二人の生徒会長 氷霧の姫たちは叢雲と共に   作:竜羽

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バトルロイヤル開始

窓から朝日が差し込み、和麻の顔を照らしている。

その光にゆっくりと和麻の意識は覚醒していく。窓のほうを向きながら寝るのは和麻の癖で、いつの間にか窓のある場所に向かって寝返りを打ってしまっている。

妹の遥香は、この行動の原因を究明すると言ってよく和麻の布団にもぐりこんで彼を困らせた物だ。

そんなことを寝起きの頭で思い出しながら目を開けた瞬間、和麻は柄にもなく慌てた。

何せ、目の前にシャーリーがすやすやと寝息を立てながら眠っていたのだ。

人形のような端正な顔立ちの美少女が、そのあどけない顔を向かい合わせて眠っているのだ。これで慌てない高校生男子はよっぽどの鈍感か、異性に反応しないアッチ系、そして不能になってしまっているやつだろう。

 

「な、なん!?」

 

「あら、起きた?」

 

「!?」

 

かけられた声に顔を隣のベッドのほうに振り向かせてみれば、流無がにやにやと笑っていた。

 

「昨日はお楽しみでしたね?」

 

「そう言う冗談は笑えないぞ」

 

そもそもIS相手にできるのだろうか?と言う疑問が残る。

シャーリーがどういう存在なのかよくわかっていない。人間のように見えるが、彼女はISなのだ。どこまで人に見えても、それは変わらない。

 

「うふふ。慌てる和麻君もなかなかいいわね」

 

「やめてくれ。人にやるのは良いが自分がやられるのは我慢できないんだ」

 

ぼやきながら和麻はシャーリーを起こさないように体を起こし、ベッドから出る。

和麻がいなくなったベッドではシャーリーがもぞもぞと何かを探すように手を動かし、その様子に流無が「かわいい」と顔を赤らめている。

 

「洗面所使うぞ」

 

「私はもう使ったからいいわよ」

 

「あいよー」

 

流無に返事をしながら、洗面所に入る。

そうして、歯磨き洗顔などを済ませた和麻が戻ると、流無は着替えを済ませたのか、すでに制服姿だった。

昨日会った時も思ったが。ストッキングがまた何とも大人っぽい雰囲気を醸し出している。和麻は朝から良いもの見れたと、心の中でつぶやく。

 

「朝食にはまだちょっと時間が速いわね」

 

時計を見てみるとまだ6時だった。食堂が開くのは6時半。学食としては結構速い時間なのだが、今日は起きるのが速すぎた。

 

「だったら、しばらく雑談でもしようぜ。準備はもうできているからな」

 

「いいわよ。話す話題はもちろん、あのことよね?」

 

「ああ、あのことだ」

 

にやりと二人はあくどい笑みを浮かべる。

二人が悪だくみしている横で、ベッドの上のシャーリーがころりと寝返りを打った。

 

 

 

 

 

二年生寮から出た和麻たちは、朝食を取りに食堂に向かった。

食堂は全学年共同使用なので、朝でもかなりの生徒で込み合う。

そんな中を、和麻たちは注目の的になりながら朝食をとっていた。

なにせ、一人は世界で二番目にISを動かした男子、一人はこの学園で有名な『二人の生徒会長』の片割れ、一人は世界で唯一の人の姿をしたIS。和麻とシャーリーは常に一緒なのは周知の事実なのだが、そこに才色兼備の流無が加わっていることで注目度が上がったのだ。

そんな中でも和麻は昨日と同じような調子で、アドレスを交換した生徒と出会えば気軽に声をかけ、話をしていく。

和麻の人付き合いの良さはどうやらかなり広がっていたらしく、朝食の席だけでアドレス帳にさらに15人のアドレスが登録された。

もっとも、それは流無も同じで、今の二、三年生のほとんどの名前が登録されているアドレス帳に一年生の名前がどんどん増えて行った。

 

和麻たちが朝食を食べ終えたころに、一夏が幼馴染の箒とともに現れた。

すると、和麻の周りにいた生徒たちが一斉に一夏のほうを向いたので和麻は一言彼女たちにささやく。

 

「隣のやつは織斑の幼馴染らしいぜ」

 

すると、生徒たちは箒の方にも注目し始める。

その隙に和麻は食器を片づけて、食堂を後にする。

シャーリーと流無も後をついてきた。

 

