リリルカ・アーデは無事【ソーマ・ファミリア】から【レイア・ファミリア】へと
リリもフィアナもレイアも、社会に属する、オラリオの一市民だ。他者との関わりは避けられない。リリのための【レイア・ファミリア】主従の動きは、小さな波紋となって方々に影響を及ぼしたのだ。
言うなれば後日談。これを語らずして、一件の幕は引けたなどとは言えない。
最も大きな動きがあったのは【ソーマ・ファミリア】だ。一連の騒動により主神ソーマも考えを改めるところがあったらしく、リリの改宗完了後、派閥の浄化に乗り出したのである。
まず団長のザニス・ルストラを【ファミリア】が所有する牢へと放り込み、加えて団長の任と権限を取り上げた。後任は彼と並ぶレベル2のドワーフ、チャンドラ・イヒトなる人物が選出されたとのこと。
一般団員については、その多くが神酒に酔い痴れいていたため、酔いが抜けるまで牢へと閉じ込め、正気を取り戻させた。ソーマが「神酒を今後作るつもりはない」と明言するや、激高する者もいたが、多くは神酒の恐怖を知るが故に黙って頷く。次いで『派閥に残留するか否か』を問うと、その足で本拠を飛び出していく者と、残る者に分かれた。後者は、神酒に酔っている間に行ってしまった横暴に罪悪感を覚えていたり、そのことの贖罪をしたいのだという。
当然、
成人した団員の処遇については、ザニスのような悪人でもなければ、その自由意思に任せれば良い。しかし、判断能力の低い子供はそうもいかない。そして、この少年少女たちの処遇が極めて難しい問題だった。
親が【ソーマ・ファミリア】に所属していたために、生誕した瞬間から【ソーマ・ファミリア】に加入することを決定づけられた子供たち。リリルカ・アーデと同じ立場の彼らは、彼女と同種の思考を育んでいた。
大人は信用すべきではない。【ソーマ・ファミリア】は一刻も早く脱するべき地獄。
『ファミリアに残るか否か』を問われれば、当然出ていくことを選びたい。それが本心ではあるが、行く宛がないことも確かだ。
『お父さんもお母さんも嫌い。もう叩かれたくない』
リリのように既に両親を亡くしている子供もいるが、そうでない子供もいる。両親が存命であるからといって、幸福と言い切れないところが、この問題を難しくしている。
神酒に酔った親が、子に行った乱雑な扱い。これによって親子の関係は破綻していた。子にとって親は恐怖の対象でしかない。正気を取り戻した親にとっては、我が子から向けられる恐怖に満ち満ちた視線が何にも勝る苦痛だが、受け入れるべき罰でもある。
とはいえ、親に罰を与えるためだけに、嫌がる子供を親元に縛り付けることは余りにも無慈悲だ。親に罰を与えることよりも、子に救いを与えることの方が何倍も重要だ。
そこで救いの手を差し伸べたのが、
同郷かつ
『眷属の候補として、手元に置いてあげてもらえないかしら?』
ヘファイストスもデメテルも、名高き
レイアの『子供たちを救いたい』という願いは清廉だが、無理に押し付ければ我儘に零落する。気が遠くなるほどの歳月を生きたレイアが、友神に我儘を強いるはずがない。
彼女は、少年少女の身元を引き受ける明確なメリットを提示した。
『子供はあなたたちから衣・食・住を提供してもらう。あなたたちは、小さな労働力が手に入る。
働く子供に何かの素養を見出せたのなら【
引き取った幼子の全員に眷属とするほどの魅力が無かったとしても、労働力を得られるのだから損はない。それどころか、金の雛鳥が一人でも混ざり込んでいれば大儲けだ。
少々賭けの要素はあるが悪くない取引を、二柱の女神は承諾した。
『もう二日間休んでいない。眠らせてくれ』
『「もう」ではなく、「まだ」でしょう? キリキリ働きなさい』
レイアが最も活躍した場面は子供たちの処遇の決定だが、それ以外の場面でも活躍著しい。連日連夜【ソーマ・ファミリア】の
