緋弾のアリアif~遠山家最強の姉~   作:トリプルツレー

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サウナと保釈、そして決意

―銭形平静視点―

 

 

 

「バカ女!!貴様に女らしさなど無い!!」

「何を言う!!貴様よりも私の方が強いのだ!!私の方が女らしいに決まっている。」

 額を突き合し、頭突きを繰り返す。痛い、私以上の石頭がこの世に存在するとは…

「やはり、白黒ハッキリつけねばならぬ様だな。」

「ふん、お前では私には勝てん。」

 手錠を握る私に、余裕の笑みを浮かべ遠山かなこ。

「貴様と闘う度に私は強くなる!!その余裕、何時まで続くか見物だ!!」

「ほざけ、貴様と私、全てにおいて私が勝っている。」

 自信満々に胸を張る遠山かなこ。

「私は大卒、しかも東大を首席だ!!お前は!?」

「知るか、武偵高に落とされた時より、学問からは離れた!!」

 中卒じゃないか!!私の圧勝だな!!自信に繋がる。

「学問など、戦いには不要!!その様なものに固執している時点で、お前の負けだ!!」

「不要な訳があるか!!歴史を見ても、偉人たちは皆、文武両道だ!!」

「小難しい事を言って、私を惑わそうとも無駄だ!!」

 クソっ!!バカには何を言っても通じないのか!!

「ならば、戦闘以外で私に勝るところは、何処だと言うのだ!!」

「体格だな!!身長でも、それ以外でもお前に勝っている!!」

 確かに、奴の方がほんの僅かだが身長が高い。ほんの数ミリ程度だが。しかし―

「確かに身長はお前の方が上だ、しかし、それ以外だと!?自画自賛もいいところだ!!」

 確かに、奴が自惚れる程度には、奴の容姿は優れている。それこそ、絶世の美女と言っても過言ではないだろう。しかし、私とてそれに劣るとは思わない。

「容姿なら、私も同等だ!!別にお前だけが優れているわけではない!!」

「だが私の方が男心がわかっている!!なんせ、弟が3人もいるのだから!!」

 クソっ!!妹しかいない私の負けだ!!父と母よ、何故もっと頑張らなかった!!

 しかし、私は負けない!!

「屁理屈ばかりを述べおって!!もういい!!貴様よりも私が先に結婚すれば分かる話だ!!」

 全力の拳を繰り出す。そう、奴よりも先に結婚すれば良いだけのこと、惑わされるな!!

「行き遅れの貴様に私が負けると?」

 奴の光を放つ拳が、私の拳にぶつかる。

 

 それからのことは、なんとなくしか覚えていない。

 拳と拳がぶつかり、光が世界を包む。

 消し飛ぶ居酒屋、舞台を変え、拳を撃ち合う私と遠山かなこ。

「その程度か、銭形!!」

「吠え面かかせてやる、遠山かなこ!!」

 気が付けば、お台場にまで来ていた。

 止まぬ拳、蓄積するダメージ。

「貴様と私、何が違う!!どちらも満足する相手に会えず、虚無感と戦い続け、誰にも理解されない!!」

「成程、私とお前は違う。私はみすずという理解者がいる。満足出来ぬとも、寄り添う場所はある。」

 私の理解者、それは父なのだろうか?家族は、無条件に身内を肯定することがある。それは真の理解者といえるのか?

「私はお前が嫌いだ。バカの癖に私に無いものを得て、私より今は強い。」

 今は、そう、今は、だ。絶対に追いつくし、全てで超えてみせる。

「私は別に嫌いではない。お前は愉快だ。嫌われている相手に言う言葉ではないのだろうが。」

 そこで、記憶が途絶えた。

 

「熱っい!!」

 身を焦がす熱と、脱水症状寸前で身体が危機を知らせる為に目覚めさせたのだろう。

 大量の汗をかき、茹でダコの様になった身体が、私を目覚めさせた。

「起きたか、身体は大丈夫か?」

 真っ裸で、木製の、タオルを敷かれたベンチに座り、汗を流す遠山かなこの姿。

 ここは…

「なんでサウナいるのだ!!」

「一汗流したかった。まあ、裸の付き合いというやつだ。」

 私の疑問に、そんな答えを返す。

「私は負けた、置いていけばよかろうに…何故負けた相手と風呂に行かねばならんのだ!!」

 お互いに一糸纏わぬ身体で、座る。

「最近は無くなったが、弟たちや、みすずと風呂に入ることがあった。」

 染み染みと思い出す様に、遠山かなこが口を開く。

「お前とは、そういう関係にはなれぬのかもしれぬ。だが、私を愉しませたのは、お前とアイツだけだ。」

 私だけじゃないのか…こういう時は、嘘でも私だけだと言うのではないのか?

