緋弾のアリアif~遠山家最強の姉~   作:トリプルツレー

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 今回は、ほとんどが過去の話になります。

無名キャラと、原作で描写の少ないキャラで進めてしまったので、おかしな部分が多いかもしれません。






姉の受験

―キンジ視点―

 

 姉さん、技のお披露目会が終了し、場は、疑問の解決に動きだした。

「姉さん…、気合いってなんだ?」

 俺の、この場にいる全員の代弁する疑問をぶつける。全員がよくぞ聞いた‼という目で俺をみる。そんな疑問に姉さんは、はぁ、とため息をつき、

「金次よ…、まさかそんなことも分からぬとは…。」

 心底呆れた様に姉さんが言う。いや、ここにいる全員分かってないし‼あと、お馬鹿オリンピック、全種目金メダルの姉さんに馬鹿にされると、尋常じゃなく腹が立つな。そんな俺の心情は知らず、姉さんは言葉を紡ぐ、

「金次よ、気合いとは…。」

 全員が、ゴクリと唾を飲み、次の言葉を待つ、

「気合いとは、その、あれだ、こう…ガットなって、グッとして、その…、つまり、気合いだっ‼」

 あんたも分かってないじゃん‼全員の心が一致した時であった。

 その後、気合いとは何かを説明しようと、

「気合いがあれば、天をも駆ける‼」

 などと言い空中を走りだす姉さんによって、さらに謎が深まりながらも、解散となった。

 

 

 

 解散後、再び、アンガスの運転する車に乗り込み、帰路につく。空は夕日が落ちていく。道中を、姉さんにGⅢが、他の技を聞いて、奇想天外な回答が帰ってくるのを聞きながら過ごす。海を割るってなに?モーゼ?そんな奇怪な会話や、GⅢが姉さんの連絡先を登録したりしていると。学園島に着いていた。そして、車が止まる。

「姉貴に兄貴、そんじゃあな、俺は、これから少しアメリカに戻るけどよ…。また、すぐに遊びに来てやるよ。」

 少し、別れを惜しむ様に、GⅢが言う。相変わらずのツンデレムーブだな。そんなGⅢに、姉さんは、

「私は、しばらく日本にいることにした。こちらに来たら、必ず顔を見せに来い。」

 とGⅢに、微笑む。俺も、「またな。」と言い、車を降り、車が見えなくなるまで見送る。さて、帰るか。自宅に戻ろうとする俺に

「金次、着いてこい。」

 姉さんが、俺の首根っこを掴む。着いて来いって…、連行じゃないですか。

 

 

 飲食店が並ぶ街並、ほろ酔いの人々や客引きが行き交う。そんな通りで、俺は、姉さんの隣に立っている。(諦めて抵抗をやめたら降ろしてもらえた。)すれ違う男たちが、姉さんに目を奪われそして、隣に立つ俺を見て、「なんであんな奴が」と言う視線を向けて来る。―姉さんは、身内の目からしても、美人、それもかなり高レベルの容姿を持っている(中身を知れば、そんなことはおもわなくなるが)―

 そんな視線を受けながら、歩いていくと、姉さんが、

「入るぞ。」

 と俺に言って、『飲み放題 2000円‼ 団体様歓迎‼』と看板のある居酒屋の戸を開ける。俺、未成年なんですが?

 店に入り、姉さんが店員に、「2人だ。」と伝えると、席に誘導され、4人掛けの個室に案内される。

「飲み放題は如何なさいますか?」

 という、店員の質問に、姉さんが、「ありで。」と答えると、店員は、

「かしこまりました。ご注文は、タッチパネルでお願い致します。」

 と、一礼し、去って行く。タッチパネルを手に取った姉さんは、それを俺の方へ差し出す、

「好きなものを頼め、遠慮はいらぬ。私は、使い方が分からぬ故、日本酒と肉を頼んでくれ。」

 タッチパネルを受け取った俺は、操作を教えながら、注文をする。(肉は焼き鳥になった。)

