今回は和麻君大暴れです。おたのしみに
それでは、どうぞ!
「それでは、お別れですわね!」
開幕直後の先制攻撃を仕掛けるセシリア。
手に持っていたライフルの連射で和麻と一夏を狙い撃つ。
この一週間の間、ISの動きに慣れる訓練をしていた和麻は難なく躱すが、
「うわぁ!?」
さっき届いたばかりの慣れない専用機を操縦している一夏は左肩にまともに受けてしまう。
(白式の反応に俺が追いつけない!?)
「さあ、踊りなさい。セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる
続けて発射されるレーザー。
「よっ、ほっ」
「うわっ!?ちょ?おおっ!?」
和麻は軽々と、一夏は必死に避ける。黒と白、どこまでも対照的な二人だった。
「やはり、先に狙うべきは」
セシリアは射撃を和麻に集中させ始める。
開始してから一分足らずで和麻のほうが脅威度が高いと認識したのだ。
「やっぱ俺を狙うか」
繰り出されるレーザーの雨。しかし、それを和麻はひらひらと舞うように避けつづける。
「もらった!」
セシリアが和麻のほうに集中した隙に、一夏がその手に近接ブレードを展開して斬りかかろうと接近する。
だが、そんな見え透いた攻撃に対応できないセシリアではなかった。
すぐにその場を離脱し、距離を取る。
和麻を射線に収めながら、一夏の攻撃が絶対に届かない距離を維持するあたり、流石は代表候補生といえた。
一夏は追いかけようとするが、レーザーで狙い撃ちされ、ダメージを受ける。
それが終わると再び和麻に向かってレーザーが雨のように注がれる。
「さっきから逃げてばかり。戦う気もありませんの?」
避けつづける和麻にセシリアがせせら笑う。
「あなたのような逃げ続けるだけの臆病者は、クラス代表にふさわしくありませんわ。サッサと堕ちなさいな」
セシリアがそう言うと、背中の部分からパーツが分離し、独立稼働し始めた。
フィンの形をした四つのパーツ――イギリスの第三世代兵装であるビット兵器『ブルー・ティアーズ』だ。
一機一機がレーザーを放つBT兵器で、IS一機でありながら、複数の相手と渡り合える。
数を増したレーザーの雨が和麻を襲う。だが、
「へー面白い兵器だな。だが、俺には当たらねえよ」
和麻は四方八方から放たれるレーザーを躱し続ける。
時に死角から放たれたレーザーも和麻は難なく回避してみせる。
「あなた、一体……!?」
いくらなんでもあり得ない。ハイパーセンサーは360°把握することができるが、それも意識を向けなければ意味が無い。なのに、和麻は意識を向けるそぶりさえ見せずに、死角からの攻撃を避けているのだ。
ビットのエネルギー補給のために一度呼び戻したセシリアに和麻は種明かしをする。
「お前忘れていないか?俺のISがなんなのか?」
小ばかにするように言う和麻にセシリアは青筋を浮かべる。
だが、次の瞬間にハッとする。
「まさか――!」
「そう。俺のISはシャーリーだ。お前がどうだか知らないが、俺は常にシャーリーが俺の周りを見張り、敵や攻撃の軌道を教えてくれる。俺たちは二人でいまお前たちと闘っている」
それこそが和麻がセシリアの攻撃を避けつづけられた理由。
高度な演算能力を有するISコア。そのコアそのものであるシャーリーが演算能力を駆使して和麻に回避ルートを提示していたのだ。
シャーリーという人格が発現しているIS『叢雲』を駆る、和麻にしかできない方法だった。
まあ、とはいえ弱点はある。いくらシャーリーが予測しようとも和麻に回避することができないルートを攻撃すればいい。
セシリアの攻撃はまるで教科書のお手本のようなワンパターンの攻撃だったからかわしやすかった。もしも、奇をてらった射撃をされたらアウトだ。
その一つが――
「はっきり言うが、お前の多角度射撃は通じない。レーザーが途中で曲がるなりなんなりしないとな」
「くっ……」
和麻の危惧している一つが、
そうとは知らずに言った和麻の言葉は挑発となり、セシリアの顔には悔しさが浮かぶ。
仕方なく、セシリアはビットを再び接近しようとしていた一夏のほうに向かわせる。
