緋弾のアリアif~遠山家最強の姉~   作:トリプルツレー

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占いと旅立ち

―キンジ視点―

 

 

 土曜日の午後、我が家の台所にリサと白雪が立っている。白雪は、実家である星伽神社に戻っていたらしく、土産として様々な食材を持ち込み、リサと共に調理中だ。

「奥様、味付けはいかがでしょうか?」

「うん、美味しいよ、リサ。」

 リサは白雪を『奥様』と呼び、うまいこと取り入っており、関係は良好だ。他の面子と白雪が一緒の場合と違って、争いも起こらずに、平和なのは良いのだが、その呼び方はやめて欲しいところだ。

 和気藹々と料理をするふたり、完成も近いのだろう。旨そうな匂いが部屋に広がっている。

「キンちゃん、そろそろできるよ。」

 台所から白雪が声をかけてくるので、勉強をやめ、机の上を片付ける。食事が終わったら、白雪に教えてもらおう。

 豪勢な料理が皿に盛られ、運ばれてくる。久々の本格的な和食に、日本人としての本能が刺激される。どんなに美味いものを食べても、結局、最後は和食に戻ってくる。それが祖国の味ということなのだろう。普段は大したものは食べてないけどね。それこそねこじゃらしとか。

「美味そうだな。」

 並べられた料理に、素直な感想を述べると、ふたりは嬉しそうに笑顔になる。

「ご飯よそってあげるね。」

 白雪が俺の茶碗を手にし、炊飯器を開ける。

「ああ、ありがとう。」

「大盛りでよかったよね。…ふふ、まるで夫婦みたい。」

 茶碗を受け取る。なんか、最後の方が聞こえなかったが、まあ、いいか。

 

「あれ、リサ、どうしたの?」

 突然、なにかに反応したように、ピクリと動いたリサに白雪が声をかける。

「かなこ様がお越しのようです。」

 リサの野生のセンサーが、姉さんを察知したらしい。毎度思うけど、どうなってんのそれ?

「えっ!?かなこ様って…、あのかなこ様…?」

 恐る恐る俺に聞いてくる白雪。

「あー、言ってなかったな。姉さん今は実家に戻ってるんだ。」

 白雪は姉さんについて十分知ってるから、伝えるの忘れてた。

「もう少し早くお戻りされてたら、キンちゃんは留年も退学もしなかったかもね。」

 どういうことだ?首をかしげる俺に、

「極東戦役も、色金の時も、かなこ様がいたら、すぐに終わってただろうし。」

「それは反則じゃないか。」

 極東戦役に姉さんが俺たちの傍にいたら、アリアの殻金も外れなかっただろうし、全勢力が潰しにかかっても一瞬で返り討ちにしてるだろう。緋緋神だって、姉さんならワンパンで倒しそうだし、なんなら力で従えそうだ。そしたら俺も活躍することもなく、SDAランクも上がらずに、普通に授業も出れただろうし、留年なんて、しなかったから退学もない…あれ、姉さんが早く帰ってきてたら、今抱えてる問題がほとんど無いぞ。

 

「出迎えご苦労。食事中だったか、悪いな。」

 リサが姉さんを玄関で出迎える。姉さんの声が聞こえると、白雪は、三つ指をついて迎える。

「ご無沙汰しております。かなこ様。」

「おお、白雪も来ておったか、久しぶりだな。ちょうどこの後、星伽神社にも行こうと思っていたが、手間が省けた。」

「姉さん、今日は何の用なんだ?」

 相変わらず突然やって来る姉に呆れながら用件を尋ねる。

「ああ、少し日本を離れるので、教えておこうと思ってな。」

「またどっか行くのか?」

「まあな、以前の様な旅ではない為、用が済めば帰ってくるつもりだが。」

 姉さんに用事なんてあるんだ…

「用事って、どこ行くんだ?」

「さあ?知らんぞ。とりあえず、しばらく日本から離れる故、なにかあれば連絡しろ。」

「どこ行くか分からないって…どんな用事だよ…」

 このバカ姉は何を考えて生きているのだろうか?