「アイツ?私よりも強いと?知らんぞ、そんな奴。」

「純粋な強さでいえば、貴様よりも遥かに弱い。しかし、護りという一点に関しては、お前よりも上だ。」

 奴の言葉で、ある傭兵の名が頭に浮かぶ。最強の防御、完全無欠の鉄壁。最強と評される傭兵の一人、『要塞』ミラ・ミハイロヴィチ。

 透き通る様な白磁の肌に、流れる様な色素の薄い金髪。見目麗しい見た目に反した男言葉。そして貧乳。

 そんな傭兵の姿が想像出来た。

「成程、手強い相手だ。」

 今だ闘ったことはない相手、しかし、負ける気はない!!

 

「姐さーん!!探したぜーっ!!」

 サウナへと突っ込んで来た金髪の美女。あれ?こいつ『要塞』じゃないか?

 涎を垂らしながら、遠山かなこに抱き着くそいつ。想像とは異なる姿に、私の勘違いだと思う。

「ミラ、よくここが分かったな。ちょうどお前の話をしていたところだ。」

 ミラって言ったな。やっぱりアイツが『要塞』なのか!?

「姐さんの匂いなら、地球の裏にいたって嗅ぎつけるぜ!!」

 こんな変態が、あの最強の傭兵だというのか!?

「そんなに臭うか?風呂には入っているのだが…」

 少し落ち込んだ様子の遠山かなこ。

「姐さんは世界で一番良い匂いだ!!そのままで大丈夫だ!!」

「そうなのか?ならいい。」

 おい、それでいいのか!?遠山かなこよ、お前に貞操の危機感は無いのか!?

 そいつ、お前の裸体を見て、正常では無い目をしてるぞ!!

「ウェヒヒ…なんだテメェ、何見てやがる!!」

 遠山かなこの汗を舐めとる妖怪、もといミラ・ミハイロヴィチを見ていた私に、当の本人が噛み付いてくる。

 いや、思わず見るだろう…誰がどう見ても変態のそれだぞ!!

「遠山かなこよ…お前、交友関係を改めた方がよくないか?」

 流石に心配になってくる。この変態もそうだが、狐崎みすずだって、人格破綻者で、褒められた人物ではない人。こいつの交友関係、碌な奴がいないな!!

「姐さんに変なことを吹き込むんじゃねぇ!!ぶっ殺してやる!!そもそも、なんだその乳!!当てつけか!!気に入らねぇ、巨乳撲滅委員会の会員の俺を前に、度胸じゃねぇか!!」

 なんなのだこいつ!?そもそも、巨乳撲滅委員会とか巫山戯た委員会に属しているなら、私よりも大きい遠山かなこを殲滅しろ!!

「寄るな変態!!私にそんな趣味は無い!!」

「俺だって無ぇ!!畜生!!ブルンブルン揺れやがって!!抉り取ってやる!!」

 致し方ない、反撃出るか。変態に付き合っている暇は無いのだ!!

 真っ平らな奴の胸目掛け、拳を振るう。噂通りなら、加減は不要だろう。

「姐さんには遠く及ばねぇ…だが、この威力、お前ホントに人間か?」

 私の渾身の拳を受け、平然としているお前こそ人間か?今まであれを受け、その様にいられたのは、お前と遠山かなこだけだぞ。

 この変態、強い。いや、強いというより、硬い。攻撃を有効打に出来ない。

「貴様こそ、大した硬さだ。本当に人間か?」

 そう評価する。

「誰の胸が硬ぇだと!!ぶっ殺してやる!!」

 クソっ!!話が通じない!!

「動きやすくて良いではないか!!こんなものあっても、肩が凝るし、動き辛いだけで、良いことはない!!」

「うるせぇ!!持つ者は、いつだって持たざる者の気持ちなんか分からねぇんだよ!!」

 攻撃は素人に毛が生えた程度、取るに足らない。しかし、有効打が与えられない。手錠さえあれば、容易に拘束出来るというのに…

 

「ミラ、止めぬか。胸の大小で人の価値は測れぬ。」

 おい、それをお前が言うのか?

「姐さん…」

「私は、可愛らしくて良いと思うぞ。」

 お前、自分がどういう立場に置かれているのか分かっているのか!?

「姐さんが…俺が可愛い…ウェヒヒ…」

 ああ、案の定、ヤバい笑みを零している。本当に、お前の危機感はどうなっているんだ!!