そしてこれら全ての動きを、
査定所の担当官である、禿頭の職員。【レイア・ファミリア】の担当受付嬢エイナ・チュール。彼と彼女の二人が、愛すべき小人幼女のために立ち上がったことに端を発する。
フィアナとリリの絡みに日々癒されていた他の職員たちまでもが触発され、「【ソーマ・ファミリア】の問題を放置するのであれば、職員一同ボイコットする」と上層部
そもそも【ソーマ・ファミリア】団員の粗暴な振る舞いには、市民からも苦情が寄せられ、しばしば問題視されていた。苦情を受け付ける職員たちからすれば、【ソーマ・ファミリア】は胃痛の種だ、好く理由がない。溜まりに溜まったフラストレーションは遂に限界を迎え、過激な運動に走らせたのである。
上層部の考えが何であれ、現場の人間がいなくなれば、ギルドという大組織も機能が停止する。【ファミリア】間の問題には首を突っ込まないことを基本としていようと、重い腰を上げないわけにはいかなかった。
ギルドとレイアの尽力。何よりソーマが犠牲となったおかげで、リリが改宗してから僅か半月という驚異的な速度で派閥の膿が吐き出された。
中堅規模とは言え、最高級の酒の醸造を可能とする【ソーマ・ファミリア】は、酒好きのドワーフや神の間では知名度が高い。彼らを絶望の淵に叩き落す「神酒はもう製造しない」宣言も手伝い、かの【ファミリア】が新たなスタートを切ったことは、情報誌にも記載され、市井に賑わいを供する。
「色々あって遅くなっちゃったけど! リリの【レイア・ファミリア】加入を祝して! かんぱぁぁあああいっ!!!」
「乾杯」とフィアナの音頭に続く二つの声。
団員が一人増えた、【レイア・ファミリア】の主神と、新入り眷属が果実水入りのコップをぶつけ合う。
場所は【ファミリア】御用達の酒場『豊穣の女主人』。真昼間から騒ぐのは気が引けたため、夕日が落ちてからリリの歓迎パーティーが開催された。
【ファミリア】の財政は厳しいながらも、せっかくの祝い事の席なのだから大奮発した結果、三人が囲う卓上には様々な料理が置かれている。大皿から小皿へと取り分けた美食に、それぞれが舌鼓を打つ。
家族と一緒に食事を摂る。ただそれだけのありふれた日常。その大切さを以て
「【ソーマ・ファミリア】から抜けて、誰に虐げられることもなくて、後ろ暗い思いをせずに美味しいご飯を食べられるなんて……上手く行き過ぎで今でもちょっと信じられないです」
多くの人間が当たり前に享受している日常も、リリにとっては宿願だ。しかし地獄が生まれてから続いたために、激変した環境に現実感が湧かないのだろう。
「トントン拍子に事が進みましたけど、どこからどこまでがお二人の計画だったのですか?」
改宗の手続きは、【
肝心な部分に生じる、情報の不確実性は厭うべきものだ。確実性を得られる手法があるのならば飛びつくが、所詮はない物ねだり。存在しないものは無いと割り切り、臨機応変な動きを心掛けるしかない。
細かい部分を詰められないのだから、リリの救出劇について事前に定められたものは大筋だ。『計画』の呼び名も、言うなれば張子の虎。それを開陳するとなると、成功した誇らしさよりも気恥ずかしさが優る。
フィアナとレイアの視線が交錯し、「どうぞどうぞ」と説明の役を譲り合う。勝者はフィアナ。レイアが会話のバトンを
「事後処理については完全に予定外よ。ソーマが改心して派閥の浄化に乗り出すなんて思いもしなかったもの。
私たちが見越していたのは、リリちゃんをうちの【ファミリア】に移籍させるまでね」
具体的には、ザニスを陥落させる手順だ。
ソーマはリリの移籍に必須の神物だが、伝え聞く神格からして要求を突き付けても手痛いしっぺ返しを受ける可能性は低いと踏んだ。対するザニスは、人を傷つけ、虐げることを何とも思わない悪党である。リリの【レイア・ファミリア】への改宗が叶ったとしても、彼を放置しておけば、何をされるか分かったものではない。
