二人の生徒会長 氷霧の姫たちは叢雲と共に   作:竜羽

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IS学園生徒会

「どういうことなんだよ和麻!」

 

一限目の授業が終わってからの休み時間。和麻のもとにやって来た一夏は開口一番和麻に文句を言う。何の文句かというとやはりクラス代表の件だろう。

 

「だから言っただろ?俺は生徒会副会長になったんだ。クラス代表なんて雑用……もとい大役は兼任できない」

 

「いま雑用って言ったよな!?」

 

「ああ、言った」

 

叫ぶ一夏を鬱陶しそうな目で見る和麻。というかなぜこいつは名前呼びをするのだろうか?

 

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

そんな二人に話しかける声。和麻は見えていたが、一夏は後ろを向いていたので振り向いてみると、そこにいたのは昨日のバトルロイヤルで二人と闘ったセシリアだった。

 

「あの、織斑さん。昨日はその、助けていただきありがとうございました」

 

「え、いや、結局俺の勘違いだったわけだし」

 

セシリアの言葉に一夏は何とも言えない顔をする。あれは自分の早とちりだったのだし、その後も何とも情けない負け方をした。

目が覚めた時の一夏に対する、姉である千冬の最初の言葉が「みっともない姿をさらしおって」であった。

実際、かっこよく啖呵を切った割にあの負け方は情けないという他ない。

記録されたそのシーンを、何度も何度も再生して一夏に見せた千冬を、一夏は本物の鬼かと思った。

 

「正直、あの時のあなたは何をしているんだとわたくしも思いました」

 

「うぐ!?」

 

セシリアの言葉に再びショックを受ける一夏。だが、セシリアが言った言葉は、一夏が思っているような勘違いでセシリアを助けたことではなかった。

 

「なぜ、あなたを侮辱したわたくしを助けたのですか?」

 

そう、そこがセシリアのわからないことだった。

勘違いとはいえ、自分だけでなく生まれ故郷までも侮辱したセシリアをなぜ一夏は助けようとしたのだろうか?

 

「え、あ……いや。あの時は当たったらが危ないと思ったから」

 

「……それだけですの?」

 

一夏の答えに、セシリアは少し気が抜けてしまう。

 

「それだけだな。それに誰かを助けたいと思うのに理由はいらないと思う」

 

「そう、ですか……あなたはあの男たちとは違うのですね」

 

「え?何か言ったか?」

 

「いいえ。ふぅ……改めて、織斑一夏さん。先日は本当に失礼しました」

 

頭を下げるセシリア。もう彼女の中に男性蔑視の思いはなくなっていた。

 

そもそもセシリアの男性嫌いは彼女の父親が原因だった。

貴族の出で、いくつもの企業を立ち上げたやり手の母親と婿養子として結婚したセシリアの父親。

常に母親の顔色をうかがい、頭を下げてばかりいる父親をセシリアは嫌い、将来は強い男と結ばれたいと思うようになる。

そんな折、彼女に不幸が訪れた。両親が一緒に乗り合わせた列車で事故に逢い、二人とも帰らぬ人となったのだ。

なぜいつも仲の悪かった二人が一緒に居たのかわからなかったが、そんなことを気にする暇はなかった。

二人の残した莫大な遺産を狙って様々な人物がセシリアに迫った。

そのほとんどが欲に目のくらんだ男たち。

 

両親の残してくれた物を守るために、必死に勉強して今のイギリス代表候補生、第三世代ISの専属操縦者と言う地位を手に入れたセシリアだったが、彼女の中では男性に対する悪印象が決定づけられたのだった。

 

「それと八神さん」

 

「ん?なんだ?」

 

「あなたにもお礼を言いますわ。あなたのおかげでわたくしは間違いを正せました。ですが、次は負けません」

 

和麻に向かって真っすぐ放たれたその言葉に、もはや驕りも油断もなかった。

次は必ず勝つという気概がビシビシと伝わってくる。

和麻はそんなセシリアに対し、不敵に笑うことで返事とした。

次の授業の予冷が鳴ったのは、丁度その時だった。

 

 

 

 

 

 

『おにーちゃんおにーちゃん元気ですか!?遥香は元気ですよ!!』

 

「あーうん、元気だぞ」

 

昼休みの食堂で本音、清香、静寐の三人と昼食を食べていた和麻とシャーリー。そこに和麻のスマホに着信が来た。

食事中とはいえ、着信を断るのは悪い気がしたので相手を見た瞬間――速攻で切った。

何事もなく食事を再開しようとしたのだが、いきなりスマホが繋がった。

そして、勝手にスピーカーモードになっていきなり食堂に遥香の声が響き渡った。

 

全員が唖然とする中、向こう側からスマホを操作した妹に和麻が応答する。というかどうやって離れたところにあるスマホを操作したのだろうか?

