英雄フィアナの迷宮探索    作:雑魚王

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 短いけど投稿です。
 まあ導入部分だし、短くてもいいよね?


第二章 闇の落とし子
十四話 第四階層


 女神(レイア)は積極的に【ソーマ・ファミリア】の掃除に関わっていったが、眷属たちは別だ。フィアナとリリには、そのための知識も経験もない。

 素人に出しゃばる幕はなく、蚊帳の外に置かれた二人は、世間の喧騒を他所に地道にダンジョンに潜り続けた。そして、リリの歓迎会を行った翌日、【レイア・ファミリア】は晴れて四階層へと迷宮探索の範囲を広げたのである。

 

「はい、とーちゃく! ここが第四階層……あれね、空気とかがたぶんきっとおそらくこれまでとはかなり違うわ。ゴクリンコ」

 

「適当なことを言ってないで慎重に行きましょうねー」

 

 最弱のモンスターとして名高いゴブリンとコボルトが出現する階層は、この四階層が最後だ。そのことから、この階層の突破を、新人冒険者脱却の指標と見ることも出来る。

 然らば、一つの関門に挑む者として、気合も入ろうというものだ。冗談を飛ばしつつも、油断は一切ない。普段通りの掛け合いを介し、程よく肩の力が抜けた小人コンビはゆっくりと階層の探索を開始する。

 

 地図(マップ)を購入し、『正規ルート』と呼ばれる次階層への道順を把握しているが、敢えてそこからは外れる。

 進出したばかりの階層であるが故に、フィアナにとっては『未知』が溢れている。一寸先は闇とはこのことである。未知を既知に換えない限り、どこに落とし穴が隠れているか分かったものではない。

 たった二人のパーティであるが、彼女はパーティのリーダーなのだ。サポーターとして四階層より先に進んだこともあるという、リリの知識にばかり頼るわけにはいかない。

 

 非力な小人族だからそれぞれに役割を振り、それに殉じればよいなど惰弱の極み。他の種族に劣るのだから、誰よりも貪欲に飢えなければならないのだ。

 技を磨く。知識を得る。道具を作る。経験を重ねる。作戦を立てる。連携能力を高める。

 それでもまだ全く足りない。可能・不可能の話ではなく、全てに手を伸ばし手中に収めると豪語する気概無くして何を成せる。

 負け犬の遠吠えという諺があるが、ならば吼えることさえできなくなった人間は犬以下だろう。

 

「ちぇいあああ!」

 

 気合一閃。会敵したゴブリンの首を刎ね飛ばす。

 休む間もなく、倒れ込むモンスターの亡骸を踏み越えて迫る影は、ダンジョン・リザードだ。唾を飛ばしながら大きく開いた咢から、フィアナは転がって逃れる。

 

「――っ。フィアナ様、今です!」

 

 前衛がモンスターの正面から退いたおかげで、後衛(リリ)の射線が通る。

 すかさず引いたボウガンの弦が、短矢を吐き出した。

 戦場は狭い通路で、的は機動力に優れない蜥蜴だ。吸い込まれるように、ダンジョン・リザードの体を短矢が穿つ。

 痛みに呻いたその隙を、小人の二人組(リトル・タッグ)は逃さない。

 

「まっかせなさーっい!!」

 

 「キラリン!」と目を輝かせ、フィアナは手斧を叩きつけた。

 飛び散る赤血。重厚な刃は、大蜥蜴の背中から胴部の半ばまで届き、背骨を寸断している。

 ダンジョン・リザードは呼吸こそ続けているが、致命傷だ。数分と経たずに息を引き取ることだろう。

 

「よいしょっと」

 

 無駄にモンスターを苦しめて悦に浸る嗜虐趣味者(サディスト)ではないため、抵抗する余力のない蜥蜴の頭を割り、止めを刺す。

 リリから魔物の解体及び魔石の摘出方法について教わりながら作業を完了させれば、探索の再開だ。

 四階層に出現するモンスターとは、一~三階層でも戦える。より深い分四階層の個体が強いとされるが、その差は微々たるもの。これまでの道のりで培った経験があれば、何てことはない。

 

「そう言えば、リリって最大で何階層まで潜ったことあるの?」

 

「確か八階層ですね。六階層では『フロッグ・シューター』と『ウォーシャドウ』、七階層では『キラーアント』って具合に、新モンスターが続々と出てくるので肝が冷えました」

 

 『フロッグ・シューター』は舌を伸ばした打撃攻撃が得意技だ。初の遠距離攻撃を持つモンスターのため、新人冒険者は軒並み対応に苦慮する。

 『ウォーシャドウ』は真っ黒な人影の如き外見をしている。耐久こそ低いが、攻撃力と機動力に秀でた白兵戦士だ。

 『キラーアント』は鎧のような外殻による防御力を自慢とする、蟻型モンスターである。ただし、最大の脅威は防御力ではなく、『瀕死状態に陥ると仲間を呼び寄せる』習性にある。下手に手古摺れば、次から次へと仲間を呼ばれてしまい、巨大なモンスターの津波と化し、犠牲となった冒険者は少なくない。冠された異名は『新米殺し』。

 

 いずれも現在のフィアナたちには、荷が勝つ難敵だ。ただ漫然と【ステイタス】を高めるだけではなく、具体的な対策も練っていく必要があるだろう。

 

「活動する階層が拡がっていけば、その三種だけじゃなくて、もっと多くのモンスターと戦うことになるわけだし……目の前のことばっかり見ているわけにはいかないか。

 『オーク』に『ハード・アーマード』、そして『インファント・ドラゴン』。課題は山積みだけど、戦う(その)ときが楽しみね!」

 

「えぇ……『インファント・ドラゴン』は出現数が少ないからスルー出来ますよ? わざわざ手強い竜種に挑むんですか?」

 

「そりゃあそうよ。竜に挑むは騎士の誉れだもの」

 

「私たちは冒険者とサポーターです。騎士じゃありません!」

 

「でも、竜素材を使った装備とか使いたいじゃない。ドラゴン・ウェポンよ、ドラゴン・ウェポン。浪漫に満ちてるわぁ」

 

 頑強な鱗。強靭な生命力。逞しい剛力に、射程の広いブレス。

 能力が全般的に高い竜種に隙は無く、数あるモンスターの中でも最強と名高い。

 その最強を下し、装備に変えることで、人類も竜種(最強)の力を振るうことが叶う。

 想像するだに心が躍る。

 いずれ黒竜を乗りこなすと豪語するフィアナだが、竜の鎧を身に纏い、竜の武器を扱うことへの憧憬の念は少なからず持っていた。

 

「今のフィアナ様、娯楽に耽る神様たちおんなじ顔してます」

 

「はぁ!? あのダメ男たちと私のご尊顔が同じってそんなことあるわけないでしょーが! 不敬罪よ、侮辱罪よ!」

 

「その発言がとんでもない侮辱と不敬だと思いますよ。地上ではくれぐれも、その調子で話さないようにしてください」

 

 新階層とは思えぬ、緩やかな探索活動。よもやこの平和が嵐の前触れに過ぎず、本当の動乱が地上にて待ち受けているとは、二人は知る由もなかった。

 

 

 

 

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