しかし、彼はレベル2。
だから、頭を使った。鉄の刃で切り結ぶ決戦ではなく、舌戦を持ちかけた。殴り合いならば【ステイタス】の優劣が勝敗に直結するが、口喧嘩はそうではない。
「ザニスを負かす。これを果たしたのなら、残る仕事は一つだけ。ソーマに眷属の移籍を頼む。こっちについては特に心配することも無かったわ」
神から与えられた試練を、
悪神も善神も、男神も女神も、下界の子供たちが試練を乗り越え成長することを期待しているのだ。本気で期待しているから、見事応えてみせた勇者に報酬を与えることに否やはない。
フィアナはこの関係性を逆手に取った。与えられた試練を乗り越えた末に報酬を賜るのではなく、要求を突き付けてからそれに相応しい試練を寄越せと宣ったのである。
傲岸不遜な挑戦を、しかしソーマは無視できない。神の一員だからこそ、試練に挑む子供の輝きと、その先を見てみたいと願ってしまう。
会話の流れから、試練の内容が精神力だけで解決できるものとなったことは僥倖だ。さしものレイアとフィアナのタッグと言えど、【ソーマ・ファミリア】に乗り込む前から、試練を特定の内容に落とし込むために会話を誘導することまでは煮詰められなかった。
だが、些末なことだ。ソーマという神の性質上、無理難題の試練を押し付けはしない。極端に難易度が高い場合も、期限には日数を設けるだろう。少なくとも、【ソーマ・ファミリア】本拠からの帰路の安全性は確約される。
ならば、上々だろう。後手に回ろうと、時間さえ持てたのなら、大概の課題は解決できる。そう豪語するだけの人脈と神脈が二人にはあった。
「他に何か訊きたいことはある? 今だったらフィアナちゃんが何でも答えてくれるわ」
「えっ、何それ聞いてない」
「私が今、話し手をやったんだから、次はフィアナちゃんの番」
「じゃあもう一つだけ。ザニス様を言い負かすときに色々とビッグネームが飛び出したことによる危険はないのですか?」
闇派閥の悪夢【疾風】と、歓楽街の支配者【イシュタル・ファミリア】。
個人と組織という違いこそあれ、どちらもが都市有数の強者である。しかも、前者は元賞金首であり、後者は腹が真っ黒に染まっている。利用するにも、ちょっかいを出すにも危険すぎる相手であるというリリの認識は尤もだ。
とはいえ、本当に危険であるのならフィアナも手を出してはいない。危険が大きいように見えて、その実、極小であると判断した理由を今更ながらにリリにも伝える。
「件の冒険者は、もう何年も前に失踪してる。私の話をザニスが信じた理由は、あいつの胸の中にしかないんだから、誰かが同じ話を聞いたって鼻で笑うだけよ。ザニスが最初、真面に取り合わなかったようにね」
ミアに渡した手紙――【疾風】の生存と、彼女との縁故を示唆する唯一の物証――も回収し、ビリビリに破いてから焼き捨てた。証拠がない以上、【疾風】の名を用いた脅迫は『幼女の妄言』の域を出ない。
「派閥の方だって、私たちに手を出しやしないわ」
縁も
真っ黒に染まった腹を探られたところで、【イシュタル・ファミリア】の性格からして強気に突っぱねるだろう。損害を受けるような下手は打つまい。
しかし、煩わしい。手間がかかる。面倒だ。
団員が小人族の女児二人しかいない零細ファミリアでは、万が一にも都市有数の大派閥の脅威にはならない。したがって、デメリットを許容してまで、潰すほどの価値が【レイア・ファミリア】にはない。
「【
【レイア・ファミリア】の団員は
原作から引っ張ってくるにしても、ちょっと人数が足りないかなーってのが正直な感想です。
【レイア・ファミリア】に新加入する幼女はどんな幼女が良いか
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