緋弾のアリアif~遠山家最強の姉~   作:トリプルツレー

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今回は特に滅茶苦茶な話です。
本当にごめんなさい。


集結、名古屋女子校

御幣島(みてじま)あびこ視点―

 

 

 大阪武偵高3年B組の教室、その扉を勢いよく開け、

「出来た、遂に出来たんや!!ウチだけの特注バット!!」

「いや、教務部呼び出しから帰ってきて第一声がそれ!?」

 歓喜のあまり、チームメイトでクラスメイトで幼馴染の阿部野(あべの)(はるか)に突撃をかました。

「せやから、出来たんやて、ウチの特注バットが。」

 発注したのは高校入学前、それが3年になった今、遂に完成したのだ。熊本県にいる多国籍刀工集団、『ビヨンド』。そんな肥後もっこすたちが試行錯誤を繰り返し、手塩をかけて完成された特注のバット。

 特殊繊維とカーボン、鋼を絶妙に織り交ぜ、戦車の装甲以上の強度を持ちながら、従来の金属バットとさして変わらない重量という、(いい意味で)変態技術が遺憾なく発揮された最高の逸品。

「よっしゃー!この『ビヨンド・もっこす』で阪神優勝や‼」

「いや、それあびこ関係ないやん。それは阪神の選手に頑張ってもらわんと。そもそも、プロ野球は金属バット禁止やし。あとその名前、いろいろとアカンやろ。」

「ツッコミ長いなぁ、もっとこう、短くスナップを効かせた感じやないとアカン。」

「知らんがな。それよりも御幣島先生の呼び出しなんやったん?」

 なんや、『ビヨンド・もっこす』よりもそっちが大切ななんかい。ちなみに御幣島先生はウチのオカンや。

「オカンが言うには、名古屋で研修やさかい、チームで行けやと。」

「は、え、めっちゃ大事な連絡やんっ!?なんでそんな大事なこと言わんとしょうもないバットの話なんかしよるん!?」

「なんやと‼ウチの『ビヨンド・もっこす』のどこがしょうもないんや、言うてみぃ。あんたを試し打ちの第一号にするで‼」

「このドアホォっ‼」

 ゴチンと頭頂部に拳骨が落ちる。

「何すんねん、オカン‼」

「あ、御幣島先生。おはようございます。」

「阿倍野、おはようさん。あびこ、あんたぁ、さっきからの聞きよったけど、アホばっかり言いよって。さっさとチームに伝えてき。あんた一応リーダーやろが。あと、学校ではオカンやのうて、御幣島先生や。何回言わせんねん。」

 あ、これはアカンな、ガチで怒っとる。

「直ぐ行って来ますっ‼」

「…私もついて行くわ。あびこだけやと不安やし。」

「すまんなぁ、阿倍野。頼むで。」

 

「しかし、柴島(くにじま)私市(きさいち)らは2年の教室やし、ヒラパー姉さんはいつもの実験室かぁ。メンドいなぁ。」

「取りあえずひらパー姉さんの方から行こか。実験室近いし。」

「せやな。」

 バットを担ぎ、はるかと並んで廊下を歩く。

「いや、ちょっと待って、なんでバット持ってきたん!?置いてきぃよ。邪魔くさいわ。」

「せやかて、これウチのメインウェポンやし。携行せな教務部に怒られるやん。」

 そう、拳銃と刀剣の携帯が義務付けられている武偵高やからな。

「あんた、あの日本刀やったやん‼アレ、どうしたんや!?」

「ああ、アレな、アレは売った。だって『ビヨンド・もっこす』ごっつ高いねん。」

 そう、最新技術と匠の技を遺憾なく用いて制作されたこの特注バットは恐ろしく高い。それこそ今までためてた依頼料だけじゃ足りんくらい。

「試合で使うんやと思っとったわ…」

「アホやな、公式戦でこないな魔改造バット使えるかいな。即退場やぞ。」

「ならなんで買ったん!?アホ、ドアホ、前の日本刀で良かったやん。そないなバットでどないやって戦うねん‼私らチンピラとちゃうねんで‼。」

「だってウチ、4番サードで掛布の再来やし…」

「わけわからんわ…」

 そんな会話をしながら実験室に辿り着く。

 

