思いつきの為、時系列や視点等いろいろとぐちゃぐちゃになると思いますが、よろしくお願いします。
遠山兄弟-金一、金次、GⅢ、金女の四人-は巣鴨の実家、その庭に横たわり、末妹の金天は居間で怯えている。
キンジは己の伏す草の香りのする土から痛みに耐えながら顔を動かす。その視線の先には、金一、GⅢ、かなめが痛々しく横たわり気を失っている。
-何故こんなことになってしまったのか、何故‶アレ″がここにいるのか…-
そんなことを薄れる意識の中でキンジは考える。そして、意識が途切れる間際の目に映るこの惨劇の犯人に呻く声で呟く、
「な…なんでなんだ……、姉さん………。」
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-キンジ視点ー
武装検事となる為に勉学に励む。そう決心してからというもの、それを妨害するかの如くトラブルが飛び込んでくる日々、挙句金欠。まあ、金があったことの方が珍しいけれども。
「今日は随分と集中できたな。」
窓を見ると夕日が落ちていくところだった。毎日が騒々しい、そんな俺の周辺が今日は珍しく静かで予想以上に勉強が捗ったのだった。
「もう夕方か、そういや昼飯も食べてなかったな…。」
集中が解け、自身の空腹に気が付き、冷蔵庫や戸棚を漁るも、
「何もねぇか。」
外に行こうかと思い立ち上がると、スマホが着信を告げる。
「誰だ。」
液晶には『遠山金一』の文字が表示されている。兄さんが、と珍しく思うも電話をとった。
「金次か、今は家にいるのか。」
「ああ、兄さん、どうしたんだ、家にいるけど、電話なんて珍しいじゃないか。」
「そうか、爺ちゃんからご馳走があるから家族で集まろうと突然連絡が来てな、お前のことだから何か巻き込まれていないかと思ったが、来れるようだな。伝えておく、爺ちゃんたちも喜ぶだろう。」
「分かった、それじゃあ今から行くよ。兄さん、連絡ありがとう。」
「ああ、それじゃあ、また後でな。」
今日の俺はどうやらツイてるみたいだな、金も食い物も無い時にご馳走とは。しかし突然‶家族で集まろう″なんて爺ちゃんも珍しいな。まあ、兄さんが生き返ったり(死んでないが)、孫が2人も増えたり(俺も最近知った)と賑やかになったのが嬉しいのだろうと深く考えずにご馳走にありつけることに歓喜し、家族団欒の為に巣鴨へと向かうのだった。
‶家族で集まる″この意味を考えていれば、そう後悔するまで、それ程時間は有しなかった。
「お兄ーちゃん。」
「おう、兄貴も来たか。」
実家に着くと、庭でバーベキューの準備をするGⅢとかなめがいた。
「もう来てたのか。兄さんとかなでも来てるのか?」
「キンイチはまだだ、パトラが来れねーから家のこと済ませて来るってよ。」
「かなでちゃんはお婆ちゃんと遊んでるよ。」
GⅢとかなめは楽しそうに炭を並べている。家族団欒が楽しみのようだ。
「バーベキューとは珍しいな。」
婆ちゃんの事だから豪華な和食だと思い込んでいた。まさか肉とは、栄養の足りない俺には有難いメニューだ。
「BBQといえばアメリカだ。年中金欠の兄貴に本場のBBQを味合わせてやるよ。」
「お兄ちゃん、楽しみにしててね。」
根っからのアメリカン気質のGⅢとアメリカ育ちのかなめが準備してくれる間に爺ちゃんたちに挨拶しておこう。
「それじゃあ準備は任せた。俺は爺ちゃんたちに挨拶してくる。」
2人に告げ、家へと入る。
玄関を開け、居間へ向かう。居間には爺ちゃんと婆ちゃん、それにかなでがいる。
「ただいま。」
「お兄ちゃん様‼」
俺の声で振り向いたかなでは笑顔で俺へと駆け寄ってくる。
「おお、来たか。」
「おかえり、キンジ。急な誘いでごめんねぇ。」
かなでの頭を撫でてやっている俺に爺ちゃんたちが声を掛ける。
「いや、ちょうど食い物が切れてて、助かったよ。でも、肉なんて珍しいな。嬉しいけど。」
「万馬券よ万馬券。」
豪快に笑う爺ちゃん。なるほど爺ちゃんの幸運に感謝だな。