「うまく抜け出せたわね」

 

「まあな。あのままだったら時間ぎりぎりまでしゃべっていたな」

 

「女の子はおしゃべりが好きだしね」

 

「ああ、良く知っているよ」

 

流無の言葉に苦笑で返しながら、和麻は先ほどの生徒たちとの会話の中で気になったことを、スマホのメモ帳アプリに書き込んでいく。

どうやら昨日一夏の部屋で騒ぎがあったようで、ドアが壊れたそうだ。

トラブル体質とでもいうのか、織斑一夏という男は騒動の種をまいて歩いているらしい。

 

 

 

 

 

 

二日目の授業が始まった。もっとも予習をしてきた和麻にとっては何の問題もない授業で、たまに千冬に当てられたが答えられた。

逆に相変わらず一夏はついて行けてないようで、頭を抱えていた。

特に変わったことはなかったが、一夏に専用機が与えられること、それと篠ノ之箒がISの生みの親である篠ノ之束の妹であることが判明した。

 

前者は、世界中で467個しかないISコアの一つを用いて作成した専用機で一夏のデータを収集し、同時に自衛手段にするためとのことだ。

ようはモルモットみたいな扱いなのだが、一夏はいまいちよくわかっていないようだった。

余談だが、和麻のデータはシャーリーの協力なしには引き出すことができず、シャーリー以外のISでは和麻はせいぜい歩行させる程度のデータしかとることができない。

そのため、世界としては一夏のデータを何としても手に入れたいのだ。

 

後者については、それを聞いた生徒が箒に詰め寄ったが、拒絶するような箒の一喝で全員が引き下がっていった。

そのせいで昼休みになっても誰も箒に近寄らなかったのだが、一夏がそんな箒を無理やり食堂に連れて行った。

 

 

 

 

 

和麻は一夏が連れ出されていくのを横目に見ながら、食堂に向かう。

シャーリーと二人で行こうとしたのだが、

 

「あの、八神君」

 

「お昼一緒に居いかな?」

 

「かずやんもいこ~」

 

三人のクラスメイトが話しかけてきた。一人は昨日あだ名を決めあった本音であったのだが、もう二人は確か、

 

「のほほんと相川と鷹月……だったか?」

 

「うん。そうだよ!」

 

「覚えてくれていたんだ」

 

「俺はアドレス交換した相手を忘れない主義でな」

 

相川清香と鷹月静寐。

国家代表候補生などの大層な肩書は持っていない生徒だが、清香は明るく元気な、静寐はしっかり者の委員長のような感じの女の子だったと和麻は記憶していた。

 

「で、三人とも一緒に昼だっけ?いいぜ。シャーリーもいいよな?」

 

「はい。マスター」

 

和麻は三人と話をしながら教室を出る。その後ろにはシャーリーがトコトコと着いて行き、教室でそれを見ていたクラスメイト達は出遅れたことに歯噛みしていた。

 

 

 

 

 

「それでどうなの?」

 

「どうって何がだ?相川」

 

頼んだ月見とろろそばをすすっていた和麻は、正面に座る清香からの質問に聞き返す。

 

「クラス代表を決めるバトルロイヤルだよ」

 

「八神君、勝てるの?」

 

静寐も心配なのかフォークを置いて、スパゲッティを食べるのをやめる。

 

「何、いろいろ考えているさ。それに当日はシャーリーも頑張ってくれるしな」

 

和麻はそう言うと、隣で和麻と同じ月見とろろそばを食べていたシャーリーの頭に手を置いて、軽くなでる。

 

「八神君食事中に頭を撫でるのはマナー違反だよ」

 

「おっと、悪いな鷹月。シャーリーも」

 

「いえ、マスターの手は心地いいので問題ないです」

 

無表情だがどこかうれしそうに言うシャーリーに清香と静寐はメロメロになる。

 

「あ~ん、シャーリーちゃんかわいい!」

 

「本当にISなの?全然見えないわね。ただの可愛い女の子よ」

 

「はは、ありがとうな」

 

「んう?なんでかずやんが返事するの~?」

 

それまで特大パフェを食べていた本音がそう言うと、和麻もハッとする。

 

「なんでだろうな?」

 

「あれじゃない?娘を褒められて喜ぶお父さん」

 

