緋弾のアリアif~遠山家最強の姉~   作:トリプルツレー

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憎きも親愛

―銭形平静視点―

 

 

 

 父は、史上最強の警察官。生涯を賭して追い続けたリュパン3世とその一味。

 実力では父が上だった。一味総出で掛かっても、奴らを全滅させれる程度には。勿論、相手は世紀の大怪盗団、容易というわけではないが、それでも勝てる程度には実力があった。

 しかし、父は彼らの逮捕にこだわった。殺す気になれば、何時でも殺せるというのに。それを知る彼らは、逃げに徹した。

 生け捕りはかなりの難度だ。敵が防御や逃げに徹した場合、攻め手は常に後手になる。そうなれば、実力差を覆せる。故に父は奴らを捕らえ損ねた。勿論、その力量差で何度か逮捕したが、彼を捕らえておける牢獄が無く、父の力量の及ばぬ所で逃げられることもあった。

 

 そんな、世紀の大怪盗団に恐れられ、逃げに徹するしかない実力者である父は、私にとって誇るべき父だった。

 現場にこだわり、昇進を断り続け、生涯を賭してリュパンを追い続けた、世界最強の警察官。銭形警部。

 それだというのに、世間は創作に惑わされ、父を無能警察官だと笑う。勿論、知っている者達は敬意を持って接しっていたが、世間の認識は、コメディチックで、無能な警察官だった。

 

 一度父問うたことがある。圧倒的な実力を持つのに、世間に笑われ、悔しくはないのかと。

 その時の父の答えは、

「知ったことか!!それよりも、リュパンだ!!待てぇい!!リュパァーーーンッ!!」

 そう言って、生涯の好敵手を追いかけて行った。娘よりも好敵手、それが父だった。

 そんな父の背中を見て育ったからなのか、私は当然の如く警官の道を選んだ。

 父と同様、日本最高峰の大学、その法学部を卒業し、警察の道を選んだ。勿体無い、そう言う者たちもいたが、私には関係なかった。

 

 警察学校に入った私は、父の血を濃く受け継いだのか、自分でも恐ろしくなる程、同期の学生を圧倒し、主席で卒業した。

 日本中の警察官に轟いた父の武勇伝(リュパン追跡の片手間に、世界を揺るがす様な大悪党たちを一網打尽にしていたこと等、私も知らなかった様なことも多くあった。)と、私自身の能力もあり、埼玉県警でもあっという間に出世し、警部となった。

 父同様、それ以上出世する気はなかった、しかし、時代が違うのか、そんな要望受け入れられず(治安が悪化していたのも一因だろう)、階級はどんどん上がって行く。

 公安への勧誘もあったが、彼らと一度模擬戦闘を行い、圧勝した時にその道も違うのだと察した。私はやはり父の子。世界を駆け回り、悪党たちを捕まえることが使命なのだと気付いた。

 

 それから、ICPOへの出向願いを出したが、却下された。しかし、ICPO側から、要望が上がり、出向叶った。その背景には、世界中で広がる重犯罪食い止めへの思いや、父の圧倒的な実績によるものもあったという。

 念願叶ってICPO所属となった私は、世界を又に駆け、犯罪者共を一網打尽にしていった。

 そんな日々に物足りなさを感じ始めた頃、シンガポールである犯罪組織のシンジゲートの壊滅任務、つまり一斉逮捕の命令が出た。

 成程、目標の戦力や規模を考えれば、私以外に適任者はいないだろう。

 この時、私は既にICPOで最高戦力となっていた。故に天狗になっていたのだと、今となっては己を恥じるしかない。そして、父の様に生涯を賭して追う様な相手を求めていたのだと、知ったのだった。

 

「悪党共、全員纏めて逮捕してやる。」

 降り立ったシンガポール、空港を離れ、一面に広がる海を眺め、そう呟いた。誰一人逃がすつもりはない。そう決意を固めていた。

「此処は何処だ…?おお、獅子が口から水を吐いておる!!きっと強者がいるに違いない!!」

 イカれた美女海から現れた。

 いかん、いかん。彼女から悪しき気配が感じられない。きっと、最近流行りの人身売買の船から逃げ出し、記憶や精神が混乱しているのだろう。いち早く保護し、その悪党共を逮捕せねば。