 

『ひどいです!元気なら何で切るんですか?』

 

「今食事中なんだ。さっさと用件済ましてくれ」

 

机の上にスマホを置き、和風ハンバーグ定食のメインであるハンバーグを頬張りながら、スマホに話しかける。

 

『実はですね、私もIS学園に編入しようと思います』

 

しかし、次の言葉に驚いた和麻は飲み込もうとしていたハンバーグを気管に詰まらせてしまう。

もがく和麻にシャーリーが水を差し出し、それを受け取った和麻はごくごくと飲みほす。

ゲホゲホ咳き込みながらも、何とか一息ついた和麻はスマホに向き合う。

 

「お、おまっ――お前は一体何を言ってるんだ?!」

 

『なんですか?おにーちゃんは耳がおかしくなったのですか?』

 

「電源切る」

 

『わあああ!!待ってください待ってください!!』

 

和麻がスマホの電源を切ろうとすると、電話の向こうの遥香は慌てる。

その様子にフンっ、と鼻を鳴らした和麻は、電源を切るのをやめて、味噌汁をずずっと啜る。

 

『実はですね、おにーちゃんに会いたくて会いたくてIS学園に無断で行こうと思いまして、IS適性検査を受けてみたところA判定が出ました』

 

IS適性A。それは代表候補生クラスの適正値であり、一流のIS乗りになりうる才能である。

 

『そのうち編入試験を受けますので、待っていてくださいね』

 

「おい、待て。推薦はどうした?」

 

和麻は疑問に思ったことを聞く。

IS学園への編入試験には国家、または企業からの推薦無くしては受けることができない。

 

『更識さんのところの企業からもらいました』

 

「ああ、そうか……」

 

どうやって話をつけた?と和麻は思ったがなぜか聞いてはいけない気がした。

 

『フフ……話の分かる一太刀(ひとたち)、あ間違えた。人たちでした』

 

うれしそうに言う遥香の声を聴きながら、和麻はデザートのフルーツヨーグルトを口に運んだ。

 

 

 

 

 

放課後。和麻とシャーリーは、学園内の案内板に書かれていた生徒会室へ向かっていた。

何やら一夏がいろいろ話しかけてきたが、そんなものよりも和麻は生徒会への興味があったため、無視してきた。

 

「お、ここだな」

 

生徒会室というネームプレートが掲げられた部屋。果たしてあの二人が会長を務める生徒会とは、一体どんな集団なのだろうかと期待に胸を膨らませながら、和麻はそのドアを開けて中に入った。

 

「あら?」

 

中にいたのはメガネに三つ編みのいかにも委員長と言うべき容姿の少女だった。胸元のリボンを見てみれば赤色、すなわち三年生を示す色だった。つまり和麻よりも年上だ。

生徒会室の中には、他にもデスクに向かい合って一心不乱に紙にペンを走らせている金髪の少女もいた。

 

「あなたは、八神和麻君ですね?」

 

「はい。あなたは?」

 

普段は敬語は使わない和麻だが、流石に初対面の年上、しかもまともな感じの虚に対しては敬語を使う。

 

「生徒会書記の布仏虚です」

 

そう言ってあたまを下げる虚。少し硬い感じがするなと和麻は思ったが、それが彼女の持ち味なのだろう。

 

「あなたたちのことはお嬢様からうかがっていますよ。ようこそ、生徒会へ。八神和麻さん、シャーリーさん」

 

会釈しながら和麻たちに歓迎の言葉を言う虚。

彼女に促されて和麻とシャーリーは、備え付けられた来客用のソファーに腰を下ろす。

そんな二人の前に虚が紅茶を入れて持ってくる。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

和麻は出された紅茶のカップに口をつけて、一口飲む。

うまい。茶葉のうまみが程よく出ていて、しかもお茶の温度もちょうどいい。むかし、イギリスで飲んだ本場の紅茶よりもうまいかもしれない。

シャーリーも気に入ったのか、コクコクと紅茶を飲んでいた。いや、もう飲み終わって虚にお代わりを頼んでいる。

 

「お嬢様はもう少ししたら戻ってくると思いますから……」

 

「ただいまー」

 

