楓「だいぶ付いて来られるようになったな! ペース上げるぞ!」
美兎「はい!」
赤熱化した銃身が精巧な体術を持って次々と繰り出される。
グローブでいなしつつ…カウンターの機を伺う。
ロボットとの模擬戦を数回した後、楓ちゃんとの実戦訓練へと移ったのだが…思った通りスパルタだ。 2人で連携して制圧する上で相手の動きを熟知し合わせるのは最も重要…それを手合わせで学ぶというのも理にかなってる…でもね。 手加減ってモノを知って欲しいかなぁ… こっちは戦闘経験なんて授業でやった剣道くらい。それも非常に浅いものだから… 本気で体術に乗った赤熱化した鈍器を振られるなんてたまったもんじゃない。
ロボットとの模擬戦で得たばかりの戦闘経験でやっと避けられる。でもそれもスーツに依存したものだ。生身同士なら…勝ち目はない。けど、実践もスーツを用いるんだ。 スーツを使いこなせる方が勝つ。 なら…道具に頼ろうと最終的に強ければいい!
コンソールに106でEnter!
システム音「Burst mode complete.」
美兎「リボルバーショット!」
魔力が充填されたらしい光る拳を撃鉄のように撃ち抜く。
楓ちゃんの拳銃と正面衝突。
楓「早速…使いこなしてんな!」
美兎「マニュアルを読むのは得意だからね!」
残弾はあと15発。 多いが…油断は禁物。確実にいなして機を伺う。
楓「近付けたら不味いな。 なら…」
システム音「Terminal change From barrel to magazine.」
間合いを取ったと思えば銃撃に攻撃が切り替わった。
放たれる銃弾は左右合計4発。
一気に4発消費するのもまずい。
2発づつ弾く!
同じ弾道上に2発づつ。難しい話でもない!
美兎「リボルバーショット!」
2発ごとはじき飛ばす。
もう1回!
美兎「リボルバーショット!!」
さすがに動きすぎた。キツい…
でも、道は開けた。 距離を詰められる…!
楓「…ふっ。 かかったな!」
美兎「え?」
システム音「Elixir charge.」
楓「ウルフェンスマッシュ!」
軽率に肉薄したばかりに、魔力が充填された脚による回し蹴りを顔面にモロに食らう。
吹き飛ばされて壁に激突した。
美兎「いてて… 酷いですよ楓ちゃん…」
楓「あっ…ごめんごめん… ほら。 手、掴みな。」
美兎「ありがとうございます。」
戌亥「だいぶ形にはなってきたが…新人いびりもええ所やな。」
楓「戌亥さん!? いや…すいません…」
戌亥「まぁええよ。 加減が苦手なのもあると思うしな。 まぁ本題はそこじゃないんよ。 その装具たちを作った人。 その人があんたらと話をしたいと言うからな。」
美兎「作った…人?」
加賀美「お初にお目にかかります。 加賀美インダストリアルの代表取締役の、加賀美ハヤトと申します。」
美兎・楓「マジですか?」
美兎「まさかこれを作ったのがあの大企業だとは思いもしませんでしたよ…」
加賀美「恐縮です。」
楓「でも…そんなお偉いさんがなんでわざわざ?」
加賀美「それは…さっき戌亥さんが言った通り、あの魔力装具は私自身が主軸となって設計したものです。 ですが…設計においても運用においても、軍事生産品としては全く試みのない部分も多くて…今貴方達に使っていただいてるものは名前にある通り改良した2代目と言うべき代物なんですが…まだ至らない部分も多く。 だからこそ実際に使っている貴方達にもっとどうして欲しいとか。聞くことが出来ればより良いものが作れると思いまして。」
美兎「そもそも加賀美インダストリアルって軍事生産品も作っているんですか? おもちゃとかでしか名前を聞いたことがなくて…」
加賀美「いえ、仰る通り我社は主におもちゃなどを生産している会社なのですが…その中で行っていた試みに戌亥さんが目をつけられて。 今に至るんです。」
美兎「試み?」
加賀美「それは… 変身ヒーローのスーツを本当にパワードスーツとして実現できないか、というものなんです。」
楓「…しれっと凄いことしてへん? それ。 おもちゃメーカーがするもんとちゃうと思うけど。」
加賀美「目的としてはパワードスーツと言っても体の補助を目的としてて…生まれつき骨や筋肉などが弱いお子さん向けとして開発をしていたんですね。」
美兎「素晴らしいじゃないですか!」
加賀美「ええ。 今医療現場の方に掛け合って病院などで使っていただけないか検討していただいてるところなんです。」
楓「その全身を別の動力で補助するっていう技術が私たちのスーツにも応用されている訳か。」
加賀美「そうですそうです! ですが、先述のものとは出力も補助の仕方も違って… 亜人の方々と協力してやっと完成できたんですが…」