 こいつ、誰か管理してやらねば、道を踏み間違えるぞ。

「遠山かなこ、お前が心配になってきた。」

 生涯の好敵手と定めた相手の将来が、心配で仕方なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―キンジ視点―

 

 

 

「おい!!何処に行くのかくらい説明しろよ!!」

 昨日同様、突然やってきたみすず。違うのは、ひとりで来たということと、突然連れ出されたということだろう。

「煩いわね。運転中なんだから、静かにしなさいよ。」

 社会人二年目の癖に、超高級国産車のハンドルを握り、気怠そうにそう言う。現在道は渋滞中、歩いた方が速いと思う様な速度でゆっくりと進んで行く。

「渋滞で進んでないだろ。突然連れ出しといて、説明も無しじゃ、納得するわけないだろ!!」

 俺の声に、苛立った様に溜息を吐き、

「私だって、かなこの為じゃなければ、アンタとドライブなんかしたくないわ。」

 俺と渋滞に対しての苛立ちを込めたみすずの声。

「姉さんの為?またなんかやらかしたのか?」

「かなこがやらかすのはいつものことよ。本人に自覚がないだけで。今回も、毎度の如く、公安や武検、政府が後処理に駆け回ってるわ。」

 姉さんは、相変わらず、多方面に迷惑をかけているらしい。

「なら、いつも通り任せておけばいいだろ。俺が出来ることなんか、何にも無ぇよ。」

 上がなんとかしてるのに、今更俺に出来ることなどあるわけがない。

「かなこ絡みをどうこうさせる気はないわよ。今回は、その被害者絡み。」

 被害者ねぇ…俺も被害者だと思うんですけど?

 

「師匠!!某、無実でござるよ!!」

 連れられて来たのは留置所。何故か面会室の強化アクリル越しに、戦妹、風魔の姿があった。

「み…狐崎さん?これは一体どういうことですか?」

 以前名前で呼ぶなと、ネチネチと言われたのを思い出し、呼称を咄嗟に変えて質問する。訳がわからんのだが?

「昨夜のニュースは観てないのかしら?品川で居酒屋が綺麗サッパリ消え去ったってやつ。」

 呆れた様に言うみすず。観てないな、本当、治安悪くなったなぁ…

 現実逃避をやめ、頭の中で整理する。まず、居酒屋が綺麗サッパリ消え去った。どの程度の規模の店かは知らないが、みすずがわざわざ、綺麗サッパリ消え去ったという表現をしたということは、本当にそうなのだろう。そして、何故か捕まっている風魔。

 全て姉さんに関わることだとすれば…

 

「風魔、姉さんが迷惑かけたみたいだな。」

「キンジにしては上出来ね。」

 俺の推理の末に出た言葉を聞き、みすずがそう言う。

「そういうことだから、私は釈放の手続きをしてくるわ。冷泉君を6時間くらい待たせてるし、もう行くわね。」

 冷泉、嫌な奴に目を付けられたな。だが、この程度の嫌がらせなら、みすずの中ではかなり優しい方だ。

 気怠そうに、みすずが面会室を出て行く。

 

「手続きは済んだわ。」

「内々の処理があったとはいえ、半日以上拘束することとなってしまい申し訳ありません。」

 早く帰りたい。そういう心情が明け透けで、隠す気も無いみすずと、風魔へ心底申し訳無さそうに頭を下げる冷泉。 

 手続きの間、風魔から事情は聞いている。災難としか言いようが無いのだが、不幸体質の俺の戦妹は、そんなところ迄も受け継いでしまうのだろうか…

 流石に、恨みつらみの一言も言いたい風魔が口を開きかけた。

「これ、持って帰っていいわよ。」

 取り調べの定番のカツ丼と、その他日持ちするカップ麺などが詰め込まれた紙袋をみすずが差し出す。

「あ、有り難いでござる!!」

 安い買収だなぁ…そんなとこまで似なくていいぞ、風魔。

「この件は内密に…」

「勿論でござる!!忍はそこらへんは弁えているでござるよ。」

 申し訳無さそうに言う冷泉に、即答で返事をする風魔。

「それじゃあ、帰りましょう。」

 そう言って、車のキーを俺に投げるみすず。それをなんとかキャッチする。全然届いてないぞ!!相変わらず、運動能力は壊滅だな。

「えーっと、狐崎さん。僕言うことはないんですかね?」

 6時間、不必要に待たされた冷泉が、青筋を立ててそう言う。

「ご苦労様。かなこの役に立てて良かったわね。気が向いたら、かなこに冷泉君が頑張ってくれたと教えてあげるわ。」

 その時は一生来ないのだろう。

「文句があるなら、かなこに言いなさい。私だって、かなこの為に時間を割いたんだから。」

 姉さんに対してだけは、異常な迄に寛容なみすずが、あの姉さんに対して恋心を抱く冷泉にそう言って、俺たちに移動を目で促す。

 面倒ごとはゴメンだ。みすずに促されるままに風魔を連れ、そそくさと面会室を後にした。

 

