原作に表記だけはあるけど、詳細不明のキャラがオリジナル設定で出ます。
後書きに金虎の設定を載せました。ネタバレの関係もあって全部は書けませんでしたが、ご了承ください。
―金虎視点―
私の飢えを満たせる、あわよくば私を倒せる強者を求め旅を続けているが、今だ相まみえることは叶わない。そんな日々を過ごす中で、弟、金次の話を耳にする機会が増えた。曰く、『不可能を可能にする男』や『殺しても死なない男』やらetc…。「ようやく遠山の男らしくなったか」と弟の成長を誇らしく思う。そう思うと「どの程度成長したか見てやろう」という気持ちが芽生えてくる。
「帰るか。」
そう思い立ち、流れ着いた地、英国より実家へその旨の連絡を『けーたい』とやらで送る(使い方は生前の父、金叉に叩きこまれた)。さて、どのように帰ろうか、来た道を辿るという手もあるが、-東シナ海を泳ぎ、上海へ辿り着き、歩きながら欧州へと至り、金次の噂を聞き喜びのあまり海へと飛び込んだ結果現在に至る―思いつきで辿った道の為、覚えていない。道を聞くにも言葉は日本語以外は理解出来ない。
「とりあえず、日本語を使える者を探すか。」
ブラブラと気の向くままに歩いていると、常人よりも強い気を感じた為、そちらへ向かうことにした。
「随分と治安の悪いところだ。」
強い気を追って薄汚れた道を通り抜けていく途中、何を言っているのか分からなかったが、私の身体に触れようとしたり、銃と向ける者や襲い掛かってくる者等がいたが邪魔なので転がしておいた。
「ここか。」
探していた気の持ち主を見つけ出した。五厘刈りの男の英国人がその気の持ち主だが、何やら戦闘中のようだ。しかし、一方的な勝利で戦いは終結する。
「相手が弱すぎるな…、しかしなぜ故利き腕を使わぬのか…。」
戦闘を見届け、感想と疑問を聞こえるように口に出すと、件の男は驚いたようにこちらを見て口を開くが、何か言っているが英語の為、さっぱり分からん。
「なんと言っておるか分からん…、日本語は使えんのか。」
そう伝えると、こちらを警戒しながら日本語で話しかけてくる。
「日本人か?俺に気配を察知させないとは…、何者だ。何故俺の利き腕が右だと分かった?」
「日本語が通じて何よりだ。利き腕は体の動きで分かる。そして私は、日本からの旅人だ。それよりも何故利き腕を使わない?」
「動きだけで分かったと…。」
男の警戒心が増し、銃をこちらに向けながら質問に答える。
「右を使わないのはハンデだ、俺は強すぎるからな。…しかし、トウヤマといい、日本人はおかしな奴が多いのか?」
ハンデ…、つまり加減か。しかし今、『トウヤマ』と…、はっ、と気づく、もしやとの思いで男へ駆け寄る。
「おお、トウヤマといったな‼金次に会ったのか‼」
「止まれっ‼」
その声と共に、銃声が鳴る。随分と警戒しているようだ、そう思いながら弾丸を掴むと、驚いた表情でこちらを見ている。
「日本人…、お前、本当に何者だ…?」
「そんなことはどうでもいい、それより金次に会ったのかっ‼」
下らんことを聞いてくる男にそう言い放ちながら、握った拳を開くと弾丸が地面へと落ちる。男は苦い顔をしながら言葉を紡ぐ。
「お前が聞いてるのは、トウヤマ・キンジのことか?それなら答えはイエスだ。」
そして、少し嬉しそうな表情で
「少し前に、決闘と共闘をした…。そのときは左手で俺の勝ちだったが…、将来的に右手を使えるだろう。」
まるで成長していくライバルを思うように話す。が、金次が負けたと…、しかも手心を加えられて…。