「日本人だな?何があった!?安心しろ、私は警官だ。」

 同胞をこの様な目に合わせた悪党共は見逃せぬ。そういう思いで駆け寄った。

「?確かに私は日本人だ。だが、何も起こっておらぬぞ?ところで、ここは何処だ?ロシアから海に飛び込み、泳いで来たが、適当に泳いでいたので此処が何処だか分からぬ。教えてくれ。」

 可哀想に、恐怖でわけが分からぬ事を言っている。そもそも北半球は真冬、私でもなければ、極寒の北の海を泳げるわけがない。

「パスポートはあるか?パスポートでなくとも、身分証明書、何か持っていないか?」

 一秒でも早く、彼女の家族に連絡して、保護した事を伝えねば、捜索届も出ているだろうし、きっと家族も心配しているだろう。

「ぱすぽーと?何だそれは?身分はしがない旅人だ。」

 …大丈夫なのかこいつ。

「名前と出身地は?」

「遠山金虎、実家は巣鴨だ。」

 記憶はある様だな。

「此処に辿り着く迄何をしていた?」

「強者を求め、世界を旅していた。まだ出会えてはおらぬがな。」

 しょんぼりと答える。武者修行の旅をしていたというのか?彼女の容貌からは、そんな風には見えないが…

「各国でエージェントや特殊部隊の隊員が、謎の美女に半殺しにされるという被害報告があったが…関係は無いよな?」

 少し前に聞いた報告、表出したくないからか、被害届がICPOに出されることは無かったが、目の前の美女がその主犯ということは無いだろう、悪しき気配はないし。

「なんだか愉快な予感がする。」

 そんな疑惑の美女は、私の話を聞かずに、そんなことを言って姿を消した。

 いや、おかしいだろう!?あいつなんか怪しいぞ!!

 それが彼女、遠山かなことの出会いだった。

 

「何処ヘ行った!?」

 周囲を見渡すが姿はない。

「銭形さん、手配完了しました。」

 単独での奇襲・強襲逮捕ということになっているが、地元警察との折り合いや、手続きというものがどうしても付き纏う、それの完了を部下が伝えに来た。 

 正直、それどころではない、そう言い放ち彼女追いたい衝動に駆られたが、そういうわけにはいかないと、己の理性で踏み止まった。

 悪しき気配を感じなかった彼女よりも、明白に市民に被害を及ぼす犯罪者共を一掃する方が正義だ。

「よし、突入する。車輌は!?」

「直ちに出撃可能です!!」

 威勢良く答える部下に頷き、走り出す。海岸沿いに停められた、埼玉県警の車輌に乗り込み、出動する。

 待っていろ悪党共、一網打尽にしてやる。父から譲られた、ポケットにしまった手錠をひと撫でし、気合を入れる。

 

「どういうことだ、これは…」

 一網打尽にしてやると息巻いて突撃した先には、気を失って地に伏している犯罪者共と、あの女が立っていた。

「やはり、私の勘は間違っていなかった。此処にいれば愉快なことになると思ったが、お主がそうだったのか。それ程の気を隠せるとは、恐れ入った。」

 楽しい時間が始まる、そう言わんばかりに口角を上げた遠山かなこの姿。

「遠山かなこだったな。お前、何処の依頼で動いた?一瞬で姿を消し、誰にも悟られずにこれだけの数を相手に、私の到着よりも早く殲滅出来る力、何処の組織に雇われた?」

 武偵か?それとも傭兵か?しかし、これ程の腕を持った者を、私が知らない筈はない。こいつは何者だ!?

「雇われてなどおらぬ。言っただろう?…言ったよな?ただの旅人だ。」

 己の発言さえ覚えていないのか、こいつは…

「ただ、此処にいれば強者に会える気がした、そしたらこ奴らが襲ってきたので反撃しただけだ。それより、一戦願いたい。」

 そういうことか…

「任意同行…いや、公務執行妨害で逮捕する!!」

 特殊繊維で作られた縄付きの手錠を握る。

 

 その時、今までに感じたこともない高揚感に駆られた。

 

 

 

 

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―狐崎みすず視点―

 

 

 

