トントン拍子に話が付いたことで、その場を辞するエイナ。仲介という役割を果たせのか、と首を捻る彼女を見送ると、フィアナたちは上階の宿泊部屋へと移動した。神と子が
「じゃあ上だけでいいから、服を脱いでベッドに寝てくれる? 恩恵を刻むのは背中だから、うつ伏せにね」
天界から下界に降りた神は、下界という
主神たる神の血を、眷属に与え、【
【
「初めてだから、少し緊張するわね。……じゃあ、行くわよ」
「覚悟はいいか、私は出来てる!! ……うぴゃ!?」
フィアナは格好つけて【神の恩恵】を受け入れる構えを見せたが、背筋を伝う細指の感触に悲鳴を上げた。服を脱いだ肌寒さもあり、ブルリと体を震わせる。
「はい、もう終わりよ。
ポンと背中を叩くことを、一仕事を終えた合図とし、レイアは【神の恩恵】を写し取った羊皮紙を手渡す。
刻まれることも、見ることも、フィアナにとっては初めての【神の恩恵】だ。翻訳済みとは言え、読み取り方に迷う。数度視線が上下に流れてから、漸く正しく理解し、今一度しっかりと目を通した。
【フィアナ・グローリー】
Lv1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【宝石魔術】
・魔力を込めた、宝石などの鉱石を触媒に発動。
・込めた魔力の多寡により威力増減。
・触媒に宿る思念により効果変動。
【 】
《スキル》
「ふぉおおおおお!! 魔法、魔法がいきなり発現してる!」
フィアナの【ステイタス】は、【神の恩恵】を刻んだ直後の初期段階だ。《魔法》を行使する《小人族》の冒険者も探せばいるだろうが、最初から魔法を得ている者は極めて少ないはず。「流石は未来の英雄たる私ね!」と自画自賛し、フィアナは天井知らずに興奮していた。
しかも、彼女の《魔法》はただの《魔法》ではない。【宝石魔術】だ。実にエレガントかつ高貴な響きであり、名前だけでも拍が付くというものだ。
「おめでとう。これは将来有望ね、私も祝福するわ。だけど、【
「分かってるわ。大魔導士キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの代名詞だものね。この千年間、彼以外に保有者の見つからなかった魔法なのだし、露見すれば悪目立ちや顰蹙、嫉妬が確定する。零細ファミリアには過ぎた難事ね」
しかし、それはそれとして嬉しく思う気持ちに嘘はない。過去の英雄と同じ《魔法》を使える興奮といったら、天にも昇る思いだ。まるで時を越えて、かの英雄の後継者に選ばれたと錯覚してしまいそうだ。
叫び出したい気持ちを抑えるが、しかし口端がニマニマと蠢くことまでは抑えきれない。
「【ファミリア】の結成申請と、冒険者登録はギルドで受け付けるって、酒場の店主から聞いたわ。ねえねえ、レイア様。早く行きましょ!」
「もう、そんなに急がないの。ギルドは逃げたりしないわよ?」
上着に袖を通しつつ、靴を履き、主神の手を引く。
フィアナの慌ただしい様子に、レイアも苦笑しつつも満更ではない。部屋を出て、宿屋の主人に挨拶すると、一人と一柱はギルドへと向かう。笑いの絶えない会話を交わす二人は、まるで親子のよう。事実、二人は既にそれだけ互いに信頼を向けていた。
レイアは億年を超える神生から、フィアナの天真爛漫な人柄を見抜き。フィアナは、子供ゆえの鋭い感性を以てして、レイアの母性を甘受する。
レイア/フィアナが主神/眷属で良かった、と彼女たちは自身の幸運を喜んだ。
「はい。【ファミリア】の結成申請と冒険者登録はこれで完了です。お二方ともお疲れさまでした」
ギルドの入り口から建物内部を見渡し、発見したエイナに声を掛け、彼女の指示に従って書類を書き進めたり、説明を拝聴すること二時間強。フィアナはオラリオに来るまでの道中に、レイアはこの一ヶ月の間に予習は済ませていたため、小難しい単語が飛び交う時間を苦も無く突破した。
美人受付嬢の労いを受け取りながら、眷属は冒険の始まりに胸をときめかせ、主神はより広い視野で眷属との今後の生活全般についての計画を立てる。
「つきましては、冒険者の初心者用セットを当ギルドで販売していますが、購入されますか?」
「セットの内訳を教えてもらえる?」
「ではサンプルをお持ちしますね。口頭での説明より、現物を見た方が良いでしょうから」
冒険者となったのはフィアナ。当然、初心者用セットとやらを購入した場合、その使用者はフィアナとなるのだが、エイナが判断を求める相手はレイアであった。