愚弟を少し見直していたが…、どうやら鍛えなおしてやらねばならぬようだ…、とりあえず、目の前のこの男の本気と同程度までな…。この男の力量を測らねばな‼
「加減はいらぬぞ…」
構えをとり、そう言い放つ。私の構えを見て
「お前…、俺が007、サイオン・ボンドだと分かっているのか?」
身の程知らずめ、と言うような口調で男が殺気を放つ。なるほど、ボンドというのか、覚えておこう。しかし…
「007などしらんわっ‼」
このボンドとやらはなにを言っているのだろう?とりあえず殴るか。そう思い踏み出す。
「クソっ、こいつ本物の馬鹿だっ‼」
ボンドが下がりながら銃を連射する。
「ハっ‼」
飛来する複数の弾丸を拳の連撃で撃ち落とし、一気に距離を詰めると、
「ちっ‼」
ボンドが私の拳に対応しようと左手を繰り出す。
「加減はいらぬと言ったはずだが…。」
意地でも右手を使わぬつもりか…、あまりやりたくなかったが仕方ない。左腕に拳を繰り出す。
「ぐぅっ‼」
ボンドが衝撃で仰け反り、左腕を押さえる。優しく折ってやったので完治は早いはずだ。
「これで手加減できなくなっただろう。」
こい、と合図してやると、
「後悔するなよ…。」
ボンドの殺気が増し、右手で攻撃を繰り出してくる。うむ、先程より格段に動きが良くなった。反撃せずに全ての攻撃を捌いていたが、大体の実力は分かった、そろそろ終わりにするか。しかし、この程度の手合いに負けるとは…、情けない男弟だ…。
「手合わせ感謝する。」
そう感謝の意を伝え、鳩尾に拳を叩きこむ。…しまった、少し加減を間違えた…。
ボンドは壁にぶつかるまで吹っ飛び、倒れた。起き上がらない。
「殺ってしまったか!?」
焦ってボンドに駆け寄る、意識は無い…、呼吸は…ある。よかった、そう思うがここで問題がある。倒れたボンドをどうするか…?腕組みをして考え込む。
「おお、そうだ‼」
名案が浮かぶ。
「おい、そこの、日本語は分かるか?隠れて見てないで手を貸してくれ。」
ボンドと会った時から、建物の上に隠れてこちらを見ている存在がいた。気付いてはいたがどうでもいいので無視していたが、恐らくボンドの仲間だろう。手を貸してくれるはずだ。敵だったら殴ればよいだけだ。
「いつから、気付いていた。」
倒れているボンドの前、男が私に背を向け現れた。
「ボンドを見つけた時からだな。それよりこれの仲間であろう?医者に診せる、手を貸してくれ。」
「ただの同僚だ、仲間じゃねぇ。が、こいつに恩を売ってやる。」
そう言って、男は「俺が運ぶ」とボンドを担いだので、「任せる」と小さく頷くと、
「敵意はないようだが…、お前は何者なんだ?こいつを赤子の手をひねる様に倒せるとは…、人間ではねぇみてだが。」
と失礼なことをぬかしてきたので、
「むっ、私は誰がどう見ても人間であろう‼よく見ろっ‼」
そう言って男の頬を両手で挟み、無理やり視線を合わせ、私の顔を見させる。男は、一瞬、目を見開き、すぐに私から目を逸らす。
「なぜ目を逸らすっ‼」
ぐっ、と手に力を少し入れ、こっちを見るように促す。
「わ、わかった、わかった。お前は人間だ‼だから放してくれ‼」
「まったく…。」
手を放してやる。男はふーっ、と息を吐き、顔を擦っていたが、それを終えると私に質問してくる。
「あんた、これからどうすんだ?」
「日本に帰ろうと思っているが…、道が分からぬ。」
「そうか…、それじゃあ、ここで待ってな、サイオンの奴を運んだら、送ってやるよ。」
男の厚意が有難い。
「おお、助かる‼なにぶん言葉も分からぬし、金もなくて困っておったのだ。」