「遠山かなこは何処だ!!」

 やはり来たわね。現在私の務める高千穂弁護士事務所、そこへ飛び込んで来た銭形。事勿れ主義のキンジが、己の身可愛さにかなこの居場所をバラすのは予想通りだ。

 周囲の職員たちがざわつく中、私はデスクに腰を下ろしたまま、彼女を眺める。

 事務所に帰って、直ちにかなこの現在置かれた状況の確認を行った。彼女、銭形が叫んでいた『逮捕』という言葉、確かにかなこがやって来たことは法的にアウトだが、異例中の異例であるかなこに対し、政府がどの様な処理を行ったのかを電話で冷泉君を脅して聴き出した。

「狐崎みすず!!遠山かなこは何処だ!!」

 デスクが叩き割られるのではないか、という勢いで手を付き、私に詰め寄る銭形。

「用事は私にあるんじゃなかったかしら?銭形警視正。『逮捕』と言うけど、逮捕状はあるのかしら?」

 ある訳がない。冷泉君から聴き出した情報と、私が独自に調べた情報を擦り合わせれば、かなこに対する被害届も、手配も出ていない。政府と外務省が全力で後処理を行っているし、その命令を受け、各国を回ったのは、目の前にいる彼女だ。

「ない!!しかし、私はあいつを生涯を賭して追うと決めたのだ!!」

 彼女の自己満足、あの父にしてこの子あり、ってことかしら。誰かを追うのが生き甲斐な一族ということなんでしょうね。

「なんとなく、貴女が私にコンタクトを取った理由が分かったわ。かなこと接触するためだったんでしょ?冷泉君は口が軽くて困るわ。」

 冷泉君は、私とかなこの関係を銭形にペラペラと話した事も白状した。彼にとっては同じ公僕であり、階級が上で先輩でもある彼女に逆らえなかったと、言い訳していた。

「そうだ!!私なりに奴について調べた。その捜査線上にお前が浮かび上がってきた。故にコンタクトを試みた。」

 秘匿されたかなこの情報、彼女がどの程度それを知らされたのかは分からない。しかし、武装検事や政府でさえ辿り着けなかった私とかなこの関係を探し当てた銭形、優秀なのは腕っ節だけではないと証明している。

「流石ね。依頼料を満額貰えるなら、かなこに会わせてあげる。ただ、会わせるだけよ。」

「構わん!!」

 ダン!!とデスク叩きつけられる札束、…ボロい商売ね。

「契約書よ。拇印でいいわ。」

 素早く契約書を一読しサインと拇印を押す銭形。

「遠山かなこは何処だ!!」

 記入を終えるなり、鬼気迫る剣幕で叫ぶ銭形。

「ここで暴れられると困るのよ…案内するわ。行きましょう。」

 腰を上げ、銭形を待機させているかなこの元へ誘導する。

 

 

 

 

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―銭形平静視点―

 

 

 何人たりとも逃したことの無い投げ縄付き手錠が虚空に漂う。あの時と同じだ。一瞬で姿を消した。

 躱された!!初めての経験に動揺を表に出さない様努める。まだ近くにいる筈だ。そうだ、そもそも躱されたんじゃない、逃げられたのだ!!そう意識を転換した瞬間、今まででさえ他を圧倒していた己の力、それのリミッターが外れた様に、力が湧き上がってくる。

「そこだ!!…クッ!!」

「…恐れ入った。」

 私に突き刺さりかけた拳を受け止める。信じられない様な威力と衝撃が左の掌を襲う。普段であれば左腕ごと吹き飛んでいたであろう威力に歯を食い縛って耐える。

 驚いた様に言う遠山かなこだが、まだ全力を出している様には見えない。底の知れない実力、全てを圧倒してきた私さえ凌駕する力量を感じる。

「逃がすかぁっ!!」

 再び姿を消そうとした奴に拳を振るう。先程は全く視えなかった奴の姿がなんとなくだが視えた。振るう拳も、嘗て無いほどの速度と威力、そして精度を誇っている。

 力が漲ってくる。奴が強ければ強い程、私が強くなっているかの様だ。

 

 そんな私の拳を軽く払い、拳を繰り出す。速い、だが視えるぞ!!

