英雄フィアナの迷宮探索    作:雑魚王

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五話 大激闘

 ダンジョン・リザードは、第二階層から出現する蜥蜴型――正確にはヤモリ――のモンスターである。

 四肢に備わった吸盤を使い、壁や天井を這いずり回り、暗がりからの奇襲を得意とする。第一階層でゴブリンやコボルトを斃し、意気揚々と第二階層に降りた冒険者の多くは、ダンジョン・リザードの不意打ちという洗礼を受ける。

 とはいえ、所詮は大きいだけの蜥蜴だ。不意を打たれた程度では、冒険者も斃れはしない。体勢を立て直した新人が逆襲を達成する光景が、第二階層ではありふれていた。

 

「この、蜥蜴! いい加減にくたばりなさい!!」

 

 ダンジョン・リザードの突進を、横方向に転身して回避。フィアナは起き上がると同時に一閃を見舞うが、勝利には今一つ届かない。

 念入りな予習と、サポーターのリリの手助けもあり、大蜥蜴の奇襲を回避したのは数分前のことだ。先制攻撃を外し、態勢を崩すモンスターの背中に振り下ろされるは手斧の刃。しかし、フィアナの腕力では仕留め切ることが出来なかった。

 ダンジョン・リザードはフィアナを捉えることが出来ず。フィアナの攻撃は威力が低すぎて、ダンジョン・リザードに碌なダメージを入れられない。開戦当初から戦況は変わることなく膠着状態に陥っていた。

 

『ジャアアア!!』

 

「んんっ――きゃあ!?」

 

 ダンジョン・リザードが身を捻り、轟と風を唸らせながら尾を振るう。棍棒よりも太く、鞭の如くしなる(・・・)横薙ぎの威力は侮れない。盾を構え、待ち構えていたフィアの体は衝突を堪え切れず、ゴロゴロゴロゴロと後方へと転がっていく。

 明確な隙だが、彼女は一人で戦っているのではない。ダンジョン・リザードの前脚を、リリがボウガンで以って射貫く。追撃は防がれ、フィアナは戦線へと復帰する。

 

「足止め助かったわ!」

 

「フィアナ様は危なっかし過ぎるんです!」

 

 ボウガンで牽制するリリを追い越し、モンスターへと肉薄。疾走の勢いを手斧に乗せ、フィアナは全霊で振り下ろす。吹き飛ばされた怒りを乗せた刃は、「ズバン!」と音を立てて大蜥蜴の尻尾を斬り落とし、逆襲(ヴェンデッタ)を果たした。

 

『グ、ギャアアアア!!?』

 

 激痛に絶叫するモンスターとは対照的に、怒りを発散したフィアナは冷静だった。冷静にダンジョン・リザードの討伐方法を編み出した。

 円盾を放り捨て、両手で鉄斧を握る。僅かに膝を曲げ、腰を落とし、獲物は体の側面に構える。大きく息を吸い込み、次いで鋭く吐き出すと共に武器を振り抜いた。

 

「ふっ――やぁああ!!」

 

 その一撃は、太く、たくましい大樹を切り倒すべく、磨き上げられた木こりの技。フィアナが誇る最強の技は、振り下ろしでも振り上げでも、況してや刺突でもなく、横薙ぎに他ならなかった。

 英雄に憧れ、英雄としての姿に拘るあまり、自身の特技を忘れるとは不覚。英雄たらんと格好つけることを辞めたことにより、少女は本領を発揮した。手斧の鈍い刃はダンジョン・リザードの左前脚に深々と突き刺さり、機能停止にまで陥らせる。

 

「一発二発入れても致命傷にならないなら! ちょこまかと動かれることが鬱陶しいなら! 脚を全部潰してやるわよ!!」

 

