Muv-Luv Alternative The Phantom Cemeter(改稿版)   作:オルタネイティヴ第Ⅵ計画

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※※※必ずお読みください※※※

本作をお読み下さり、誠にありがとうございます。
当作品をお読みになる前に、以下の点についてご留意頂けると幸いです。


《本作品の留意事項》
・初登場時は一度フルネームで、ヒロインは2度目以降は名前呼び。それ以外は苗字呼びとしております(一部例外あり)
・通常の会話は「」で、電話や無線のやり取りは『』で統一しております。
・フリガナに関しても初登場時のみとさせて頂きます。
・現時点で重要人物のオリジナルキャラは1名のみの予定です。
・原作でフルネームではないキャラクターに、勝手に名前を付けくわえております。
・ご感想の返信は、基本次話投稿時に限ります。


《本作品の注意事項》

・本作は、同一作者が投稿していた『Muv-Luv Alternative for Answer』のリメイク作品になります。
・本作は、下記作品に多大な影響を受けております。それ故、作品に一部類似点が発生する可能性があります。また偉大なる先人様方の各種マブラヴSSの良いとこどりをしている為、その他にも類似点が発生する可能性があります。
 テンパ様の『Muv-Luv オルタネイティブ Last Loop』
 つぇ様の『中身がおっさんな武(R15)』
 KIE様の『マブラヴオルタネイティヴSS 「Beyond the fate」』
・「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」
・Muv-Luvシリーズの世界観に対し、作者独自の解釈と設定を追加しております。それ故、原作との相違点が多少なりとも発生する可能性があります。
・一部タグは保険になります。
・タケルちゃん最強設定です。
・またタケルちゃんハーレムです。
・一部大きなネタバレを含みますので、原作未プレイの方、アニメから来られた初見の方は注意して下さい。
・本作は非常に誤字脱字が多いです。
・投稿頻度に関しては完全にランダムです。完結まで非常に長い時間を要すると思われますが、気長にまって頂ければ幸いです。
・感想への返信は投稿時のみに限ります。


《本作品の警告事項》

下記に該当する方は、気分を害される可能性がある為、本作品読まれるのはお控えください。

・伊隅みちるは、前島正樹と結ばれるべきと考える方。
・速瀬水月、涼宮姉妹は、鳴海孝之を想い続けるべきと考える方。
・宗像美冴は、シルヴィオ・オルランディと結ばれるべきと考える方。
・崔唯依は、ユウヤ・ブリッジスを想い続けるべきと考える方。


それでも良いという方は、以上の点に注意し、大らかな心でお読み下さされば幸いです。

《追記:2026/03/13》
本作品の大幅改定作業を実施致しました。作業期間中、本作品を非公開にさせて頂きました。沢山の方がご迷惑をお掛け致しましたこと、心よりお詫び申し上げます。引き続き、本作品をどうぞよろしくお願い致します。
以下、改定した点。

・句読点の見直しによる読みやすさの変更
・一部描写や場面の撤回及び追加
・時系列の変更
・上記の改修点により、これまで皆様がお読みになっていた内容とストーリーが食い違うが生じる為、本作品の1話からの投稿のし直し

本当に多大なる御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
引き継ぎ頑張りますので、本作品をどうぞよろしくお願い致します。

以上


第1章:始まりの挙動
Episode1:運命を超えて


Episode1.運命を超えて

 

 

????年??月??日(?)??:??

 

 

頭の奥で微かな音が揺れていた。

まるで遠くの海岸に寄せる波のように、一定のリズムで響いている。

それが何かを理解する前に、身体が重さを取り戻していくのを感じた。

指先に温かさが戻り、頬を何かが撫でたような感触がする。

意識の表面に、光がゆっくりと浮かび上がってきた。

最初は暗闇の中に微かな点があっただけだ。

その点が次第に広がり、ぼやけた輪郭を持つ光の輪となった。

それが目の前の何かだと気づくまで、少し時間がかかった。

耳鳴りがやがて消え、代わりに断片的な音が聞こえてくる。

誰かの声。

低く、静かで、言葉は聞き取れない。

それでも、その声には安心感があった。

自分の名前を呼ばれたような気がして、力のない手足がかすかに動いたような気がした。

瞼が重く、まるで何かに縛られているようだった。

それをほどくようにゆっくりと瞼を持ち上げると、視界が一気に広がった。

ぼやけた天井、白い蛍光灯のような光の空間。

その下に人の顔が浮かんでいる。

 

