「ふぁぁぁ…眠い。おはよー」
「おはよう、朝ごはんはできてるからさっと食べちゃいなさい」
「はーい」
とある島国―――――日本。
とある県の静かな住宅街にある和風の一軒屋にて。
「んー…特に何もない」
「またアニメとかゲームの話?少しは外で遊んだら?」
「1人で遊んだって暇だよ…それに、ボクは運動はしてるんだしさ」
「まぁシャオの人生だし、やる事はやってるから口うるさくは言わないけど。
VR技術に興味あるの?」
「面白そうだなー程度だよ」
青みがかった銀髪の少年は新聞の記事を流しながら朝食を取る。
「そう。ま、今日も学校だし、ちゃっちゃと食べて学校行きなさいよー」
「はーい…ごちそうさま。それじゃ、行ってくるねー」
「宿題とかちゃんと入れた?」
「ちゃんと確認したから大丈夫だよ。いってきまーす」
「気を付けてねー」
少年、シャオ・クロニクルは日差しの強い中、鞄を手に学校へと向かう。
ガラッ
「おや?」
「ん?えっと…ウチに用ですか?」
「ああ…ここにシャオ・クロニクル君が住んでいるはずなんだが」
「ボクに何か?」
「キミが…時間はあるかい?」
「すいません、これから学校なんで終わってからじゃないと…」
「そうか…ならその時間にまた出直すとしよう。一応、私の名刺を渡しておくよ」
「は、はぁ…それじゃ失礼します」
シャオは名刺を受け取った後、ポケットへと入れ、学校へと走っていった。
そして男は車へと戻り―――――
「用事は終わったのですか?」
「いや、彼は学校らしくてね、終わったぐらいにまた来ることになったよ」
車に乗っていた少女は男へと声をかける。
「そうですか」
「どうかしたかい?」
「いえ、茅場さんが探してた子が小学生ぐらいだとは思わなくて」
「ああ…私が"メディキュボイド"の研究をしているのは知っているだろう?」
「ええ」
「それを使用する子が少し訳ありでね、彼の力が必要なんだ」
「なるほど…医療関係ですか」
「…まぁ、詳しいことは夕方、彼が帰ってきたときに話すよ」
そういって茅場と呼ばれた男は車を発進させた。
そして、シャオはというと―――――
「…茅場昌彦…確か天才ゲームデザイナーでフルダイブ技術の研究をしてるって記事があったっけか。そんな人がボクに用事ってなんだろ…?」
もらった名刺に書かれた名前を見て驚きつつも茅場の要件がなんだったのかを考える事で
いっぱいだったのか、あっという間に学校が終わり―――――
「来客かな?ただいまー」
「あ、シャオ。おかえりなさい。貴方にお客様よ」
「客?」
「茅場さんっていう人が」
「朝の人か…」
シャオが家に帰ってくると敷地内に見慣れない車を発見し、疑問に思いながらも
自宅へと入ると母親から茅場が来ていると聞かされ、荷物を底に置いて茅場の待つ
居間へと入っていった。
「茅場さん」
「ああ、シャオ君。すまないね」
「いえ…茅場さんほどの人がボクに用事というのは?」
「その前に彼女を紹介しておこう。彼女の名前は―――――」
「初めまして、シャオ・クロニクル君。私は天桜 悠姫といいます。其方とは1つしか変わらないので敬語じゃなくていいですよ?」
「…初めまして、シャオ・クロニクルです」
「…彼女は私の研究の手伝いをしてくれている子で…まぁ君に用事があって来ているから
率直に言おう。君のご両親は英国生まれだね?」
「そうですけど…」
「そして君は1%程度しかいない変異遺伝子の持ち主なんだ」
「変異遺伝子…ですか?」
「解りやすく言えばHIVの患者を救うことができるかもしれないHLA型(ヒト白血球抗原型)を
持っているんだ」
「HIV…ですか」
「HIVは不治の病とされているが、世間が騒ぐほど危険なものではないんだ。
もちろん、取るべき措置を取っていれば、だがね?そこで君に骨髄液の提供に協力して欲しいんだ」
「骨髄液ですか?」
「まぁ骨髄移植する際に使用するもの、と思ってもらえばいいよ。まぁ詳しく言い出すと
専門用語ばかりになってしまうからね…私はとある医療機器の開発と研究をしていて試作1号機を使う患者がHIVで…君が協力してくれるのであればもしかすれば救えるかもしれないんだ」
「……。」
「茅場さん、流石にシャオ君も子供ですし、いきなり言われて、はい協力します…とはいきませんよ。それに本人だけでなくご家族の意思の確認も必要ですし」
「茅場さん、1日…時間をいただけますか?」
「解った。急に押しかけてきたのはこちらだからね、1日と言わず待とう。
見ず知らずの…他人を助ける事ができると言われてもピンとこないだろう…調べるもよし、相談するもよし…ただ1つ、君が後悔しない選択を期待しているよ」
「すいません」
「構わない…気持ちが決まったら渡した名刺に書かれている番号にかけてきてくれたまえ」
「解りました」
そしてその日はそこで話は終わり、茅場と悠姫が帰った後、母親に茅場とのやり取りを
説明した。
「そう…シャオ…貴方はどうしたい?」
「ボクは…誰かを助けれるなら提供してもいいと思ってる」
「100%助からないとしても?」
「うん…ただ、HLA型 (ヒト白血球抗原型)っていうのが適合する人に使われるって話だから…0ではないと思う」
「…私は他人の為に貴方がリスクを負う必要はないと思ってる…けど、それは貴方の人生…
本当に提供することに後悔しないというなら…」
「後悔しないよ…それは絶対…ドナーを待ってる人は多いって聞く…それだけ生きる事を
あきらめてない人も多くいるって事だと思うから」
「…そう。なら私から言うことは何もないわ。貴方の思うようにやりなさい」
「…ありがと」
シャオは母親と話し合った結果、提供することを決め、翌日、茅場へと連絡を入れた。
その後、茅場とのやり取りを何度か行いシャオは骨髄液の提供を行った。
勿論、適合したとしても相手の個人情報を開示されることはないのだが。
そして、シャオが13歳…中学に上がった頃、世間では世界初VRMMO…ソードアートオンライン、
通称SAOの話題で盛り上がっていた。
シャオもβテストに申し込みするも当選することはなかったが日本で1万本限定で
発売されるとなり、さらに話題は膨れ、競争率も高い中―――――
「ただいまー」
「おかえり。どうだった?」
「かなり人いたけどなんとか入手できたよ。流石限定一万本」
「ゲームもいいけど、ちゃんと勉強とかもするのよ?」
「はーい。一応プレイ中は自室にいるけど、できるだけ体には触らないでね?」
「はいはい。解ってるわよ…それでもちゃんと夕飯の時とかは終了して来ること。いいわね?」
「うん」
シャオはなんとかSAOとナーヴギアを手に入れSAOサービス開始時刻13時を待ち―――――
「さて…リンクスタート」
シャオはSAOの世界へと足を踏み入れる。
その先に悲劇が待ち受けていることなど…この時、誰も知る由はない。