いきなり現れた四つのビットに一夏はハチの巣にされそうになり、慌てて回避を取る。
一夏の戦闘を横目にしながら、和麻はセシリアにプライベート・チャンネルを開く。
さあ、ここからが始まりだ。
『ところで、お前さっき俺がクラス代表にふさわしくない云々言っていたが……そう言うお前はふさわしいのか?』
甚だ疑問だという風に問いかける和麻に、セシリアはさっきの悔しさはどこへやら。当然だとでもいう風に言い返す。
『何をおっしゃっているのかしら?クラスを象徴する代表にこのセシリア・オルコット以外にふさわしい『大体、男がクラス代表など恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱に一年間耐えろとおっしゃるんですの!?』――!?な、何ですの!』
いきなり割り込んできた声――聞き間違えるはずのない自分の声にセシリアは混乱する。が、そのセリフは止まらない。
『物珍しいからという理由で極東の猿にクラス代表をやらせるなど困りますわ。わたくしはこのような島国までISを学びに来ているのであって、サーカスをしに来たのではありません!大体、文化としても後進的で低俗な国に暮らさなくてはいけないこと自体耐えがたい屈辱で――』
その後も続いたのは、セシリアはクラス代表を決めるときに行ったセリフだった。
『何って、お前の宣戦布告(笑)』
和麻が、それはそれはあくどい笑みでセシリアに教える。
『あの時さあ。俺授業を録音しようとボイスレコーダーを起動させてたんだよ。そしたら、こんなの録音出来ちまった』
さも偶然だという風に言う和麻に、セシリアはギリッと歯をかみしめる。
『それにしても改めて聞くとひどいなこれ。だってお前――』
――イギリスを破滅させようとしていているんだぜ?――
セシリアは和麻のその言葉の意味が分からなかった。イギリスを破滅?目の前の男は何を言っているのだ?
『やれやれわからないか。いいか?お前の発言。いきなり男性蔑視の問題発言だぜ?公にしたらイギリス候補生の品性が問われるだろうなあ?ただ男性だからと言う理由で人を見下す傲慢なやつってな』
その言葉にセシリアはハッとする。
如何に昨今の世界各国が女性優遇制度を実施しているとはいえ、男性を蔑にしろなどと言うことは言っていない。
何せ、それは人道に反する差別的行為に他ならない。
一昔前ならまだしも、国際社会の一員であるイギリスの次世代ISを操縦する候補生のセシリアが、その禁忌を侵したことが知られたら多大なバッシングを受ける可能性は極めて大きい。
『しかもその次は日本を島国。しかもそこに住んでいる俺達を猿呼ばわりとは。明らかな人種差別だ。流石は黒人を奴隷にした白色人種だな。確実なバッシング対象だ』
イギリスの白人がアフリカの黒人を隷属させ、奴隷として扱ってきたのは誰もが知る有名なことだ。それはとても根深く、長年国際社会で世界中が問題に取り上げつづけ、ようやく黒人たちは解放された。
セシリアの発言は、黒人を人とも思わない白人の言葉だと取られてもおかしくない。
『最後に日本が後進的で低俗な国だと言っているけれどさ~。じゃあ、日本人である篠ノ之束博士が作ったISを日本から分け与えられて、其れに乗って我がもの顔しているお前とお前の国は何なんだ?あとそういえばイギリスって、日本に経済方面で負けていたよな?日本が後進的で低俗ならそれに負けているイギリスってなんなんだ?なんなのか応えてくれないか?日本を低俗呼ばわりしたセシリア・オルコットさん?』
『…………』
セシリアはその言葉に応えられない。何せ、和麻の言う言葉は正しい。
続く言葉が出てこず、沈黙するセシリアに和麻は爆弾を投入する。
『あ、この録音データもう学園に提出したから』
「なあっ!?」
軽く言われた言葉にセシリアはオープン・チャンネルを思わず開き、悲鳴を上げる。
『というか、さっき流した。ほれほれよく見てみろよ。クラスメイト達がお前を見ているぜ?半分が日本人のクラスメイト達が、この場に来たほかのクラスや学年の生徒たちが、自分の国を侮辱したお前をな』
言われてセシリアが見回す。
(あ、ああ。ああああ……!!?)