清香は冗談でそう言うが、和麻はその言葉に少し悲しげな顔をしてシャーリーを見て、

 

「そう、かもしれないな」

 

和麻の雰囲気が少し変わったので、三人は少し不思議そうに顔を見合わせる。だが、三人の様子に気が付かなかった和麻はしばらくシャーリーに目を向け続けた。

しばらく会話が途切れたが、その様子に気が付いた和麻が再び話を再開させた。

こうして昼休みは過ぎて行った。

 

 

 

 

 

「来たわね。和麻君、シャーリーちゃん」

 

放課後、アリーナにやって来た和麻とシャーリーを流無が出迎えた。

水色の下地に白のラインが入ったISスーツを身に纏った流無は、とても魅力的だった。

抜群のプロポーションをした体が、水着と同じくらいの布地しかないISスーツに窮屈そうに押し込められている。

露出の少ないダイビングスーツのような、漆黒のISスーツを着ている和麻とは対照的だ。

 

「へぇ。こいつは眼福だな」

 

「そうでしょう~♪でも見とれるのは後々。訓練始めましょ」

 

「ああ」

 

そう言うと流無の体が光に包まれる。

そして、その身体に水色のISが装着されていく。

四基の水の翼を広げた幻想的な美しさを持つIS『霧纏の水精(ミステリアス・ウンディーネ)』。

和麻も一度見たことがあるが、あの時は薄れていく意識の中にぼんやりと目に入っただけだったので、しっかり見るのは初めてだ。

第三世代兵装であるアクア・ナノマシンで制御された水がスラスターから翼のように広がり、その身体を包み込んでいる姿は水の妖精(ウンディーネ)の名前にふさわしい。

 

「まずは基礎の飛行訓練。どう動けばいいのかわからないと戦うも何もないからね」

 

「そうだな。動かし方がわからないと始まらない」

 

流無の言葉に同意しつつ、和麻は頭の片隅で一夏のことを考える。

昼休み、和麻は少し先に来ていた一夏の様子を見ていたのだが教えを願い出た三年の先輩の誘いを断り、幼馴染の篠ノ之箒から教えてもらうそうだ。

小耳にはさんだことによると、一夏と箒は早速練習に向かったらしい。剣道場に。

 

そこで何で剣道場?と思ったが一応箒にも考えがあったのだろうと、考えるのをやめた和麻はアリーナにやって来た。

 

ちなみに一夏の逆ナンに失敗した先輩だが、今度は和麻のところに来たので和麻がその提案を快く聞き入れ、

 

「では、流無会長と一緒にお願いします」

 

と言ったら急に提案を断ってどこかに行ってしまった。

その時の和麻の様子を見ていた三人は、上げて落とすというえぐい和麻の仕打ちに(一人はパフェの中に隠されていたプリンに)戦慄していた。

 

「じゃあ、頼むぜ。生徒会長様!」

 

「任されました。後輩君!」

 

放課後のアリーナが閉まるその時まで、和麻と流無は訓練に明け暮れたのだった。

 

 

 

 

 

その様子をアリーナの観客席の影から覗く一人の影。

 

「ふーん、なかなかやるじゃない」

 

そして、別の場所にも。

 

「あれが……八神和麻」

 

 

 

 

 

そして、ついにクラス代表を決めるバトルロイヤルの日になった。

すでに放課後となっており、バトルロイヤルが行われる第三アリーナは観戦しに来た生徒たちでいっぱいになっていた。

一組のクラス代表を決める戦いなのだが、いろいろ注目度が高い。

 

男性操縦者の一夏と和麻がどれほどの腕前なのか?

和麻のISシャーリーはどんなISなのか?

イギリスの代表候補生にどう戦うのか?