「友人に借りを返してくる。それが用事だ。」

「姉さん友達いたんだ。」

 姉さんが借りを作ることよりも、そっちの方が驚きだった。

「友人くらい普通にいる。お前は私をなんだと思っているんだ?」

 姉さんは宇宙一の馬鹿で戦闘狂で…口に出すと後が恐ろしいので、沈黙を貫き、心の中で悪態づく。

「金次、失礼なこと考えているだろう。」

「考えてない。姉さんが宇宙一の馬鹿なんて考えてないから。」

 威圧的な剣幕で迫られ、思わず口を滑らせてしまう。

「金次、お前とは一度じっくりと語り合わねばならないようだな。」

 そう言って、拳をパキパキと鳴らす姉さん。それって拳で語るきだろ。このバーバルコミュニケーターめ。なんとか話題を逸らさねば。

「それは置いといて、姉さんは星伽神社になんの用があったんだよ?」

「ふんっ‼まあ、少し占って貰おうと思ってな。白雪がいるので手間が省けた。」

 結局、一発殴られたが、普段より痛くないし、一発で済んだので、話を逸らした意味は多少あったようだ。

「占いですか…何を占えば?」

「今回の旅を頼む。少し思うところがあってな。」

 姉さんにも乙女なところがあったようだ。占いとか女は好きだよなぁ。どうせ碌でもない結果しかでないし、それが大体当たる俺は、ご遠慮願いたいが。

「思うところ…?かなこ様、少し纏う空気が変わりましたが、それになにか関係が?」

 リサが、姉さんに尋ねる。なんか変ったか?いつも通りの大馬鹿っぷり全開だけど?

「よく気付いたな。少し己を見つめ直し、鍛錬していたが、ようやく真髄へと至った。それを極めるのにあたり、此度の旅がなんとなく意味がある気がしてな。まあ、勘だが。」

 姉さんの野生の勘は恐ろしく当たる。普段はそれに従って生きてる姉さんが、占いに頼るなんて珍しいな。それよりも、

「いや、真髄ってなんだよ?十分強かっただろ、頼むからこれ以上人間やめないでくれよ。」

 切実な思いを伝えると、姉さんはキョトンとして、

「何を言っている。私はまだまだ弱い、己の未熟さを痛感している。」

 ダメだ、このバカ姉は人間であることを否定したいらしい。

 

「それでは占いますね。」

 白雪が占いを始める。結果が出るまでの間、俺は姉さんと会話する。

「ところで姉さん、前も言ったけど、それ、冷泉さんに言った?」

「…忘れていた。」

 あんた学習能力ないのか?ああ、なかったですね。あったらこんなアホになるはずがない。

「絶対連絡しとけよ。母さんがずっと言ってただろ、人に迷惑かけたらだめだって。」

「むう、弟に説教される日が来ようとは…」

「毎日の様に何かしらやらかして、母さんに られていた姉さんを見て育ったからな。」

「生意気を言うようになりおって。」

 そう言いながら、姉さんは少し嬉しそうにしている。

「出ました。」

 白雪の占いが終わったようだ。

「結果ですが、かなこ様のおっしゃっておられる通り、なにか実りのある旅となりそうです。ただ―」

 白雪が言い終わる前に、姉さんからとんでもない気が放たれる。あまりの重圧感に白雪は言葉を紡げずにいる。リサが姉さんに感じてるのはこれなのか?恐怖とかそういうのではない、明白な死、それが迫ってくる。そんな重圧感、殺気とかそんなちゃちなものではない。

