―???視点―
「なんという体たらく‼GⅢへの制裁は容易ではなかったのか‼」
帰還したムーア三兄弟からの報告が提出され、国防総省の会議室に長官の怒声が響く。
「仕方ないと思いますけどね。なんせ不確定要素であるトウヤマ・カナコが相手だったようですし、むしろ生きて帰ってきたことの方が驚きです。」
「随分と甘い評価ではないか。以前の君なら彼らに失敗の責任を取らせているだろう?」
「普通ならそうなんですけどね。流石に今回は彼らに同情しますよ。彼らの持ち帰った映像や、これまでに集めた情報。間違いありません。彼女は本物、少なくとも武偵やエージェントをいくら送り込もうと、何の役にも立ちませんよ。」
会議室がざわつく。
「なら、どうしろと?君の評価が正しいとして、それなら彼女は合衆国の脅威となりうるのだ。」
「そりゃあ、サイオン・ボンドが言っていた通り、友好の道しかないでしょう。それが不服と仰るなら、陸・海・空軍に総動員と、戦略核の無制限の使用許可を取り付けて下さい。」
ざわつきが一瞬で静寂に変わる。
「ね、友好の道しかないでしょう?今回はあっさりと合衆国から出て行ってくれて良かったですよ。本土にいる状態だと、核が使えませんからね。」
「妄想話にしか聞こえんな…そこまでの過大評価する確証はあるのかね?」
質問された男の指示で、資料が配られる。
「間違いない情報です。我々が利用しようとしている色金。その最大の力を手加減したパンチ一発で鎮めることが出来ます。もう、彼女を同じ人間として考えない方がいいでしょう。」
人智を超えた力である色金を凌駕する力、それが明確な証拠と共に言葉で伝えられたことで、時間が停止したかの如き静寂が場を支配する。
「信じられん…」
恐怖なのか、怒りなのか、どちらとも取れる長官の声が静寂を破る。
「そりゃあ、私だって信じたくはないですよ。でも、間違いないんです。そんな最悪の爆弾を触りたいんですか?」
答えなんか決まっているだろう。そんな風な言い方だった。
そして、ひとりの初老の男が手を上げ、発言をする。
「それならば一層、同盟でも結んでみては如何かな?」
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―キンジ視点―
理子に姉さんが髪やらを弄られている間、姉さんの脱ぎ散らかした衣服を、白雪が畳んでいる。チラリと見えた姉さんの服は破れていたり、只事ではない状態だった。
服だけとはいえ、姉さんにあそこまでのダメージを与えられる人間(人間とは限らないが)がこの世に存在するのか、と驚愕と恐怖を覚え、ゾクリと身を震わせる。全く、おっかないったらないぜ。
そんな俺の気など知らない白雪が姉さんに声を掛ける。
「かなこ様、これは何ですか?フックも壊れてしまっている様ですが…?」
白雪が手にしているのは、さっき見えた破れたシャツではなく、コルセットの様な物で、布地は見事なまでに裂けている。
「しまった!忘れていた!」
姉さんが慌てた様子で白雪の前に瞬間移動し、それを掴む。
「お~、Bホルダーだ~‼かなこさんもコスするの?」
「コス?」
理子が謎のそれを見てそう言うと、姉さんの頭に疑問符が浮かぶ。
「コス?とやらが何かは知らぬが、これはみすずの物なのだ。また延々と説教されてしまう。」
出来れば聞きたくない名前が姉さんの口から出てきた。また面倒なことになりそうだな、
「それじゃあ、買いに行く?3000円位であるよ~。」
え、思ったより安いな。理子の言葉にそんな感想を抱く。まあ、俺にとって3000円は大金だけどね。