「お待たせしました。日本酒2合とウーロン茶です。」

 店員が飲み物を運んでくる。居酒屋って飲み物だけ先にくるんだな。そんなことを考えながら受け取り、日本酒の入った徳利を姉さんに渡す。えーっと、こういう場合は、

「姉さん、えーっと、乾杯?」

 俺がウーロン茶の入ったジョッキ突き出すと、「ああ、乾杯。」と言い、徳利をジョッキにコンっ、と軽くぶつける姉さん。そして、徳利にそのまま口をつけ、一気に飲み干す。

「すまない、金次、同じのを頼んでくれ。」

 酒って、そんな飲み方しないだろ、と思いながら再度注文し、ウーロン茶を飲む。料理が届く前にトイレに行こう。そう思い、立ち上がる。

「姉さん、ちょっとトイレ行ってくる。」

 そう言って、席を離れる俺に、「ああ。」とだけ答える姉さん。姉さん、なんで俺を連れて来たんだろう?酒が飲みたいが為に、わざわざ…?いや、それだったら俺を無理やり連行する必要はないし…、などと考えながら男子トイレに入り、用を足す。

 手を洗い、トイレを出ると、向かい側の女子トイレから出てきた人物と目が合う。げぇっ‼

「んん?なんや、なにいっちょ前に居酒屋におんねん、遠山?」

 俺の、出会いたくない女ランキング上位の蘭豹がいた。

「武偵高退学なった阿呆が、酒浸りか?」

「いたたたたた!」

 ヘッドロックを掛けてくる蘭豹。胸が、胸が当たってるから、

「ちっ、違いますって、俺は無理やり連れてこられただけで、吞んでません‼」

「なんや、おもろないな。」

 そう言って、ヘッドロックを放す蘭豹。

「蘭豹…先生こそ、なにしてんですか。」

「いま呼び捨てにしかえたやろお前。まぁ、ええ、今日は武偵高教員の飲み会や。」

 まじかよ…、俺、最悪の店に入ってんじゃん。今すぐこの店出たい。

「んで、遠山は、どんな奴を連れ込んだんやろなぁ。」

 蘭豹が、俺を再びヘッドロックし、ニヤニヤとして

「おらぁ、案内せぇ。」

 と、俺をそのまま引きずる。

「わ、分かりましたから、放して下さい‼」

 

 

 

「そこのひとつ先の個室です。」

 渋々、俺が蘭豹を案内し、個室の前に立つ。

「遅かったな、金次。…ん?蘭か?」

「あ…、姉御…‼」

 えっと…、お知り合いでしたか…。

「姉御っ、ご無沙汰しております‼なんでこんなところに…?」

「ああ、金次と話したいことがあってな。蘭も息災でなによりだ。して、金次と知り合いのようだが?」

「は、はい、実は私、今は武偵高の教員をしておりまして、こいつは元教え子です。」

 ペコペコと、蘭豹が頭を下げながら、俺に、「どういうことや。」と瞬きで送ってくる。俺の方が聞きたいよ。

「そうか、弟が世話になったな。」

「いや、そんな…、えっ…、弟‼」

 と、蘭豹が俺と姉さんを見比べ、「嘘やろ、全然似てへん。」と呟く。俺もそう思う。そして、

「あ、あの、教員の飲み会があってまして…、失礼しますっ‼」

 蘭豹は逃げ出した。あの、蘭豹が逃げ出すって…、姉さんなにしたんだよ…。俺が席に着くと、既に料理が届いていた。

「まさか、お前が蘭の教え子とはな…。世間は狭いな。」

 そう言って、今度は、ちゃんとお猪口に注いだ酒をくいっと飲む姉さん。

「俺も驚いたよ。まさか、姉さんの知り合いだったなんて。」

 どうやって知り合ったのか。そう続ける前に

「教師か…。数年前、香港で初めて会った時からは想像できんな。」

 姉さんが、懐かしむ様に言葉を漏らす。なんとなく2人の出会いが分かる。恐らく、虎と豹の猛獣対決して、蘭豹の様子を見るに、虎が圧勝したんだろう。

「それで、姉さん、俺に話って言ってけど…?」

 俺が料理に手をつけながら尋ねると、

「ああ…。」

 言いよどむ姉さん。なんだ?