虚が言い終わる前に生徒会室のドアが開いた。やって来たのは流無だった。

 

「あれー?和麻君何で生徒会室(ここ)にいるの?」

 

「知らないのか?俺今日から生徒会に入ったんだぜ?」

 

不思議そうな顔をする流無に和麻が答えると、とても驚いた顔をする。どうやら本当に知らなかったようだ。

 

「ええ!?私知らないわよ!?どういうことなの虚ちゃん!!」

 

「昨日刀奈お嬢様から連絡がありまして、彼が生徒会役員になると。ちなみに、役職は今のところ副会長と庶務が開いていましたので――」

 

「俺が副会長で」

 

「私が庶務です」

 

和麻とシャーリーが補足する。

 

「あのバ刀奈。私が会長なのに知らせないってどういうことよ!」

 

うがーと怒りをあらわにする流無に和麻が一言。

 

「いや、あいつも生徒会長だろ?」

 

「私のほうが偉いのよ!」

 

ビシッと和麻に向かって宣言する流無。

 

「そもそもIS学園の生徒会長っていうのは、IS学園で最強の実力者のみが成ることを許されるの。つまり、あのバ刀奈よりも強い私のほうが真の生徒会長――!」

 

力強く断言する流無。だが、そこに声がかかる。

 

「あら?誰が私より強いって?」

 

「!?」

 

声の主は新たにドアの前に立つ、流無に瓜二つの容姿をした刀奈だった。

 

「やっほ~かずやん」

 

隣には本音がいて、余った長い袖を旗のように振っていた。

 

「な、なんでこにいるのよ!?今週は私のはずでしょ!」

 

「新役員がいるんだし全員顔見せをする必要があるでしょう?そんなこともわからないの?」

 

フフンッと笑いながら言い放つ刀奈に、流無は悔しそうに歯ぎしりをする。

実は二人の生徒会長がいるため、週ごとに交代で会長職をこなしているのだ。ここまで妥協するのに凄惨な戦いがあったと関係者は語る。もっとも、あまり守られていない時もあるのだが。

 

「はいはーい。それじゃあみんな席について。お互いの自己紹介するから」

 

「ちょっと!仕切るのは私!」

 

言い合いをしながらも二人は生徒会の上座の位置に存在する、少し大きめのデスクに向かう。

デスクの上には右側に刀奈、左に流無の名前のプレートが置かれている。

それぞれのプレートの前に二人が立つと、虚、本音もそれぞれ自分の席に向かう。

 

「それじゃあ自己紹介行ってみよー!」

 

「何であんたが仕切るのよ!」

 

刀奈の号令と流無の抗議を皮切りに、役員たちが自己紹介を始める。

 

「書記の布仏虚です。お嬢様お二人とは幼馴染ですので、たまにお嬢様と呼んでしまいますが気にしないでください」

 

「布仏ってもしかして、のほほんのお姉さんですか?」

 

「あら、渾名呼びとは仲がいいのですね。ええ。本音は私の妹です」

 

柔らかく微笑んで和麻の疑問に応える虚。

 

「和麻君が敬語って新鮮ね」

 

「相手によっては敬語を使った方が取り入りやすいからな」

 

「うんわかるわー」

 

あははと流無と笑いあう和麻。

 

「はいはい。紹介進めるわよー。次はサラちゃんお願い」

 

「分かりました」

 

刀奈の言葉に、さっきまでデスクに向かい合って紙にペンを走らせていた金髪の生徒が返事をする。

胸元のリボンは黄色。刀奈、流無と同じ二年生だ。

 

「会計のサラ・ウェルキンです。先日は私の後輩が失礼なことをしてしまいました」

 

そう言って和麻に頭を下げるサラ。和麻は何のことかわからない顔をするが、ふと思いついたことを口にする。

 

「もしかしてオルコットの事か?あいつがお前の後輩ってことは……」

 

「はい。私は専用機はありませんがイギリスの代表候補生です。私が指導したこともあるのですが、どうやら指導不足だったようで。ホント、ご迷惑おかけしました」

 

セシリアの一件は学園中にかなり広まっており、それは二年のサラの耳にも届いていた。

 

「過ぎたことだしもういいぜ。俺は気にしていない。もしもあんたがまだ気にしているのなら――」

 

「気にしているのなら?」

 

「もう一度ビシビシバシバシ指導してやれ。もう足腰立たなくなるまで」

 

いい笑顔で言う和麻。その時、セシリアに寒気が走ったとか走らなかったとか。

 

「それもそうね。やっぱり鞭かしら……」

 