「ね、姉さん…」

 なんとか言葉を紡ぎだす。

「ああ、済まない。嬉しさでつい気が漏れた。リサ、大丈夫か?」

 スゥっと、さっきまでの気が引いていく。

「は、はい。なんとか。」

 真っ青な顔をしながらも、なんとか気丈に振る舞うリサ。

「悪かった。無理をしなくていい。」

 姉さんがリサを優しく横にさせて、休ませ、

「金次、悪いが詫びとして、これでリサになにか買ってやってくれ。私はもう行く。」

 そう言いって俺に、万札を握らせる。

「白雪、感謝する。」

 姉さんは、そう言い残し姿を消した。

 

「あ、行っちゃった…。」

 白雪が不味い、という顔をして言う。

「白雪、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ、キンちゃん。ただ、かなこ様、占い最後まで聞いてないの。」

 そういえば、確かに、途中までだったな。

「なんだ、なんか悪い結果でも出てたのか?」

「悪いのかは分からないけど…なんでか女難の相が出てたから。」

 俺ならともかく、姉さんに女難の相?姉さん、またなんか、また変なことを起こすんじゃ…

 とりあえず、俺には累が及ばない様に、祈るしかない。

 

 

 

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―冷泉為和視点―

 

 

 現政権は、遠山さんを私兵としようとしている。そう聞かされ、怒りが湧き上がる。他の武装検事たちも同様に怒りを隠しきれていない。

 何のために今まで隠していたと思っているのか、俺たちへの牽制のつもりか、そんな風に場は紛糾している。先日、嫌という程見せつけられた力、それが私兵として、権力の維持の為に使われる。正義感を持って武装検事となった者たちには許せないようだ。

 僕も、遠山さんを我が物にしようなんて、当然許せない。なんなら今すぐにでも、霞ヶ関に強襲をかけたいくらいだ。怒り騒然の場を収めたのは、部長だった。

「落ち着きなさい。冷静に考えてご覧、誰が彼女を従えれるんだい?手厚く保護されて生きてきたハムスターが、何匹集まったところで、虎を従えれると思うのかい?食われるのが落だよ。」

 虎の威を借りに行き、虎に食われる。彼女の力を知った今、それは分かる。ただ、

「アレを表に出して、平穏に済みますかね?」

 中年の武装検事が発言する。

「そう、そこが一番の問題だ。扱える代物でないと分かった馬鹿どもがどうするか、それの予想がつかないし、存在が認知され、欲しがる連中も出てくる筈だ。その前に手を打つ、それが今やるべき事だよ。」

 対策会議が始まり、部長が武偵庁や様々な部署と協議した結果、現在上がっている候補を説明している時、遠山さん専用のスマホから、着信音が鳴り響く。部長が目で出ていいと指示する。

「遠山さん、どうされました?」

 全員の注目が集まる。

『冷泉。用事ができたので、旅に出る。』

「旅って、何処に行くんです?それに用事って!?」

 突然の旅立ち宣言に、パニックになる。

『借りを返しに行く、行き先は知らん。』

「ちょっ、待って下さい、遠山さん!行き先も分からないって!?待って―」

『ではもう行く。切るぞ。』

 ブツリと通話が切れる。

 

 どうしよう…、恐る恐ると周りを見る。これって担当者の僕の責任になるんですか?

「こりゃあ、飼いならせるわけねぇよ。」

「だろう、今回の担当者は大したもんだよ。一応連絡があるんだから。一度も連絡がなかった前任者の俺が保証してやる。」

「相変わらずだねぇ、かなこちゃん。」

 ベテランの方々が各々、感想を述べ、笑っている。彼女をよく知る者たちには、これはマシな方らしい。

「さて、いなくなったと協力側の各方面に伝えてくるよ。滑稽に彼女を探し回る連中を一緒に笑ってやろうじゃないか。」

 そう言って、席を立つ部長。それに習い、解散する。

 

 少し分かってきたと思っていた遠山さんが、ますます分からなくなった。

 

 

 

 

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―遠山金虎視点―

 

 