「邪魔するでぇー。」

「邪魔すんねやったら帰ってやぁ~。」

「あいよー。…ってなんでやねん!」

「毎回この下りするんやめぇや。」

 お決まりのネタをしていたら、はるかに睨まれる。

「あびやん、今日はどないしたん~?ウチ、実験中やねんけど~。」

「すまんなひらパー姉さん。話があってきたんやけど、今回はなに作ったん?」

 ひらパー姉さんこと枚方(ひらかた)パトリシア、略してひらパー。同級生やけど、なんか大人の色気ムンムンやから姉さん。そんな、ひらパー姉さんの制作した謎の機械?何やろう銃口ぽいのついとるから、最新兵器かいな?

「これなぁ~、すっごいんやでぇ~。なんと、弾丸要らずの銃なんやぁ~。」

「えっ‼めっちゃ凄いやん。姉さん、ノーベル賞取れるんちゃう。」

「弾丸要らずって、どうやって撃つん?」

 はるかの質問に、姉さんは、

「これはなぁ~、心で撃つんやでぇ~。」

「「それ、サ〇コガンやん!」」

「せやでぇ~、サイコ〇ンやでぇ~。」

「あかん、遂に宇宙海賊になる時がきたんか…」

「いや、いろいろとアカンやろ…」

 サイコガ〇の実験中やったんか、そんな大事な場面に遭遇するとは、ウチはついとるな。

「ほないくでぇ~。」

 姉さんが左腕にサイ〇ガンを嵌める。

「よっしゃ、ウチがアーマロイド・レ〇ィやるから、はるかはクリボーな。」

「いやや、私撃たれるやん。私の身体やと貫通して死んでまう。」

 姉さんの左腕の〇イコガンに光が集まる。

「ヒューッ!エネルギーが集まってやがる、こいつはやるかもしれねぇ…」

「いや、ダメでしょっ‼ここ室内だし。」

 そんなことは些細な問題だ。なんせサイ〇ガンの完成に立ち会えるかもしれないのだ。

 

 ボンッ、という音の後、爆発が起き、建物が揺れる。

「アカン、失敗やぁ~。」

「コルァッ枚方ぁーっ‼またやりよったなぁーっ‼」

「あびやん、はるちゃん、逃げるでぇ~。」

「あ、姉さん待ってぇな。」

「なんでぇー、私なんも悪ないのにぃー。」

「御幣島に阿倍野、またお前らかい。今日という今日は逃がさへんぞ‼」

「ほらほら~、逃げな地獄のお仕置きコースやでぇ~。」

「姉さんが悪いんです。私何も悪ないんですぅ。」

 はるかが必死に弁明しているが、その腕を掴んで姉さんと共に駆け出した。ウチは仲間を見捨てたりせぇへんからな。

 

