―冷泉為和視点―
デスクワーク中、ひと息つく為にコーヒーを口にし、ふう、と息を吐く。事務処理は嫌いではないが、こうも長くパソコンと書類に向き合うと、体が凝り固まる。ぐーっと伸びをすると、パキパキと背中が鳴る。
「さて、もう一息だな。」
パソコンに向き合う前に、気合いを入れるべくスマホを見る。先日、キンジくんから、一万円で譲って貰った画像―僕と遠山さんが隣り合う―を見ると、気合いとやる気が高まり、頬が緩む。エナジードリンクなんかよりも遥かに効く。こんなに素晴らしいものを、一万円で譲ってくれたキンジくんには、今度お礼をしよう。
緩んだ頬を引き締め、パソコンに向き合い、作業を再開する。カタカタとキーボードを打ちながら、考える。遠山さんにスマホを渡してから数日が経ったが、未だに連絡がない。忘れているのだろうか。もしかして、僕に連絡したくない、とか思われていたらどうしよう…。ネガティブな思考に陥る。確認の為に、彼女の所に行くのはどうだろうか。いや、連絡がないからと直接訪ねるのは、流石に気持ち悪がられる。
キーボードを打つ手が止まる。いかん、仕事中だ。余計なことは考えるな。あれ、でも僕は、遠山さんの担当なのだけら、これも仕事なのでは。そうだ、仕事という名目で何時でも会いに行けるし、監視したっていいんだ。こうしちゃいられない、今すぐ彼女の元に行かなければ。スマホを手に取り、立ち上がろうとした時、スマホが震える。この着信音は‼
「遠山さん、どうしました。」
裏返りそうな声をなんとか抑え、平静を装う。
「一応、連絡しておこうと思ったのだが―」
なんだろうか、海外に行くとかかな?そんなことより、電話越しに聞こえる遠山さんの声に脳が溶けそうだ。
「武装検事と公安の者たちと組み手をしようと思っている。」
「えっ、なんですかそれ!?」
溶けかけた脳が復活する。何故、公安までそんな恩恵に与ることが出来るのだ。
「先日、公安0課の獅堂殿と飲んでな。その際に、最近の若手は腑抜けているから、気合を入れてくれと頼まれたのだ。」
公安0課(元だが)の獅堂さん、あの人か、凄い筋肉の。特殊体質なんだっけ?なかなか素晴らしい提案をしてくれた。でも、そんな話聞いてないぞ。もしかして、本当に、飲みの席で話しただけなんじゃ…。しかし、遠山さんと飲みに行っていたというのは…、とりあえず、絶対に許さないリスト入りは確定だな。
「なるほど、お話は有難いんですけど、それって上層部に連絡いってないと思うんですよ。僕の方から、上に確認してみますね。場所の確保とか、参加者の予定とかの調整もあるので。」
「そうか、分かった。」
遠山さんの声のトーンが少し下がる。組み手、楽しみにしてたんだな。上司のデスクを見る。よし、今なら暇そうだ。
「えーっと、ちょっと確認してから、再度連絡しますね。」
そう言って、電話を切る。さて、遠山さんが楽しみにしている組み手だ、なんとしても開催してみせる。
「今、お時間大丈夫でしょうか?」
デスクで、資料に目を通している上司に声をかける。
「なんだい冷泉くん?」
資料から視線を外し、僕の方を見る。
「先程、遠山金虎さんから連絡がありまして。」
「なんだって、それは凄い。今まで一度もなかったのに。君の熱意を買って担当にして、正解だったみたいだね。」
嬉しそうに頷く上司。理想的な上司だよなこの人。ここで一番強い人でもあり、凄いなぁ。
「それで、なんと言っていたのかな?」
「はい、元公安0課の獅堂さんと会った際に、武装検事と公安職員への組み手、稽古を依頼されたそうで、それをやって頂けるそうでして。」
上司の笑顔が凍る。あれ、こんなに素晴らしいことなのに、なんでちょっと嫌そうなんだろうか?