「せっかく孫たちが来てくれるんだから、いつもの食事より若い子たちが好きそうなものをと思ってね。」
婆ちゃんは家族が揃うのが嬉しいのか楽しそうに話す、婆ちゃんが俺たちを気遣ってくれて嬉しいが申し訳なさもある。いつも貧しい食事の俺にとってまともな食事であればそれだけで有難いのだ。それが表情に出ていたのだろう。
「私たちも偶にはお肉を食べて元気をつけなくちゃと思うしね。それに、今日は‶孫たちの為の食事″だもの。」
婆ちゃんが爺ちゃんと頷きながら嬉しそうにしているのを見て、何も言えなかった。
俺は庭に出て弟たちを手伝っている。かなでは縁側に座り、俺たちを楽しそうに眺めている。あらかた準備が終わったころ、塀の先に兄さんの頭が見えた。
「おっ、キンイチも来たみてぇだな…。」
GⅢが火を起こす準備をしながら呟く。兄さんはその場から動かない。
「おーい、兄さんー。」
俺が声を掛ける、兄さんは少し振り向き強張った顔で俺たちに瞬きで合図を送った。
『ニ・ゲ・ロ』
あの兄さんがここまで追い込まれる相手がこの先にいる。そう察した俺たちは、武装を整え、かなでや爺ちゃんたちの安全を確保を思案するが、ヒステリアモードですらない俺にとって、この状況で戦う、逃げる、どちらの選択肢も活路を見いだせない。このタフな弟をを囮にしてかなでたちを連れて逃げるか等、考えていると、
「この、馬鹿者がぁぁー。」
怒声とともに大砲が放たれたような轟音が鳴り、兄さんが塀をブチ破って飛来し、地面に塀の瓦礫と共に落ちる。
「兄さんっ!」「キンイチっ‼」
俺とGⅢが兄さんに駆け寄る。兄さんから返事はなく、気を失っている。
「糞っ、どうなってやがる。」
目の前の惨劇に怒りと恐怖がGⅢを襲う。俺は兄さんを倒したと思われる人物の声に引っ掛かりを覚える。あの声が以前と変わり少し低くなっているとしたら…。俺が最悪の答えに辿り着こうとしている時、崩れた塀から舞い上がる砂埃に人影が映る。
「ふざけやがって…、アメリカじゃあ勝手に家に入った奴は殺されても文句は言えねぇんだよ。かなめっ、援護しろ。」
「わっ、わかったっ!」
GⅢとかなめが塀へ向かって飛び出た。
「おい、やめろっ‼」
兄さんが電話で言っていた‶家族で集まる″、婆ちゃんが言っていた‶孫たちの為の食事″…。最悪の答えを導き出してしまった俺は飛び出した2人を呼び止めるが
「邪魔だ。」
崩れた塀を越え、庭に入ってきたその人物は、虫を払うように左手の一振りする。2人が地面に叩きつけられた。
「くそっ、GⅢっ‼かなめっ‼」
声を掛けるも返事はない、意識を刈り取られているようだ。
「かなで‼ 爺ちゃんたちのところへ逃げろっ。」
縁側に目をやり、怯えるかなでへ向かい叫ぶも
「うぅぅ…」
怯え切ったかなでは腰が抜けたのか、ペタンと座り込んで動けないでいる。
ガラガラと瓦礫の崩れる音と共に殺気が一歩ずつ近づいてくる。上下左右360°からレーザーポインターを当てられている、身動きも取れないような殺気が俺に向けられ、徐々に強くなっていく。
ジャリッ そいつが一歩、近づいた。あまりの殺気に耐えられず、俺は膝から崩れ落ちる。逃げなければ。頭では分かっているのに身体が全く動かない。恐怖に支配された俺は左手で胸倉を掴まれ、力任せに立ち上がらせられる。そして――
「この軟弱者がぁぁー‼‼」
強烈なボディーブローで沈んでいくのだった。
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「うっ。」
痛みに呻きながらぼんやりと目を開くと、畳の上にいた。痛む身体を起こし、キョロキョロと辺りを見渡す。…どうやら実家の座敷のようだな。気を失った後、ここに転がされたようだ。時計を見れば、あれから2時間近く経過しており、それだけの間気を失っていたことになる。かなり手加減されたようで殴られた箇所がジリジリと痛むだけだ。恐らく兄さんたちも無事だろう。座敷には俺しかいない、痛みと空っぽの腹を擦りながら、皆を探す為、座敷を出る。とりあえず居間へ向かおう。