「金一から、お前が、父上と、同じ職を目指していると聞いた。己の目標を見つけたのは、良いことだ。私は、姉として、出来る限り応援するつもりで、その、なんだ、今日はしっかりと食って、英気を養え。」

 この食事は、不器用な姉さんなりの激励らしい。

「分かったら、早く食え。足りなければ、遠慮なく追加しろ。」

「姉さん、ありがとう。いただきます。」

 酒の肴は、白い飯にもよく合う。居酒屋飯も案外良いものだな。俺は、姉さんの激励を噛み締め、料理を平らげていく。

「目標があるのは良いことだ、私は、一度失った故、心からそう思える。」

「姉さん…。」

 姉さんが、徳利を傾け、お猪口に酒を注ぎながら言う。姉さんは、武偵になれなかった。父さんの方針で、小・中学校と一般校に通った姉さんは、武偵高を受験し、落ちた。姉さんの桁違いの強さを、危険と判断した政府により、姉さんに、武偵の道を諦めさせるべく、受験はさせたが、武偵庁に圧力を掛け、不合格にさせる算段があった。まあ、普通にアホ過ぎて不合格になったが。全てのステータスを、戦闘力と容姿に振り切ってしまった姉さんは、都内最底辺の偏差値を誇り、学力はほとんど重視しない、東京武偵高にさえ入学拒否、見事、中卒無職の肩書を手にし、旅立った。

「姉さんは、今でも武偵になりたいと思う?」

 姉さんは、叶わなかった夢を、まだ持ち続けているのだろうか…、ウーロン茶を飲みながら、そんな疑問が頭に浮かぶ。

「いや、旅をして分かった。私には向いていない。私は、今の様に、強者を求め、気ままに旅をする方が、性に合っている。それに、やりたいことも見つかったしな。」

 姉さんは、ふっ、と小さく笑い、酒を呷る。

「そうか、良かった。でも姉さんのしたいことって…?」

「ああ、私は、結婚がしたい。」

 ブッ‼姉さんの言葉に、思わず吹き出し、ゲホゲホとむせ込む。姉さんが結婚…?

「ね、姉さん…、その…、相手の人はっ!?」

 どんな物好きが、この姉を引き取ってくれるんだ?

「ん?いや、まだ相手は見つかっておらん。それを探す為にも旅をしている。」

 どうやら、こんな姉を貰ってくれる、仏の様な義兄は、当分出来そうにないらしい。

「それで、姉さんは、どんな男と結婚したいんだ?相手へ求める条件とかは?」

 可能な限り、早く結婚して、このハチャメチャ姉さんが、大人しくなって欲しい俺は、恐る恐る、姉さんに質問する。

「無論、私より強い男だ‼」

 

 

 

 『結婚』、姉さんの新たな夢は、一生叶うことはないだろう。 

 

 

 

 

 

 

 

=========================================

―ある武偵高教師視点―

 

 

 東京武偵高の入学試験の日、筆記試験が終わり、実技の試験官として、俺は今、強襲科の受験生を見ている。

 受験生の射撃試験を見ながら、得点を記録していく。今年は内部受験生が多く、スムーズに進むな、そう思いながら、次に射撃場に入ってきた受験生と記録用紙を見る。ひとり般中出身か…、ブロンド髪で、ロングスカートの黒いセーラー服を身につけた美少女を見る、名前は…、『遠山金虎』か。ありゃあ、CVRと間違えて受験してるんじゃないか?

「おい、外部受験生は、ここの銃を使いな。」

 俺は、貸出用の銃が並んだ机を指して言う。武器の所持が、原則認められていない一般中学出身の外部受験生向けに、受験用に銃の貸出が行われている。そいつは机に並ぶ銃を眺める。

「銃を触ったことは?」

 俺の質問に、

「ないです。」

 とだけ答える、ずぶの素人か、面倒くせぇな。

「好きなのを取りな。」

 まあ、射撃は才能もあるが、一番は訓練と経験だ。ランクには関わるが、入学には然程問題はない。入学してから苦労はするがな。遠山は銃を眺めていたが、

「おお、父上と同じ銃だ。」

 気に入ったものを見つけたらしく、手に取った。手にしたのはデザートイーグル。素人がいきなり使う銃ではないな。

「んじゃ、それ持って並べ。」

 俺の言葉で、遠山は受験生の列の最後尾に並ぶ。なんの問題もなく、列は進み、最後のひとり、遠山の番になった。遠山は素人丸出しの構えで、銃を的に向ける。おい、そんな構えだと、肩が外れるぞ。素人の相手は面倒だな、と思い、遠山に構え方を教える為に近づこうとした時、遠山が銃を落としそうになる。それを慌てて空中でキャッチした後、困ったという表情でこちらを見てくる。なんだ?初めての射撃にビビったのか?しかし、危なっかしいな、そう思う俺に、遠山は