「大丈夫だよ、タケルちゃん」

 

と、その顔が言った。

 

声が耳に届いた瞬間、それまで曖昧だった現実が急に形を持ち始める。

息を吸い込むと、冷たい空気が肺に染み渡る。

生きている――その感覚が、少しずつ胸に広がった。

 

そして覚醒した意識が、自分は何かに横たわっていることを少しずつ実感させる。

いや、それより大事なのは自身の目前にある、見知った……と言う程度には長い間見ていなかった顔があることだ。

 

武と呼ばれた男性は咄嗟に頭を起こそうとした。

 

「ほら、じっとしてて」

 

そんな彼に、彼女は優しく、それでいてどこか強制力を帯びた声でそう言った。

言われるがまま、彼は頭を起こすのをやめ、再度そっと彼女の膝の上に乗せた。

柔らかい布地越しに、温かさが伝わってくる。

彼女が履いているのは、恐らく上半身の服装からして薄手のピンク色のスカートだったはずだから、その体温は驚くほど直に感じられる。

そこでようやく目の前の顔が誰なのか思い出した。

そう、片時も忘れたことはなかったはずの顔。

自らの死を迎えた瞬間に、走馬灯となって現れた彼女の顔。

大好きな、とても愛おしい彼女の名。

それは……。

 

「純夏……なのか?」

 

自身の名を呼ばれたことで、純夏と呼ばれた少女は、まるで我が子を愛おしむような表情で微笑みながら答えた。

 

「そうだよ、タケルちゃん」

 

武はあまり力の入らない手をゆっくりと持ち上げ、己が純夏と呼んだ少女の頬を優しく触った。

 

「――すみ、か……」

 

声にならない言葉が唇から漏れる。

目の前にいるのは、大昔に失ってしまった愛しい人の姿。

 

「ずっと会いたかった……どれだけ、ずっと……ッ!」

 

言葉は途切れ途切れで、声は涙に押し流される。

それでも武の中に溜まっていた思いは、次々と溢れ出した。

 

純夏は何も言わない。

ただ、震える武を静かに膝枕したまま、彼女の指がそっと彼の髪に触れた。

ゆっくりと指先が滑り、髪を整えるように撫でる。

まるで風が優しく草を揺らすような、そんな動き。

純夏は武をただ優しく撫でている。

優しく撫でながら彼女は言った。

 

「わたしも……ずっと会いたかったよ」

 

その言葉が、さらに武の涙を誘う。

今、彼の胸の中に満ちているのは再会という奇跡に触れた……喜びという感情。

それが、心の奥底から沸き上がり、溢れているのだと彼は気づいた。

 

「純夏ぁ……すみかぁぁぁッ!」

 

喉がひりつくほどの衝動が胸を突き上げるのに、それ以上の声は出なかった。

頬を伝う涙がぽつりと床に落ちる。

それは次から次へと溢れ出し、視界をどんどん滲ませる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ……タケルちゃん」

 

そんな武を純夏は、ただ先程と同じただ優しく微笑み、頭を撫で、彼が全てを吐き出すのを見守っていた――。

 

それから2人だけの時間が暫く流れ、ようやく落ち着いた武は、純夏に膝枕をされながら会話をしていた。

 

「まさかまた純夏に会えるなんて……微塵も思ってなかったよ」

「そうだね……」

「ほんとどれくらいぶりだろうな……14年……14年になるのか?」

 

武の問いに、純夏は彼の頭を撫でていない反対の左手を自身の顎に当て、ウーンと言いながら答えた。

 

「タケルちゃんの感覚だとそうかもね。わたしからしてみたら、久しぶりって感覚でもないんだけど……まぁ間違いじゃないかも」

 

彼女の言葉に武は違和感を覚える。

 

「純夏、お前……00ユニットなのか?だとしたら、この空間は一体……死後の世界ってわけではないんだよな?」

 

少なくとも現実ではないのか?……という言葉を寸前で飲み込む。

純夏のぬくもりは確かに現実であり、偽りであるとは思いたくなかった。

 

「半分正解で半分不正解かな。今のわたしは00ユニットだけど、それと同時にここ、虚数時空間の長でもあるんだよね」

「虚数時空間?つまり俺の身体もお前も現実じゃないってことか?」

 