「それで~、なんやったん?」

 なんとか逃げ切り、姉さんが用件を尋ねてくる。

「ああ、それな、かくかくしかじかで。」

「まるまるくまぐまなんやね~。」

「いや、そんなんで分かるかいな。ちゃんと説明せぇ‼」

「ツッコミ大変やなぁ~。」

「分かっとんなら、ボケんの自重してぇや…」

 それは無理やな。だってウチ大阪人やし。

「説明すんなら、いずみんとつるみん呼んで纏めてでええんちゃう~。」

 そう言って、姉さんがスマホを取り出す。

「「せやった、なんでケータイ使わへんかったんや‼」」

「自分ら、アホやなぁ~。」

 姉さんがスマホを操作し、

「あ、いずみん?せやでぇ~ウチやで~。つるみんもおる?ほならふたりで旧校舎の中庭に来てぇな~。」

 通話を終えた姉さんは、

「ほな、待っとく間、チンピラ装備のおふたりとお話でもしよか~。」

「チンピラ装備やと‼ウチの『ビヨンド・もっこす』に文句あるんか!?姉さんとて容赦せんで‼」

「なんで私までチンピラ扱いなん…」

「「いや、あんたは完全にチンピラ装備やろ(~)。」」

 メインウェポンがバールと鉄パイプのはるかは、絶対にチンピラ装備や。

「武偵中の時からバールやからな。高校上がってちゃんとしたもん買ってくるかと思いきや。」

「バールそのままで、鉄パイプ追加で二刀流やからなぁ~。」

「しゃあないやん。家にあるもんで済ますんがコスパええんやから。」

 はるかの家は、阿倍野建設という、そこそこ大きい建設会社やからな。

「お嬢様のくせにケチ臭いねん。」

「ケチちゃう、節約家や‼」

「まあ、それで強襲科Aランクなんやからええんやけど~。それに~、バールのフルスイングはマジでアカン威力やからなぁ~。」

 はるかのスイングスピードはプロ野球選手並。ウチらの女子野球部入ってくれんかなぁ、四番任せれるで。なんでバール持って茶道部やねん。

 

「あ、来たみたいやでぇ~。」

「お、ホンマやな。」

 タッタッタ、とこちらに駆け寄ってくるショートカットの少女、柴島(くにじま)和泉(いずみ)。その背中に背負われた小さな少女が私市(きさいち)鶴美(つるみ)

「すんません、お待たせしました。」

「いずみ、急に呼び出してごめんな。」

「いえ、そんで、話はなんですの?ほら、つるみも起きぃ。」

「アカン、眠すぎて死にそうや…」

 つるみがいずみの背中から降ろさ、青白い不健康な顔で弱々しく呟く。

「ほら、つるちゃん、こっちきぃよ。」

 はるかがつるみを呼び寄せ、膝に座らせる。

「はる姉ぇ。」

 はるかとつるみは従姉妹で実の姉妹の様に過ごしてきた為に、はるかは小さくて病弱なつるみを可愛がっているし、つるみもはるかに甘えている。

「それで、話なんやけどな―」

 

「成程、名古屋へ…。」

「せや、投高打低でバッター不利やけど、ウチらならやれる。ライトスタンドに叩き込んだるで。」

「いや、ナゴドには行かへんから‼行くんはナゴジョ‼」

「はるか先輩、流石のツッコミです。」

 流石はるかやな。野球興味ない癖に、ツッコミの為に知識だけは詰め込んどる。

「せやけど、2日間の研修ってなにするん~。」

「ああ、それな。オカンが言うにはな、全国から選りすぐりの女子武偵が集められて、なんやするんやと。」

「いや、そのなんやが大事なんやけど。」

 はるかの言う事も尤もだが、

「初日は学生同士の交流らしいんやけど、2日目はオカンも知らされとらんらしいねん。せやからウチも知らん。」

「はぁ、大丈夫かいな。つるちゃんも行くやろ。心配やわ。」

「せやなぁ~。つるみん死ぬかもな~。」

 病弱なつるみをはるかと姉さんが心配している。

「え、ウチ死ぬん?」

 ボーっと聞いていたのか、つるみがそう言う。

「せやで、死ぬで~。」

「そっか、短い人生やったなぁ。」

「いや、そんな達観せんといて。死なへんから。大丈夫やから。」

 3人のコントを見ながら、野球部の後輩でもあるいずみに声をかける。

「なんやようわからんけど、行くで名古屋、ウチといずみの無敵の4、5番でドラゴン退治、そして阪神優勝や‼」

「はい、先輩‼」

「我ら『浪花の虎乙女』名古屋に殴り込みや‼」

「そのチーム名変えられへんのかなぁ…」

 

 そして、その日がやってきた。名古屋へ向かう新幹線に意気揚々と乗り込んだ、

「あびこ先輩とひらパー姉さん、随分と大荷物ですね。」

「せやねん、いろいろ持ってきよったらこうなったんよ~。」

「いや、たった1泊2日なんに、そない何がいるん?」

 あれ、なんでウチこない大荷物なんやっけ?持ってきたんは、暇な時間あったら野球しよう思って、グローブとボールと…詰めた荷物を思い出してみる。

 新幹線の発車後、いずみと姉さんの会話を聞きながら、とんでもないことに気付き、ウチはガタガタと震える。

「あびこ、どないしたん。めっちゃ顔色悪いで?」

 はるかが心配している。

「昨日の夜寝れへんかったんかぁ~?遠足前の小学生みたいやわ~。」 

「姉さん、それはちゃうで、ぐっすり寝た。もっとヤバいことやねん。拳銃と間違えて、スピードガン持ってきてしもうた…どないしよう、オカンに殺される…」

 よう考えたら、バックも野球部の遠征用のやつやし。

 