「すみません、思わず力が入ってしまい、その…。」

 申し訳なさそうに、口を開く、

「力が入って、どうしたんだよ。」

 俺が、言葉の続きを促すと、遠山が俺に申し訳なさそうに銃を差し出し、

「それが、その…、握りつぶしてしまいました。」

「はぁっ?」

 なに言ってんだこいつ、そう思い、遠山の差し出す銃を見る。弾倉ごと銃把が粉々になったデザートイーグルがあった。こいつ、ゴリラかなんかなの?その見た目からは、想像できない握力を披露した遠山は、その後、何個か別の銃を持ち、全て同じ結果。本人曰く、

「銃がこんなに脆いとは、思わなかった。威力も低く、使わない方がましだ。」

 とのこと。

 前代未聞の受験生に、試験官と試験監督、校長までもが集まり、緊急の話し合いが行われ。審議の結果、遠山金虎の受験票に、『射撃 不可能』の文字が刻まれた。

 

 

 次のCQCの試験では、相手の受験生が、突然意識を失い、またも評価に審議を要した。

 そんなことをやらかした遠山は、試験官たちの注目を集めながら、模擬戦闘の試験に挑む。

 試験内容は簡単だ。7階建てのコンクリートビルを模した試験場、その各階に受験生が配置され、試験場にいる全員と戦う。各階に高性能カメラが複数設置され、ひとりずつ教官も隠れて、受験生を観察し、評価する。遠山のスタート位置は最上階だ。 

 俺は、試験場の外で、他の試験官たちと共に、モニターで中の様子を見る。当然、遠山は、悪い意味で一番の注目の的だ。試験官の中には、次は何をやらかすのか、楽しみにしてる奴までいる。

 合図とともに、試験が始まった。各階を映すモニターを見る。隠れて待ち伏せする者、先手必勝と素早く攻撃を行う者、それぞれが、自身のスタイルに合わせ、行動を開始している。そんな中、一番の注目株、遠山の動きは速かった。いや、速いなんて生温いものではなかった。モニターから見える遠山は、一瞬で相手の受験生の前に現れ、殴り、戦闘不能にし、すぐに別の受験生を同じ様にして倒していく。その階にいる、他の受験生を全員無力化し、挙句隠れていた試験官までも同じ様に殴り飛ばした。それに有した時間は10秒足らず。圧倒的だった。

 しかし、遠山は、止まらない。分厚いコンクリートの床を殴り、穴を開け、下の階へ降りる。突如落下して現れた遠山に、その階の受験生たちが驚き、一斉に発砲する。遠山は、自身に四方八方から襲い掛かる弾丸を、ぐるん、と回転、回し蹴りですべて撃ち落とす。それからは、上の階でやったのと、同じことをし、また下へ。これを繰り返し、ひとりで、全ての階を制圧するのに、2分も掛からなかった。

 

 

 想像を絶する映像に、全員が言葉を失い、場が沈黙に支配された。

「あの移動速度、彼女は超偵でしょうか?対象にワープするような能力を持つ…。」

 ひとりの試験官が沈黙を破り、口を開く。

「いいや、違う。あのガキからは超偵の‶それ″を感じない。」

 SSRの教諭がそう返し、録画された、試験映像を再生する。遠山が受験生の前に一瞬で現れるところだ。確かに、速すぎて、瞬間的に空間を移動している様にしか見えない。それを今度は、超スーパースローで再生すると、

「走っている…!?」

 誰かが、声を漏らす。スロー映像を見ると、それでも一瞬だが、見えた。確かに遠山が受験生の前まで走って移動している。

「つまり、あのガキは、とんでもなく足が速いってことだな。」

 SSRの教諭が結論を語る。足が速いって、そんなレベルじゃないだろ。しかし、映像を見る限り、そうとしか言えない。他の映像もスローで見るが、俺たちの理解が追いつかない。

「彼女の武偵ランク、どうするのでしょうか…。」

 別の試験官が疑問を口にする。

「彼女の実力、映像が全力だと仮定して、便宜上Sランク、実質Rランクだな。他の受験生のレベルならともかく、隠れた試験官を一瞬で見つけ、一撃で沈めているあたり、まだ実力を出し切っていない可能性の方が妥当だがな。その場合の評価は…、SDAランキングにでも任せた方がいいだろう。」

