「はい。その招待状です」
ある日のIS学園生徒会。書記の布仏虚が持ってきた書状に、生徒会長の一人である刀奈が疑問の声を上げる。
「それってどんな集会なの?」
もう一人の生徒会長である流無が問いかけると、虚が書状を読み上げる。
「さまざまな学校の生徒会長が集まって交流を深めるというものです。なお、その時に役員を同伴してもいいらしいです」
「「おもしろそうねそれ!」」
目をキラキラさせて虚の話に食いつく二人。
「それでそれで?一体どんな学校の生徒会がやってくるの?」
「どんな人が会長なんだろう」
「そうですね……」
始まる生徒会長集会。
集うのは個性豊かな生徒会長たち。
「絆を深めることで、私たちはより高みに行けるのよ!」
碧陽学園生徒会長――桜野くりむ。
「アナ締めていくぞ!」
桜才学園生徒会長――天草シノ。
「どうも、よろしくお願いします」
駆王学園生徒会長――支取蒼那。
「私の土攻撃に耐えきれるやつはいないのか?」
府上学園生徒会長――烏山千歳
他にも濃いキャラの生徒会長たちが、これまた濃いキャラの役員を伴って一同に会する。
そして、始まる――交流という名の大激突!
ISが、刀が、銃が、魔力が、魔法が、ギャグと突っ込みが入り乱れる戦いの果てに現れる真の敵――その名は教育委員会!
教育員会の横暴に対抗するため、手を組む生徒会長たち。
今ここに、史上最大の戦いの幕が切って落とされる。
エイプリルフールネタですが、マジでやろうかな?
「これよりISの基本的な飛行を実演してもらおう。織斑、オルコット、八神。試しに飛んでみろ」
四月も下旬に入った土曜日。夜にオリエンテーションを控えたその日、一組の生徒たちはグランドに出ていた。
IS学園では土曜日の午前中にもIS関係の授業がある。少しでも多くの時間をIS学習に当てるためである。
「シャーリー」
「はい。マスター」
和麻の呼びかけにシャーリーが応え、体が光に包まれる。その光が一瞬で和麻の体に移動し、叢雲が装着される。
この間、わずか0コンマ1秒。熟達したIS操縦者並みの展開速度だった。
「速くしろ。熟達したIS操縦者は一秒と掛からないぞ」
中々展開できない一夏を千冬が急かす。
慌てて自分の右手に装着されているガントレットに左手を添え、意識を集中させる一夏。
一度操縦者にフィッティングしたISは、アクセサリーの形をした待機形態で装着して持ち歩くことができる。
セシリアは左耳につけられたイヤーカフスなのだが、一夏はなぜか防具のガントレット。だが、一番特異なのは女の子のシャーリーである和麻だろう。
三人全員が展開を終えたところで、千冬の合図がかかり三人が飛翔する。
その中で一番速いのはやはり和麻と叢雲だった。規格外の大きさのスラスターを全開にして、速く高く空をかける叢雲の姿は圧巻。一番早く許された高度まで到達する。
その次にセシリアのブルー・ティアーズが叢雲ほどの速度はないが、綺麗な飛行操縦と十分なスピードで和麻のいるところに上昇し、制止する。
そして、最後に一夏がふらふらしながら、セシリアよりも数段遅い速度で飛んでくる。
『何をしている!叢雲はともかく、白式の機動力はブルー・ティアーズよりも上だぞ!』
通信回線越しに千冬の叱咤が一夏に届く。
昨日、急上昇と急降下の際のイメージのやり方を教わったばかりだが、機動経験の不足している一夏ではそれがうまくできないのだ。
「自分の前方に角錐を展開するイメージって言われてもわからねえよ」
「イメージは所詮イメージ。教科書通りの方法でダメなら、自分に合った方法を模索する方が建設的でしてよ、一夏さん」
ようやく和麻たちのところにたどり着いた一夏に、セシリアが一言アドバイスを施す。
「そう言われても、空を飛ぶ感覚がまだあやふやなんだよなあ。和麻はどうやっているんだ?」
「俺は風に乗る感じだな。翼で風を捕まえて飛び上がる」
また名前呼びされたが、和麻は何を言っても無駄だと思い無視することにした。
まあ、その分のしっぺ返しは今夜のオリエンテーションでじっくりさせてもらおう。
和麻は内心に黒い笑みを浮かべながら、着地に失敗して地面に激突した一夏を眺めていた。
夜。着地に失敗して、グラウンドに大穴を開けてしまった一夏は午後の時間全てを使って勝たず気をした後、疲れた体を引きずって食堂に向かっていた。今の体は激しく食べ物を求めている、早く夕食を食べたいという思いで足を進める。
だが、食堂に着いた彼の目の前に現れたのは『本日休業』のプレートが掲げられた食堂のドア。当然ながら閉まっている。
「う、うそだろ……?」
これは夢だと何度ほっぺたをつねったり、ドッキリだと思いカメラを探したりしたが、現実は変わらない。