「あんた、何しに行くん?」

「コレは教育やろなあ~。」

 アカン、ホンマどないしよう…

 

 

 

 

 

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―神崎・H・アリア視点―

 

 

 

 なんか、心配しかないんだけど…

「アリア、もうどうしようもないんだから、今を楽しもうよ~。」

 名古屋までの移動の新幹線、向い合せにした座席、その中で理子が必死に盛り上げようとしているが、私たちバスカービルの面々はまるで、お通夜みたいな空気が漂う。

「そうですよ、アリア先輩。それに、なんで先輩方はそんなに暗いんですか?名古屋研修ですよ。」

 あかりたちのチームも隣の座席を取っていた。

「名古屋研修だからだよ…」

 今にも死にそうな表情の白雪がそう呟く。普段から無表情のレキでさえ、顔色が良くない気がする。

「気付かなければ良かった…」

 後悔先に立たず、そうはいうけれど、研修の特別講師が誰か気付いてしまってから、なにも楽しみなんてない。あるのは、生きて帰れるのか。ただそれだけだ。そして、知ってしまった以上、この新幹線は、私たちバスカービルにとって、生きて帰れぬ戦場へ送り出される兵員輸送列車となったのだ。

「なんや、湿気た面しよって、そんなんじゃ他校の生徒に負けるで。」

 ビールの500ml缶を片手に蘭豹がやって来たが、なんと言われようと、地獄へと送られる私たちには響かない。

「あ、蘭豹先生ぇ~、ちょっと、お話があるんですけど~。」

 理子が蘭豹を連れ、別の車両に向かう。ああ、蘭豹ってあの人の妹分なんだっけ…理子の奴、言うつもりね。

 暫くして、理子と死にそうな顔をした蘭豹が戻ってくる。

「あー、その、お前ら、頑張りぃや…」

「はい…」

 葬式の様な空気の中、新幹線は無慈悲にも名古屋へと向かって行く。

 

「東京武偵高のご到着だぞー。」

 ナゴジョの校門を潜ると、生徒たちがわらわらと集まってくる。

「あ、ひかちゃん‼」

「あかりっ‼」

 ああ、あかりの従姉妹だったっけ、そんな後輩の姿を普段なら微笑ましく思っていただろう。しかし、今はそんな気分じゃない。

「あびこ、そんでどないするん?」

「オカンにはボコられたし、もうスピードガンでええんちゃうか。」

「サイ〇ガンならあるでぇ~。」

「ほなそれでええわ。」

 少し離れた所で、関西弁で謎の会話が繰り広げられていた。

「えっ!?サイコ〇ン!?見たい見たい‼」

 何故かその会話に理子が反応している。

「サ〇コガンってなに?」

「え、アリア知らないのっ!?サイコガ〇は心で撃つんだよっ。」

 いや、訳が分からないんだけど。

「ほな、試し打ちしよや~。」

「いや、やめとき。この間爆発しとったやん。」

「芸術は爆発やっ‼」

 そう言って、何故かバットを持った関西弁の少女が、左腕にサイ〇ガンなるものを装着する。

「ええかぁ~あびやん、サイコ〇ンは心で撃つんやでぇ~・」

「ひゅーっ‼分かっとるで、ひらパー姉さん。」

 何故かハイテンションでサイコ〇ンを構えている。

「いや、アカンて。よそ様の学校で爆発事故とか洒落にならへんから。いずみも止めてぇな。」

 ああ、常識的な人もいるのね。…なんでバール取り出したのかしら?