 

一年生だけでなく二、三年生も押し寄せ、さらには教師の姿もちらほら見える。

 

ISスーツに着替えた和麻とシャーリーは、更衣室で最後の打ち合わせをしていた。

 

「できるだけの訓練はやって来た。大丈夫か?シャーリー」

 

「大丈夫ですマスター。マスターの期待に必ず応えてみせます。私はマスターの専用機なのですから」

 

相変わらず無表情だが、どこか張り切っているように見えるシャーリーに、和麻は「頼りにしてるぜ」と一声かけて更衣室を出る。

廊下を歩き、アリーナへと飛翔するためのピットに入る。

すると、そこには一夏となぜか箒がいた。

一瞬、なぜ無関係の箒がいるのかわからなかった和麻だが、そう言えば箒が一夏のコーチをしているという話を聞いたなと思いだす。

だが、二人の間にあるのは何とも言えない気まずい空気だった。

 

「なあ、箒?ISのこと教えてくれるはずだったよな?一週間、剣道しかしなかったんだが?」

 

「しょ、しょうがないだろ!お前のISはまだ届いていなかったんだから」

 

「だとしても、知識とかいろいろあっただろ!?教科書の内容を教えてくれるとかさ!」

 

「む……」

 

「目をそらすな!」

 

何となく和麻は事情を察した。

どうやら二人はこの一週間の間、ひたすら剣道ばかりしていたらしい。

コーチにふさわしくない相手を選んでしまった一夏を哀れに思うが、そう思うならなんで自分から行動しなかったのだろうか?

和麻は自主的に教科書を眺め、図書館にまで足を運んでISのことを勉強している。何も流無に強制されたことではない。生徒会長でもある彼女は付きっきりで和麻に付き合えないため、その分は自分で何とかしようと行動したのだ。

一夏もそれくらいできたはずだ。

なのにそれをしていないということは、この少年はまだこのバトルロイヤルを舐めている。

先日協力すると言っておきながら、一度も和麻のところに作戦などの相談に来なかったのが何よりの証拠だ。

 

「シャーリー」

 

「はい」

 

「勝つぞ」

 

「はい」

 

誰にとは言うまでもない。ただ流されているやつに、和麻は負けるつもりなど微塵もなかった。それは頼れるパートナーであるシャーリーも同じである。

と、そこに千冬と真耶がやって来た。千冬は落ち着いているが、真耶は慌てて走ってきたのか息を切らしている。

 

「お、織斑君織斑君!」

 

テンパる真耶の様子を横に見ながら、和麻は千冬に近づく。

 

「織斑先生。もうアリーナに出ても構わないでしょうか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「では、いくぞ。シャーリー」

 

「はい。マスター」

 

和麻はシャーリーの手を掴むと、そのままISを撃ち出すカタパルトの上を走り始める。

一夏たちが慌てるのに構わず、二人はカタパルトの先端までたどり着き、走ったことでつけた勢いを殺すことなくアリーナに向かって飛び降りた。

真耶が悲鳴を上げ、観客席からも、いきなり飛び出した和麻とシャーリーに気が付いた生徒たちの悲鳴が聞こえる。

カタパルトからアリーナの地面までの高さは10メートルほどで、もしも落ちたらひとたまりもない。

だが、和麻とシャーリーは慌てない。

ただ、自分たちの信じる力を具現化させるため、その名前を呼ぶ。

 

「来い、叢雲!!」

 

シャーリーの体が光に包まれ、粒子に返還される。

それは和麻の体を包み込み、彼の鎧となる。

 

シャープな曲線をした騎士甲冑を思わせる漆黒の装甲。

装甲を走る蒼いラインは爛々と輝きを放ち、機体を美しく彩る。

背中に装備された超大型スラスターが巨大な猛禽の翼を思わせる。

 

完全に展開され、その全容をあらわにした和麻の専用機IS『叢雲(むらくも)』。

アリーナの地面スレスレを滑空するように飛行し、一気に上昇。

なめらかで美しい飛行で指定されていた位置に滞空する。

 

「ふぅ、訓練通りできたな。どうだ?シャーリー。叢雲の様子は」

 

『エネルギー伝達問題なし。機体異常感知無し。オールグリーン。絶好調です』

 

「オーケー。なら、派手に暴れるか」

 

『見せましょう。私とマスターの力を』

 

「おう……あのデータの準備はいいな」

 

『ええ。もちろんです』

 

「『ふふふ……』」

 

二人そろってあくどい笑みを浮かべる。

どうやらシャーリーも和麻に少し影響されたようだった。

 

しばらくして目の前にセシリアが現れた。

右手に長大なレーザーライフル『スターライトmkⅢ』を持っている。

 

「あら、お早いですわね。そんなにわたくしに無様に負けたいのですか?」

 

「おあいにく様、俺にそんな趣味はないんだ。どちらかと言うと俺は虐める方が好きだ」

 