一夏がガックリとうなだれていると、そこに一人の生徒がやって来た。
「ここにいたのか一夏!」
「……箒?」
幼馴染の篠ノ之箒だった。走って来たのか彼女の息は少し上がっており、肩で息をしていた。
「一体何をしていたのだ!もう始まっているぞ!さあ、早く」
そう言って一夏の腕を掴み、問答無用で引っ張る。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!始まっているって何がだ?」
「お前忘れたのか?今日の夕食は体育館で新入生と上級生の交流立食パーティだぞ」
「ええ!?そうなのか!」
箒の言葉に一夏は驚く。どうやら今日の行事予定を全く知らなかったらしい。まあ、授業に訓練で忙しかったのだから、仕方ないと言えば仕方ない。
箒に引きずられていく中、体育館の前に二人の前に一人の生徒がいた。どうやら彼女も少し遅れてオリエンテーションに参加してきたようだ。
一夏はその少女の横顔をちらりと見たのだが、少し不思議な感覚を覚えた。
水色という珍しい色の髪をした、気弱そうなメガネの少女だった。
くせ毛なのか内側にはねた髪の所為で、少し暗い感じのする少女だが、どこか儚い雰囲気も持っており、今まで一夏が出会ったことのないタイプだった。
一夏は気が付かない。
箒の声に我に返る少しまでの間、彼女に見惚れていたことに。
この感情に彼が気が付くのは、もう少し先の事だった。
「お集まりのみんなー!食べていますかー?」
「ただ今より、新入生と上級生の交流オリエンテーションを始めたいと思います!」
体育館での立食パーティを楽しんでいた生徒たちに、壇上に上がった刀奈と流無の二人がマイクでしゃべりかける。
二人の姿に、生徒たちは目を向け、見惚れたような溜息を吐く。
何せ、二人はIS学園の有名人だ。
史上最年少で国家代表になっただけでなく、容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群の完璧超人。人を引き付けるカリスマ性まで持っているのだから、当然と言えば当然である。
上級生の間では彼女たちの非公式ファンクラブが去年発足し、一年生も二週間ほどでかなりの人数がクラブに加入している。
「今年のオリエンテーションは少し趣向を凝らした内容にしてみました」
「何と言っても今年はIS学園史上でも初の男子が入学したのです。上級生、新入生を問わず、みんな気になっているでしょう」
「そこで、今からみんなには」
「「宝探しスタンプラリーをしてもらおうと思いまーす!!」」
二人の言葉に、全員が首をかしげる。
そんな生徒たちのために、壇上の端から和麻が現れる。その手にはやはりマイクだ。
「えー生徒会副会長の八神和麻から説明させてもらいます。いいですか?会長」
「おっけー!」
「よろしく和麻君!」
二人に許可をもらった和麻は説明を開始する。
「では。今、学園にはスタンプの置かれた10のチェックポイントが用意されています。そこを巡り、スタンプを集めてもらうわけですが、それと並行して宝探しもしてもらいます。隠されているのはこの……」
和麻はごそごそと懐をあさり、そこから四枚の写真を取り出す。
「『二人の生徒会長』更識刀奈と流無、そして『男性IS操縦者』の俺と織斑(生着替えバージョン)のブロマイドだ!」
その言葉と掲げられた四枚のブロマイド(一夏だけ更衣室での着替えシーン)にうおおおおおおおおおっっ!!!と生徒たちが歓声を上げる。
「ちょっと待てええ!!何でおれだけそんな写真なんだ!?」
一夏は声の限り突っ込みを入れるが、女が三人集まっただけでも姦しいのに、これだけ女子が集まってほぼ全員が叫んでいる中では全く聞こえなかった。
「新入生と上級生が混ざった6人のチームを作り、制限時間2時間の間にスタンプ10個と校舎中に散らばったブロマイドを集めてもらいます。制限時間が終わった段階で、その手に持っているブロマイドを無償で差し上げます。そして、スタンプを全て集めたチームには、集めたブロマイドの数だけ俺たち四人に質問をする権利を差し上げます。なお、会長二人に関しては、どうぞ」
そこで和麻は刀奈と流無に説明をバトンタッチする。
すると、二人は妖艶で小悪魔のような笑みを浮かべながら、
「「あなた達のお願いをきいてあ・げ・る」」
その瞬間、生徒たちの雄叫びが響き渡った。
説明が終わり、生徒たちがチームを組んでゲームスタートの合図をした後、壇上の膜の裏に生徒会メンバーが集まっていた。
「うえぇぇ……バ刀奈とハモらせるとか、気分が」
「うっぷ、それはこっちのセリフよ……」
顔を青くして四つん這いになる二人。そこまで嫌悪感がしたのか?