「本当か‼」
姉さんの反応に満足した様に理子が頷き、
「くふ~、それじゃあ、行きましょうか。」
とニヤニヤとそう言う。
「行くって、何処よ?」
そんな理子に、アリアが訊ねる。
「そりゃあ、勿論、理子の庭、アキバだよっ‼」
おう、何処へでも行ってこいよ。全員連れてな。そして、もうここへ帰ってくんな。
「秋葉原、来るのは初めてだな。」
「初見さんか〜、案内は理子にお任せあれ!!」
そんな俺の願いは聞き届けられることは無かった。いや、分かってたんだけどね。少し位希望を持ったっていいだろう。
「姉さん、痛いです。お願いだから離して下さい。」
強制的に連行された俺は、姉さんから絡める様に腕を組まれたままアキバへと降り立った。
傍から見れば恋人の様な腕の組み方で、腕に伝わる柔らかい感覚が伝わってくる。普通ならヒスりそうなもんだが、馬鹿力で完璧に関節を極められており、痛いなんてもんじゃないく、ヒスの気配さえない。…あれ?なんだか腕の感覚が無くなってきたんだけど。
「この程度の関節技を外せぬとは、情けない奴だ。」
姉さんはやれやれといった感じで、腕を解く。いや、あらゆる手段を尽くしましたよ。感覚が無くなった腕を擦りながら、
「それで、何処行くんだ?」
「とりあえず、まずはBホルダーだよね。」
行く先を尋ねた理子の回答。
姉さんのお目当ての品はあっさりと手に入った。だったらさっさと帰ればいいのに、結局、理子先導の元、無意味なアキバ巡りに付き合うことになる。
電気街というイメージからオタクの街へと移り変わったアキバは、街の至る所にアニメやゲームキャラやメイド喫茶の看板が目に入る。
それだけでなく、個性や独自性を売りにした店舗も多く、あらゆる職業を網羅した喫茶やカフェまで存在する。そのうち武偵喫茶なんかまで作られそうだ。と思っていたら、
「武偵喫茶?大丈夫なのこれ?」
アリアが看板を見てそう言う。もうあったよ。ある意味スゲーなアキバ。
「入ってみる?」
理子がそう尋ねるが、
「結構よ。武偵高でもうお腹いっぱいだわ。」
アリアの返事に、全く同感だと俺も頷き、入店拒否する。
「じゃあ、ゲーセン行こ。」
理子の誘導でやってきたのはクラブセ○秋葉原新館、2010年2月、つい最近オープンしたアキバで最大レベルのアミューズメント施設。筐体が放つ光と音、その喧騒に、俺のテンションが少し上がるのに対し、アリアと白雪は少し戸惑っている。そういや、姉さんってこういう所に来たことはあるのだろうか?
姉さんの方を見ると、何故か天井を見つめている。
「姉さん、どうしたんだ?」
「いや、なんでもない。これも買ったし、大丈夫だ。」
と購入したBホルダーの入った袋を見せる。相変わらず会話が成立しないな。
「プリ撮ろー。」
理子がアリアと白雪の手を取り、引き摺って行く。
「ちょっと、離しなさいよ!キンジ、あんたも来るのよ!」
と騒ぐアリアさん。ここでガバを抜かれちゃかなわんと、渋々ついて行く。
エスカレータの前を通り過ぎ様とした時、最悪の人物と目が合ってしまった。ああ、姉さんが天井を見ていたのは、上の階にこいつがいたからなのか…
「相変わらず辛気臭い顔ね、こっちまで不幸が移りそうだわ。」
開口一番でそんな事を平気で言える女はみすずしかいない。てか、何してんだよ。いい大人が昼間っからゲーセンって、仕事はどうしたんだよ。
悪態には悪態で返そうとした俺の横で、
「狐崎っ…!!」
ギリッと歯噛みし、みすずを睨みつけるアリアがいた。えっ!?知り合いなの!?