 四肢を潰され動けなくなったダンジョン・リザードは、俎板の鯉も同然だ。反撃の憂いを断ってから、死ぬまで斧を振り下ろせばよかったのだ。

 思考停止したかのような、野蛮な戦法だ。しかし、賢しらに策を張り巡らせることは、冒険者としての経験が浅いフィアナには荷が重い。単純にして稚拙な戦法であるからこそ、彼女でも十全に推し進めることが可能となるのだ。

 

「せい、せい、せい、せい、せぇぇえええいっ!!」

 

 機動力が大幅に低下したダンジョン・リザードへ、フィアナは勇猛果敢に躍りかかる。小さな体格を活かしてチョコマカと動き回り、モンスターを翻弄。死角に潜り込むことに成功すると同時に畳みかける。大蜥蜴の脚に連撃を加え、幾筋もの裂傷を刻んだ。

 小技を連発し、敵に隙を作り出すのは、大技を当てるための前準備だと相場は決まっている。

 

「存分に食らいなさい! ——木こりスマァァアアアッッシュッッ!!!!」

 

 高らかな叫びの下、フィアナの必殺技が炸裂した。

 予め集中的に肉を抉っていたこともあり、ダンジョン・リザードの左後ろ脚を派手に切り飛ばす。

 これで左側の二足は失われ、文字通りモンスターの機動力は半減した。放置しようと数分後には出血多量により、フィアナの手元に勝利のトロフィは転がり込んでくるが、彼女は良しとしない。

 目指すは完勝。姑息な時間稼ぎなどするものか。小狡い真似をしなくばダンジョン・リザードにも勝てない冒険者に明日の栄光は訪れない。

 

『ギィ、ギイ、グギ』

 

 左側面に立つフィアナへ向き直るべく足を蠢かす大蜥蜴だが、あまりにも遅い。肝心の左側の脚が全滅していることが原因だ。

 結果、正対するはずが、少女冒険者に横っ腹を曝け出すだけになってしまっている。

 

「やっちゃってください、フィアナ様ぁ!」

 

 一度はダンジョン・リザードの四肢を潰すことを考えたフィアナだが、意見を翻す。足を二本失った段階で、かのモンスターの速度の大半は殺され、また体力も著しく消耗している。これ以上、足を潰す必要はない。

 無駄に戦闘を引き延ばすことなく、今ここで決着をつける。

 同族の激励と、内から湧き上がる決意が、フィアナに力を漲らせた。

 

「任せなさい、リリ! あなたの想いは受け取ったわ!」

 

 振り上げ、返す刃で振り下ろす。上下の二連撃が、大蜥蜴の腹部から背部にかけて引き裂く。傷は内臓にまで達したらしく、ダンジョン・リザードが吐血するほどの大ダメージだが、ここで終わらない。

 

「んんんんんん! これで終わりよ! 木こりスマッシュ!!」

 

『ギャアアアア、ア……アァ』

 

 横っ腹に刻む一文字。先の縦方向の斬撃と合わさり、大きな十字を描く。

 パックリと開いた傷口からは鮮血が噴出し、瞬く間にダンジョン・リザードの体力を奪い去る。長く続いた激闘も、これにて幕引き。フィアナはリリに助けられ、初めて遭遇するモンスターとの戦闘を無事に切り抜けたのであった。

 

「ブイ! リリ、私たちの勝ちよ!」

 

 勝利のブイサインと共に咲き誇る、満面の笑顔。土汚れや返り血に塗れて尚、貶められない輝きが、リリの目を細めさせた。

 

「フィアナ様は、本当に仕方ない人ですね」

 

 

 

 




 リリがデレるのが滅茶苦茶早いですが、小人族であること、同年代の少女であること、才能に乏しいこと、などの共通点が多いために、フィアナちゃんに対して同族意識が芽生えているせいですね
 原作ベル君のように、モンスター相手に無双する冒険者になら警戒もしますが、クソ雑魚フィアナちゃんにはぶっちゃけ警戒するだけ無駄ってのが正直なところあるわけで。上記の類似点から親近感まで湧いちゃってます

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