まさか……という感情が武を支配する。

そんな彼に純夏は説明をした。

虚数時空間とは何か。

そして自分が何者なのかということを。

ただの鏡純夏ではない、特殊な鑑純夏の意識であることを伝えた。

 

「なるほど……つまり今のお前は無数の鑑純夏が集まった思念体であり、それと同時に全ての世界の自身を統括している身、と……いや、情報体と言った方が正しいのか?」

「情報体の方が正確かな――にしてもタケルちゃんにしては物分かりがいいね?」

「バカヤロウ、俺だってそれなりに人生経験積んできたんだよ……夕呼先生にも鍛えられたしな――なぁそれよりさ、いい加減にその……撫でるのやめてくれないか?なんかその……ハズい……」

「えぇー?久しぶりの再会なんだからこれぐらい許してよー」

 

と言いつつも、何だかんだ武の要望通り撫でるのを辞めた純夏だった。

その一方で、武は先ほどから感じていた違和感を口にした。

 

「にしてもなんかお前、大人びたか?」

「あ、分かる?タケルちゃんが成長したように、わたしも成長したってことだよ!」

 

そして声高らかに胸を張る純夏だったが、それを見た武は少し苦笑いした。

やはり幾ら時空が変わろうと、幾ら特殊な個体だと言っても、心の根幹、純夏らしい根本は変わってはいないのだろうと思ったからだった。

 

「……で?どうして俺は、この虚数時空間とやらに姿を現したんだ?」

「それはね――ううん、ここから先はタケルちゃんが考えてよ」

「俺が?考える?」

「うん。というよりここから先、どうなるかは自分自身で見てきてほしいんだ(・・・・・・・・・)

 

純夏の言葉に違和感を覚え、考え込む武。

そして1つの結論に到達した。

 

「ッ!?――てことは、俺は3周目を経験するのか!?」

 

武はガバッと勢いよく上半身を起こして純夏を見る。

一方の彼女は、彼の行動に驚いた様子を見せず、ただ優しく微笑んでいるだけだった。

そしてこう言った。

 

「ところで武ちゃん……わたしが言いたいこと、言っていい?」

 

恐らく元の世界の武ならこういった場合、自身の言葉を優先するのだろうが、成長した彼はそのような野暮な真似はしなかった。

 

「ん?いいけど……どうした?」

「うん、あのね……」

 

と言いながら、純夏はもじもじと胸の前でひとしきり指を絡めていた。

急に恥ずかしがるあたり、先ほどまでの落ち着いた雰囲気の純夏は何処にいってしまったのか……そう思わなかった訳ではないが、まぁ気にしないことにした。

 

「なんだよ……遠慮する性格でもないだろう?」

 

純夏はバッと立ち上がり、気をつけした。

そして――。

 

「タケルちゃん、ありがとう!」

 

そう言って深々と頭を下げた。

突然のことに武は困惑する。

 

「……え?」

「タケルちゃんはわたしを選んでくれた。あの空間(・・・・)からわたしを救い出して……わたしの心、鑑純夏の心を連れ戻してくれた。そのお礼を言いたかったの……ほら、最期はああいう結果になっちゃったでしょ?伝えたいことを言えなかったから……うひゃぁ!?」

 

武も勢いよく立ち上がり、純夏を抱きしめた。

 

「バカヤロウッ!……俺は結局、お前を救えなかったじゃねぇか!あんなに無理させて……お前の苦しみを判ってやれなかったじゃねぇか!?」

 

武はそう言葉を紡ぎつつ、徐々に純夏を抱きしめる力を強くしていった。

 

「タケルちゃん……」

 

純夏を優しく武を抱き返した。

 

「結局、お前を護れなかった……ごめんな、純夏」

「……いいよ、タケルちゃん。わたしはもう十分幸せだよ……今ここにいる(・・・・・・)タケルちゃんにも、こっち(・・・)の世界にいたタケルちゃんにも……2人のタケルちゃんにもう十分護ってもらった。だからわたしは今、十分幸せだよ……」

 

純夏の閉じた瞼から、一筋の嬉し涙がすぅと頬を伝って地面にポトリと落ちた。

 

それから2人は暫くの間、お互いの存在を……ぬくもりを確かめるかのように抱き合い続けた。

その間、徐々に武の純夏を抱きしめる力が強くなっていったようで……。

 