 山を降りた翌日、エイトから連絡があった。なんでも、この間送ってくれた恩を返して欲しいらしい。『借りは必ず返せ』遠山家の家訓にもあるし、返さないのは私の流儀にも反する為、内容も聞かずに、二つ返事で答えると、とりあえず、明日の夕方、成田で落ち合うこととなった。

 旅立つことを伝えねばな。金一は忙しそうだし、金次でいいだろう。その後に星伽神社に行って占ってもらおう。なんとなくだが、今回の旅で更なる高みへと行ける気がする。勘頼りに生きてきたが、なんとなく不安があった。

 

 翌日、金次の家に行くと、都合よく白雪が来ていた。運動がてら、青森の星伽神社まで走るつもりだったが、行く手間が省けたな。

 占いの結果、私の勘は当たっていたようだ。今回は、恐らく今までとは違う強者と相まみえるだろう。そう思うと、嬉しさのあまり、無意識に気が漏れ出してしまった。リサには申し訳ないことをしたな。

 歓喜のままに待ち合わせ場所へと向かう。少し早く着き過ぎたか。そうだ、冷泉に連絡しなくてはいけなかったな。連絡用のスマホを取り出す。忘れなかった自分を褒めてやりたい。

 とりあえず、旅立つことを伝えていると、向こうからエイトが歩いてくるのが見えた。

「ではもう行く。切るぞ。」

 通話をやめ、歩き出す。

 どんな強者と会えるのだろうか?高鳴る胸の鼓動が鳴り止まない。

 

 

 

 

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―008視点―

 

 

 成田到着後、待ち合わせ場所へと向かっていた。予定の時間よりの少し早いが、英国紳士らしく、多少待ってもいいだろう。そう思っていたが、

「久しぶりだな。少し早くついてしまったが、丁度よかったようだな。」

 そう言いながら、カナコが突然目の前に現れ、驚いて心臓が一瞬止まった。

「いきなり現れんじゃねぇよ。マジで一瞬心臓止まったぞ。」

 鼓動を取り戻し、バクバクと痛いほどに大きく動く胸に手を当てる。

「姿が見えたのでな。」

 そんな理由で心臓に悪い出会いを演出するのかこいつは。

「たく、寿命が縮んだぜ。ほれ、お前さんの航空券だ。…失くしそうだから搭乗まで俺が持っておく。」

 事前に取っておいたチケットを渡そうとしたが、思い直す。

「…馬鹿にされた気がする。」

 馬鹿にしたからな。

「ところでパスポートは持ってきたのか?」

 ノンパスポートで世界旅行をしていた大馬鹿女だからな、一応こっちで用意はしてあるが、

「ちゃんと持って来たぞ。これだろう。」

 巾着型のバックから、緑色のパスポートを取り出し、見せるカナコ。緑って確か、公用パスポートだろ?

「ちょっと、借りるぜ。」

 写真は本人…だろうか?若干違和感があるが、押し通せる程度にはそっくりだ。名前は、

「カナコ、本名をフルネームで言えるか?」

「馬鹿にしてるのかっ‼それくらい分かる。遠山金虎だ。」

 名前も分からない馬鹿だと思われ、心外なのか怒り心頭だ。全く違う名前が記入されている。恐らく本当の情報は何ひとつ載ってないのだろう。カナコが噓をついている可能性も無くはないが…この馬鹿がそんな器用なことは出来ないだろうし、すんなりとパスポートを見せるのもおかしい。

 国ぐるみで存在を隠してる。こいつと出会った後、それなりに調査したが何ひとつ情報を得られなかったのは、そういうことだったのだろう。

「返すぜ、ありがとうよ。わりぃが、今回はこっちを使ってくれ。」

 俺が用意したパスポートを渡す。旅券をこのパスポート名義でとってるし、そっちの方が、スムーズにことが運ぶだろう。

「了解した。」

 どうやら先程の怒りは忘れた様だ。

「ところで、行き先は何処なのだ?」

 そういや言ってなかったな。頼んでおいたなんだが、よくそれで尾いてくる気になったな。

「スコットランドだ。ゴミ掃除をしなきゃなんねぇんだが、邪魔する奴がいてな。そいつが中々に強いらしくてな、それの相手を頼む。」

「了解だ。」

 嬉しそうに頷くカナコ。強い奴とやり合えるのが楽しみらしい。バトルジャンキーかよ。

「金は持ってるか?」

「一応持ってきた。」

 そう言って、むき出しの札束をひとつ出す。財布持ってねぇのかこいつ?