「そんじゃあ、待ってな。」
そう言って男はボンドを担いで去って行った。
言われたとおりにしばらく待っていると男が帰ってきた。
「待たせたな。」
男はへへッと笑い
「それじゃあ、行こうぜ。」
と、小道を指す。ついてこいということらしい。頷き、歩みを始める。
「そんで、道が分かんねぇって言ってたが、空港までか?」
男がこちらを見ながら尋ねてくる、
「空港…?いや、日本までの帰り方が分からんのだ。陸路と海路で来たのでな。」
「そうか、とりあえず、日本に帰れりゃいいんだな?」
男の問いに頷く。男はニカッと笑って、
「そんじゃあ、特別コースで日本へ送ってやるよ。」
「有難い。」
ここは御厚意に甘えるとしよう。
「そういや、あんた、名前は?」
男が訊ねてくる。
「金虎、遠山金虎だ。」
「カナコか…、俺は、そうだな…、エイトだ。」
「了解した。」
お互いに自己紹介をしながら小道を抜けていくと駐車してあるエイトの車に乗り込むと、エンジンがかかる。
「どうよ、いい車だろ。ボンドカーみてぇな面白カーじゃねえけどよ。」
そんなことをエイトが言っているが、ボンドカーなるものは知らないし、車の良し悪しなど分からない私は、ひとつの疑問をぶつける。
「そんなことより、ひとつ聞きたい、ボンドのエイトも言っていたが、007や008とは何だ?」
私の質問に、エイトは驚いて
「嘘だろ…、信じられねぇ。マジで知らねえのか?」
と唖然としている。
「知らん。」
それからしばらく、エイトがいろいろと説明していたが、話が難しくて理解出来なかった。
「降りな。」
車のエンジンを切り、ドアを開けながらエイトが言う。それに従って降車する。戦闘機やヘリやらがずらりと並んでいる。
「こっからは空だ。」
エイトが小型の飛行機を指差す
「空港でも迷子になるだろうから、カナコには、こっちのがいいだろ。」
からかうように言うエイト。事実、空港で降ろされ、ひとりで帰ることとなっていたら、なんと書いてあるか分からない空港内を、私は彷徨うはめになるだろう。文字は苦手だ。
「悔しいが、助かる。」
私がそういうと、エイトはケラケラと笑い
「んじゃ、行こうぜ。」
と歩きだす。私はその後ろをついていき、飛行機に乗り込む。人生初の飛行機に少し気分が高揚する。
「俺は、操縦席に行くから、座ってな。」
エイトはそう言って奥へ行く。私は席に着き、機内をキョロキョロと見ていると、飛行機が動き出し、加速し、飛び立つ。「おおー」と声が漏れる。しばらく外を眺めていると
「随分と楽しそうだな。」
エイトが戻ってきた。
「操縦はいいのか?」
そう尋ねる私に
「自動操縦だよ。操縦は離陸と着陸、その前後だけだ。特注のエージェント専用機だからな。」
スゲーだろ。とエイトが言う。
「飛行機には初めて乗ったが…、実に面白い。」
私が称賛すると、
「陸路と海路で来たんだったな、随分と時間がかかったとは思うが、なんで帰り道が分からなくなるんだ?パスポートの入国スタンプを見りゃ、あらかた分かるだろうに。」
エイトがそう尋ねてくるが、
「パスポートとは何だ?見せろと言われても、そんなもの持っておらぬぞ。日本海を泳いで上海に渡り、そこから適当に歩いていたら欧州に辿りついてな、そして気晴らしに海へ飛び込んだらイギリスに流れ着いたのだ。故にどこを通ってきたのかも覚えておらん。そもそも、そのパスポートとやらが無ければ、何か問題でもあるのか?」
だいぶ省略したが伝わっただろう。しかし、パスポートとはなんだ?