「先輩、あきまへん。はるか先輩プッツン寸前ですよ。ほら、バール出しちゃってますもん。ホンマあきまへんて。」

 いずみと呼ばれた背の高い少女が〇イコガンを装着した少女を止めに入る。

「嫌や、ウチは宇宙海賊になるんやーっ‼」

「先輩、そんなんなったら、一緒に甲子園行くって夢、どないするんです…」

 サイコガ〇の少女が大人しくなり、

「ウチが…ウチが間違っとった…なんや宇宙海賊って。よっしゃ、行くで、甲子園‼そして阪神優勝や‼」

 バシッ、とサイ〇ガンを地面に叩きつける。

「はいっ‼先輩‼」

「ああ、ウチのサイコ〇ンが~。」

 なんなのあの一団?結局サイコガ〇ってなによ?

 

「ねぇねぇ、サ〇コガン見せてぇー。」

「あんた誰や~。」

 ちょっと理子、あんた変な連中に絡むんじゃないわよ。

「理子もサイ〇ガン撃ちたーい‼」

「ええよ~、ただ爆発すんで~。まだ調整中やし~。」

「え~、じゃあやめとく~。ほら、アリアたちもおいでよーっ。大阪の人たち面白いよーっ‼」

 行きたくないわね…なんか、疲れそう…

「なんや、自分ら東京もんかいな。ってことは、アリアって、あの神崎・H・アリアかいな!?ビックネームやないか‼」

「ほら、アリア来なよーっ。」

 私をキョロキョロと探すバット装備の少女の前に、理子が私の腕を引いて連れていく。だから、行きたくないんだって…

「ほら、アリア自己紹介。」

 にゅふふ、と笑う理子。絶対あんた楽しんでるでしょ…

「はぁ、東京武偵高3年、強襲科Sランク。神崎・H・アリアよ。」

「おお、あんたが噂のアリアはんかぁ。ウチは大阪武偵高女子野球部3年、御幣島(みてじま)あびこ。4番サード、右投げ左打ちや。」

 …?

「いや、あんたそこはランク言うところやろ‼…ホンマごめんな。あ、私は阿部野(あべの)(はるか)、あびこと同じ3年でふたりとも一応強襲科のAランクや。」

 あ、さっきの常識人。しかし、一応ってなによ?いや、それ以上に

「あんたたち、そのバールとバットは何?」

 純粋な疑問をぶつける。

「「えっ?いや、これウチ(私)のメインウェポンやけど?」」

 あ、常識人がいなくなった。いや、ダメでしょ。仮にも武偵なのよ‼そんなチンピラ…いや、今時のチンピラ以下の装備ってなによ!?

「せや、なあアリアはん、大阪に移籍せぇへん?んでもって女子野球部入ってや。そないしたら3番ファーストで、ウチが4番サードでいずみが5番セカンドになって、1985年の阪神のクリーンアップの再現しよや。」

「ごめん、意味が分からないわ。」

「そうですよ先輩、『ニューヨークからロサンゼルスまで飛ばす』くらいやないとバースは務まりませんて。」

「せやな、ウチが間違っとったわ。ホンマ凄かったからなぁ、すんまへん、そしてホンマありがとうバース。」

 どうしよう、この人たちが何を言ってるのか、サッパリ分からないわ。

 

「研修の予定表でーす。貰ってない方はまだいますかぁー。」

 訳の分からない会話を聞いていたら、予定表を配って回っているナゴジョの生徒たちやって来た。

「あ、ウチら貰ってへん。」

「私たちもよ。」

 A3用紙を半分に折っただけの簡易な予定表を受け取る。

「初日は各校の親睦会…他校の後輩を上級生が指導するのね。面白そうじゃない。」

「くふーっ、面白い子はいるかなぁー?」

「上手く出来るかなぁ…」

「……………」

 私たちバスカービルは、意図的に2日目の予定を見ようとはしなかった。

「なんや2日目の予定の、武偵庁特別顧問:遠山(とうやま)金虎(かねとら)はんって、初めて聞いたわ。厳つい名前やなぁ。ゴッツイ武将みたいなイメージやけど、猛虎魂を感じる、ええ名前やな。」

