寅の刻の虹   作:おいしい名古屋コーチン

1 / 3
第1話 虹を纏え

…綺麗だな。

 

雨上がりの朝の空に登る虹を見てそう思う。

いつもの通学路。今日からは新学期なんだから…早めに学校に…

 

美兎「うわぁ!」

楓「おっと。」

 

人にぶつかって転ぶかと思ったら手首を掴まれて難を逃れる。

 

美兎「すいません…よそ見してて…」

楓「ええって。 …! 礼はええよ。また会える。」

美兎「え? ちょっと…」

楓「じゃあな!」

 

 

 

 

 

泥だらけにならないで済みましたけど…あの子、なんだったのでしょうか…?

 

担任「おーしHR始めるぞー! まず新学期早々お前らにいいニュースだ! 転校生! はるばる関西中央高校から来なさったそうだ。 入ってきていいぞー!」

 

楓「樋口楓です。今後ともよろしく…あ。」

美兎「あ。」

 

なんかめっちゃ満面の笑みでこっち見て来るんですけど!

怖い怖い怖い!

 

担任「お? 月ノの知り合いか? 丁度いい。学校の案内をして来てくれないか?」

美兎「良いですけど…先生がすればいい話じゃ…」

ユードリック先生が耳打ちをしてくる。

担任「(…怖い。)」

美兎「(…了解です。)」

 

 

 

 

美兎「静凛せんぱーい!」

凛「あら…美兎ちゃん。 珍しく遅かったじゃない。」

美兎「今日来た転校生さん…楓ちゃんに色々と学校の事教えて回ってて…振り回されまくって大変だったんですよ!?」

凛「楓… それは大変だったわね。」

美兎「やっぱり映画研究クラブが1番落ち着きますね!」

凛「…言いづらいんだけど、いい加減そろそろ映画のレパートリー増やさない?」

美兎「凛先輩、ホラー苦手なんですか?」

凛「正直代わり映えがないんです。 もっと…サスペンス映画とかも増やしませんか?」

美兎「ムカデ人間、不服なんですk…」

楓「凛先輩! 遊びに来たでー! ってアレ?」

 

背筋が凍る。

 

楓「美兎ちゃんじゃん! 凛先輩と同じ部活なん?」

美兎「まぁ…そういう感じです…」

凛「あら…楓ちゃん。 よくここが分かったわね。」

楓「先生に教えてもらったので! それより、凛先輩…件、まだ動かないんですか?」

凛「まだ情報が固まってないわ。それに、動けるのもあなただけ。 3号を見つけ出さないと動くにも動けないわ。」

美兎「…え? 何? 何の話ですか?」

楓「…先輩も気づいているのは承知ですがこの子…美兎ちゃんに3号になってもらうのは?」

凛「却下…とも言いずらい状況よね。 訳分からない話してごめんね美兎ちゃん。 それと…この後、空いてる?」

美兎「空いてますが…何を?」

 

 

 

 

 

クラブ活動を早めに切り上げて、校外に出る。

今日は始業式だけだったのでまだお昼の時間帯だ。

 

美兎「あの、何処へ…?」

楓「たしか…ここやろ。」

凛「そうね。」

 

美兎「これって、電話ボックスでは?」

楓「入りな。」

美兎「え?」

 

電話ボックスの床が急に下がる。それも猛スピードで。

 

美兎「えええええ!?」

楓「いつ乗っても慣れないな… もう少し速度どうにかならんの?」

凛「仕方ないでしょ? 機密保持のためなんだから…」

美兎「機密!? 機密ってなんですか!?」

楓「じきに分かるよ。 つーか、3人で乗るとさすがにギッチギチやね。」

凛「これはこれで楽しいけど…」

美兎「というかこれなんなんですか!? エレベーターか何かなんですか!?」

楓「大正解。 秘密基地へのエレベーターだ。ロマンあるでしょ?」

美兎「ありますけど! 有りますけど少し速すぎないですか!?」

凛「スカイツリーのエレベーターの速度の2倍だって。」

美兎「それもう落ちてないですか!?」

楓「口閉じな。 舌噛むで。」

 

強い衝撃が襲う。

 