「マジかよ…、嘘だろ…。」
エイトが頭を抱えて呻く。
「おい、大丈夫か?」
頭痛でもするのだろうか?と私が心配してやると、
「お前の頭が大丈夫じゃねぇよ‼」
エイトが叫ぶ。人が心配してやったというのに、なんという物言いだ。
「なんだ、私を馬鹿にしているのかっ‼」
「馬鹿にしてるんじゃねぇ‼お前は馬鹿なのっ‼」
「なんだとっ‼」
私は勉強が嫌いで、考えるのと覚えるのが苦手で、忘れることが多いだけだ。
それから日本へ着くまで、エイトからパスポートとやら法律やらを教わったが、難しかったので忘れた。そのほかにもいろいろと話したが…、それも忘れた。
日本に着くとエイトが見送ってくれた。
「いろいろと助かった。ありがとう。この借りは必ず返す。」
エイトに礼を言う。
「また、イギリスに来いよ。次は、ちゃんとパスポート持ってな。借りは…、考えとく、もしかしたら仕事を頼むかもしれんがな。」
「了解した。では、また会おう。」
見送るエイトに手を振る。-良き友を得た。また友に会うため、イギリスへ行くことを心に誓う。…しかし、パスポートとは何なのだ?…まあ、何でもよい、些細なことだ。約1年の旅を終えるべく、実家を目指し歩き出した。
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―008視点―
俺は、MI6のエージェント‐008‐、本名は機密事項だ。
今は、007-サイオン・ボンド―のバックアップ任務に就いている。サイオンのターゲットが万が一、逃げ切れた場合(もっとも、そんなことは有り得ないだろうが)の対処役だ。
ターゲットを追い込んだサイオンを建物の上から眺める。サイオンが戦闘を開始した。「終わったな」そう思い、帰ろうとした時、ふらりと人がが現れた。後ろ姿しか見えないが、女のようだ。そいつはサイオンの戦闘を眺めているが、サイオンはそいつに気付いていない。まさか、敵か?-ターゲットに仲間はいない-情報部の調査に誤りがあったのか?しかも、戦闘中とはいえ、サイオンが存在に気付けない女、実力者と見て間違いないだろう。
俺が、その女への警戒を強めていると、サイオンの戦闘が終わる。戦闘を終えたサイオンに女が話しかけた。サイオンは、そこでようやく女の存在に気付いたようだ。驚いたサイオンが、女に質問をぶつけているが、女は英語が分からないらしく、しばらくしてサイオンが日本語で話し始める。-日本人…、気配を消していたようだし、忍者か?-そんなことを考えていると、サイオンが発砲した。女には当たっていないようだ、恐らく威嚇射撃だろう。一連の動きを見ていなかった俺はそう考える。女が突然拳を構え、サイオンが殺気を放つ。馬鹿な女だ、戦う相手の実力も分からないらしい。忍者ならおとなしく隠密に徹していればよいものを…、いや、逃げられないと悟ったのか?俺が、世界最強のエージェント‐007‐と戦うことになった不幸な女を憐れんでいると、女が踏み出すと同時に、サイオンが銃を連射した。
「あーあ、可哀そうに…。」
女の死を確信して思わず口に出る。しかし、瞬間、目を疑う光景が繰り広げられた。その女は銃弾を拳で撃ち落としやがった、しかも、一発ではなく、サイオンが女を狙って放った弾丸、全てをだ。あの女、忍者じゃねえのかよ‼
「マジかよ…。」
俺が驚愕に目を見開いていると、女は瞬間移動したかのように、一瞬でサイオンとの距離を詰めている。サイオンが攻撃を繰り出すが、その腕を女の拳が打ち抜き、サイオンが仰け反り、腕を押さえる。ありゃ、折れてるな…。援軍として女を攻撃するか、そう思っていると、ボンドの殺気が増した。これがあいつの本気か…、距離があっても伝わってくるサイオンの殺気。
「ちっ、あの野郎、俺たちにも加減していたのか…。」
悔しいが、サイオンは、俺たちエージェントで一番強い。何度か訓練でやり合ったが、全て負けた。認めたくはなかったが、あの新参の若造は圧倒的に強い。しかも、今の奴の殺気から、手加減されていたことが分かり、苛立ちを覚えた。手加減されても勝てない、最強のエージェント…、あいつのハンデを与える精神と、本気を出させれなかった己の未熟さに怒りが込み上げてきた。