 強襲科の教諭が、遠山をそう評価する。

「私としては、彼女が、一般中学で、どんな生活を送ったのか?そっちの方が気になりますね。」

 緑松校長の言葉に、全員が、「確かに」、と笑って頷いた。そして、誰も、彼女の合格を疑わなかった。

 

 

 その日以降、教務部では、件の受験生、『遠山金虎』の話題で持ち切りだった。特に、直接ぶん殴られた、試験場内にいた教官たちには、聞き取りまで行われる程であった。そして、ある教諭は、「あれ程の才能を、どう伸ばしていくか」、また、ある教諭は、「あれだけの戦闘力を持った生徒が騒動を起こした場合、どう対処するか」、その他にも、様々な議題で、遠山金虎への対策が練られた。それは、合格発表の日まで続いた。

 合格発表の日、遠山金虎の合格を確信している俺たちは、結果を見ずに、いつも通りに業務と雑談をこなす。昼休みの最中、ひとり、暇になり、合格者の確認を始めた教諭がいた。

「無い…、無いぞ‼」

 合格者名簿を見ていた教諭が、突然叫び、何事か?と注目が集まる。

「無いって、なにかなくしましたか?」

 隣に座る教諭が尋ねる。

「違う、無いんだよ。遠山金虎の名前が…。」

 その言葉に、全員が一斉に、名簿の確認を開始する。部屋のあちこちから、「嘘だろ…、本当にないぞ‼」、「もう一度確認しろ‼」と声が上がる。俺も、何度も名簿を確認するが、無い。あれ程の実力を見せた遠山が不合格になる理由…、

「もしかして、射撃か!?」

 俺の思わず上げた叫びに、『射撃 不可能』の文字が全員に浮かぶ。

「いや、しかし、それで不合格はおかしい。」

 反対の声が出る。「そもそも、素手の方が強いし」など、声が続く。「じゃあ、なんでだ?」、様々な憶測が飛び交う。そんな中、ひとりの教諭が、恐る恐る声を上げる。

「あのぉ、これじゃないですか?」

 そう言って、ノートパソコンの液晶を指す。全員が殺到し、液晶を覗き込む。

 そこには、

『遠山金虎 筆記試験 五科目合計点 0 』

 の文字が表示されていた。

 あいつ、本物の馬鹿だ。

 

 こうして、伝説となった受験生は、もうひとつ伝説を作り、不合格となった。

  

 

 

 

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―緑松武尊視点―

 

 

 東京武偵高校校長、緑松武尊は、入学試験が終わり、帰路につく受験生たちの波に逆らいながら、校内を、その、ある意味特殊な容姿によって、誰にも気付かれることなく、歩いていた。頭の中では、今日の入学試験で見た、ひとりの受験生、「遠山金虎」について考えていた。最初は、『拳銃を握りつぶした問題児』と認識していたが、模擬戦闘の試験を見た後の感想は、『将来の日本を背負って立つ武偵』だった。その圧倒的強さは、治安が悪化の一途を辿る社会における、強力な抑止力と成りえる。

 今まで、何人のも才能豊かな武偵や、生徒を見てきたが、彼女は桁が違う。彼らが指輪サイズのダイヤの原石なら、遠山金虎は、バスケットボールサイズくらいの原石になるだろうか。いや、もっと大きいかもしれないな。そんなことを考えていると、

「来年は、面白いことになりそうですねぇ。」

 思わず、声と笑みが漏れる。彼女が、どのように武偵高で学び、どれ程の武偵となるのか…、楽しみで仕方がなかった。

 

 

 さて、受験生も帰ったようですし、仕事に戻りますかね。

 そう思い、歩みを早めると、ひとり、黒いロングスカートのセーラー服を纏った、ブロンド髪の少女、遠山金虎が、キョロキョロしながら歩いている。武偵高は広い。受験で初めて来た彼女は、迷子になったのだろうか?彷徨う彼女を見ていると、ひとつの感想が湧き上がる。『見たい、彼女の実力を、この目で見て、確かめたい。』この感情は、教育者でも、校長としてのものではない。ひとりの、プロの武偵としての感情だ。どんな反応をするのか、そんなことを思い、私は、‶消えた″。

 

 

 

 完全に気配と殺気を消し、私は、消える。『見える透明人間』、それが私の通称だ。そうして、消えた私は、彼女に近づく、攻撃は流石に不味いか…、さて、どうやって反応を見るか?とりあえず、肩でも叩くか、そう思った瞬間、