「あらそうですの?ですが、今日はあなたのご趣味にはお付き合いできませんわ。わたくしと闘う以上、無様に地面に這いつくばる以外有りませんわ」

 

「へ~楽しみにしておくぜ。お嬢様」

 

早くも舌戦で火花を散らす和麻とセシリア。

二人とも余裕の表情を崩さない。

 

(ふん、やせ我慢を。その口がいつまで続くことでしょうね)

 

セシリアは和麻の態度をやせ我慢だと決めつける。だが、試合開始から20分後。彼の余裕が本当のものだったことを悟る。

何せ、和麻の勝利はとっくに決まっているのだから。

 

 

 

 

 

猛禽類のような翼を広げた黒い騎士。それが一夏の抱いた『叢雲』の印象だった。

真耶から提示されたISデータ。

そこに記されているのは日本の第三世代ISであることと、近接仕様のISであることだけ。

待機形態のシャーリーの様子から女の子らしいISなのかと思っていたが、ずいぶんと威圧感のあるISだ。

装甲に奔る蒼いラインの輝きは脈動するように波打ち、まるで生きているかのような錯覚を与える。

 

「気分は悪くないか?一夏」

 

千冬の言葉に一夏は叢雲の機体データから目を離す。

今の彼は先ほど届いた専用機『白式』を身に纏っていた。

叢雲と同じ騎士甲冑のような灰色の機体だが、角ばっていて叢雲よりも厳つい感じだ。

 

「大丈夫だぜ、千冬姉」

 

「オルコットさんもアリーナに飛び出しました。データを表示しますね」

 

一夏の目の前に今度はセシリアのISデータが映し出される。

 

「イギリスの第三世代IS『ブルー・ティアーズ』です。遠距離型の機体ですね」

 

名称と一般公開されている情報のみだが、素人の一夏には詳細な情報など渡されてもどうしていいのかわからないので、それで十分だった。

 

「白式の一次移行(ファースト・シフト)は済んでいない。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は実戦で行え」

 

千冬の言葉の半分も理解できなかった一夏だが、とりあえず頷いておく。

 

「それではいきますよ」

 

真耶に誘導されカタパルトに足を乗せる。

 

「い、一夏!」

 

今から戦いに赴こうとしている一夏に対し、箒は何と言葉をかければいいのかわからなかったが、それでもどうにか言葉を告げる。

 

「勝ってこい!」

 

「おう!」

 

力を込めて返す一夏。

そして、カタパルトが起動し、一夏はアリーナへ飛び出していった。

残された三人のうち、箒は速くアリーナの中の様子を見るために開け放たれていた管制室のドアに向かう。

その様子を千冬は頭を押さえながらやれやれと首を振り、真耶と共にその後を追った。

 

その後ろに流無を張りつかせて。

 

 

 

 

 

アリーナの中心に浮遊する黒、白、青の三機のIS。

 

叢雲

 

白式

 

ブルー・ティアーズ

 

日本製の二機に、イギリス製の一機。

しかもすべてが最新鋭の第三世代IS。現行するISの最先端だ。

 

「間に合ったのか、織斑」

 

「あ、あぁ――おっと、と……何とかな」

 

ふらふらとした飛行で自分の隣にやって来た一夏に声をかける和麻。慣れない飛行動作で悪戦苦闘しながらも、一夏はそれに返す。

 

「危なっかしい飛行だな。ちゃんと練習してきたのか?」

 

「いや、全然できなかった」

 

「おいおい……」

 

一夏の言葉に呆れる演技をしながら、和麻はゆっくりと仕込みをしていく。

 

「誰かに教えてもらわなかったのか?」

 

「いや、ずっと剣道ばっかりやっていた。和麻は?」

 

「ん?親切なルームメイトに指導してもらった。すっげぇ助かった」

 

にこやかに言う和麻に、一夏はうらやましそうな目を向ける。

そんな目を男に向けられても気持ち悪いだけだった。

 

「ずいぶんと遅かったですわね。怖くなって逃げ出したのかと思いましたわ」

 

「待たせて悪かったな」

 

今度は一夏に舌戦を仕掛けるセシリア。

しばしのやり取りの後、管制室から真耶が試合の開始を告げられた。

 

『それでは、試合を開始してください』

 

 

 

 




次回、セシリアフルボッコになると思います。
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