美兎「おう…」

凛「着きましたよ。」

 

 

 

美兎「ここは…?」

凛「私たちの秘密基地。 詳細は…この方が。」

戌亥「お初にお目にかかるな。 私は戌亥。ここの総司令を務めてる。まぁ…名ばかりやけど。」

楓「お久しぶり〜!」

戌亥「楓はんはあっちへ。 君は…3番目の適合者になるかも、ということで連れてこられたという解釈で間違ってない?」

美兎「多分…そうです。」

戌亥「なら…ここを手短に説明しよう。」

 

ここは国連直属のテロリストを対処する部隊の…日本支部。

部隊名は…「寅の刻の虹」。

最近は魔力を使った犯罪を対処している。

 

美兎「魔力? 大昔に失われたっていうオーパーツのようなものでは?」

戌亥「失われた…と言うより、封印したのが正しいな。 電気などが発明されたり…争いが少なくなったり。そうした事情が噛み合ったことを考慮して多目的すぎる危険なエネルギー…魔力は、人々の手から離れ封印された。 しかし、その封印を破って魔力を悪用する者もいる。それを対処するのが…私達だ。」

美兎「…まさか、楓ちゃんが戦うなんて言いませんよね。聞く限りじゃ命懸けの仕事に聞こえますよ。」

戌亥「…そうやね。 日本全国から生まれつき魔力を扱える者を集めて…犯罪に対抗する。それが我々。築地の連続殺人犯のニュースは見た?あれも…我々が対処すべき事柄だ。 その為に…楓はんは来てくれたんやし。」

 

美兎「子供ですよ。 私だって…楓ちゃんだって…凛先輩だって!今でしか出来ないことだって沢山あるのに… それを投げ出して命をかけているんですよ!? 大人が何とかできる問題じゃないんですか!?」

戌亥「残念ながら…な。 私達亜人もすっかり異端の存在。まともに動けん。それに兵器を持ち出しても無意味だ。現状最善の策…にしては最悪すぎるがな。」

美兎「3号ってワード…それって戦える子供の事ですよね? 楓ちゃんが2号だとしたら…1号はどうなったんです!? まさか…」

戌亥「それ以上は話せんわな。 我々も…戦う意思の無い者にその責を負わせる気は無い。 彼女たちは彼女たち自身の思いで戦ってる。我々の手駒では無い。 君に戦う意思がないのなら…3号の席に無理やり座らせる由もないわな。 帰り道、分かるか?」

美兎「…結構です。」

 

 

 

 

なんなんだよ。

 

 

 

 

美兎「楓ちゃんが…ちょっと変わってるけど、私たちと何ら変わらない子が命をかけて戦ってるなんて信じられないよ…」

 

大きな爆発音。

 

美兎「何!? あの方向…築地… 」

 

連続殺人犯。 逃げなきゃ…

いや。

 

美兎「行かなきゃ。」

 

 

 

 

逃げ惑う人々に逆らうように爆発音がした方へと歩みを進める。

 

美兎「…!」

 

ガスの匂いが満ち、炎のパチパチとした音が静かに響く道路の上で、彼女は、確かに人の形をした何かと戦っていた。

 

楓「配属早々大物かい!」

凛「気をつけて! さっきの爆発で周りの建物が崩れかけてる… 被害を最小限に。 情報もまだ少ないから…慎重に!」

楓「ナビゲートありがとね先輩! よっしゃ… 先人が汗水垂らして作り上げた街をぶっ壊した落とし前、付けさせてもらおうか!」

 

 

美兎「あっ。」

 

戦う理由…あの犬の女の人も言っていた、楓ちゃんの、戦う理由。

楓ちゃんは…戦いたいからじゃない。守りたいから、戦ってるんだ。

 

楓「オラオラオラァ!」

凛「ダメか… 銃弾は効かない! 近接戦を…」

楓「分かってる!」

 

システム音「Terminal replacement From magazine to barrel!」

 

楓「らぁ!」

呑まれた者「ガガガガガ…」

楓「捕まれ… がぁっ!」

 

 

楓ちゃんが吹き飛ばされる。

 