「獅堂くんがねぇ…、君は金虎ちゃん―失礼、遠山金虎さんの強さを理解しているかい?」
「はい、一応は。ただ、実際に戦ったことなんてないので、知っているのは、話と映像でだけです。」
多分、映像も遠山さんの噂も、僕が一番詳しい自信がある。
「そうだよね、金叉くん…ああ、金虎ちゃんのお父さんね。実際に彼女とやり合ったのは、彼がいた時までだからね。若い人たちには、いい経験になるかもしれないね。ただ、凄くトラウマを植え付けられる人たちも出るんじゃないかな。」
「4歳で武装検事を倒してたんですよね。」
噂で聞いた話だ。彼女の父親、遠山金叉さんが、当時4歳の彼女を連れて来て、若い武装検事相手に組み手をやらせていたらしい。
「よく知っているね。流石担当者だ。そう、自分は強い、と自信を持って武装検事になった若者たちが、たった4歳の幼児に負けた、正確には連戦の最後のひとりに負けたんだけどね。」
「負けたんですか!?」
そんな、遠山さんが負けたなんて…
「まあ、ほとんど相打ちだったけど、その時彼女は、初めて組み手をやったわけだし、基本的なことも知らない4歳児が、武装検事と連戦して勝ち続ける方がおかしいんだけどね。」
そう言って、コーヒーを口にする。
「その数日後に、金叉くんに基礎的なことを教わってからリベンジした際は、圧倒的な強さで、全員を蹂躙してたけどね。」
虎に翼を与えてしまったね。と言い、また一口コーヒーを啜る。
「そのせいで、若い武装検事たちが、自信を無くしてね、大変だったよ。でも、そのおかげで強くなったとも言えるかもしれない。」
「私も、一度遠山さんと組み手をしてみたいと思っています。」
とりあえず、自分ひとりでも参加する。そう意思表示をする。
「いい機会と考えるべきなのかもしれない。今、超能力者たちも多く日本に入って来ているみたいだし、武装検事たちのレベルアップは必要だね。」
「では。」
「分かった、僕の方から上に報告しておくよ。恐らく大丈夫だよ。結果は連絡するから。」
「ありがとうございます。」
深々と一礼する。やったぞ。遠山さんは喜んでくれるだろうか?
後日、上司から、開催日と場所について連絡を貰った。そして、武装検事だけでなく、公安も参加が認められていた。自由参加ではあるが、若手はほぼ強制参加になっている。あと何故か、獅堂さんも強制参加になっていた。
その日時を遠山さんに連絡するため、スマホを手に取る。
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―リサ視点―
これは、あまりよろしい状況ではないのでしょうか。
私の隣には、かなこ様。それと向かい合う様に、理子様と、その後輩たちである島麒麟様と火野ライカ様。そして、その真ん中に倒れて動かない風魔陽菜様。
なによりも、かなこ様に向けられた銃口。かなこ様の存在が知られるのはマズいですね。ご主人様に連絡した方がよろしいでしょう。
携帯を取り出し、ご主人様に連絡をします。
こんなことになってしまう、数時間前。私は、ご主人様の部屋で、家事をこなしておりました。ご主人様は、風魔様にかなこ様についての説明をしています。その説明も終わり、私も家事が一通り終わりました。そんな時に、私の携帯にかなこ様から着信があります。
服を買いたいが、よく分からないので来てほしい、というかなこ様のお願いに従い、そちらに向かうことにしました。
「ご主人様、かなこ様のお買い物のお手伝いをして参ります。」
そう伝えます。
「あー、姉さんが迷惑かけて悪いな。よろしく頼む。」
そう言うご主人様に一礼し、部屋を出ました。
かなこ様に指定された場所に向かいますと、既にかなこ様はその場所でお待ちでした。2人組の男性に声を掛けられております。ナンパでしょうか、かなこ様の容姿だけででしたら、致し方ありませんね。
「かなこ様。」
男性たちをあしらうかなこ様に、声をかけて駆け寄ります。
