リリルカ・アーデは【ソーマ・ファミリア】に所属する、
職業はサポーター、及び冒険者を対象とした盗人。
荷物を持つ、迷宮内のマッピング、ボウガンなどの遠距離武器による後方支援。【ステイタス】を得ても、冒険者として身を立てていく戦闘能力を持てなかった落伍者がサポーターだ。少なくともリリルカ・アーデにとってはそういう認識であったし、彼女の周りの冒険者も同様だ。
ゆえに、彼女は虐げられ、苦痛の日々を送って来た。
彼女の泥棒としての手口は単純だ。サポーターとして冒険者に同行し、迷宮探索の隙を突いて財布や戦果を奪い、逃走。戦闘には使えないが、独特な魔法を用いれば尻尾も掴ませない。
「……あの方がいいですね」
この日も早朝から
金髪碧眼の少女。背丈は小さく、小人族の可能性も多分にあった。だが、だから何だと言うのか。同族だから盗みの対象にしない、などという甘さは擦り切れている。むしろ、同じ小人族であるにも係わらず、冒険者をやっていくだけの才能があることに嫉妬が湧き上がるのだ。
装備こそ絵に描いたような初心者のそれだが、パッチリとした眼にも、背中にも自信が漲っている。特筆すべき才能を持たない筈がない。
「お姉さん、お姉さん。金髪のお姉さん」
ターゲットが小人族の初心者冒険者だとすれば、【ステイタス】もたかが知れる。物を盗み逃走するには易い相手であり、万が一捕まったとしても、そう酷いことにはならない。
無論、対象の冒険者としての能力が低ければ、盗みによって得られる成果も少ない。だが、一日の食事に困るほど貧しさに喘いでいるわけでもなし。少ないリターンでも生活は続けていける。
「なぁに? お姉さんなんて初めて呼ばれて嬉しいし、ちょっとしたお願い事くらいは聞いてあげるわ!」
「お姉さんさえ良かったら、サポーターとして雇っていただけませんか?」
「いいわよ! 今日から新しい階層に入るつもりだったから、サポーターがいるのは助かるもの。今夜も美味しいご飯を食べるために荒稼ぎしてやるわ!」
即断即決。迷う素振りさえ見せない。
サポーターを見下す冒険者が多いとはいえ、無警戒でいられるかは全く別の話だ。
迷宮内は、どこでモンスターが誕生してもおかしくない。転じて、迷宮の全ての空間が戦場となり得る。警戒心を強く保たねば生き残れない場所に、会ったばかりのサポーターを連れていくことには躊躇が生じて然るべきだ。
だからこそ、サポーターには『自分を売り込む能力』が必要となる。売り込むまでもなく了承されたことに、呆気に取られてしまう。
「ほ、本当にいいんですか? リリはあなたの名前を知りませんし、あなたもリリの名前を知りませんよね? それなのに?」
「女に二言はない!!」
長いサポーター人生でも、一度として見たことのないタイプに頭を抱えたくなる。頭に回るべき栄養が全て外見に回ってしまっているのではないか、と疑わざるを得ない。
「先ほど、新階層に行くつもりだと仰ってましたが、何階層か教えてもらってもいいでしょうか?」
「聞いて驚きなさい! 何と――」
――第二階層。フィアナ・グローリーと名乗った少女が進出する階層だ。
自信満々であるから、どれほどの数字が飛び出すかと身構えた、リリルカが拍子抜けする見事な初心者振り。架空の女神と同名であること以外、フィアナはいたって普通の小人の冒険者だった。一週間前に冒険者登録を終え、道具を揃え、第一階層で迷宮内でのモンスターとの戦闘や探索に体を慣らし、二階層に挑む。一週間という所要時間を含めて、ごく一般的な新人冒険者である。
「やあ! たあ! せぇい!!」
戦い方も新人の域を出ない。
モンスターの攻撃を回避する。もしくは左手の盾で受けてから、右手に握った手斧を急所に叩き込む。
それだけだ。《スキル》も《魔法》も一切使われない。
「やった、やったわリリ! コボルトを二体も一気に倒せた!」
最弱のモンスター二体の同時討伐。人によっては冒険者となった初日に挙げられる勝利である。
けれど、フィアナは腐ることがない。人より成長が遅い、人より弱い、その事実を自覚しているだろうに、己の成果を誇る。彼女は冒険を
そんな感情、リリは知らない。ダンジョンを憎むばかりであった彼女にとって、冒険は楽しむものではなかった。
「流石です、フィアナ様!」
荒れる内心とは裏腹に、口は機械的に煽て文句を紡ぐ。
片や穢れを知らぬかのような少女。片や無意識レベルにまで盗みの技が染み付いてしまった落伍者。
同じ小人族なのに、同じ年代なのに、同じ女なのに。どうして、どこでここまで差が付いたのか。『運命』が存在するならば、リリは憎悪を叩きつけたくて仕方なかった。
「んも~、それほどでもある! でも、リリには助けられてるわ。あなたが周囲を見てくれてるから、前のモンスターだけに集中できるんだもの。ほんと、ありがとうね」
これは毒だ。フィアナは真実一部の闇も抱えていない。彼女が伝える感謝は純度百パーセントであり、誠意のみが宿る。
打算も虚偽も混ざらない。そもそもそういった思考は、彼女の中に無いのかもしれない。
だから、猜疑心の強いリリには劇薬と化す。フィアナの言葉を疑わないのでも、疑えないのでもない。疑う余地が無いのだ。かつて優しき老夫婦の下に身を寄せた時以上の暖かな感情を向けられると、どうすればよいのか分からなくなってしまう。
「えいっ!」
フードの下に顔を隠すことも、フィアナは許してくれない。リリの両頬を手で挟むや、頬肉を押し上げて、不格好な笑みを作らせる。
「リリは可愛い女の子なんだから、もっと笑わないと駄目よ。世界の損失だわ!」
間近に迫った、幼い美貌に不思議と胸がドキリと高鳴り、リリは逃げるように後退る。自分はノーマルだと言い聞かせ、しかし言い聞かせる事にフィアナのことを意識してしまうというスパイラル。頬が真っ赤に染まるほどに熱の籠った頭では、解決策がちっとも思い浮かばない。
物理的にも精神的にも距離を詰めてくるフィアナ・グローリーは、リリルカ・アーデの天敵に違いない。『敵』だと思い込まなければ、あっという間に絆されてしまいそうだった。
【フィアナの円盾】
フィアナ・グローリーが自作した、始まりの装備。拙い技術によって鍛えられたために、ボコボコの鉄鍋のような外観をしているが、辛うじて『盾』の機能を保っている。
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