「んじゃ、両替しに行くか。それで全部か?」

「うむ。」

 現金での100万以上の持ち出しは禁止だが、ギリギリセーフか。まあ、いくらでもやりようはあるからどうでもいいが。

 

 両替を終え、搭乗時間まで適当にふたりで空港内をぶらつく。

「時間だな。行くぞ。」

「了解した。」

 問題なく搭乗し、座席に着く。離陸後、カナコが話しかけてくる。

「それで、行き先の…ダメだ、名前が出ない。」

「スコットランドな。」

 もう忘れたのか、

「そこはどこだ?」

 まあ、国名も分からんのに場所が分かるわけないか。恐らくこいつはブリテン島が全部イングランドだと思ってるのだろう。タブレットを出し、世界地図を見せる。

「イングランド、イギリスって言えば分かるか?」

「イギリスなら知っている。」

「なら場所はどこだ。」

 恐らくブリテン島を指す。そう思っていた。

「これが日本だ。」

 何故か日本を指しやがった。

「で?」

「アメリカ。」

 それはアメリカ大陸だ。アメリカ以外の国に謝れ。なんでお前は満足そうなんだ?

「イギリスの場所を聞いてるんだが?」

「難しいことを聞くな。眠くなるだろう。」

 俺の想像が甘かったらしい。超弩級の大馬鹿に説明を始める。

 

「いいか、ここがブリテン島。お前ら日本人がイギリスって言う場所だ。だが、正確にはここがイングランドで、ここがスコットランド、んでウェールズ。この3つの国で構成されてて―」

 随分と反応がないな。

「すぅ、すぅ。」

 寝てやがる。なんだ?話しが難しいから寝たのか?お前の脳の処理容量少な過ぎるだろ。規則正しく寝息を立てるカナコの横顔が見える。黙ってりゃ最高にいい女なんだがな。その顔に触れようとするが、直前で手を止め、CAを呼ぶ。

「いかがなさいました?」

「ブランケットをくれ、連れが寝ちまった。」

「かしこまりました。」

 届けられたブランケットをカナコに掛ける。こいつが欲しい、カナコという女を我がものにしたい。俺の男としての欲望が、先程手を伸ばしてしまった。だが分かる、こいつは俺のものにならない。それなのにここで触れてしまっては意味がない。最後の最後に手にするから意味がある。

 なによりも、眠っている猛獣を触って噛みつかれたら、死んじまうからな。俺も寝るとしよう。

 

 エディンバラ空港に着き、市内へ向かう。まずは宿に入り、作戦の説明(理解できるとは思ってない)だ。

「いいか、今回お前に相手してもらいたいのは、ミラ・ミハイロヴィチ。『動くマジノ線』なんて呼ばれる傭兵だ。」

「まじの…せん…?」

 まあ、そうなるか。

「マジノ線ってのはフランスが築いた要塞だ。まあ、迂回されて使われなかったから、無用の長物扱いされたが、難攻不落の鉄壁要塞だ。」

「要塞か…。」

「日本人のおめぇさんなら、旅順要塞って言った方が分かりやすいか?」

「おお、乃木大将。」

 そういうのは知ってんのか。

「要塞ってのは動かねえが、そいつは人間なんで当然動く。そんなもんが動いてたらゴミ掃除もおちおち出来やしねぇ。そこでカナコには足止めを頼む。最悪殺しても問題ないが。」