「あら、久しぶりね、神崎さん。」
アリアの睨みなど気にもせず、見下した様な態度でみすずが言った。
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―神崎・H・アリア視点―
狐崎みすず、イ・ウーによって擦り付けられたママの冤罪を晴らす為に最初に雇った弁護士が彼女だった。
「信じてくれるのね。」
誰も信じてくれなかったイ・ウーの存在を、彼女は全く疑うどころか、肯定してくれた。
「ええ、しかし、厄介な相手だわ。冤罪を証明するには、イ・ウーの全員を逮捕する必要があるの。残念だけど、私だけでは無理だわ。」
『私だけでは』彼女の言葉に希望を見出す。
「私が全員捕まえるわ!」
元よりその覚悟でいたのだから。しかし、私の覚悟を見た彼女は、予想していない答えを出す。
「何を言ってもいるのかしら。私が無理だと言っているのに、貴女1人で何が出来ると言うのかしら?」
「は?」
予想外の言葉に一瞬戸惑う。
「貴女が1人で捕まえれるのは精々1人か2人、話にならないわ。貴女がすべきことは、私の駒として指示に絶対服従することよ。勝手に行動されたら困るわ。」
「はぁぁぁっ!!アンタ何言ってんの!!なんでアンタの駒なんかにならなきゃならないのよっ!!」
あまりにも失礼極まりない物言いに、頭の血管が切れそうな程苛立つ。それだというのに、この女は、私の怒りなどどこ吹く風で更に続ける。
「学生でSランク、自信過剰になるのは分かるけど、現実を見なさい。私はね、親切で言ってるのよ。依頼人に死なれたら困るの。今の貴女程度なら、瞬きする暇さえ与えずに殺せる人間だっているのよ。」
「親切!?アンタの都合でしょ!」
「ええ、そうよ。私は勝つのが好きで、負けるのが嫌いなの。どんな裁判であっても、私が出る以上、負けは許せないの。だから、依頼人だろうと邪魔されると困るのよ。」
全く悪びれる様子も無くそう言う。
「邪魔!?私が邪魔ですって!!」
「そう言ってるでしょう。貴女は私の言う通りに動く、いいえ、言われた以外の事はしないでくれればいいわ。そうすれば、勝てるから。無駄話はこれでいいわね、契約書にサインしてくれるかしら。」
テーブルに契約書を置く狐崎。バンッ、とその契約書ごとテーブルを叩き、
「お断りよ!!アンタなんかいなくても、私がママを助けるわ!!」
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思い出すだけでも腹が立つ。あの忌々しい女があの時と同じ様に、こちらを見下した様な目をして、私の前にいる。なんかキンジとも知り合いみたいね。そういえば以前『みすず』って叫んでたけど、狐崎のことだったのね。
「随分と時間が掛かったみたいだけど、お母様の冤罪が晴れて良かったわね。まあ、私に言わせたら遠回りし過ぎで、無駄が多過ぎるとは思うけど、相棒がキンジなんかじゃ仕方ないわね。」
「おい、さり気なく俺をディスるな。」
キンジがそう言うが、
「事実でしょ。それにしても、貴女馬鹿よね、私に任せておけば、さっさと片付いていたわよ。せっかくイ・ウーと色金に関する資料も準備してあげてたし、イ・ウーの親玉が貴女の曾祖父だと分かってたから、邪魔だと言ってたのに、一時の感情で最善策を捨てるんだから。」
「はぁっ!?アンタ、あの時そんなこと、ひと言も言ってなかったじゃない!!」
曾祖父様の事だけでなく、色金の事まで知っているのには驚くが、驚きよりも怒りが勝る。じゃあ、最初から言っておけばいいじゃない。
「言うわけ無いじゃない。契約も交わしてなければ、着手金も貰ってなかったもの。あの時貴女が契約書にサインしていれば、全て教えてあげたわよ。」
悪びれる様子もなく、そう言う狐崎にますます腹が立つ。
「確かにあの時感情的になったのは、私の落ち度かもしれないわ。だけど、そもそも挑発してきたのはそっちでしょっ!!」
「挑発?私は事実を述べただけよ。それにしても、もう終わった話で、よくそんなにも感情的になれるわね。」
プチン、と堪忍袋の緒が切れた。ガバメントに手が伸びる。
「みすず、そこまでにしておけ。」
かなこさんが狐崎の前に立ち、呆れた様に言う。
「あら、私は1ミリ、いいえ、1ミクロンも悪くないわよ。」
「何があったかは知らぬが、言い方というものがある。昔からそうやって敵を作ってばかりだろうが。」
かなこさんの言葉に狐崎は溜息をつくと、
「やめなさいよ、かなこに説教されるなんて、死にたくなるわ。」
「どういう意味だ!!」
「1から言わないと分からないかしら?ああ、ごめんなさい。バかなこには分からないわよね。」
狐崎の言葉に、とかなこさんからゴォッ、と殺気が放たれる。とんでもない威圧感にガバメントに伸びていた両手が震える。
これ、かなりヤバイんじゃないかしら。キンジと白雪なんか顔面蒼白でダラダラと汗を流しているし、理子は逃げる準備を整えている。
「キンジ、なんとかしなさいよ。」
私ではどうすることも出来ないのは分かるので、ボソボソと耳打ちする。
「死ねってことか?無茶言うなよ。そもそもの原因はお前だろ。お前が止めて来いよ。」
震える声で痛いところを突かれる。そう言われても、あの間に入る勇気は無い。立っているのも辛い程の殺気だ。そもそも、あの間に入っていける人物がこの世に存在するのだろうか?