 辛うじて奴の拳を払い、拳を繰り出す。さっきよりも更に強くなっている気がする。私自身も、そして奴も。奴の場合、実力を出していないだけの気もするが…

 威力も速度も徐々に上がっていく拳をお互いに払い、繰り出しを繰り返す。

 楽しい、闘いをそう感じたのは初めてだった。己を高める相手は、私には父しかいなかった。今まで、それを超える相手は警官となってからも、ICPOとなって世界中を駆け回ってからも、出会った事はなかった。

 しかし、目の前にいる遠山かなこは、そんな全てを超越し、異次元にいる存在なのだと分かる。呆れる程に強い、今までに無い程の高揚感と万能感に満ち、現在進行系で進化する私が、絶対に勝てないのだと本能がそう告げているのに、楽しくて堪らないのだ。

 我、終生の敵を得たり。父が生涯を賭してリュパンを追った様に、私は私の全てを捧げてでも、こいつを追う。この時、そう決めた。

 

「愉快なひと時だった。また会おう。」

 今までの死闘がじゃれ合いだったと言わんばかりの速度の拳が私を貫く。

 視えなかった。意識が薄れていく。

「次はもっと愉快な戦いをしたいものだ。」

 意識が消える寸前で聞こえた奴の言葉。当然だ、貴様を追い続けてやる。遠山かなこ、必ず貴様を捕らえる。お前の力を超えて。そう決意した。

 

 目覚めた時、眼前には遠山かなこが制圧した者たちの地に付した姿だけだった。

 あれ程の威力の拳をモロに喰らったというのに、不思議と痛みも怪我も無かった。

 表現し難い感情に駆られる私の耳に響く部下や地元警官の声。

「銭形さん流石としか言いようがありません!!ものの5分で完全制圧とは!!」

 目を輝かせ駆け寄って来る部下。他の面々も信じられないという目で倒れた者達を見ている。

「やはり、最強の警官は伊達じゃありませんね!!」

 違う。この戦果も、最強であるということも、全て違う。私を超える存在、遠山かなこ。それをこの場で言って信じて貰えるのか?あれ程の存在を何故今まで私が知らなかった?私が知り得ぬ程の規格外の怪物を彼らが信じられるのか?

 仮に信じて貰えたとしてどうする?そうなれば、奴は世界中から狙われる。それは看過できない。アレは私の獲物だ。誰にも譲らん!!

 

「後は任せた。」

 そう言い残し、引き留める者たちを適当にあしらい、直ちに日本へと戻る。独自に遠山かなこについて調べた。しかし、何の情報も出てこない。

 警視総監に退職届けを持参し奴への質問をした。私が公安部を含めた警視庁で最高戦力である自覚がある故の脅迫だった。

 そうして知り得た情報を元に調査を続けた。その情報の見返りとして奴の尻拭いをさせられたが、他の誰かに獲られるくらいなら、その程度、何ということもなかった。

 そうやって、調査と足取りを追いながら、尻拭いをすること3年。漸く辿り付いた奴の交友関係。狐崎みすず。

 直ぐにでも連絡とりたかったが、そういう時に限って緊急の任務が引っ切り無しに起こる。

 漸く連絡をつけた時、奴の存在は公表され、世界で最も強き者とその界隈では認知されてしまっていた。

 

 しまった、出遅れた。そう思い悔いた。最強の座とその称号、裏の仕事をする連中にとっては最高の箔となるそれを求め、奴は狙われると思っていた。しかし、現実は違った。

 誰も奴を狙わなかった。正確に言えば、彼我の力量差さえ分からぬ二流以下が奴に挑もうとした。そんな連中は、奴の力から比べれば、足下にも及ばない武装検事や公安にさえ勝てず、奴に辿り着くことさえ出来なかった。

 そして、力や格の違いが分かる一流以上の者たちは、勝てる可能性が存在しないと知り、関わることさえ拒否した。

 そういった背景があり、奴は、遠山かなこは、今だ野放しとなっている。

 私にとってはまたとない幸運。何より、私しか奴を追えないと思うと、更に力が湧き上がってくる。

 