「すみません、道に迷いました。」

 遠山金虎は、私の目を見て話しかけてきた。まさか、いや、後ろに人が…?振り返るが誰もいない。彼女に再び顔を向ける。不審者を見る目で私を見ている。仮に、彼女に私が見えていたとしたら、私は通報レベルで挙動不審な動きで、中学生女子に近寄る男だ。しかし、私は現に‶消えているの”だ。見えている、そんなはずはない。しかし、彼女は、私をちょんちょん、とつついて、

「すみません、聞こえてますか?」

「ごめん、聞こえているよ。迷子になったのかい?」

 私は、なんとか、平静を保ち、答えると、彼女はこくりと頷いた。

「君は、遠山金虎さんだね、君の模擬戦闘の試験を見せて貰ったよ。余りも凄かったから、覚えてしまったよ。ところで、君は、私が見えていたのかい?」

 その問いに、彼女は、きょとんとした顔で、首を傾げる。

「見えているも、なにも、そこに人がいて、見えない訳がないでしょう?」

 彼女の回答を聞き、もう一度確かめるべく、再び‶消えた″、そして、少し移動する。

「む?そっちですか?」

 移動する私を、彼女は目で追い、ついてくる。そう言った。‶見えて″いる。そう確信する。心の中で白旗を上げる。

「じゃあ、案内してあげよう。」

「ありがとうございます。」

 2人で並んで歩き出す。そして、私は、彼女に聞きたかったこと、本題に入る。

「遠山さん、君の模擬戦闘の試験、素晴らしいものでした。前代未聞の成績です。でも、君は全力を出せたましたか?」

 恐らく、彼女は全力を出してない、武偵の勘がそう告げる。

「ごめんなさい、手加減することで、頭がいっぱいでした。」

 予想以上の答えに、思わず私は、彼女を見る。手加減がバレ、怒られると思ったのか、申し訳なさそうにしている。…嘘ではないようだ。

「そうかい、それは、残念だったね。ああ、別に手加減したことを怒ったりしないよ。寧ろ、安全の為に、手加減してくれてありがとう。ところで、君が試験で見せてくれた、移動と攻撃を、再現してくれるかい?ああ、勿論、攻撃は寸止めでお願いしたいな。」

 私の依頼に、「分かりました。」と答え、距離を取り始めた彼女。彼女が止まり、向かい合う。

「それじゃあ、お願いするよ。」

 私が促すと、「では。」と彼女の声が聞こえた時、彼女の拳が、私の目の前にあった。そして、

「寸止めとなると、さらに加減に意識を割かれて、少し遅くなってしまいました。」

 すみませんと謝る彼女。

「いや、十分分かったから、大丈夫だよ。」  

 全く見えなかった、これで、あの時よりも更に加減したと言う彼女…。本気を見るつもりでしたが。好奇心は猫をも殺す。

「本気は見たくねぇな。」

 思わず素が出てしまった。…良かった彼女は聞いてないようですね。さて、一応の目的は達成しましたしね。武偵高の校門が見えた。

「遠山金虎さん、いろいろすみませんでした。それに、私のお願いを、聞いてくれてありがとう。長々と悪かったね、気を付けて帰りなさい。」

 一礼し、去る彼女を、私は、見送る。そんな彼女の背中に私は、希望と恐怖を抱いた。

 

 

 入学試験の翌日、校長室で、筆記試験の結果を見ながら、私は、彼女、遠山金虎について考える。

 彼女は、地中に埋まった『途方もなく大きいダイヤモンドの原石』だ。地中にあって、今はまだ、誰も知らない。それが地表にででしまったら…、当然、誰かが取りに来る。しかし、それが、動かすことの出来ない程に巨大だったならば、人々は、それを割ろうとするのか、動かして、加工できる機械を開発するのか、どっちもだろう。そして、それを奪い合い、争う。彼女は、そんな存在だ。

 私が、最初に考えた『抑止力』、それに十分以上に成りえる。あの圧倒的力が、『正義』として振るわれたなら、犯罪は激減するだろう。悪事を行えば、あの力が降り注ぐ、その恐怖が、人が犯罪へと導かれるのを阻害する。しかし、その一方で、争いの火種にもなる。彼女の力を、我が物にせんと、動く連中も出てくるのも間違いない。