確かに、クラスメイト達が自分を見ている。誰もかれもが自分を
『ま、自分の国を悪く言われたんだから仕方ないよな。というかもう関係ないか。お前はこの後日本を侮辱したことで訴えられて国に強制送還。代表候補生の資格も剥奪されて、専用機もとられて。IS乗りとしてはやっていけないだろうからな。理解したか?お前にもう後は残っていないってことが』
「だ、黙りなさい!!この卑怯者が!!」
和麻の言葉にセシリアは我慢できなくなってレーザーライフルを撃つ。
それに対し、和麻は一切避けるそぶりを見せない。
だが、その顔は不敵に笑っていた。
「卑怯者?敗者の戯言だろ」
次の瞬間、レーザーがそっくりそのままセシリアに跳ね返った。
「え?きゃあああああっっ!!?」
自分のレーザーをまともに受けるセシリア。
何が起きたのかわからない彼女の耳、和麻の声が届く。
「対物理及び光学兵器用独立稼働シールド『八咫鏡(やたのかがみ)』――」
和麻の前に一つの楯が浮遊していた。
まるで鏡のような光沢を放つその楯こそが、叢雲に装備された武装の一つ。
三種の神器の一つで、神話では天照大神の姿を映し、岩戸の外へと誘い、世界に再び光をもたらした鏡の名前を付けられた防御武装だった。
「天叢雲剣――」
差し出された右腕に光が走り、そこに一振りの剣が生まれる。
彼の八岐大蛇の中から現れたと言われる、一振りの宝剣の名前を冠したそのブレードは、吸い込まれるような漆黒の刀身を白日の下にさらす。
「さあ、ここからが反撃だ」
右手の天叢雲剣を一振り、振るうと装甲に奔る蒼いラインが輝き始める。
『第三世代兵装『雷禍』発動。ナノマシン稼働開始』
そして、叢雲から雷撃が迸り始める。
「な、んですの?それは、一体!?」
「教えねえよ」
和麻は混乱するセシリアに一瞬で近づく。
「い、
「おおおおおっっ!」
天叢雲剣を一閃。セシリアを斬り裂く。
「きゃあああああっっ!!?」
セシリアは斬り裂かれた衝撃と叢雲から生じている電撃の二重のダメージを受ける。
「悪いが休ませる気はないぜ。このまま雷禍の嵐に飲み込まれていろ」
そのまま連続でセシリアを斬り刻む和麻。
そこから先は一歩的な展開だった。
和麻の嵐のような剣劇に加え、電撃による攻撃が息をつく暇を与えない。
ビットを操作しようにも、電撃で操作を行うための思考を邪魔される。
時には腕を掴まれ直接電撃を流し込まれ、その衝撃に悲鳴を上げる。
しかも、先ほどの和麻の一言がセシリアの頭の中で渦巻いていた。
勝っても負けても自分には跡が無いと――。
「八神君一方的な展開ですね」
「おそらく、先ほどプライベート・チャンネルで何かを話していたのだろう。あれが原因だ。あれからオルコットの動きがどうもぎこちない」
管制室では真耶と千冬が戦闘の様子を見ていた。
画面には和麻の連続攻撃になす術もなくなっているセシリア。少し離れたところで、どうすればいいのか困惑する一夏が映っていた。
「でも、一体何を言ったのでしょうか?」
「それはそこの侵入者に聞けばいい!」
千冬はそう言うと、今まで気配を消して立っていた流無に向かって拳を繰り出す。
いきなりの攻撃に対し、流無はその手に持っていた扇子で受け止める。
バシィンと言う鋭い音が管制室に響く。
「あ~やっぱりばれましたか」
「はっ、去年散々手こずらされたからな」
冷や汗を垂らしながらそう言う流無に、千冬はにやりと笑って答える。
拳を元に戻した千冬は改めて流無に問いかける。
「お前は知っているのだろう?一体八神は何をした?」
「別に、これを流しただけですよ」
そう言うと流無はどこからか和麻のボイスレコーダーを取り出し、再生させる。
先日のセシリアの発言がしっかり録音されていた。
「まさか……」