サイオンは折れた腕を無視し、強烈な猛攻を仕掛けている。先程までと動きが全く違う。「スゲェ」、怒りを忘れ、素直に関心してしまう。しかしそれ以上の相手の女の凄まじさが見える。サイオンの猛攻を当然の様に捌いている。そして、女が、反撃に出た、いや、出たのだろう…。何も見えなかったが、サイオンが吹っ飛んでいった。地面に落ちたサイオンは、ピクリとも動かない。
「嘘だろ…。」
あまりに衝撃的な光景に呆然としていると、女が焦った様子でサイオンに駆け寄り、サイオンの状態を確認している。俺は、我に返り、退却を開始しようとしたその時、
「おい、そこの、日本語は分かるか?隠れて見てないで手を貸してくれ。」
女の声が響く、気付かれていたか…、いや、違うな、あれ程の実力者相手に、気付かれないと過信していた、自分が甘かった。逃げるか戦うか、いやどっちも不可能、確実にヤられる、そんな確信めいたものが脳裏をよぎる。一縷の望みを賭けて、俺は投降を決意し、女の元に向う。道中、落ちているサイオンのはなった弾丸-ぺしゃんこになり、コインの様になっている-を見つけた。戦闘になったら、間違いなく死ぬな。あの女は正真正銘の化物だ。
「いつから、気付いていた。」
動かないサイオン(気を失っているようだ)を前に、女に背を向けたまま、恐怖を隠し、平静を装いながら女に質問する。
「ボンドを見つけた時からだな。それよりこれの仲間であろう?医者に診せる、手を貸してくれ。」
女は、殺気どころか警戒すらなく、サイオンを指さす。どうやら、サイオンを病院に運ぶつもりらしい。どうやら死なないで済みそうだ。
「ただの同僚だ、仲間じゃねぇ。が、こいつに恩を売ってやる。」
エージェントは機密情報の塊だ、下手に病院には連れていけねぇ、本部へ運ぶ必要がある。「俺が運ぶ」、そう言って、サイオンを担ぎ、初めて女をちらり正面から見る--胸、デケェな-女の胸にまず目がいってしまう-と、女は「任せる」と言い、小さく頷いた。こちらに対して全く敵意を感じない。
「敵意はないようだが…、お前は何者なんだ?こいつを赤子の手をひねる様に倒せるとは…、人間ではねぇみてだが。」
女の正体が分からず、探りを入れると、奴は、
「むっ、私は誰がどう見ても人間であろう‼よく見ろっ‼」
語気を強める。しまった、そう思った瞬間、頬を両手で挟まれ、強引に動かしてくる。ヤバい、そう思った時、俺の目に女の顔がはっきりと映る。ところどころ跳ねたブロンドの髪に、切れ長の目、その左の目じりには黒子がひとつある。…とんでもない美人がそこにはいた。エージェントとして世界各国で仕事をこなしてきた俺が知る限り、一番の美人だ。そんな美人、俺の目をじっと見ている。思わず照れくさくなり、目線を逸らす。
「なぜ目を逸らすっ‼」
この美人はそう言って両手に力を入れる。-痛い、マジでいたい、骨が砕けるっ‼-痛みに耐えかね、
「わ、わかった、わかった。お前は人間だ‼だから放してくれ‼」
俺は、怪力美人に懇願すると、
「まったく…。」
そう言って、手を放してくれた。痛みを誤魔化すのと、気持ちの切り替えの為、息を吐き、顔を擦りながら考える。とりあえず、この女について分かっているのは、出鱈目な強さと、今のところ敵対する様子なないってことだけだ。それ以外には何もわかっていない、こいつに敵意のないうちに可能な限り情報を引き出す必要がある。エージェントとしても、ひとりの男としても、この女に対して抑えられない興味が湧いてきた。
「あんた、これからどうすんだ?」
とりあえず、今後の行動予定を聞き出そう、顔に添えていた両手を戻し、そう思い質問する。
「日本に帰ろうと思っているが…、道が分からぬ。」
「そうか…、それじゃあ、ここで待ってな、サイオンの奴を運んだら、送ってやるよ。」