エアコンの風で飛ばされてきたのだろうか、薄っぺらいチラシがふわりと2人の間に飛来する。したと同時だった、一瞬でチラシが消える。駄目ね、間に入った瞬間、あのチラシの様に消える事になるわ。
もう止められない、誰もがそう思った時だった。
「姐さーん!!」
飛び込む勇者、いいえかなこさんに抱きつこうとしたバカがいた。達人の間合いに入ったら当然の事、条件反射で拳が繰り出された。いや、出されたのだろう。私には見えなかった。
ドゴンッ、と人間を殴ったとしても、出てはいけない音が響く。尊い犠牲に、思わず合掌しようとした時だった。
「うわぁっ!!ビックリした。どういう状況だこれ?」
殴られた人物が、ケロっとした様子で立っている。嘘でしょ!?人間辞めてたとしても死ぬわよアレ。隣に立つキンジも驚愕のあまり口が開いている。
「遅いわよ、ミラ。おかげで面倒くさい事になったじゃない。」
こんな状況でも悪態をつけるって、ある意味凄いわ狐崎。
「すまん、無意識に拳が出てしまった。」
いや、怖いわよ。無意識で出ていい威力じゃなかったわよ!!
「ヘーキ、ヘーキ、なんともねぇよこんくらい。なんならもうちょい強くても大丈夫だぜ。」
狐崎にミラと呼ばれた女性が、ヘラヘラとそう答える。類は友を呼ぶとは言うけど、あの人も人外なのね。
「かなこ、貴女と遭遇するのは予想外だったけど、手間が省けたわ。少し話があるの。」
さっきまでの威圧感が嘘の様に、一瞬で殺気が引く。
「分かった。場所は?」
かなこさんの言葉に、狐崎がちらりと私たちを見る。
「変えた方がいいわね。少なくとも、ここは人が多過ぎるわ。」
「酒飲める所がいい。」
狐崎の言葉に、ミラと呼ばれた人物がそう答える。
「昼間だから、空いてる居酒屋は少ないわよ。」
「じゃあ、俺の家に酒買ってから行こうぜ。姐さんもそれでいいか?」
「私は構わん。」
はぁ、と狐崎が溜息をつき、
「それでいいわ。ただし、私は絶対に飲まないわよ。」
「んじゃ、行こうぜー。」
ミラがかなこさんの腕を取り、歩き出す。どういう関係なのかしら?グイグイと引っ張られながらかなこさんはこちらへ顔を向け、
「理子、今日は助かった、感謝する。」
「あー、うん、また今度ゆっくり回ろー…」
なんとか明るく理子が振る舞う。あんたのそういうところは尊敬するわ。
そんな2人の後ろを狐崎がついていく。かなこさんと違い、振り向くどころか、全く興味が無いとばかりにこちらへ視線を向けることさえは無かった。
かなこさんたちが去ってから少しの間、私たちは呆然と立ち尽くしていた。
一触即発の空気から、一瞬で何事もなかったかの様に飲みに向かう人外2人と性悪1人、彼女たちがどういう関係かは知らないけど、世界にとって、最悪の組み合わせな気がしてならなかった。
投稿ペースに波がありすぎて申し訳なく思っております。
本来ならば前回の後書きで書きたかったのですが、リアルで様々なことがあり、隙間時間で話を作っていたので、なるべく早く投稿しようと、投稿が遅くなった謝罪が後回しになってしました。
しばらく更新出来ていなかった間にも、閲覧数が伸びており、この様な駄文を読んで下さる方がいるのだと、大変励みになり、今回は、自分の中では、比較的に早く次の話を投稿する事が出来ました。本当に感謝の念しか御座いません。
また、私事で申し訳ないのですが、『カクヨム』にて創作小説を連載しております。
カクヨムURL
https://kakuyomu.jp/works/16816452219160331735
こちらもかなりの駄文ですが、もし興味を持って頂ければ、一読してくださると幸いです。