「これで『かなこ』って読むんやて、フリガナあるんやからちゃんと読み。人様の名前間違えるんは失礼やで。」

「せやけど聞いたことない役職やわ~。なんなんやろな特別顧問って、ごっつ強そうやわ~。」

「実技研修ってなにするんでしょう?」

「あ、アカン、死にそうやわ…ゴフッ‼」

 なんか、あかりよりも小さい子が血吐いてるんだけど…大丈夫なのかしら?いや、それよりも、聞きたくないことが聞こえてしまった…

「あ、つるみんが血ぃ吐いてもうたぁ~。」

「ちょっ、ひらパー姉さん眺めとるだけやのうて、運ぶん手伝って下さいよっ‼」

「アカン、保健室‼」

「あ、お昼なんに、お星様が見えるで。不思議やなぁ。」

「つるちゃん、もう喋ったらアカン‼」

「それ死兆星ちゃう~。」

 ドタドタと吐血した少女を抱えて大阪組が走っていく。騒がしいのがやっと何処か行ってくれたわ。…大丈夫よね、あの子…

 

 大阪組が去り、静かになった我らがバスカービルは、再びお葬式ムードに戻る。

「「「帰りたい…」」」

 叶わぬ願いを、静かに呟いた。

 

 

 

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―間宮あかり視点―

 

 

 

「そこは、ホームランコースやで。」

 放った弾丸が打ち返され、顔の真横を通過する。この人たち、ふざけてるのかと思ってたけど、強い‼

 

「他校の先輩から指導なんて、滅多にない機会よ。しっかり学んで来なさい。」

 アリア先輩のそんな言葉に送り出される。本当はアリア先輩に教わりたいけど、先輩の言う通り、いい機会なんだし、頑張ろう。

「怖い先輩じゃないといいですね。」

「そうだね、桜ちゃん。」

 そんなことを言いながら、意気揚々と向かった先にいた先輩方は、少し、いや、大分予想と違っていた。 

「お、来たな。ほな、自己紹介から始めよか。」

 制服ではなく、野球のユニホームを身に纏い、ショートカットに野球帽を被り、バットを持った関西弁の先輩。あれ、いろいろとおかしいよね。

「ひらパー姉さん、ホンマにそれ使うん?」

「せやで~、おもろいことになるでぇ~。」

 バールを持っていなければ、お淑やかで白雪先輩と少し似た雰囲気の先輩と、謎の巨大な機械を弄っている、凄く大人の色気が漂うハーフ顔の先輩。CVRなのかな?

 ハズレ引いた…

「まずは、ウチ。ウチは大阪武偵高3年、御幣島あびこや。」

 野球の先輩が名乗る。

「私は阿倍野遥。よろしゅうな。」

「枚方パトリシアやで~。」

 バール先輩とエロスの先輩が名乗る。

「えっと、東京武偵高2年、間宮あかりです。」

「同じく、火野ライカです。」

「同じく、佐々木志乃です。」

「1年、島麒麟ですの~。」

「おっし、ほな始めよか。遠慮はいらへんで、殺す気で来てや。プレイボールや。」

 

 ライカと頷き合い、強襲科コンビで強襲をかける。

「実力の分からん相手に強襲は悪手やで~。」

 ゴウッ、と私たちを巨大なボクシンググローブが横から弾き飛ばす。何あれ!?

「怪我せんよう、グローブ付けてみたんや~。スポンジ製やで~。」

 枚方先輩が、なんだかよく分からない機械の真ん中に座り、操縦してる!?先輩がカタカタと凄い速度でキーボードを叩くと、先程のボクシンググローブがブンブンと動き、私たちを襲う。

「ちょっ、なんだよアレっ!?」

「分かんないっ‼なんなのアレっ!?」

 迫りくる機械の拳を、ライカと共に避け続ける。

「これは、ひらパー印のタイソン君2号やで~。1号は先日爆発して修理中なんよ~。」

 いや、機械の名前とかどうでもいいんです。なんでそんなのがあるのかが問題であって。

「あびこ、思ったんやけど、そのバットで殴ったら死んでしまうんちゃう?」

「いや、それやったら、お前のバールもアカンやろ。」

「どないしよう。怪我はさせたないし…」

「せや、はるかはこれ使いや。」

 赤く、短いバットを渡す。

「これプラスチックバットやん。なんで持って来とるん!?」

「いや、遊ぼうか思て…それにええやん、丁度いいハンデや。格の違いを見せな。」

 隙だらけだ、今なら‼迫るロボットパンチを躱し、弾丸を放つ。

 阿倍野先輩が素早く躱し、

 