「この大馬鹿ものっ‼ 下らん理由で死んだと偽り、金次を不安にさせよってっ‼」
居間では仁王立ちした鬼に正座させられた兄さんが説教されていた。鬼に見つかる前にずらかろう。そう思う間もなく鬼がこちらを睨む。
「ようやく起きたか、金次。そこに正座だ。金一は行ってよし。」
兄さんが逃げるように居間を出て行き、すれ違いざまに憐れむ視線を向けられた。鬼から見えないとこにいるのになんで分かるんですかね。そう思いながらも逃げたら後がもっと怖いので素直に従い兄さんのいた場所に正座する。
正座した俺を見下ろす鬼―我らが遠山家の長女、遠山金虎―は、その無駄にデカい胸を持ち上げるように腕を組み、言葉を紡ぎ始めた。
「凡そ1年ぶりになるのか、金次。この1年、お前の話を何度か聞くことがあった。」
姉さんは、しみじみと振り返る様に瞳を閉じてゆっくりと言葉を紡いでいる。
-1年前-兄さんが死んだことになった事件の後、絶望で塞ぎ込む俺の前に姉さんは現れた
塞ぎ込み、自室に籠っている俺の前にくの字に変形した玄関のドアが轟音と共に襲来した。驚く俺の目の前に瞬間移動したのかという速さで立った姉さん、目の前で起こる異常現象に処理能力がパンク寸前の俺は、
「いつまでめそめそしているっ‼そんなことで遠山の男が務まるかっ‼」
姉さんの声で苛立ちを覚え、拳を握り声を荒げる。
「兄さんが、死んだんだぞっ‼平気なわけあるかっ‼兄さんは俺の憧れだったんだ…、目標だったんだ…、それなのにっ、それなのにっ…。」
怒りと悲しみで涙が溢れ出し、涙でいっぱいの目で姉さんを睨みつける、握っていた拳が震えだしていた。
「あぁぁぁぁーっ‼」
そして叫びながら姉さんに拳を振りかぶる。しかし拳は姉さんの顔の前で止まり崩れ落ちる。
「どうした、殴らないのか。」
姉さんの落ち着いた声が静かに響く。
「分かってるんだよ…、俺が姉さんを殴っても、何をしたって、何も変わらない…。分かってるんだよっ‼」
「馬鹿者が…。」
床に拳を叩きつけながら嗚咽交じりに叫ぶ俺の前で姉さんは片膝をつき、俺を抱きしめた。そして俺を落ち着かせるために、ゆっくりと優しく背中を撫でてくれている。感情や愛情の基本表現が肉体言語だった姉さんが見せた優しさに涙が止まらなくなる。姉さんは俺が泣き止むまで手を止めずにいてくれた。
「姉さん、その、ありがとう…。」
泣き止み恥ずかしくなった俺は顔を上げ呟くように礼を言いうと、姉さんはフンッと鼻を鳴らし、照れくさそうに立ち上がるとクルリと背を向け玄関へと歩きだした。
「愚弟にひとつ教えてやる。遠山の男は殺されようとも死なんぞ。」
姉さんは、こちらを振り返ることなくそう言い放ちやって来た時と同じように一瞬で姿を消した。呆然と立ち尽くしていた俺は部屋を見渡す。
「姉さん…、玄関の修理どうすんだよ…。」
-
それ以来姉さんは、連絡も無く、何処にいるのかさえ分からなかった。あの時の修理費を請求せねば、そう考えていると姉さんが話を続ける。
「強者を求め、諸国を旅しているとお前の様々な武功の噂を耳にした。腑抜けておった愚弟が活躍する話に歓喜したぞ。」
嬉しそうだな姉さん。それってEUとか極東戦役のこと?俺的には黒歴史なんだけど。誰だよそんな話したやつSDAが上がったのもそいつらのせいだろ…。しかし姉さん、嬉しそうだけどなんで正座させられてるんだ?疑問に対し思考する間もなく、姉さんの笑顔が消える。
「それがなんだ、英国での情けない話はっ‼」
ヤバい、怒ってる。えっ、なに、イギリス?何だ?確かにいろいろやらかしてるけどさ。俺が姉さんの怒りを前にあたふたしていると。
「おい、姉貴、肉焼けたぜ。熱いうちに食えよ。」
「ん、おお、金三、すまんな。」
GⅢが焼きあがった肉を皿に載せてやって来た。姉貴呼びなんだな弟よ…。恐らく俺が気絶している間に説明があったんだろう。そして、金三呼びで怒らないってことは力関係がはっきりしたんだな。