「そう。和麻君はこれを流してオルコットちゃんにこの発言の問題点を説明しただけです。まあ、すこーし嘘をつきましたけれど」
「嘘だと?」
「ええ。この発言をアリーナの全員に聞こえるように流したっていう嘘です。問題点を指摘された後に、そんなことを言われれば観客の生徒たちが自分をどう見ているように見えるか、想像できますよね?」
そう、実は和麻はアリーナにこのデータを流してなんかいなかった。すべてはプライベート・チャンネルでのこと。しかし、セシリアは和麻の嘘を真に受けてしまい、観客が自分の敵だと思い込まされたのだ。
「そうなれば彼女は完全に動揺してしまいますよね?それがタネですよ」
「なるほどな。よくわかった」
「それにしてもだめですよ織斑先生。ちゃんと生徒の問題発言くらい罰してくださいよ。教師ならそれくらいできないと務まりませんよ?ここは軍隊じゃないんです」
「ちっ、わかっている。これが終わったらオルコットには特別補習だ」
悔しそうに言う千冬に、流無はクスクスと笑みを浮かべる。
話を終えた二人だったが、そこに一人の少女が割り込んでくる。
「そんな、そんなこと卑怯じゃないですか!?」
篠ノ之箒だった。
昔から直情的な彼女は、嘘や騙し討ちなどが大嫌いなのだ。
「まあ、確かに卑怯だけどさ。でもこれはオルコットちゃんにいい薬になると思うわよ?」
「……どういうことです?」
流無の言葉に箒は怪訝そうに聞き返す。
「もしもこのバトルロイヤルでオルコットちゃんが勝ってもクラスは歓迎しないわ。考えても見てよ?自分の国を悪く言った人が代表なんてあなたも嫌でしょ?」
「はい。嫌です」
一組には箒を筆頭に日本出身の生徒が過半数在籍している。
実はセシリアのあの発言でクラスメイト達は大なり小なりセシリアにいい感情を持っていないのだ。
「このまま自分の発言の問題点を教えないと、近い将来セシリアちゃんは多くの人たちを敵に回す。人っていうのは孤独に耐えられないのよ。和麻君はそれをセシリアちゃんに身を持って教えてあげているんじゃないかな?」
「はあ。なるほど」
箒は納得したのか引き下がる。
(和麻君、一応フォローはしてあげたわよ)
「では、あの雷は一体?」
「データでは叢雲に搭載された日本の第三世代兵器『雷禍』とのことです」
今度は真耶が箒の疑問に応える。
「装甲のあの蒼いラインの中を流れるナノマシンが発電・雷撃を巻き起こしているのです。ナノマシンをラインから放出したりして攻撃を行ったりしているんです。他にも応用すればいろんなことができるようになる万能兵器になる可能性を秘めているんです」
「未完成でお蔵入りしていたのだが、どういうわけか八神が起動させたときにISが自動的に完成させたらしい」
箒は二人の説明に納得し、再びモニターに目を戻した。
試合は終盤へ向かっていた。
「はっ!」
「うぐっ……!?」
雷撃を纏った突きを受け大きく弾き飛ばされる。
体勢を立て直そうとするが、その前に和麻が突っ込んでくる。そのまま勢いを乗せた回し蹴りがセシリアの脇に入り、大きく吹き飛ばし地面に落下する。
「げほっ、がほっ!」
衝撃に咳き込むセシリア。
彼女の耳にバチバチという何かが弾けるような音が響き、その方に目を向けると――。
「さあ、これで終わりだ」
叢雲の雷撃が一つになって、天叢雲剣に纏わりついていた。
雷撃が剣のようになり、10メートル以上の長さになって見える。
「い、いやあ……」
それが自分に向かって振り下ろされる恐怖に、セシリアは涙を浮かべてしまう。
そんなことに構わず、雷の大剣が振り下ろされた。
誰もがセシリアの終わりだと思ったその時、
「やめろー!!」
そこに割り込む白い影があった。
フルボッコにできたかな。満足できた?