「さて、冤罪により拘束された慰謝料を貰ってるわ。」

 車に乗り込んだ風魔に、みすずがそこそこの厚みのある茶封筒を差し出す。

 冤罪は御免だが、一日拘束されるだけで金貰えるなら俺もやろうかな。…いや、絶対やめとこう。みすずのことだ、喜々として俺を貶めるだろうし、金も取られそうだ。

「そ、某の一月分のバイト代よりも遥かに多いでござるよ…」

 嬉しさと哀しみの折り混ざった、複雑な心境が感じ取れる声音で言う。

「受け取ったわね。じゃあ、今回あったことの全てを忘れなさい。あれは老朽化で起こった崩壊。そうでしょ?」

 まあ、そうなるな。あれは慰謝料という名の口止め料。それはなんとなく分かっている。

「御意。」

 風魔とて武偵、それに代々忍者の家系だ。そこら辺は弁えている。

 しかし、姉さん絡みだからか、みすずにしてはやけに優しいな。

「良い返事ね。それじゃあ、保釈手続きの着手金と手数料を貰うわよ。出血大サービス、10万でいいわ。」

「じゅ、10万でござるか!!」

 

 やはり、みすずはみすずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―乾桜視点― 

 

 

 

「待ちなさい!!」

 

 あかり先輩たちとリーフパイを食べに行こうと歩いていた最中、私の横をすり抜けて行く二人乗りのバイク。

 あれ?悪の匂いがする。あまり人通りの少ないこの道、私たち以外には、私たちの前を歩く一人の女性と、そのバイクの二人組しかいない。

 匂いを感じた瞬間だった。女性のバックがひったくられた。

 

「待ちなさい!!」

 倒れた女性を介抱し、そう叫ぶ。

「桜ちゃん、ここは私に任せて。バイクを追って!!」

 あかり先輩が私に代わり女性の介抱を行い、バイクを追った。

 駄目、走っては追いつけない。ナンバーはご丁寧に隠され、確認出来ない。逃がすものか!!

 銃を取り出し、タイヤを狙い構える。

「邪魔だ!!」

 低い女性の声、さっきの女性ではない。声を認識した時、私の顔の横を何かが飛んでいった。

 

 何かに引っ張られる様に宙に浮き、こちらへとバイクの二人組が引き寄せられる。ロープ?

「現行犯逮捕だ!!」

 乗り手を失ったバイクは転倒し、道路を滑っていく。マズい、民家にぶつかる!!

「おい、危ないぞ。」

 ピタリと止まるバイク。

「その程度でお前が死ぬのなら、とっくに捕まえておる。」

 男ふたりを捕獲した女性が、バイクを片手で止め、それを軽々と片手で担ぎ、こちらへと歩いて来る女性にそう言う。

 この人…

「ぜ、銭形警視正!!それに遠山かなこさん!!」

 世界最強の警察官と評され、多くの警官にとって憧れの人、銭形平静警視正と、私たちにトラウマレベルの力量差を見せつけたRランク武偵でSDA総合ランク1位の怪物、遠山かなこ。

 とんでもない大物がいた。

「なんだ?貴様も公僕か?」

 私に銭形警視正がそう言う。日本人女性としては大柄な彼女は、170cm位あるのか、私は少し見上げる様に彼女の目を見て、敬礼する。

「はっ!!乾巡査であります!!」

 多くの警官がそうである様に、私にとっても憧れの対象である彼女に最大の敬意を示す。

「そうか、ご苦労。では、こいつらは任せた。私は奴を待たせているのでな。」

 私に敬礼を返し、男ふたりを押し付ける。そして、遠山かなこさんの方を向く。最強と最強、やはり引かれ合うものがあるのだろうか?

 一緒に行動していたみたいだし、あのふたりが動く程の何か起こっているのだろうか?

「遠山かなこぉーーーっ!!決着をつけてるぅーーーっ!!」

 あれぇっ!?違うの!!

