園で過ごすわけですが、有意義な三年間にしましょう」

 

シーン――

 

「え、ええと、それでは自己紹介を」

 

本来なら何かしらの反応があるはずなのだが、全員二人の男子に集中しているため、何の反応も返さない。

そのことに涙目になりながらも予定通りHRを進める。

そして、ついに一人目の男性操縦者、織斑一夏の番になった。

緊張のあまり自分の番だと気が付かず、真耶に注意(涙目で、なぜか謝られて)された一夏が立ち上がって挨拶をする。

 

「えっと、織斑一夏です。よろしく……」

 

「……」

 

名前だけ言った一夏に襲い掛かる無言の重圧。そして、彼は暗いやつというレッテルを回避するために、その口を開く!

 

「以上です!」

 

ガタンッ!

まさかの言葉に生徒がずっこける。

 

「はははぁつ!あっははははっ!!!くくく……」

 

いや、そうじゃない生徒もいた。

二人目の男性操縦者の少年は腹を抱えて爆笑していた。ツボにはまったらしい。そんな少年を、後ろの少女がジト目で見る。

 

そこでようやく自分以外の男子の存在を確認した一夏だが、彼の頭に強烈な一撃が加えられる。

 

「痛っ!?げ!関羽」

 

バシンッと再び頭に激痛。

 

「誰が三国志の英雄だ。馬鹿者」

 

織斑千冬。一夏の姉にして、この一組の担任。そして、IS操縦者の頂点だった。

その登場に生徒たちは歓声を上げる。

 

「騒ぐな!いいか!私はこの一組の担任だ。このクラスを学園長から任された以上、私はお前たちの指導に一切の妥協をしない。弱音を吐くのは良い。だが、途中で投げ出すことだけは許さん。わかったか!」

 

その言葉で騒いでいた生徒たちは沈黙する。

 

「クククッ……」

 

いや、一人だけ未だに腹を抱えて笑っていた。

 

「そこの男子!笑っている暇があるなら自己紹介くらいしろ」

 

千冬の言葉にようやく笑うのをやめた少年は、未だ浮かんでいる笑みを隠さずにその場で立ち上がる。

 

「あー俺の名前は八神和麻だ。歳は17でここにいるやつらより一つ年上だが、まあ、気軽話しかけてくれ」

 

へらへら笑いながらそう言う和麻。

 

「趣味はゲームや読書。実家が剣術道場をやっていたから多少剣道ができるな。座右の銘は『卑怯汚いは敗者の言い訳。勝ったやつの勝ち』だ。あ、最後に」

 

和麻は席を離れると、後ろの席に座っている少女の蒼い髪にポンと手を置く。そして、衝撃の発言をかます。

 

「こいつの名前は八神シャーリーっていうんだが、俺の専用機が人の姿になったやつなんだ。仲良くしてやってくれや」

 

「マスターともどもよろしくお願いします」

 

和麻の口から出た衝撃的な事実と、それを肯定するようにぺこりと頭を下げるシャーリー。今日一番の衝撃が生徒たちの間を駆け巡った。

 

 

 

 

 




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