「タケルちゃん、ちょっと痛いよ!」

「え?あぁ、すまん純夏」

 

武はやや名残惜しそうに純夏から離れた。

そんな彼に彼女は言った。

 

「ところでタケルちゃん。さっき3周目を経験するって言ったよね?でも、多分それはできないことなんだよ……」

「なッ!?でもさっきお前、否定しなかったじゃねぇか!――いや、お前はただ無言だっただけか……」

 

正確には優しく微笑んでいただけだった。

だから武は肯定と勘違いしたのだ。

 

「でもそこに気づいたタケルちゃんは偉いよ?もしそれに気付かなかったら、わたしも安心して送り出せないからね」

 

そんな武を純夏は褒めた。

だがそんなことよりも気づいたことがある。

 

「待てよ……やっぱり俺は3周目を経験するのか?」

「これも半分正解で半分不正解かな。なんでタケルちゃんがもう一度世界を渡ることになるのかは私には分からない――でもとある世界がタケルちゃんを呼んでる。それだけは確かだよ。その証拠に……ほら、聞いてみて?」

「ん?なにを……『……ちゃん』……ん?なんだ?」

 

純夏は口に人差し指を当て、シーッと合図して目を瞑った。

武もそれに倣い目を瞑って耳を澄ませてみた。

すると……。

 

『……ケルちゃん……タケルちゃん……』

 

武はどこからともなく聞こえてきた純夏の声に驚き、目を開く。

だが目の前の純夏はただ目を瞑って口を閉じていた。

その間にも彼女の声はうっすらと聞こえてくる。

 

『……タケルちゃんに……会いたいよ……』

 

声色は間違いなく純夏のものだった。

しかし目の前の純夏は口を閉じたまま。

 

「純夏……お前、なんだよな?」

「……違う。わたしだけどわたしじゃない。まだタケルちゃんに会うことができていない、確率分岐世界のわたしだね」

「ちょっと待ってくれ。俺がまだ経験してない世界があるのか?」

「そう……確率分岐世界なんて無限に存在するんだよ?1秒選択肢を遅らせただけで世界は変わる。衛士だったタケルちゃんなら分かるでしょ?1秒判断が遅れただけで、人は簡単に死ぬんだよ」

 

純夏の言葉に武は心底同意させられた。

たった1秒……たった1秒判断の遅れが、戦闘では命取りになる。

それを嫌なほど経験してきた武だ。

痛いほど身に染みて分かる。

 

「だけど……そっち(・・・)の世界のわたしは、タケルちゃんを引っ張れるだけの力がないんだよ――多分、わたしのせいで」

 

純夏が初めて暗い顔をした。

自責の念を感じている様子だった。

 

「タケルちゃんを因果導体にしていたのはわたしだった。ううん、私だけじゃない……全ての確率分岐世界にいるわたしでもあるの」

 

純夏は真剣な表情で説明を始めた。

それにつられて武も真剣な面持ちとなる。

 

全ての始まりは初めて(・・・)BETAに捕まった鑑純夏である。

正確には武を目の前で殺され、BETAの人類に対する研究材料にされた……つまりはBETAに犯された鑑純夏だ。

その時点で純夏の心は一度なくなった……いや、壊された。

BETAは人類への研究という名のもとに、純夏を蹂躙した。

その時点で彼女の心はほぼ壊れた……唯一残っていたのは、タケルちゃんにもう一度会いたい……会って話をしたいという想いだけだった。

もう一度会いたいという想いだけで、世界との繋がりを保っていた。

鑑純夏という1人の人間の心を保っていた。

それが明星作戦時に使用された2発のG弾……通称、5次元効果爆弾。

その爆発による高重力潮汐の複合作用と、横浜ハイヴの反応炉との共鳴によって、時空間に深く鋭い歪みが発生したことによりその際に一瞬、比較的分岐が近い世界との道が繋がった。

そこに反応炉によって変換・増幅された純夏の思念が作用し、その結果、無数の白銀武がこの世界に連れてこられたのである。

つまり、今ここにいる武は多くの武の集合体であるということだ。

武が純夏以外の人と結ばれた世界から、武を構成する要素が少しずつ集められたということである。

 

「ここまではいい?」

 

純夏が可愛く首を傾げながら武に問う。

 