『日本に帰る』…この女は日本人で間違いないようだな。しかし、日本人ってのは黒髪じゃなかったか?いや、染めている可能性も、混血の可能性もある。道が分からないってのはラッキーだ、ここから下手に動けないだろうし、道中で情報を聞き出せる可能性も高くなる。
「そうか…、それじゃあ、ここで待ってな、サイオンの奴を運んだら、送ってやるよ。」
「おお、助かる‼なにぶん言葉も分からぬし、金もなくて困っておったのだ。」
「そんじゃあ、待ってな。」
俺はサイオンを担ぎ、ひとまず本部へ向かう。
本部にサイオンを放り込んで先程の場所へ戻り、女から話を聞くと、日本まで送ることとなった。女を車へ案内し、その道すがら、名前を聞き出す。女は『トウヤマ・カナコ』というらしい。偽名の可能性もあるが、とりあえず一歩前進だ。俺も名乗ることになったが、『エイト』なんて我ながら安直な偽名だな。
車に乗ると、とりあえず、カナコが情報に疎いことが分かった。まさか、007もMI6も知らないとはな…。仕方なく、世間一般にも知られている程度の内容を教えてやる。情報を聞き出すどころかこっちが話してどうすんだよ…、そう思いながらも、黙って話を聞いているカナコの横顔に見惚れてしまい、話を止めれなかった。サイオンが女を避ける理由が分かった気がする。この美女を見ているだけで、任務・不安や悩み…、どんな問題も些細なことに感じられ、この女のために全てを捧げたい、そんな思いが込み上げてくるのだ。
そんな思いは、車から飛行機へ乗り継ぎだ後、機内でのカナコとの会話で、一瞬で消え去った。
…カナコは、この優れた容姿からは想像できない、いや、想像してはいけないレベルの馬鹿だった。ひどく残念な女だった。黙っていれば、あんなに美人なのに…。パスポートの存在すら知らずに、とんでもない手段で世界を旅してやがった…。
「帰国したら、軟弱な弟を、死なない程度に殴って鍛えなおす。」
と、カナコは息巻いていたが、その弟が不憫でならねぇ。しかし、化物以上の強さのカナコの拳(多少の加減はしていると思うが)を耐えられる時点で、弟も十分化物だな。
カナコの規格外の大馬鹿っぷりに呆れ、俺の淡い恋心は消し飛んだが、こいつの戦闘能力は、それ以上に規格外だ。上手く扱えりゃ、最強の戦力になる。そんなことを考えながら、カナコに常識を叩き込んでいたら、日本へ着いた。
飛行機を降り、カナコを見送ってやると、
「いろいろと助かった。ありがとう。この借りは必ず返す。」
カナコが、俺に礼を言う。
「また、イギリスに来いよ。次は、ちゃんとパスポート持ってな。借りは…、考えとく、もしかしたら仕事を頼むかもしれんがな。」
「了解した、では、また会おう。」
手を振り、去って行くカナコ。
『借りは必ず返す』
この短い旅行は無駄ではなかったらしい。俺は、最強のカードを手にしたようだ。切れる回数は一度だけかもしれないが…。
そして、『また会おう』手を振るカナコの姿を見送り、消し飛んだはずの恋心が、また、芽生えようとしていた。
遠山金虎の設定
・遠山家の長女(24歳) 1986年生まれの寅年
・見た目のイメージは、閃乱カグラの大道寺先輩(忍転身前)
イメージというより、もう、そのまんま大道寺先輩。(分からない人はググって下さい。 )
・家族(新規加入の3人は除く)は全員、黒髪なのに、何故かブロンド髪で生まれてきたおかしな人。しかし、それが些細な問題になるくらい、それ以上におかしな戦闘力と残念なポンコツ脳みそを持つ。
・文字を見るのも、読むのも苦手で、数字も嫌い。興味がないことは、3歩歩いたくらいで直ぐに忘れる。考えるのも苦手。
・とにかく気合でなんとかなると信じており、全ての行動が行き当たりばったり。しかし、なんとかなるし、なんとかする。
・武器はある理由で使わず、我流拳法で戦う。
・強すぎて、本気で戦える相手がおらず、言葉も分からないのに、パスポートを持たずに世界を旅する、強いハートの持ち主。
・とりあえず殴る、肉体言語使用者。
・身長は170cm
・巨乳
とりあえず、こんなところです。