まるで『親の意に反して、勝手に商品を購入しようとする子供』と見られているかのよう。フィアナは子供扱いされている気がしてならない。実際、十三歳の子供なので間違いではないのだが、冒険者の身分を得たのに子供扱いされることは不服だ。
そういう背伸びをしたがる姿勢や、頬をプクリと膨らませる反応が、子供と見られる原因なのだが、本人に自覚はない。
「こちらがセットです。値段は八〇〇〇ヴァリスほどになりますね」
戻って来たエイナが机の上に広げた物は、軽鎧一式とナイフが二振り。そして小さなポーチが一つ。ナイフは戦闘用と解体用とで用途が分かれ、ポーチの中には小道具が詰められていた。
主従はそれぞれ品を手に取り、矯めつ眇めつ眺めていたが、コテンと首を傾げる。
「品質微妙じゃない?」
「ねえ、エイナ。これで8000は取り過ぎよ。5000で売ってる店があってもおかしくないくらいだもの」
大地母神のレイアは豊穣を司る。何を以て豊かとするか、貧しいとするか、その境を見極める確かな審美眼も彼女の領分だ。神の力が封じられた状態であろうと、物の質を吟味する程度は造作もない。
眷属のフィアナは都会に出てきたばかりの田舎者とは言え、故郷では歴戦の木こりである。木を切り倒すためには森に入る必要があるが、森とは人の領域ならざる危険地帯だ。地滑り、倒木、遭難、獣やモンスターとの遭遇など、危険が跋扈する。危険を退けるために入念な準備を重ねる姿勢は、ダンジョンに挑む冒険者のそれにも近しい。ポーチの中身の雑品は、フィアナも故郷の森で使っていた。
その経験から断言できる。冒険者の初心者セットは、明らかに適正価格を
「申し訳ありません! ギルドの上の人がお金にがめつくて……」
エイナが勢いよく頭を下げれば、レイアも「あぁ」と得心がいったように頷く。
ギルド長ロイマン。諸悪の根源は、欲望に溺れた、金の亡者だ。端正な容姿が特徴のエルフとは思えぬほどに、でっぷりと腹の肥えたロイマンは、仲間意識の強い同族からさえも侮蔑される。
その渾名が――
「——ギルドの豚ね」
「なぁに? ギルドって豚を飼ってるの? しかも上層部に置くなんて変わってるわねー」
レイアはオラリオで一ヶ月情報収集をしていたから、ギルドの汚点を知悉する。
だが、フィアナそうではない。故郷からオラリオまでの道中に勉強したとはいえ、学ぶ対象は【
【ギルドの豚】がまさかエルフを指すとは思わない。ゆえに、ナチュラルに鬼畜外道な発言が飛び出す。
「どうせならケバブとかにしない? 串をぶっ刺して、火で炙りながら表面のお肉を削いでいくの。美味しいわよ?」
「ぶっ!? んーっと、ちょっとそれはやめた方がいいかな。お腹壊しそうだし」
「エイナがそう言うならやめるけど……でも、もしやりたくなったら言ってね! 私、お肉焼くのは大の得意だから!」
引き気味に頷くエイナと、事情を知り笑いを噛み殺すレイア。
二人の反応を不思議に思いつつも、フィアナは一旦捨て置いた。彼女の心は目下、迷宮へと向かっているのだ。肉料理は好きだが、今この時はそれ以上に大冒険に心惹かれる。
「もうお昼近いけど、フィアナちゃんは迷宮に行くの?」
「ええ。ちょこっと潜ってすぐ出るつもりだけど。そしたら、レイア様! 一緒にお昼ご飯食べましょ!!」
「楽しみに待ってるわ。でも、場所はどうしようかしら。あの宿屋もいいけど、それとも別のレストランに行く?」
「ん、宿でお願い!」
「はい、それじゃあ冒険頑張ってらっしゃい」
【木こりの手斧】
フィアナ愛用の一振り。大木を切り倒すための刃は分厚く、耐久性に優れる。数多の木々を切り倒してきた古強者。
【レイア・ファミリア】に新加入する幼女はどんな幼女が良いか
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他作品の幼女がゲスト出演
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黙って原作に従い、原作幼女を集める
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読者の考えた幼女が参入
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性別転換薬を製作し、男キャラをTS