 彼女を武偵として、世界に周知させてよいのだろうか?教育者としては、彼女を育ててみたいし、彼女の目標をこちらの都合で潰したくない。そして何より、正しい武偵として、平和を作って欲しい。しかし、武偵という、裏の世界を知る者としては、彼女は危険だ。あまりにも強すぎる。彼女の力を利用、支配しようとする輩は、必ず出てくる。場合によっては、彼女を巡って、戦争が起こる可能性もある。それ程の力を有している。どうしたものか…、これ程、受験生の合否に悩んだことはない。

 武偵高は、余程のことがない限り、学生を受け入れる。今見ている、筆記試験の結果もそうだ、普通の高校では、合格出来ないような学力の受験生にも、合格を与えている。そのせいで、偏差値が低くなっていたりもするが…。とはいえ、一応、武偵高も学校である為、最低限のラインを設けている。もっとも、そのラインを下回った受験生はいない。そんな低すぎる合格ラインを越えさせて、武偵としてすべきか、落とすべきか、そんな思いが、頭を駆け巡りながら、結果の用紙をめくった時、校長室をノックする音がした。

「校長、武偵庁の長官をお連れ致しました。」

 その言葉に、やはり来たか。と思う。間違いなく、『遠山金虎』の件だ。

「どうぞ、入って下さい。」

 そう言って、応接用のソファーに移動する。移動する前に、先程めくった用紙を見る。そこには、偶然にも『遠山金虎』の名が書かれた用紙、その内容を見て、私の決断する。

「失礼しする。緑松校長、アポもなく、申し訳ない。」

 そう言って、武偵庁長官が私の誘導で、ソファーに腰を下ろす。

「いえ、お気になさらず。それで、長官自らお越しのいただく程の用件とは?」

 分かっているが、形式上尋ねる。

「分かっているだろう、君の察しの通り、『遠山金虎』、彼女の件だ。」

 入学試験の情報を、見ることが可能な武偵庁が、彼女に目をつけるのは、分かっていた。そして、要求は、ふたつにひとつ、「彼女を寄越せ」か、「彼女を隠せ」だ。

「我々、武偵庁としては、彼女を、そのままこちらに寄越して欲しい。とても優秀な人材だ。」

 予想通りの要求ですね。そう思っていたら、長官の言葉が続く。

「まあ、その要求は政府に棄却されたがな。なので、今回、私は別の依頼、政府からの使者としての要求を伝えに来た。政府は彼女に、我々よりも、更に前から目をつけていたらしい。」

「それで、その要求とは。」

 長官は、小さくため息をつき、

「彼女を『不合格』にしろ、そして、『彼女の記録を全て消せ』。このふたつだ。彼女は、あらゆる組織に属さず、政府によって、秘密裏に管理する。」

「なるほど、そうなりましたか。残念です。とても魅力的な受験生でしたので。」

 私がそういうと

「同感だ、最強の武偵になれただろう。試験の映像を見たよ。彼女の力は素晴らしい。しかし、危険だ。そして、危険だと、身を滅ぼすと、分かっていても、欲しくなる。そんな魅力がある。だから、政府の意見に賛同した。」

 長官も、私と、同じことを考えたようですね。では、こちらの決定を出しましょうか。

「彼女の危険な魅力に関して、同感ですね。政府からの要求、確かに承りました。しかし、私の中では既に、答えが出ているんですよ。」

 私の回答に、長官が強烈な殺気を放った。

「何故、私が来たのか、分かっているよな。」

 分かっていますよ。要求を飲まなかった場合の始末ですよね。この殺気、長官は、私が、彼女の魅力に飲まれたと思っているようですね。

「すみません、落ち着いて聞いて下さい。そんな要求以前に、彼女は不合格です。東京武偵高の校長として、彼女の入学は、認められません。」

 長官の殺気が萎む。

「どういうことだ。」

「これを見て下さい。」 

 私は、長官に一枚の用紙、『遠山金虎の筆記試験の結果』を差し出す。

「彼女は、驚くべきことに、合格点に達していません。学力不備で、不合格を出すのは、我が校初のことです。なので、要求以前に、彼女は、『不合格』なんですよ。」

 

 

 『どんな馬鹿でも合格出来る武偵高』そこに、落ちる奇跡の馬鹿に長官も開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




短くまとめたいとか言ってましたが、何故か更に長くなってしまいました。


次は、誰と絡ませるか、悩んでいます。それと、過去の話とかも、まだやりたいと思ってます。
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