「リサ、来たか。失礼する。」
かなこ様がそう言って私の方に、歩みを進めます。
「ちょっと、待ってよ~。」
「今来た子も可愛いじゃん。リサちゃんって言うんだ~。」
2人組の内、ひとりが、かなこ様の手を掴み、もうひとりが、私の方へ向かってきます。可哀想ではありますが、この人たちは儚い犠牲となるのでしょう。
「私の家族に手を出すな。」
身内と認めて頂いている私でさえ、震え上がる様な殺気を放ち、2人組にアイアンクローを決め、持ち上げます。
「リサ、大丈夫か?」
ふたりの男性を軽々と持ち上げながら、そう尋ねられ、
「はい、リサは大丈夫です。なので、それ以上は…。」
そう答えると、
「失せろ。」
そう言って、2人組を放り投げて、私に歩み寄られます。
「煩わしい奴らだ。では、行くか。」
「お待たせして、申し訳ございません。」
「構わん、こちらが急に呼び出したのだ。礼を言う。」
そう言うと、
「スーツ以外の服を買えと言われたが、よく分からぬ、案内と、品定めを頼む。」
私の行動を待たれます。
「はい、では、ご案内とお手伝いをさせて頂きます。」
私を家族と言って下さる、貴いお方に相応しい服を選びます。そういう意気込みを込めて、元気よく答えます。
かなこ様の依頼は、動きやすく、大人らしい服装で、スカートは嫌とのこと。何店舗かをはしごし、ストレッチ性のジーンズやパンツと、それに合うシャツや、上着を選びます。最後の店舗で選定をし、かなこ様が会計を済ませます。
店を出ると、かなこ様が、
「さて、買い物も済んだな、もういいだろう。少し待っていろ。」
そう言って、荷物を私に渡して、一瞬で姿を消します。どうされたのでしょうか?荷物を抱えて、待ちます。その数秒後に、流行りのスイーツ店から知った顔ぶれが、現れます。理子様を先頭に、島様に火野様。放課後、一緒に遊ばれていたのでしょう。私を見つけたらしい、理子様が声を掛けてきます。
「おー、リサじゃん、なにしてるの~。」
左手に、飲み物を持ち、右手を振りながら私の方へ向かって来られます。
「リサ先輩ですの~。」
「お疲れ様です。」
後輩のおふたりも一緒にこちらへやって来ます。
「リサ、どうしたのその荷物?服?」
理子様が、私の抱える袋を覗きながら、尋ねてきます。それに、
「かなこ様と買い物に来てまして…。」
後輩のおふたりに聞こえないように、理子様に答えると、纏う雰囲気が一瞬変わり、
「マズいな。」
そう呟き、後ろのふたりの元に下がります。状況を察してくれたようで、私から離れようと動いてくださります。
「あー、リサは今忙しいみたい―」
理子様が、おふたりにそう言っている途中で、
「待たせたな。」
右手になにかを持って、突然現れます。マズい、というようにかなこ様を見た理子様の表情が曇ります。間に合いませんでしたか。
「風魔っ‼」
火野様が、かなこ様が掴んでいる、見慣れた武偵高のセーラー服に自称丁髷のポニーテール…、風魔様ですね。それに反応します。風魔様は、かなこ様の移動速度に耐えられず気を失っておられる様子です。
「む、気を失ってしまったか。乱波故、耐えられると思っていたが、悪いことをしたな。」
そう言って、風魔様を掴む手を放すと、ポトリと風魔様が、地面に倒れます。
「風魔から離れろっ‼」
火野様が、銃を取り出し、かなこ様に向けます。恐らく、かなこ様が風魔様に危害を加えたと思い、激昂されているのでしょう。しかし、マズいことになりましたね。かなこ様の存在は秘匿せねばならないのに、この状況は、最悪でしょう。かなこ様に被害を及ぼすことは、この場の全員でも不可能ですが、それだけ強い存在が記憶に残らないわけがありません。
ここは、事前にご主人様に連絡をすべきでしょう。そう思い、携帯を取り出しますと、理子様も、小さく頷きます。同じく意見のようですね。すぐにご主人様に電話を発信します。コール音の最中、ガシャンという音と共に、
「街中でそんなものを出すな、危ないではないか。」