「うまくいったじゃないか。お疲れ二人とも」
そんな二人を和麻がねぎらう。
「それにしても、よく織斑の着替え写真何て手に入れられたな?」
「ああ、それ?」
ケロっとした様子で刀奈が立ち上がる。実はあれは演技だったのかと思えるような様変わりさだ。
横にいた流無もしっかり立っている。
「織斑先生を買収したわ」
「最高級地酒でね」
グっと親指を立てる二人。息ぴったりの中のよさそうな光景だが、それに互いに気が付いて開いている手で指をへし折ろうとし始める。
「和麻くんは自分の写真はよろしかったのですか?」
「別に問題ないな。俺の写真って言っても証明写真や昔の学校での集合写真だ。あとは昨日二人にとってもらった写真が数枚」
二人をスルーして話しかけてきた虚の質問に、和麻は何でもないように話しかける。
なお、サラは生徒がほとんどいなくなった体育館で、皿を下げたりなどの片づけの指揮をしている。シャーリーはその補佐だ。
で、この四人が今から何をしに行くのかというと、校内に仕掛けられた監視カメラで生徒たちの監視だ。
この競技、いくつか他にもルールがあって手に入れたブロマイドの強奪を禁止している。
そんなことが行われないように教師や警備員が見回りをしているのだが、目が回らないこともあるので生徒会も独自に取り付けた監視カメラの映像を確認し、違反者を見つけたら通報するのだ。
「いくら織斑先生の一喝で強奪禁止を伝えたと言っても違反者は出るだろうしね」
「まあ、それも覚悟でこの企画を考えたんだ。学園長もOKしてくれたんだし、ちゃんと仕事しようぜ。それに、監視カメラにどんなもんが映るのか興味あるしな」
「「それもそうね」」
三人は笑いながら、監視カメラの映像を確認できる部屋に入る。その背中を眺めながら、虚はニコニコ笑っていた。
『あった!見つけたわよ!!』
『うひょおおお!!刀奈会長のブロマイド!しかも上履きを脱いで足を組んで座っているわ!』
『踏まれたい踏み潰されたい!』
『こっちは流無会長がベットの上で横になっていらっしゃるわ!』
『かわいらしい寝顔……ポっ』
『ふへへ織斑君の着替えシーン!これで今年のネタは決まり!』
『和×一?それとも一×和?』
『和麻君のは……シャーリーちゃんを肩車している写真ですって!?』
監視カメラに映る生徒たちの姿には今のところ異常はない。暴力沙汰も無ければ危険な行為をしている生徒もいない。一部危ない雰囲気を纏っている生徒もいたが。
「ぶふっ、和×一って……」
「やっぱり和麻君が攻めでしょ?」
「お前ら実は仲がいいだろ?」
笑いをこらえている双子をジトメで睨んでいると、あるカメラの映像が目に入った。
『一夏の写真は私のものだ!!』
『ちょ!それ竹刀!?』
竹刀を取り出して別のチームの生徒を脅す篠ノ之箒の姿だった。
和麻はさっそくトランシーバーでその近くにいる教員に連絡を取る。
『私だ』
「そこの角を右に曲がったところで恐喝が行われています、織斑先生」
『わかった。すぐに向かおう』
ブツッとトランシーバーの無線が途切れ、和麻がカメラの映像に目を戻すと、そこではすでに千冬の手で箒が沈められていた。
そのまま千冬に引きずられていく箒は、生徒指導室に放り込まれて説教を受けることになるだろう。
「順調に終わりそうだな」
和麻の言葉通り、これ以降はたまに小競り合いがあっただけでつつがなくゲームは終わりを告げた。
スタンプを全て集めたのは二チームのみで、彼女たちによる和麻と一夏への質問がその後、生徒たちの前で行われてオリエンテーションは幕を閉じた。
なお、12人の生徒たちがその夜に刀奈と流無を自室に招いたのだが、そこで何があったのかは誰も知らない。
ただ、次の日の彼女たちと二人の生徒会長は、それはそれはとてもいい顔をしていたそうだ。
余談であるが、篠ノ之箒は生徒指導室で千冬との激しい夜を過ごし、翌日の午前中はベッドに寝込み続けたという。
オリエンテーションの翌日。日曜日の夕方。
IS学園の前に、小柄な少女が立っていた。
「ここがIS学園ねえ……」
にやりと不敵に微笑む少女。口元から除くトレードマークの八重歯がキラリと夕日を反射した。
「待ってなさいよ、一夏!」
今回は少し短いですがキリがいいので。次回、ついにあの子がやって来ます!いやー楽しみだ。
ただ、もうすぐ大学が始まるので毎日更新が厳しくなってきました。不定期になるかもですが、ご了承ください。マジでうちの学科留年率が高いんですよ。一昨年何て半分の学生が留年を・・・