「そこは、ホームランコースやで。」

 御幣島先輩が体をスライドさせ、バットをスイングし、弾丸を打ち返す。

「ホームランて、ライナーやん。」

「いや、あれは和田曲線を描いてフェンス越えるんや。」

 なんか訳の分からない会話をしているけど、この人たちは強い。そう確信する。

「ほなはるか、ダブルプレーいくでっ‼」

「ホンマにこのプラスチックバットで大丈夫やろか…」

 そう言いながら、阿倍野先輩がジャンプし、御幣島先輩がフルスイング。そのバットに足を掛け、

「遥ストライクやっ‼」

 阿倍野先輩がミサイルの様に飛んでくる。何発か銃弾を放つが、左手の鉄パイプを振るい、叩き落す。

「怪我せんよう気ぃつけるさかい、勘弁な。」

 阿倍野先輩の声と同時に、バシバシと全身に走る痛み。プラスチックバットでもこれだけ痛いのだ、もしあのままバールで来ていたなら、大怪我では済まなかっただろう。

「ほな、またなー。」

「ぐうっ‼」

 ライカを踏み台に、また先程の位置へと跳躍する。

「「あかり(先輩)ちゃん‼」」

「ライカお姉様っ‼」

 3人が駆け寄る。

「せやから、もっと周りを見なアカンで~。」

 私たちと志乃ちゃんたちの間塞ぐ様に、右のグローブが振り下ろされる。

「んでもって、バックスクリーン三連発や。」

 ロボットの左グローブの上に御幣島先輩がいた。バットを振り、白球を打ち出す。

 枚方先輩のロボットに気を取られていた志乃ちゃんたち3人に、白球が命中する。

「安心せぇ、軟球や。」

「いや、十分痛いやろ。アカンで、怪我さしたら。」

「大丈夫、内野手なら一度は通る道や。」

「てか、やっぱダメやわ。ほら、一回で折れてもうた。」

 根本しか残っていないプラスチックバットを見せながら、阿倍野先輩が言う。

 ふざけているとしか思えない装備なのに、なんでこんなに強いの!?それに、コンビネーションも完璧だ。個人としての戦闘能力は分からないけど、チームとしてなら、アリア先輩たちのバスカービルよりも強いかもしれない…

 

「おふたりさん、後は任せたでぇ~。」

 ロボットアームを一凪し、枚方先輩が後方に下がる。アームは的確に私の手に当たり、銃が手から離れる。

「なんや、もうバッテリー切れかいな。生身で行かんかい。」

「え~、私、素の戦闘力ごみクズやで~。無理やわ~。」

「しゃあない、いつもの事やん。姉さんが銃落としとるし、格闘戦といこうや。」

 銃を拾おうと、駆け出す。その3歩目、キンッという音、地面を蹴るはずの右足に違和感がある。

「うわっ‼」

 勢いよく、後ろに転び、尻餅をつく。

「ボール…」

 地面を転がるボール。これを踏んだの?

「ボールは最後まで見ぃや。内野手の基本やで。」

 御幣島先輩が打ったんだ…

「ほな、守備練習や。」

 バットの鋭い突きをなんとか地面を転がって避けるが、さらに銃から離れてしまう。御幣島先輩の腰ベルトに珍しい形の拳銃らしきものが見える。鳶穿で…2回目の突きのタイミングでカウンターで鳶穿を試みる。

「『ビヨンド・もっこす』は渡さへんで。」

 バットを掴む寸前に地面に自ら落とすことで、私の手をすり抜けていく。でも銃は掴んだ。

「お、スられてもうた。おもろい技やな。」

 お気楽にそう言いながら、足でバットを浮かせ、構える。私も奪った銃を構える。

 この距離なら打ち返せない筈。引き金を引くけど、弾がでない…?感触もおかしい…これ、銃じゃない!?