かなこ様が、火野様の背後に立ち銃を払い落としていました。
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―火野ライカ視点―
理子先輩の誘いで、麒麟と一緒に繫華街で遊んでいた。可愛らしいふたりなら、相応しいであろう店に何軒か入店し、服やアクセサリーを見る。そんな、ふわふわな改造制服を纏うふたりを見て、可愛いなぁ、と惚けてしまう。
「喉渇いた~。」
理子先輩の声に、麒麟も
「私もですの~。」
と続き、流行りのドリンクショップに行く。その店を出ると、
「おー、リサじゃん、なにしてるの~。」
理子が、手を振って歩き出す。その方向に、リサ先輩がいる。メイド服風に改造されたセーラー服を身に纏う先輩は、複数の袋を持ち、立っている。大量に買い物したんだな。
「リサ先輩ですの~。」
「お疲れ様です。」
理子先輩の後ろから、麒麟と共に挨拶する。
理子先輩が、リサ先輩に近づき、会話を交わすが、聞こえなかった。
「あー、リサは今忙しいみたい―」
理子先輩が振り返り、こちらへ歩み寄りながらそう言っていると、
「待たせたな。」
ブロンド髪の女性が突然現れる。165cmある私よりも高い身長に、大きな胸。そして、身に纏うスーツ。大人の女性だろう。そして、右手掴んでいるもの…、その姿に、
「風魔‼」
同級生が気を失い、セーラー服の襟を掴まれたている。その女は、なにかを呟き、ポトリと風魔を地面に落とす。
「風魔から離れろっ‼」
仲間をやられた怒りから、感情が高ぶった私は、銃を取り出し、女に向ける。慌てた様子でリサ先輩が携帯を取り出す。援軍を呼んでくれるのだろうか。正直、さっき一瞬で目の前に現れた時点で、只者ではないのは分かる。時間を稼ぎつつ、風魔を助ける。そんなことを考えていると、ピシッ、と銃を握る右手に痛みが走り、銃が地面に落ちる。
「街中でそんなものを出すな、危ないではないか。」
真後ろから聞こえる声、目の前にいた筈の女が立っている。
「クソッ‼」
背後の女に得意なCQCを素手で仕掛けるが、軽くあしらわれる。次元が違う。本能が刺激される。天地がひっくり返ろうと勝てない、女からそんな余裕を感じる。その為、一切反撃もない。
「センスはいい。しかし、速さも力も足りないな。あと―」
私の攻撃をあしらいながら、そう言い、
「はぁ?」
ガックリと膝から崩れ落ちる。なんだ今の、私は死んだのだろうか。とんでもない重圧が襲ってきて、力が抜ける。
「胆力も足りんな。この程度の気で膝を折るとは。」
気?…今のは攻撃でも何でもなく、殺気を放っただけなのか。次元が違うとか、そういうレベルではない。絶対に戦ってはいけない相手だ。
「お姉様っ!」
崩れ落ちる私を見て、麒麟が叫ぶ。そして、パァン。女に向け、発砲してしまった。
「だから、街中でやめろと言っているだろう。」
撃たれても表情ひとつ変えずに、そういう女。麒麟が驚愕し、目を見開いている。
「何者ですの…。」
麒麟に恐怖が宿る。
「全く、お前たち武偵高の生徒だろう。蘭はどんな教育をしているんだ。」
そう言うと、カンッ、という金属とコンクリートがぶつかる音がする。女の手から、麒麟の放った弾丸が落とされた。弾丸をキャッチしていたのか。だから、麒麟が驚愕し、怯えるわけだ。遠山キンジ先輩、退学したらしいから元先輩だけど、が弾丸を掴めると噂を聞いたが、実際に見るのは初めてだ。
「はーい、そこまでー。」
理子先輩が、麒麟の銃を下ろさせて、間に入る。
「峰、こいつらはお前の友人か?」
「ぶーっ、理子って呼んでよぉ。」
むぅっ、と膨れる理子先輩。知り合いなのか。
「この子たちは、後輩だよ。仲間をやられたと勘違いしちゃったみたいなの、かなこさん、ごめんねぇ。」
可愛らしく謝る理子先輩。
「風魔の友人か、確かに、状況だけ見れば私が悪いな。すまなかった。」
かなこさんと呼ばれた女が、私に謝る。勘違い…?