肉を前に姉さんの怒りが静まる。姉さんは肉が好物だ、それこそ名前の通り虎の様に食う。ここはGⅢの絶妙な援軍に感謝する。『よくやった』と目配せすると、GⅢはへッと笑い、
「おい、兄貴も姉貴も、せっかくなんだ、庭で食おうぜ。話はそっちですりゃいい。」
「仕方ない。」
肉の誘惑に屈した姉さんが皿を受け取る。「ナイス」っと心で叫ぶ俺を猫を摘まむ様にぷらーんと片手で持ち上げ庭へ向かって行く。
逃げられないんですね。知ってました。姉さんに重さの概念は無いらしい。無力な俺は回避できない説教と肉を味わうべく運ばれていったのだった。
「遅ーい、もう食べてるよー。食べる前にお説教なんて非合理的だよ。」
俺たちが庭に出てくるのを見たかなめが、かなでの皿に肉を載っけてやりながら笑う。
「俺たちもさっさと食おうぜ、説教なら食いながらでもできるだろ。」
「そ、そうだ、姉さん。一番旨い時に食わなきゃ、用意してくれた爺ちゃんたちに失礼だ。」
俺は、GⅢが出してくれた助け舟にすぐに乗っかる。姉さんは仕方ないという感じで俺を掴む手を放した。解放された俺はバタバタとバーベキューコンロへ駆け寄り、肉に食らいつく。熱い、しかし旨い。空腹に染み渡っていく。
「行儀が悪いぞキンジ、かなでも見ているんだ。…随分腹が減っていたみたいだな。」
兄さんが笑いながら俺を窘める。
「ああ、昼飯も食ってないままあれだからな。」
縁側に座り、上機嫌で肉を平らげていく姉さんをちらりと目線で指す。
「俺も驚いた。まさか戻ってきているとは思わなかったからな。…まだ終わってないんだろう?」
最後だけぼそぼそと小さく兄さんは訊ねてくる。幼い頃より姉にボコボコにされながら育ってきた可哀そうな兄弟二人は恐怖の権化たる姉に聞こえぬよう会話する。
「まだだよ…、恐らくあの皿が終わったら来るぞ。兄さんは大丈夫だったのか?」
姉さんの持つ大盛の肉皿を盗み見ながら兄さんに質問を返す。あの量だと5分といったところか…。
「俺の件はほとんど最初の一発で終わった。イ・ウー潜入の件を誰にも教えず家族を悲しませたことは俺も悪かったと思ってるからな…。」
実際には、誰にも言えない任務だった為、仕方のない部分が多いのだが、去年、悲しみに暮れる俺を見ていた姉さんは俺の代わりに兄さんを殴ったのだろう。なんやかんや情に厚いところがあるからな、姉さんは。
「しかも、『そんな訳の分からない連中は正面突破で殴り倒せばよかろう、回りくどいことをしおって』だとよ。」
思わず苦笑いする俺と兄さん。あの化け物揃いのイ・ウーに正面から乗り込んで、全員を無力化するなんて夢物語で実際やれば手の込んだ自殺だ。出来るわけない。…出来ないよね…。あの姉なら出来そうで怖い。
「待てよ、俺がイ・ウーに入った時にシャーロックが…『歓迎するよ、前に勧誘した彼女とは似ていないみたいだね。』と言っていたが…、違うよな…。」
兄さんが不安そうに呟く。違う、いや絶対に違っていて欲しい。そんな俺たちの願いは遮られる。
「おい、兄貴時間だぜ。それに面白そうな話してんな。」
ニヤニヤとGⅢが死刑執行人の様に寄ってくる。その後ろには肉を平らげ満足げな姉さんがいる。2分、予定より早すぎるっ‼まだ全然食ってないぞ。
「姉貴、シャーロック・ホームズって知ってっか?」
楽しそうに姉さんへ質問するGⅢ。こいつ聞いてやがったな。
「シャーロック…、ホームズ…」
記憶を遡るように名前を復唱する姉さん、
「覚えのあるような、ないような…?」
世界一有名な探偵の名前が分からないポンコツ頭脳の姉さん。脳みそは相変わらず強くなっていないようだ。
「髪型はオールバック、英国紳士然とした立ち振る舞い。未来予知にも等しい推理、条理予知を扱う男だ。」
兄さんがシャーロックの特徴を紡ぐ。姉さんは少し考え、ポンと手を叩く。
「ああ、あの推理だなんだとうるさい男か。なんとやらの一員になれと誘ってきたがあまりにも推理、推理うるさいから殴ってしまったら、推理が外れただのごちゃごちゃ言っておったが…。なにかまずかったか?」