ぶつぶつと呟き始めたサラをそのままに自己紹介は続く。

今度は本音だった。

 

「布仏本音~。役職は~マスコット」

 

「……マスコット?それは果たして役職なのか?」

 

「まあ、癒し存在?」

 

「愛玩動物?」

 

「目を離すとなにをするかわからない困った妹です」

 

「かわいいですね」

 

刀奈、流無、虚、サラの四人の答えに本音はてへへ~と照れくさそうにする。

 

「最後の大取は私、生徒会長の更識刀奈よ!」

 

「ちょ!生徒会長はこの私、更識流無よ!」

 

二人とも扇子を取り出し広げる。そこには二人そろって達筆で「学園最強」という文字。

 

「あら~先日私に将棋で負けたくせに、まだ最強を名乗るのかな?流無ちゃんは」

 

「その前のチェスは私の勝ちだったわよ!バ刀奈」

 

「その前の早食い対決は私の勝ちよ!」

 

「その前のマラソン勝負は私の勝ち!」

 

ぎゃーぎゃーと言い争いを始める二人を見て、虚はやれやれと首を振る。

 

「すみません。たまにお二人はこのような言い争いを始めてしまうのです」

 

「ふむ。見ている分には微笑ましいですが?」

 

「そうなのですが、適度な時に仲裁に入らないと乱闘になりかねないので」

 

「なるほど……それはそれで面白そうだ」

 

いろいろと、高校生男子的には楽しめそうな光景だ。

 

「それで、生徒会副会長の八神君の席は私の隣になります。シャーリーさんはサラさんの隣。八神君の前です」

 

「サンキュー。じゃあ、仕事とかいろいろ教えてくれ」

 

和麻は虚にそう言うが、彼女は何ともばつの悪そうな顔をして「実は……」と消え入りそうな声で応える。

 

「もう、仕事ないんです」

 

「は?」

 

「その……お嬢様がたがどちらがより多く書類を処理できるか張り合っていたら、いつの間にか全部終わってしまいまして。それも二カ月先の物まで全部、終わってしまいました」

 

「つまり、現状生徒会の仕事は全くないのよ」

 

虚の言葉にサラが補足を入れる。

 

「へ~。それは面白いことになったな」

 

「?なぜです?」

 

「だって面倒な仕事が無くなったってことはこれからいろいろ好きなことをできるんだろ?もう終わった仕事に何か付け加えるのもいいし、新しい試みに挑戦するのも面白そうだ」

 

和麻は何かそうゆうのないのかと尋ねると、虚はそう言えばと一枚のプリントを差し出す。

 

「新入生と上級生との交流オリエンテーションが来週の土曜日に行われることになっています。その企画もすでに出来上がっていて学園長からのハンコをもらったのですが……」

 

「どれどれ……」

 

和麻はしばしそこに目を通すと、プリントを手に持って未だ言い争いを続ける二人のもとに向かう。

 

「おーい。ちょっといいか?お前たちが作ったこの企画だけどさ、ほかにこういうのを入れたらどうだ?今年はせっかく男子が入ったんだし、生かさない手はないと思うんだが」

 

すると、二人はそれまでの言い争いをやめて和麻の意見に耳を傾ける。

 

「なるほど、それは良いわね。でも今から変更間に合う?」

 

「まだ一週間あるから可能だと思うわ。時間もこういう風に変更すれば」

 

「いや、この二つの企画はあえて合体させて、一つの規格にしてみたらどうだ?」

 

「「あーなるほど……む?真似するな!!」」

 

時に刀奈と流無の間で言い争いが起きながらも、それを和麻が諌めて話を進める。

その様子に、虚は目を丸くしていた。

もしかしたら、彼ならば……。

 

こうして、和麻の初の生徒会は過ぎて行った。

 

 

ちなみに……

 

「仕事ないなら、サラがさっきから書いていたのはなんだったんだ?」

 

「ああ、これ?これはお菓子のレシピよ」

 

「お菓子?」

 

「私、料理部にも入っているからね。ここのお茶請けは全部私が作ったの」

 

「おいし~よ~」

 

「はい。美味しいです」

 

本音とシャーリーはマフィンを頬張りながら幸せそうな顔を浮かべていた。

 




く、すずちゃんのところまで行けなかった。
今回話に出たオリエンテーションはオリジナル行事です。ここで簪ちゃんを登場させます。

あ、でもまだ何をするかちゃんと決まっていないので、もしも何か案があればメッセージで送っていただけると嬉しいです。
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