 

 何が起きているのか分からない、目で追うことさえ不可能な、音から察するに光速の殴り合いが繰り広げられている。

 理解不能な殴り合い、先に膝を付いたのは銭形警視正。しかし、すぐさま立ち上がり、再び光速の世界に旅立つ。

「はは…」

 あかり先輩たちの乾いた笑い声、理解の範疇を超えた闘いに、言葉も感情も、瞳の光さえ失っている。

 私だって同じだ。遠山かなこさんとは一度、ナゴジョで手合わせしたが、あの時、どれだけ手加減されていて、それにさえ全く手が届かなかったのだと、理解出来てしまう。

 

「姐さん、帰ろーぜ!!」

 ふたりの闘いに気を取られ、女性気付かなかった。

 飽きた様にそう言う女性は、背中に重火器を背負い、溜息をついている。

「仕方ない、終わりにするか…」

 遠山かなこさんの声が聞こえ、動きが止まる。

 遠山かなこさんに俵担ぎにされ、気を失った銭形警視正。あの異常な闘い、それを一瞬で終わらせられるということは、彼女、遠山かなこさんは、あれでもまだ、本気を出していないということなのだろうか…

「また強くなっておった。次が楽しみだな。」

「そんな奴は放っといて、俺ともう一回温泉行こうぜ。」

 遠山かなこさんに、重火器を背負った女性がそう言う。

「サウナで逆上せたばかりだというのに、又行くのか?」

「あれは、姐さんが…」

 何故あんな闘いの後に、のほほん会話出来るのだろう?この人たちと、住む世界が違うのだと実感する。

「みすずも誘うか、行くぞミラ。」

「はいよ。」

 去りゆくふたりと担がれた銭形警視正。

 

 何もしてないのに、なんだか凄く疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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―銭形平静視点―

 

 

 

「下ろせ!!下ろさぬと逮捕だ!!」

 闘いの後、不覚にも気を失った私は、目覚めた時、米俵の如く担がれていた。

「おお、起きたか。」

 我が生涯の好敵手、遠山かなこは私の叫びにそう返し、地面に降ろす。

「我々は、これからみすずを誘って風呂に行くが、一緒に来るか?」

 えっ!?又風呂行くの!?という質問は飲み込む。遠山かなこの隣に立つ変態こと『要塞』ミラ・ミハイロビィチが妬ましいという感情剥き出し睨んでいたからだ。

 こいつ、異常な迄に私を嫌っているな。しかし、狐崎みすずを誘うのはOKなのだな…

 その疑問は、奴、狐崎みすずの姿を思い浮かべて解決した。成程、奴はこの変態と同類だな。凹凸の少ない狐崎の身体思い出し、納得する。

「遠慮する。そもそも、遠山かなこ、貴様と馴れ合うなど、有り得ぬ!!」

 そう、私とこいつは、馴れ合う関係であってはならないのだ。

「けっ、こっちからお断りだぜ。」

 遠山かなこではなく、『要塞』がそう答える。こちらとしても、出来れば、こいつとは関わりたくないな…

 

「遠山かなこ、次に会う時は…次こそは貴様を捕まえてやる!!」

「そうか、楽しみにしている。」

 私の決意に、楽しそうに答える遠山かなこ。歯を食いしばり振り返り、奴とは逆の道を進む。

 そうしないと、緩んだ顔を見られてしまいそうだったからだ。

 最強の、遥か頂きに立つ手の届かない敵。そんな相手を得たことに、初めて在るがままに振る舞える友人を得た気がしていた。

 

「銭形平静、六ヶ月の減給を言い渡す。」

 そんな翌日、警視総監に呼び出され、そう言い渡された。

「なっ!!私が何をしたというのですか!!」

 突然の処分に、思わず詰め寄る。

「酔った勢いで遠山かなこと喧嘩し、居酒屋を消し飛ばしたんだ。甘過ぎる処分だと思うのだが…」

「あの程度で消し飛ぶ居酒屋が…」

 反論しようとした私に、警視総監が呆れた様に溜息を吐く。

「君はもう少し、自分の力を理解した方がいい。」

 そんなもの十分承知している。警視庁、いや、ICPOで私よりも強い者はいないし、世界を見ても、勝てる相手の方が多い。

 しかし、私よりも強い者が現にいるということは、私はまだ弱いということだ!!

「ええ、十分理解しております。私はまだまだ弱い。更に強くなり、奴を、遠山かなこを捕まえてみせます!!」

 理解してないじゃないか…

 そんな警視総監の呟きを無視し、決意を新たにした。

 

 

 

 

 

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