英雄フィアナの迷宮探索    作:雑魚王

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六話 換金

「2200ヴァリス!? 本当に? 嘘じゃないのよね??」

 

 夕刻。ダンジョンから帰還し、魔石やドロップアイテムなどの戦果をギルドの換金所に持ち込んだフィアナは、担当者に詰め寄っていた。

 

「ああ、勿論だとも。この道十五年の俺が断言する」

 

 2200ヴァリスという金額が小さく、不満に思っているのではない。逆だ、金額が大きすぎて、査定に間違いが入り込んだのではないかと疑ってしまっていた。

 Lv1の冒険者の五人パーティーの一日の平均収入は25000ヴァリスだとされる。

 頭数が増えたことによる負担の軽減。戦力増大によって、一度の多数の敵を相手取れる。人数が増えた分、より多くの戦果を地上へと持ち帰ることが可能。

 パーティーを組むことによるメリットは数多く存在し、故にパーティーとは能力の足し算ではなく掛け算だと言われる。パーティーの誰かが一人(ソロ)でダンジョンに潜った場合の収入は、五人の収入を等分した5000ヴァリスには決して届かない。精々3000から4000の間に収まるはずだ。

 翻り、リリと組む以前のフィアナの一日の収入は、1000ヴァリス未満だった。ドロップアイテムの出が悪い、遭遇するモンスターが徒党を組んでいるために戦闘を仕掛けられずに回れ右をする、などの悪条件が重なった日には400ヴァリスを下回る。

 

 冒険者の経験が浅いことを除けば、全ての原因は小人族であることに終始する。

 非力であるが故に、一度の戦闘が長引き、体力の消耗も激しい。多く戦えない以上は、当然戦果も少なくなる。

 一人(ソロ)で迷宮に潜る場合、戦闘から荷物持ちまで一人で行わなくてはならないが、小人族の体格では多くの荷物を持つことが出来ない。したがって、バックパックにある程度中身が詰まった段階で地上に戻り、再度ダンジョンに突撃するという手間が一日の間に何度も発生する。

 

 種族に由来するから解決し難い問題は、しかし同じ小人族であるリリルカ・アーデというサポーターを得ることで解決に導かれた。

 彼女の支援により、戦闘時間は短縮され、疲労も軽減。頭数が倍に増えたことで持ち運べる荷物の量も増した。特に、リリが持つ【縁下力持(アーテル・アシスト)】というスキルは、装備重量が一定値を超えると【ステイタス】に補正が掛かる。魔石やドロップアイテムの持ち運びに四苦八苦するフィアナには希望の光となった。

 

 故の2200ヴァリス。過去の最高収入を倍してなお余りある金額を、この日の収入は叩き出したのである。

 

「よく頑張ったな、嬢ちゃん」

 

 冒険者としてのスタートを切った途端に躓いたフィアナのことを、ギルドの職員たちも心配していた。日に何度も相対する換金所の担当者は殊更その念が大きく、躍進を遂げた少女を褒め称える。

 

「ぃいやっっったぁああああ!!!!」

 

 その場で小躍りし、リリに抱き着く。しつこいほどに頬擦りしていると、「キマシタワー」とどこからか囃し立てる声も聞こえるが、『仲間と成果を上げた喜び』の前には気にならない。

 

「フィ、フィアナ様! ちょっと離れてください、よ!!」

 

「んもー、恥ずかしがっちゃってぇ。ちゅ、ちゅ、ちゅ~~~」

 

「うぎゃあああ!?」

 

 頬に、鼻に、額に、顎に、顔中に唇を落とすフィアナ。標的となったリリも激しく抵抗するが、悲しいほどに冒険者とサポーターの【ステイタス】差が現れ、逃れられない。

 フィアナのテンションは天井知らずに上昇し、収まる勢いを見せなかった喧騒も、第三者の介入があれば鎮火する。早い話、二人は騒ぎ過ぎたのだ。換金所の前でワチャワチャと騒ぐ行為は、他の利用客の邪魔にしかならないため、ギルドの職員によって建物内から摘まみ出された。

 2200ヴァリスの収入は、フィアナに絶大な達成感を与え、また愛すべき主神にも胸を張って報告できる。そのため、まるで親猫が子猫を運ぶが如く、襟首を掴まれて屋外に放り出されようと、ニコニコと頬を緩ませていた。

 

「それで、フィアナ様。報酬の件についてですが……」

 

「半分こでいいわよね? ちょうど二等分できるし」

 

「は!? サポーターなんかに半分も渡したらいけませんよ、フィアナ様! いいですか? サポーターは冒険者様のおこぼれ(・・・・)(あずか)っているだけの存在なんです。冒険者様と同額の報酬なんて受け取れません」

 

 つまるところ、冒険者とサポーターではパーティー内の貢献度の大きな差があるのだ、とリリは言う。

 片や命を張ってモンスターと戦い、片や戦う力を持たない荷物持ち。成程、負担も危険も貢献度も段違いだろう。

 リリの言っていることは正論なのかもしれない。冒険者やサポーターの間では、オラリオでは当然の共通認識かもしれない。

 それでも、フィアナは言われるがままに頷けなかった。オラリオに来たばかりだから、冒険者になったばかりだから、常識が足りないのだと言われてしまえばそれまでだ。だが、リリにはリリの言い分があるように、彼女にも彼女なりの言い分があるのだ。

 

「私って一日で1000も稼げないのよ。だったら、この2200までの増加分はリリのおかげってことじゃないの」

 

 リリのサポートがあったから2000の大台に乗せることが出来た。彼女がいなければ、いつも通り1000にも届かなかったはずだ。

 その事実から目を逸らし、リリに小金を渡し、自分だけは大金をがめつく確保するなど恥知らずな真似は出来ない。小さな体にも一端の自尊心(プライド)が宿っているのだ。

 

「でも、そんなことしたら『サポーター如きが生意気な』ってリリが他の冒険者様たちに疎まれてしまいますよ」

 

「じゃあリリは、私が仲間から金を巻き上げる、ド腐れ腹黒美幼女だって噂を立てられてもいいの?」

 

 己にデメリットが生じるから、という論理で意見を押し通さんとするリリに対し、全く同じ理論武装を施してフィアナは立ち向かう。

 実際問題、彼女は、『冒険者とサポーターの関係』はリリが言うところが全てではないと感じている。

 弱者から搾取する者は、強者ではない。貧しい、力が足りない、名声が欲しい、『何か』に飢えているから、より下の弱者から簒奪しているだけの卑劣漢に過ぎない。

 対して真の強者は弱者から奪い取らない。奪い取るまでもなく、自力で目的物を手に入れることが出来、また潤っているからだ。

 卑怯者か勇者か。英雄となることを志す、フィアナがどちらを望むかは語るまでもない。

 

「サポーターから金を巻き上げたりなんかしたら、今いる英雄たちに絶対白い目で見られるわ」

 

 とはいえ、リリも生活が懸かっている以上は、引くに引けまい。互いに主張をぶつけるだけではなく、妥協点を探ることは必須である。

 

「ねえ、リリ。私と契約しましょ? これから先、私とパーティーを組んでダンジョンに潜るの。それなら他の冒険者が相手してくれなくなったって食い扶持には困らないでしょ?」

 

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