美兎「いてっ!」
楓「我慢しや! 擦り傷だらけなんだから...」
戌亥「いやぁ見事な顔面着地だったね。」
凛「鼻とか折れてない?」
美兎「多分大丈夫です...」
凛「そう。 一応病院に行っておいてね? とりあえず、一旦通信切るから。」
楓「了解でーす。」
凛「...正直、驚きですね。初めて弐式魔力装具を使ったのにあれだけ使いこなせるなんて。」
戌亥「楓はんでも結構な訓練を要したもんだけどな。 まぁ、アレを使いこなせたと言う事自体がアレなのかもな。」
凛「それもそうですね。 明日は土曜日ですし...あの子達を呼んで適合テストと訓練を行うのも良いかもですね。」
戌亥「あの子...美兎はんの回答次第やな。」
凛「ということで、今日空いてない?」
美兎「空いてますよ。 もう顔面大根おろしも懲り懲りですし...行かせてもらいます。」
凛「じゃあ、新橋駅に来てね。」
美兎「こんにちわ...」
楓「おう。 絆創膏はもう良いのか?」
美兎「生まれつき怪我の治りが良いみたいで。」
凛「じゃ、いつものとこ行こか。」
美兎「またあれですか。」
電話ボックスにすし詰めになって秘密基地に向かう。
戌亥「いらっしゃい。 それと、昨日は有難う。」
美兎「お礼を言いたいのはこちらですよ。 私のわがままを聞いていただいて...本当にありがとうございました。」
戌亥「...安心したよ。 あの状況、半ば強制のようなものだったから。 故に、改めて聞く。 君は、これからも君自身の理由を以って戦ってくれるんか?」
美兎「ええ。理由はすでに伝えたはずです。 私は、街を守りたい友達を守りたいから戦います。」
戌亥「なら...守るに値する実力も持ち合わせないといけないな。 そのために...あのスーツを本当に君専用のものにしよう。 凛はん。」
凛「了解です。 こっちです。」
美兎「この血圧測るやつみたいな機械はなんなんですか?」
楓「魔力の指向性を調べるやつやな。 その指向性に合わせてスーツの方を調整すればスーツとこっちの魔力のかみ合わせが良くなるって寸法やね。」
美兎「なるほど...」
凛「測るのに7分位かかるからその間にあのスーツの軽い解説をするね。」
美兎「助かります。」
あの制服みたいなスーツは正式名称"弐式魔力装具"。美兎ちゃんや楓ちゃんみたいな生まれつき魔力が溢れてるような子専用に作られた特殊な...鎧みたいなものだね。
溢れてる魔力を拾って動いてるから一般の人じゃ使えないから...適合できる子を探してお願いしてる訳だね。
このスーツは亜人の人たちに協力してもらって魔力をパワーに変換する権能をコピーしてるから、若干動物の意匠も入ってるわけだね。
このスーツをパーツ分けするとインカムと上着とロングブーツ。オプションで武器を持つ感じ。
インカムで溢れた魔力を拾って、上着とロングブーツで体を保護&強化。余った魔力を武器に回してドカン!って感じだね。カチューシャみたいでインカムがやけにでかいなって思ったと思うけど、魔力を集めるアンテナも兼ねてるからそこはご理解お願い!
凛「説明は以上かな。 質問ある?」
美兎「一つだけ... 私のスーツに入ってる動物の意匠ってやっぱり...兎なんですか?」
凛「そうだね。 偶然だけど美兎ちゃんの名前にも合っててびっくりだよ。」
楓「ちなみに私は狼やな。 かっこいいやろ?」
美兎「かっこいいですけど... あの銃で殴ってたのはなんなんですか?」
楓「あれはガン・カタっていう体術やな。 あとでたっぷり見せたるから期待しといて。」
美兎「ガン・カタ...そんなものもあるんですね。」
楓「でも...初めて装着する子の武装が拳ってどうなん? シンプルなのは良いけど何もわかってない子に近接戦だけは危険すぎない?」
凛「それに関してはあのスーツ用に調整が間に合ったのがアレだけで...」
楓「使いまわししたら性能が大きく落ちるのも困りどころやな。」
キッチンタイマーのような機械音が鳴り響く。
凛「終わったみたいですね。 腕抜いていいですよ~。」
美兎「あっはい。」
楓「ふぃ~」
凛「調整には少し時間がかかるから...食堂に行ってきたらどうです? 関係者ならタダですし。」
楓「おっ、そうやな。 行こか、美兎ちゃん。」
美兎「うん!」
美兎「...食堂というか、喫茶店?」
楓「まぁ...そうだよね。 とりあえず入ろっか。」
戌亥「進捗あったら教えてな。」
白衣の人「了解。 お代は...いらないんだった。 じゃね!」
戌亥「まいど~!」
美兎「総司令さん!?」
楓「邪魔するで~。 さっきの人は?」
戌亥「鑑識の人だね。 昨日の魔力に呑まれた奴の調査の進捗とか色々聞いていたわけやな。」
楓「はえ~。 というかココの食堂お代もらってた時あったん?」
戌亥「...いや、無い。けど個人で喫茶店やってたときからの常連だからってのもあるわな。 良い...客やね。」