「殺しは私の流儀ではない。」

「まあ、そこはお前の判断に任せる。頼めるか。」

「当然だ。面白いではないか。旅順要塞、正面突破して見せよう。」

 大馬鹿だが、戦闘に関してはなんとも頼もしい味方だ。

「頼んだぜ。行動開始は明日からだ。今日は適当に観光でもするか?」

「うむ、弟たちに土産も買いたい。最近兄弟が増えたからな。」

 元気なご両親だことで。

「赤子に土産って何買うんだ?」

 生憎そういう知識は不足している。

「赤子?増えた家族は、一番下が小学生で他は高校生だ。菓子とかでいいだろう。」

 は?なんでそんな年齢の兄弟が突然増えるんだよ、隠し子か?

「待て、意味が分からん。家族ってそんな突然増えねえだろ。」

「どこぞの研究所で生まれたと聞き、私も驚いたが、遠山の血が流れているなら私の家族だ。」

 研究所、トウヤマの血…それってGⅢか‼つまりカナコはGの血族、トウヤマ・コンザの娘ってことか。最近名前を聞くルーキーもトウヤマだったな、サイオンの奴が気にかけていた。名前は―

「トウヤマ・キンジ。」

 俺が名前を呟くと、

「愚弟を知っているのか?」

 確定だな。

「まあ、新進気鋭のルーキーだ。名前くらいは知ってる。」

「あいつが新進気鋭か、まだまだ未熟者だがな。」

 そう言いつつ、少し嬉しそうにしている。弟が可愛いらしい。カナコの正体が分かったところで、街に繰り出す。

「いいか、お前は言葉が分かんねぇんだから、離れるなよ。」

「分かった。」

 

 十分後、俺はカナコを探していた。

 

 

 

==============================

―ミラ・ミハイロヴィチ視点―

 

 

 

 酒場の扉を開けると、中にいた客の視線を受ける。知った顔も何人かいるが、無視してカウンターへ向かう。

「とりあえず、エール。」

「あいよ。」

 マスターがグラスにエールを注ぎ、カウンターに置く。

「依頼、終わったのか?」

「終わったけど、期間延期してくれってよ。額は上がったんで引き受けた。今日は休暇。」

 そう言って、グラスのエールを一気に飲み干す。

「おかわり。」

「あいよ。羽振りがよさそうでなにより、うちにもたっぷりと金を落としてくれよ。」

「ああ、今日は飲むつもりだ。」

「有難いね。ほらよ。」

 差し出されるエールを受け取る。それを飲みながら横に座る少女に話しかける。

「んで、セーラ。ガキがなんで酒場にいんだ。おめぇにゃまだ早えぞ。」

「依頼待ち。」

 そう言いながら、ブロッコリーを頬張る。

「ところで、ミラの依頼は何処?」

「よくわかんねぇ胡散臭い宗教団体だ。なんかしようとしてるみてぇだが、金払いはいいし、興味ねぇからどうでもいいけどな。」

「そう。」

 モグモグとブロッコリーを咀嚼しながら返事するセーラ。

「俺がどこで何しようと、おめぇにゃ関係ねぇだろうに。」

 エールを煽り、そう言うと、

「ミラとは殺り合いたくない。だからそれに関係する依頼は受けない。」

「ガキの癖に分かってんじゃねぇか。おめぇじゃ俺には勝てねぇよ。」

 バフバフとハットの上から頭を叩く。

「た、叩くなぁ。それに、ここなら勝ってる。」

 ムン、と胸を反らすセーラ。僅かな胸の膨らみが強調される。

「いい度胸してんじゃねぇか、糞ガキ。」

 顔が引き攣り、青筋が立つ。会話が聞こえてたのか、周囲から笑いが起こる。

「鉄壁の要塞様は、絶壁だからな。」

 そんな声が聞こえる。おめぇらまとめてぶっ殺すぞ。

 