 あの時よりも強くなっている。奴は、奴の弟、遠山キンジの部屋にいると嗅ぎつけた私は、強襲を行った。

 二度目の相対となった闘い。間違いなく私はあの時よりも強くなっていた。

 しかし、奴はそんなレベルで越えられる相手ではなかった。

 有効打どころか、奴に触れることさえ出来ずに何発もの拳を食らう。一撃で意識を失いそうになるが、直ちに復活する。

 普通ならとっくに気絶しているだろう。しかし、奴を前に、そう簡単に倒れることは出来ない。意識が遠のく寸前、奴の姿が見える度に、身体が勝手に覚醒するのだ。

 覚醒する度に強くなる私。それなのに奴に追いつける気配さえない。あまりにも強大過ぎる敵、しかし、心は折れるどころか、寧ろ熱り立つ。

 

 躱される拳、突き刺さる拳、その度に覚醒する意識と力。何度繰り返しただろう。

 覚醒を繰り返し私にも限界が近づいてくる。次で終わる。そう理解し、闘い方を変える。

 今回は見逃してやる。負けを認める。しかし、必ず一矢報いる。お前に届いてみせる。

 今までと違い、避ける気はないし、受け流すこともしない、奴の拳をモロに直撃で受ける。全ての持てる力と集中力をカウンターに賭ける。

 

 奴の右手が動く、私も動いた。

「逮捕だ…」

 想定よりも速く奴の拳届いた。予定していたよりも力が入らない。薄れゆく意識の中、そう呟いた。

 瞼が閉じる寸前に見えたのは、奴の左頬に届いた拳と、驚いた様な奴の表情。

 一矢報いたな。満足感を抱き、瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

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―獅堂虎巌視点―

 

 

 

 喫茶店でコーヒーを一杯頼み、一息ついて店を出る。さて、面倒臭ぇが仕事に戻るか。

「サボりとは、偉くなったものだな獅堂。」

 この世で最もおっかない女トップスリーに入る奴の声が聴こえた。聴こえなければどんなに気が楽だっただろう。

「銭形の姐さん、いつこっちに戻ったんだい?」

 内心気絶しそうな恐怖を隠し、そう言う。駄目だ、膝が笑ってやがる。

 俺が知る限り、この人よりも強い奴はひとりしかいない。そいつは実質殿堂入りだから、ランキングでは一位となるのはこの人だ。

「今朝だ。遠山かなこを追っていたが、漸く辿り着いた。」

 おいおい、怪物と怪物がドンパチやり合うのかよ。日本、いや、地球が消滅すんじゃねぇのか?…やめよう、冗談じゃなく、本当に有り得そうで怖くなる。

「姐さんよぉ、悪いこたぁ言わねぇ。アイツはやめといた方がいい。いくら姐さんでもアイツは無理だ。」

 銭形の強さは痛い程知っている。それこそ、俺では一矢報いることさえ不可能な相手であると身に沁みて分かっている程度には。

 しかし、その両方と戦ったことのある俺には分かる。どっちも理解の範疇を超えた怪物だが、銭形が人間やめたランク一位なら、アイツ、遠山かなこは怪物やめたランク一位だ。遠山かなこからすれば、銭形は所詮怪物。格が違うのだ。

「知っている。奴は誰の手にも負えぬ。だから私が追うのだ!!」

 どんな精神力してんだコイツは。

「そうですか、それじゃあ俺はこれで…」

 警告はした、後は自己責任だぜ。一目散に逃げようとした俺の襟を素早く掴む銭形。首が締まる。

「しかし、公務中にサボりとは…気合を入れ直してやる。」

「はは、姐さん。御冗談を…」

 顔が真っ青になっているのが自分でも分かる。コイツは俺の様な特異体質というわけではないし、魔法が使えたり、超能力があるわけでもない。なのに俺よりも遥かに強い。

 強いて言うなら、銭形という異常なまでに強い遺伝子を受け継いでいるだけの、特異能力持ちを超える異常に強い人間なのだ。

「冗談など言っておらんぞ。」

 知ってるさ、アンタは容赦ないからな。

 

 意識が遠のく中、その拳骨を受け分かる。以前の数倍強くなってやがる。なんで!?

 ただでさえ手を付けられない化物なのに、なんで強くなってんの!?

 それでも、遠山かなこには勝てる可能性がない様に感じるのは、やっぱりアイツが一番関わってはいけない相手なのだと、俺に教えているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

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