「それ、スピードガンやで。」

 バットで鳩尾を突き上げられ、ゴホッと肺の空気が吐き出され、地面に倒れる。力が入らない…

「アホ、やり過ぎや。」

 御幣島先輩を窘める阿倍野先輩。

「いや、あんたの方がやり過ぎちゃうん?4人纏めてとかえげつないわ。」

 みんなやられちゃった…

「ふたりとも、お疲れさ~ん~。少し後輩ちゃんたち休ませたろ~や~。」

「せやな、んでもって、基礎錬や。素材はええようやが、集団戦のいろはが分かっとらんみたいやし、教えたるか。」

「なんや、あびこにしては真面目やな。」

「そらそうよ。若手の育成に手を抜いたらアカン。」

 その目は優しかった。

 

 暫しの休憩の後、

「よっしゃっ、特守や。しっかり声だせっ‼ええんちゃうか。最高ちゃう。」

 何故か私たちはグローブを填め、ノックを受けていた。

「いや、なんで人数分グローブ持って来とるん…」

「そら、野球やろう思ぉて持って来とったんや。」

「せやから、あないな大荷物やったんやな~。」

「いや、せやったら銃はちゃんと持って来ぃやっ‼」

 なんか、一瞬尊敬したけど…やっぱりこの人たちなんかおかしい‼

「こんなので、本当に強くなるんですかぁ‼」

 思わず叫ぶ。

「安心せぇ、武偵なんて皆基本、おかしなことやっとるんや。」

 それは意味が違うのでは…

「せや~、御幣島先生がさっき、あびやんを呼んどったで~。『あびこ、大概にせぇよ‼』やて~。」

「あっ、ホンマ…」

 絶望した御幣島先輩の顔は、未だに忘れられない。

 

 

 

 

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―蘭豹視点―

 

 

 

 これはあれか?武偵庁を上げてのウチへのドッキリか?

 そう思いたくなる程、追い込まれている。居酒屋で遠山のアホに会ったんがきっかけ、そこから姐御の影がウチの周囲をチラつく。

 そこから、火野、綴とゆとり、そして今回の研修。なんや、もしかして、皆でウチのこと殺そうとしとるんやないんか?そんな疑心暗鬼に陥る程に、姉御は包囲網を縮めて来とる。生きた心地がせぇへん…

「蘭豹先生、どうしたんですか?」

「いや、なんでもあらへん…」

 そう、各武偵高教員との親睦会、大好きな酒が大盤振る舞いされとるんに、ちぃとも気分が盛り上がらん…だって、気分的には、死刑前に好きなもん出されるんと一緒な気がするで…

「ああ、蘭豹先生、ここにおられたんですね。」

 この人は、ナゴジョの校長やったっけ?

「蘭豹先生の様な、強い女性は、ナゴジョで教えて頂きたいと思っておりましたのに、東京武偵高に取られて、凄く残念だったんですよ。」

「はぁ、そら、ありがとうございます。」

 高く評価してもらうんは嬉しいけど、普段の様に喜べる気分ではない。

「明日来られる遠山特別顧問とどちらがお強いんでしょう?」

 校長のその発言で、話題は姐御に切り替わる。酒が入っているからなのか、やいのやいのと盛り上がる。

「遠山特別顧問って、お会いしたことないんですけど、SDAランク総合1位って噂本当なんですか?」

「ええ、本当ですよ。武偵庁で確かめました。」

 姐御、やっぱ人外やったんやな。

「でも、蘭豹先生も噂通りの強さなら、同じくらいの強さなんじゃないんですか?」

 そんな声が聞こえてくる。

「アホ、んなわけあるかい…姐御は、ホンマモンのバケモンや…」

 酒を口へ運びながらボソリと呟いた。

「まあ、蘭豹先生はお会いしたことがありますの!?」

「それに姐御って、どういった関係で!?」

 アカン、聞こえてもうた…

 

 そこからわらわらと群がって質問責めに合う。

 こないな状況、飲まなやってられるかい‼

「酒や、酒や、もっと持ってこぉーい‼」

 こうなったら自棄や。明日?知ったことか‼アホ程飲んで、全部酒で流し込んだる‼

 

 酒盛りは夜明けまで続いた。

 

 

 




本当にいろいろとごめんなさい。
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