美兎「??? 何か問題でもあったんですか?」
加賀美「現状だと魔力を単純なエネルギーとして変換していく機構の精度がまだまだ甘くて… 貴方達も、体の力の入れ方に合わない程にスーツが補助して最終的にとんでもない動きをしてしまうとか…ありませんでした?」
美兎「ありました! 走ろうと思って地面をけったら高く跳躍してしまったとか…」
加賀美「まさにそれです! だから…人が力をどう入れるかに応じた補助の出力調整をする物を現在設計中なんです。 その為に実践のデータを取りに来たのも今回の目的の1つですし…」
楓「ネットで送れへんの? それ。」
加賀美「秘匿情報ですので…傍受されてデータを複製されたら魔力犯罪を加速させる結果となってしまいますし。」
楓「それもそうやな。 というか、その言い方。まだ目的がありそうやな。」
加賀美「ええ。 今回は試作品の武器を色々と持ってきてて…」
警告音が鳴り響く。
美兎「!?」
楓「出たか。 行くで美兎ちゃん!」
美兎「また…あの怪物が!?」
凛「渋谷ブロックに魔力被侵食者出現。 WolfとRabbitは現場に!」
美兎・楓「了解!」
美兎「こっから渋谷って… どうやって行くんですか?」
楓「やっとあのサイドカーが使えるんか。」
美兎「サイドカー? まさか…バイク?」
楓「そそ。 免許はちゃんとある。安心して。」
楓「ほれ! ヘルメット。 一旦インカム外して被りな。それの中にもインカムは入ってる。コネクタ差せばすぐ使える。」
美兎「ありがとうございます…」
楓「掴まっとけよ!」
凛「Duke390s、発進どうぞ!」
楓「発進!」
美兎「うわぁぁあ!」
地上へと繋がるスロープをバイクは一気に駆け上がる。
速すぎる…けど、運転が荒い気はしない。
美兎「うっ、まぶし。」
楓「ずっと地下にいたからね。 さ、飛ばすぞ!」
爆走の2文字が似合う走りだけど… いつも乗り物酔いするのに何故かしない。 不思議…
楓「着いた! 行くで!」
美兎「はい!」
怪物は目の前に見える。
昨日戦った怪物とはまた違って… なにか殻のようなものを纏っている。
楓「チッ。 また相性悪そうな奴だ。 美兎ちゃんならもっとだな。」
美兎「…硬そうですもんね。」
楓「まぁ…やるしかないがな!」
美兎「ええ!」
コンソールに106でEnter。
システム音「Burst mode complete.」
真っ直ぐ走って肉薄する。
美兎「リボルバーショット!」
殻に向かって拳を撃鉄のように打ち込む…しかし。
美兎「…ビクともしない!?」
楓「どきな!」
左にステップを踏むと… 高速回転した爪のようなものが次々と打ち込まれる。
が、全て弾かれていく。
楓「貫通弾でも効かないか!」
凛「装甲と装甲の隙間を狙って!」
楓「それが出来たら苦労しないんだけどね! やるだけやる!」
美兎「打つ手が…」
加賀美「月ノさん! 今から送るコンテナの中身! 使ってください! 凛さんが貴方の指向に急ピッチで合わせてくれました!」
美兎「コンテナ…!」
空に光の反射が見えた。
そのコンテナの外装が空中でパージされる。
加賀美「対戦車刀…コードネームはレープスです!」
空を裂き地面に突き刺さった剣を手に握る。
システム音「Terminal change From gloves to anti-tank sword.」
刀身に走るラインが光り輝く。
美兎「これで…戦える!」
楓「チッ! 装甲がブ厚い癖に速い! すぐに距離を詰めてくる! 蹴りは…あの様子だ。効かないものとして見るか。」
美兎「楓ちゃん! どいてください!」
楓「…!?」
美兎「らぁ!!」
硬い装甲を剣がいとも容易く切り裂く。
楓「すごいな… 美兎ちゃん、腰の後ろ! その装甲の下に高熱源体がある! 恐らく…魔力晶核!」
美兎「なにか分かりませんけど…とりあえずそれを壊せば良いんですね!」
素早く駆けて怪物の後ろに回り込む。 彼が振り向く前に。
下の人間を切らないように…ここで!
美兎「オリオンブレイド!!!」
切断した装甲の切り口から赤い結晶片が漏れるのが見えた。
美兎「これで…この人は助かるんでしょうか。」
楓「助からない。」
美兎「!?」
楓「1度魔力で蝕まれたら…救う術は無い。 ウン百年前の技術でもだ。 体が魔力で変質して怪物と果てる。 それが…魔力を悪用しようとして逆に魔力に体を使われた者の末路だ。」
美兎「因果応報…と、言うべきなんでしょうね。本来なら。」
楓「でも…この人自身が魔力を乱用した訳じゃない可能性もある。救う術があるのなら…救ってから根掘り葉掘り聞く方が後味も悪くないがな。」
美兎「受け入れるしかないんですよね、これは。」
楓「…そうだね。」