「あぁ……夕呼先生や霞から聞かされた話とも一致するな」

「じゃぁ続きね。さっきも言ったように、BETAに侵略された確率分岐世界に存在する全てのわたし……つまりは鑑純夏の共通のタケルちゃんに会いたいっていう想いが、BETAのいない世界のタケルちゃんを何度も呼び寄せた」

「そうだな――えっと、つまりは通算7回か?」

 

冥夜、彩峰、たま、美琴、委員長、夕呼先生、そして2週目の純夏……と武は指を折って数える。

 

「残念。ハズレだよ」

「待った。それ以外にもあるってのか?俺が記憶していないだけで?」

「そう……タケルちゃんはその7回以外にも、何度も呼び出されてるの。このBETAに侵略された世界で結果を生み出せず死ぬ度にね」

「……マジ?」

「うん、マジ」

「マジで?」

「マジで」

 

武は唖然とした。

そして純夏は説明を続けた。

 

純夏が存在する確率分岐世界なら、どの世界の純夏でも武を呼び出すことができる可能性がある。

それには横浜ハイヴへのG弾投下が必須になるが。

兎も角、その世界線であれば大量のG元素と引き換えに、純夏は武と会うことができる可能性を持つ。

そして武を呼び込むことができる世界線たちが、1人の武を呼び込むために綱引き状態となって、結果最も力の強かった世界線が武を呼び込むことに成功するのだ。

要は引き付ける力が強い純夏、つまり武への想いが強い純夏が彼を世界へと呼び込むのだ。

そして重要なのがここからとなる。

武を呼び出した純夏や、呼び出された武自身にとって都合の悪いファクター……つまりは純夏意外と結ばれた記憶や、武が死んだときの記憶はすべて消去されるということだ。

 

「なんでだ?前者は分かるとして、後者については持っていても不思議じゃなくないか?」

「ねぇ、タケルちゃん。この言葉覚えてる?――世界は安定を望む……ってヤツ」

 

武は苦虫を嚙み潰したような表情で頷く。

何故なら忘れたくても忘れようはずのない、夕呼の重要なセリフだからだ。

因果導体である武が元の世界に持ち込んだ因果情報によって、元の世界のまりもは死んだ。

 

「そう。自分自身が死んだ瞬間、若しくは殺された瞬間っていうのは、記憶に強烈な印象を残す。もし同じ状況に陥ったら、走馬燈になって表れるかもしれない……普通の人ならそれで問題ないかもしれないけど、タケルちゃんは違うでしょ?」

「そうか……俺が因果導体だったからか」

 

因果導体である武は自身が経験した、或いは記憶した情報などを全て因果情報として蓄積してしまう。

蓄積した因果情報は、武が世界を渡るたびにその渡った世界に譲渡され、その世界でも同じ事象が発生してしまう。

例えばの話だが、もし武が冥夜が死んだ以前の世界(・・・・・)の記憶を持ったまま、別の世界に渡ったとすれば、その因果導体として因果情報を刻み込んだ武が、次の世界(・・・・)でその因果情報をばら撒き、結果は違えど冥夜が死ぬという同様の事象が起こるということになる。

要はまりもに起こった事象が他の人物でも発生する可能性があるのだ。

 

では、2週目の世界の説明はどうつくのだろうか。

新潟BETA襲来、HSST落下、天元山事件、これらは1週目・2週目共に起こったが結末が変わった事柄だ。

これは書き換わった因果情報を受け取った世界が、別の形でバランスを取ったからだ。

故に武の記憶にはない事柄が起きている。

そう、例えばXM3トライアルでの横浜事件や12・5事件などである。

 

「結局、俺のやってきたことはあまり意味がなかったってことか?――ははっ、災害と……BETAとなんら変わりねぇじゃねかよ」

「そんなことないよ!結果として世界は変わったでしょ?10年以内に滅亡確実ってところから、後30年は安泰ってところまでいけたんだから!――XM3、佐渡島ハイヴの消滅、オリジナルハイヴの攻略とあ号標的の殲滅。タケルちゃんはそれだけのことをやってのけたんだよ!」

「あぁ……そうだな」

 

落ち込んでいる武を純夏が励ます。

少しして立ち直った武は、純夏の講義の続きを聞く。

 

「それとね、大事なのは支配的因果律ってヤツだよ」

「支配的因果律?――因果律は辛うじて分かるが、支配的?」

 