美兎「色々あるんですね... というか、喫茶店の店主からなんで総司令官になっちゃったんですか?」
戌亥「知人に頼まれてな。 だから"名ばかり"の司令官なんやな。」
美兎「へぇ... じゃあ、飲み物とか頼んでいいですか?」
戌亥「ええで。」
楓「じゃ私クリームソーダとマンゴーパフェ。」
美兎「...メロンソーダとチーズケーキお願いします。」
戌亥「あいよ。 ちょっとまっててな。今は生憎私しか厨房に入れないから。」
楓「やっぱり雰囲気いいなぁ!この店。」
美兎「なんか...言い表せないんですけど、好きです。」
楓「...ココを見た時に戦う理由を決めたんだよな。 このお店みたいに...思い出が染み付いた場所はたくさんある。誰の思い出だろうとも...その尊さは変わらないから。綺麗なものを...守りたいって。」
美兎「綺麗なものを守りたい...誰が決意しようとも根幹にはそれがあるのかもしれませんね。」
楓「...???」
美兎「気にしないでいいですよ。 それに。」
戌亥「先に飲み物だけ持ってきたで。 なんか、話割ったみたいですまんな。」
楓「大丈夫です。 いやー、これだよね!」
美兎「...美味しそう。」
戌亥「市販のものは一切使わん主義だからな。普通のメロンソーダと違うと思うがそれも含めて趣だ。味わって飲んでもろて。」
飲み物も、ケーキも味わって。
すごく落ち着くお店だった。
凛「あ、いたいた! スーツの調整おわったよ~! ほら、美兎ちゃんの分も。」
楓「先輩いつもありがと! あとは...訓練ルームで勝手にやっててええか?」
凛「大丈夫。 あ~お腹すいた~!」
美兎「おわっと。」
楓「それは晴れて美兎ちゃん専用だ。ちゃんと持っとき。 早速...練習しに行こうか。」
迷路のような基地を楓ちゃんに付いていき、大きな自動ドアに入る。
すると...
美兎「広い!」
楓「広くなきゃやってらんねぇからね。 早速...模擬戦用のロボットを呼び出すか。」
美兎「ロボット。」
楓「硬いし色々設定できるから便利やろ? というか...先に着ないとな。」
美兎「そうですね。」
こんどは落ち着いて着れる。
落ち着いて着てみると...意外と着心地がいい。心做しか初めて着たときよりも少し余裕があって動きやすい気がする。 しっかり落ち着いて着たからなのか...凛先輩が調整してくれたからかはわからないけど。
コネクタを全て差し、左腕のコンソールを起動する。
システム音「「Directional authentication completed.」」
私のスーツはマゼンタに、カエデちゃんのスーツはオレンジに光る。
美兎「あれ...音声が違う...?」
楓「初回起動じゃない...からかな? 私と同じ音声だ。」
美兎「不思議...」
楓「よし。 こっちの操作盤でロボット出すから...まずは一人で戦ってみて。できるところはアドバイスするから。」
美兎「了解。」
楓「行くぞー!」
美兎「はい!」
灰色の壁が開き箱を組み合わせたような見た目の二足歩行のロボットが姿を見せる。
その右腕には...銃らしきものが付いている。
楓「ペイント弾だからって安心しないでしっかり避けなよ! そうじゃなきゃ訓練の意味がないからな!」
美兎「わかってます!」
兎の力なのかよくわからないけど...目が冴えてる。 足も速くなった気がする。
弾を...避けられる気がする!
楓「来るでー。」
スターターピストルの比にならない重苦しい銃声が響く。
美兎「...!!! うわぁ!!!」
予想の数倍弾速が速い。 思わずジャンプして避けてしまった。
楓「空中にいれば良い的だ! はよ動きな!」
美兎「!!! 天井!」
天井を蹴って2発目を躱す。 そのまま壁に足をつき、自分にできると思い込ませて壁を走る。
楓「避けるだけじゃなくて攻撃も!」
美兎「攻撃... 攻撃... そこだ!」
首の裏に停止ボタンのようなものを見つける。
壁を駆け、ロボットの後ろに回り込んで壁を蹴り、そのボタンに手を伸ばす...
が、避けられた。 また顔面から着地しそうになる。
楓「美兎ちゃん!?」
美兎「まだまだ!」
手をついてロンダートのように着地する。
美兎「出来ることがわからないなら、出来ないようなことをやって確かめるだけ!」
無理だって思ってるから動けない。 限界には...思い込みじゃ届かない。
地面を蹴ってロボットへ近づく。 気づかれてるのか、すでに補足されていたのか。
すぐに弾を装填してこちらに放ってくる。
すぐに横へ駆け、弾を避け、天井に届くまで跳ぶ。
天井を蹴って、ロボットの頭上からボタンのようなものを全力で殴る。
美兎「やった...」
楓「やるじゃん。 手に余る力を余らせない努力、すごかったで。」
美兎「へへへ... ありがと。」
楓「じゃ、次、近接戦仕様のロボ行こうか。」
美兎「...うん。 お願い!」