それがどうした、といわんばかりの表情で俺たちを見る姉さん。兄さんが頭を抱えている。『なんとやら』って…、イ・ウーだよっ‼実質片仮名2文字‼そのくらい覚えてくれよっ‼シャーロックが推理出来ないレベルの脳筋な姉さんは、その時のことを思い出したらしく、「そもそも、推理だなんだと下らん、己が肉体をもって正面突破してこその――」とブツブツ言ってるし、GⅢはGⅢで「姉貴って面白れぇな。」と俺に同意を求めてくる。…もうやだ、この姉と弟。
「それで姉貴、兄貴になんでキレてんだ?」
おのれGⅢ、余計なことを。鳥頭の姉さんが思い出しちゃうだろうが。
「おお、そうだった。金次の様々な武功を聞いて褒めてやろうと思っていた矢先に英国で実に不愉快な話を聞いたのだ。」
姉さんは、そう言いながら沸々と怒りが再度湧き上がってきている。
「右手は使わんとか言っておった、名前は…、なんだったか…?…接着剤…。」
うーん、と姉さんは考え込む。名前くらい覚えようよ。てか、サイオンだろそれ。「セメダイン…、いや、アロンアルフア…」と呟く姉さん。違う、ボンドだよっ‼強すぎる為に、ハンデとして利き腕は使わない、世界最強のエージェント-007-サイオン・ボンド。そんな奴を接着剤で覚える姉さんはいろいろと残念過ぎる。まだ思い出せずうんうん唸ってるし…。
「ボンド…、サイオン・ボンドのことか?」
仕方がないので姉さんに聞くと
「おお、そんな名前だった。ボンドだ、ボンド。」
それだ‼と頷き、
「そのボンドに負けたと聞いたぞ、全く情けない。本気にさせずに負けるなど、精進の足らぬ証拠故、鍛えなおしてやる。」
クワッ、と目を開き、俺の胸倉を掴みながらそんなことを言う姉さん。
「まっ、待ってくれ姉さん。サイオンは世界最強のエージェントなんだぞ、そんな奴相手に生きて帰ってきたんだ、十分頑張った方だから。」
サイオンの強さを知る俺は情状酌量を訴える。
「そうだぞ、姉さん、キンジだって頑張っている。次はお互い全力でやり合えるはずさ。」
「007とやり合って、『面白い奴』扱いされるのは兄貴くらいだぜ、姉貴。」
同じく、サイオンの強さを知る兄さんとGⅢが俺を援護してくれる。
「世界最強だと…、あれがか…、そんな訳ないだろう‼」
姉さんの怒気が増す。
「右手を使わせたが弱かったぞっ‼あの程度で世界最強などあり得ぬっ‼」
姉さんの言葉によって俺たちの時間が止まった。
サイオン、右手使っちゃったの?そもそも姉さんと戦ったの?弱かった…?あの程度…?訳の分からん情報が錯綜し混乱の渦を巻く。
「…姉さん質問していいか?」
兄さんが小さく手を挙げる。
「なんだ。」
「姉さんは、なんでサイオンと戦ったんだ?」
「金次に勝った、強者と聞いたからだ。」
GⅢが続けて質問する。
「どうやって右手を使わせて勝ったんだ?」
「強者と聞いていたため、手始めに殴ったのだ。そしたら我が拳受けた奴の左手が折れてしまってな…。そこから本気になったようで、右手を使いだしたので、適当にいなしながら少し強く殴ったら動かなくなってしまってな…。」
「加減を間違えた。」と申し訳なさそうに言う姉さんに唖然とする俺たち。質問したGⅢさえ理解が追い付かない様子だ。
「う、動かなくなったって…。」
「あっ、いや、死んでないぞっ‼…多分。」
俺の疑問に少し焦って答える姉さん。多分かよ。そして、小さく咳払いし
「つまりだな、あの程度に負ける情けない愚弟に喝を入れ、鍛えなおしてやろうという話であって、済んだことはどうでもいいだろう‼そもそも、あの程度を最強など、お前たちが軟弱なだけだっ‼」
「「「いや、姉さん(姉貴)の基準がおかしいっ‼」」」
「なっ、私のなにがおかしいというのだっ‼」
甚だ心外だと腕を組む姉さん。
「「「全部だよっ‼‼」」」
俺たちの心からの叫びだった。
金虎の見た目のイメージは、閃乱カグラの大道寺先輩です。
キャラ設定等は随時更新出来たらいいなぁと思ってます。