美兎「楓ちゃん!」

楓「美兎ちゃん!? 危ないから…早く逃げて!」

美兎「だって…こんなにもボロボロなのに…」

楓「いいから早く逃げて! 私は街を…思い出を守るために戦う!けど…それ以上に。 友達を失うのはもっと嫌だ!」

 

美兎「…分かった。 その言葉、そっくりそのまま返させてもらうよ。 戌亥さん!聞こえてるんでしょ!?」

戌亥「楓はん、インカムを美兎はんに。」

 

美兎「お願いがあります。 3号の席に…私を座らさせて下さい。」

戌亥「構わへんよ。 でも…それ相応の覚悟、あんさんには出来てるんだろうな?」

美兎「…はい。」

 

戌亥「凛はん! 3ー1コンテナを!」

凛「了解! 3ー1コンテナ、射出!」

 

 

ダンボール箱ほどのコンテナがどこからか飛んでくる。

 

凛「その中に…楓ちゃんと同じ装備が入ってます。 時間は…楓ちゃん、いや、Wolf、頼めるね?」

楓「了解。」

美兎「さっきの名前って…?」

凛「コードネーム。 美兎ちゃんは簡単に付けちゃうよ! じゃあコードネームRabbit! コンテナを開けてスーツを着て!上着は脱いでから!」

美兎「あ…了解!」

 

コンテナを開けると入っていたのはアタッシュケース。

それを引き出して開けると、いつもの制服のようで一風違うスーツが顔を見せた。

上着を脱ぎ、スーツの袖に腕を通す。

靴もすごそうなロングブーツに履き替えてグローブもつける。

カチューシャのようなインカムを被る。

 

凛「グローブとブーツとインカムに上着から出てるコネクタを差して!」

 

上着の裾と袖の裾から出るコネクタをブーツとグローブに差し込む。

首元から出るコネクタはインカムに。

 

凛「左袖にあるコンソールを起動して! それで戦える!」

美兎「…了解。」

 

左袖に着いているコンソールを起動する。

 

美兎「ロック番号!?」

凛「何それ!? 聞いてないんだけど… 戌亥さん!?」

戌亥「私も知らん。」

楓「ギッ! もう限界!! 美兎ちゃんまだ!?」

美兎「あぁ…もう! 適当に入れちゃえ!」

 

0924。

 

美兎「…! 動いた!」

 

スーツを通るネオンの管のようなものが眩しいマゼンタに発光する。

日が沈んだ街を照らすように。

 

美兎「まるで…虹を纏ってるみたい…」

楓「もう…限界…!」

美兎「今行く!」

 

システム音「Codename authentication completed: Demonstrate the power of rabbits.」

 

全力で足を踏み抜くと…信じられないくらい高く跳んでいた。

 

美兎「…え? うわぁぁぁあ!」

凛「力入れすぎ! もっと軽く動いてみて!」

美兎「言うの遅いです! でも…ここからなら!」

 

拳に力を込めて、落ちる勢いで人の形をした何かの頭蓋に拳をたたきこむ。

 

呑まれた者「グッ…ガァァァア!」

楓「ナイス! やっと怯んだ!」

美兎「やった!」

 

楓「一気に畳み掛ける!」

美兎「でも…どうやって!?」

凛「コンソールに2434番! 最大出力が使える!」

 

テンキーに番号を入力し、エンターを押す。

 

システム音「「Release the dignity of the beast.」」

 

美兎「…何これ!?力が…」

 

楓「行くで!」

 

楓ちゃんが両手の拳銃を連結して、叫んだ。

 

楓「バイトショット!」

 

牙のような弾丸が放たれる。

 

 

凛「Rabbitも続いて!」

美兎「了解!」

 

両足で全力に前へ飛び込む。

そのままの勢いで拳を放つ。

 

美兎「ジャンプアンドヒット!!!!」

 

拳は獲物を確実に捉える。

全力で力を込めて、殴り抜ける。

 

 

吹き飛ぶ獲物を確認した後私は地面に顔面から着地した。

 

美兎「…」

楓「美兎ちゃん!?」

凛「あら。」

戌亥「ふっ。 …どっかの誰かさんみたいな転がり具合やな。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。