「死にてぇ奴が多いみてぇだな。」

 背負っていたPK機関銃を構える。

「ま、待ってくれ、悪かったって。冗談だ。勘弁してくれ。」

 平謝りするクソ共に一瞥し、

「ガキが大人をからかうんじゃねぇよ。」

 セーラの首に銃口を突き付ける。

「ミラ、ごめん。許して、そんなに気にしてるなんて思ってなかったから。」

「おい、頼むから店を壊さないでくれよ。」

 そう言って、エールを一杯差し出すマスター、サービスってことか。

「マスターに感謝しな。二度目はねぇぞ。」

 機関銃を背負い直し、席に着くと、ビビった連中が席を立ち、店を出ていき、店内にいた客はほとんどいなくなった。

 ウィスキーを一瓶空け、帰ることにした。

「ごちそーさん。」

 マスターに金を渡す。

「おい、多すぎるぜ。いいのか?」

「迷惑料、俺のせいで客が減ったからな。」

「また来てくれ、次はサービスするよ。」

「おう、楽しみにしてるよ。」

 

 店を出ると、ほろ酔いの頭に新鮮な空気が送り込まれる。道にはガラの悪い奴らがたむろしているが、背中の機関銃にギョッとしたようで、絡まれることはない。

「もう一軒行くか。」

 もう少し飲みたい。そう思い道を歩いていくと、スラムに相応しくないブロンド髪の美人が絡まれている。ガラの悪い男どもに、卑猥な言葉をかけられているが、状況が分かっていないようだ。迷い込んだのか?バカな奴だ。誰も助けてはしないだろう。そういう場所だ。それに、

「バカみてぇにデケェ乳しやがって、自業自得だ。」

 巨乳憎し、その女の胸がデカい、それが一番許せない。無視して道を進むと、ひとりの男の手が、女の胸に伸びた、

「痴れ者め。」

 日本語?女の声に反応し、そちらを見る。手を伸ばしていた男が崩れ落ち、気を失っている。あの女、強ぇな。戦いの勘がそう告げる。間抜けどもはまだ気づかないのか、ギャーギャーと騒ぎ立てる。

「煩わしいな、弱い男に興味はない。」

 女が殺気を放つ、それでようやく気付いたのか、蜘蛛の子を散らす様に、逃げていく。何者だあの女?興味が湧いた俺は、

「おい、姉ちゃん、日本人か?何してんだこんな所で?」

 日本語で話しかけてやる。

「日本語が分かるのか、有難い。友人と観光にきたが、そいつが迷子になっててな。探していたが言葉も分からぬし、場所も分からぬ。」

「友人も日本人か?」

「イギリス人だ。」

 迷子になってるのはこいつだな。なんで自分が迷子の可能性を考えないんだ?あれか、胸に栄養取られて、頭にいってないタイプだな。

「高いとこから探せよ。」

 とりあえず、この巨乳(バカ )をからかうことにする。

「成程、賢いな。」

 こいつは本物だな。バカと煙は高いとこが好きと言うが、本当らしい。

「助言、感謝する。」

「構わねぇよ、見つかるといいな。」

 笑いを堪え、そう言う。からかい足りないが、まあ、いいだろう。そう思っていた時、

「上空から見る、盲点だった。」

 バカが、そう言いながら、空中を階段の様に、昇っていた。

「いやいや、ちょっと待ておかしいだろ。」

 なんで空中を歩ける?バカだから信じたら出来ちゃうのか?俺の言葉は届かず、

「お、見つけた。」

 そう言って、消えた。

「そんなに酔ってるつもりはなかったが…」

 明日から仕事だし、帰ろう。飲み過ぎたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラの説明

Милица(ミラ)Михајловић(ミハイロヴィチ )

年齢:推定22歳
性別:女
一人称:俺
職業:傭兵
能力:絶対防御(常時発動している。訓練したことで、強度を強化出来る様になった。)
携行武器:PK機関銃(火力と制圧力優先、命中精度は二の次)
髪:金髪ロングヘアー
身長:168cm
特徴:貧乳

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