「うーん、師匠ー…、はっ‼ここは!?」
風魔が目覚める。リサ先輩が介抱していてくれたらしい。
「起きたか、速度を出し過ぎたようだ、悪かったな。」
かなこさんが、風魔に歩み寄る。
「か、かなこ殿は悪くないでござるよ。某が未熟であっただけのこと、お見苦しいところを見せて申し訳ないでござる。」
風魔も知り合いだったのか、どうやら私の勘違いで間違いないらしい。
「あの、すみませんでした。てっきり風魔を襲ったと思って…。」
「気にするな、こちらも紛らわしかったのだ。身体に異常はないか?」
「は、はい、大丈夫です。」
本当に、攻撃はしなかったようで、怪我もなにもない。あの時、殺気に当てられて、脱力しただけのようだ。
「そうか、よかった。しかし、お前は蘭に手ほどきを受けたか?戦い方が似ている。」
蘭?もしかして、蘭豹先生のことだろうか。
「蘭豹先生のお知り合いですか…?」
「私の弟分…、いや女だから妹分と言ったところか。武偵高の教員になったと聞いたが。」
妹分…、戦妹ってこと?つまりこの人は、蘭豹先生の戦姉なのか。
「はい、蘭豹先生には、よくして頂いてます。」
「あいつが教員とは、想像もしていなかったが、上手くやれているようだな。しかし―」
かなこさんが消えて、一瞬にして私の目の前に立つ、
「まだ、指導が甘いな。」
額に突き付けられた人差し指、実戦なら、今の一瞬で死んでいた。
「身体能力は悪くない、鍛錬次第でまだまだ伸びるぞ。」
トン、と軽く額を突き、そう言う。
「かなこさん、蘭豹と知り合いなんだぁー。」
ムフフと、悪そうな笑みを浮かべる理子先輩。
「まあな。お前たち、少し待っていろ。」
そう言って、姿を消す。
「待たせた。風魔、腹が減っているのだろう。先程の詫びだ。」
数十秒後に現れ、パンやおにぎり、お茶の入ったコンビニの袋を風魔に差し出す。
「あ、かたじけないでござる。」
おずおずと風魔がそれを受け取る。かなこさんは、リサ先輩の抱える荷物を受け取り、
「失礼する。行くぞリサ、風魔。」
立ち去ろうとする。そんな彼女に聞きたいことは山ほどある。でも一番気になるのは、
「すみません、あの瞬間移動は何ですか?」
私の質問に振り返り、
「走っているだけだが。」
そう言って、ふたりを従えて去って行く。
走っているだけ…?あり得ない、そんな人間やめた存在がいるのか…。蘭豹先生なら知っているのだろうか、彼女のことを…
「あんまり深入りしない方が、身のためだと思うよぉー。」
私の考えをよんだように、理子先輩が言う。
「世の中には、知らない方がいいこともあるし、知ってはいけないこともあるからねぇー。」
ゾクリと背筋が凍る。彼女は後者、そう言っているんだ。
「でもぉ、蘭豹にカマかけるのはオッケーかな?面白そうだしぃ。」
また悪い笑みを浮かべる理子先輩。そうだな、蘭豹先生にとりあえず、聞いてみるか。
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―蘭豹視点―
ゾクッと悪寒が走る。
「なんや、急に寒気が。」
「なんだ、風邪か?お前でもひくんだな。」
綴がそう言う。
「どういう意味や、あと風邪ちゃうな、なんかこう…」
そう、嫌な予感がする。よく分からないが…
「んじゃ、酒だな。」
「せや、酒や‼飲むでぇ。」
酒やな、そう、酒が切れたんや。そう信じることにした。
次回は、今回の別視点で補完しつつ、話を進めていきたいと思います。