支配的因果律というのは、言い変えると絶対的なリアリティ……つまりは、現実味ということになる。

例えば、武のいた元の世界にはBETAは存在しない。

では仮にその元の世界にBETAが現れたらどうなるだろうか。

BETAのいる世界と元の世界では、軍事レベルに圧倒的な差が存在する。

やはり元の世界でも人類は苦戦するのだろうか?……いやあっという間に殲滅されてしまうだろう……BETAの方が――。

それは何故か。

元の世界の概念に、BETAという生物は存在しない……という概念がある。

いきなり地球外生命体と言われても、元の世界の人々には現実味が全くないだろう。

話はやや逸れるが、元の世界の夕呼がこっちの世界の武の敬礼を見るまで……腹筋がシックスパックなのか確認するまで、あまり現実味を感じていなかったのと同じことだろう。

つまり何が言いたいのかと言うと、世界が認めなければ存在そのものが希薄になるということだ。

元の世界ではBETAなどいないことが当たり前。

逆にこっちの世界ではBETAは強力だとか、駆逐することが難しいだとか……そういった感覚が当たり前である。

元の世界なら小型種程度であれば、拳銃ぐらいで殲滅できるだろう。

 

「要はこっちの世界だと、BETAは物量突撃一本槍とはいえ強力で、駆逐するのは難しいという概念が世界のそのものに刷り込まれていると?逆に元の世界では、地球外生命体などいるはずがないという概念が刷り込まれているから、BETAは強力だという概念、つまりは現実味が薄いってことか」

「そう、それが支配的因果律っていう現実味ってヤツだね」

「なるほど……俺が初めてBETAのいる世界にやってきて、BETAの存在を信じきれなかったのと同じってことか」

 

武の言葉に純夏が頷く。

 

「……でもそうなると、結局俺がやってきたことって無駄になるんじゃねぇか?最終的にその支配的因果律によって、因果律情報が平均化される訳だろ?」

「さっき言ったよね?XM3の登場に、佐渡島ハイヴ・オリジナルハイヴの消滅。そしてあ号標的の殲滅。これら3つの出来事は人類に大きな変化を与えた」

 

XM3の登場によって戦術機は新たなる側面を見せた。

これがあれば衛士の死亡率を大幅に減らせるという希望を持てた。

佐渡島ハイヴの消滅も人類に希望を持たせた。

そして諸悪の根源たるオリジナルハイヴの攻略、あ号標的の撃破。

これは人類の支配的因果律、つまりは人類がBETAに勝利できる可能性という現実味を持たせた。

BETA側に傾いていた支配的因果律の天秤は、ここにきて人類側に傾き始めたのだ。

全人類の希望が、世界の法則そのものを変えたのだ。

 

「つまり……こっちの世界のBETAはもうすぐ殲滅できるってことか……」

「事実タケルちゃんがそこまで押し上げたでしょ?彼女(・・)と共に月面ハイヴへの攻略に向かったじゃん」

 

武は思い出す。

月面・雨の海北端、フェイズ7・エラトステネスハイヴ。

 

「そこで記憶が途切れてるが――おい、まさか!?」

 

何かに気づいた様子の武だが、そんな彼を無視して純夏は続けた。

 

「じゃぁ随分と遠回りになっちゃったけど、わたしのせいでタケルちゃんを引っ張れるだけの力がないわたしがいることへの説明が、やっとできるってわけ」

 

純夏が声色を再度真面目色に変えたことで、武も無視されたことに対し追及はしなかったが――実はこの無視……武のためでもあり、それと同時に純夏のちょっとした嫉妬でもあった。

 

「ねぇ、タケルちゃん。さっき言った綱引きで勝つためにはどうすればいいと思う?」

「そりゃぁ、力が強い人間を沢山仲間に呼び寄せるか……相手よりも多い人数で勝ちゃぁいんじゃねーの?――まさか!?」

「そう、私は綱引きに勝つために7人分の私を集めたんだよ。要は、今ここにいる私は元々こっちの世界にいたわたしだけじゃないってこと」

 

7人分というのは、前述の冥夜、彩峰、たま、美琴、委員長、夕呼の世界の純夏と、元の世界にいた純夏である。

それからも純夏の説明は続いた。

 

つまり今ここにいる鑑純夏は、幾つかの確率分岐世界に存在した鑑純夏の意識の集合体なのである。

基本的に同一存在だから、精神の分裂や多重人格のようなものもない。

純粋に鑑純夏の意識の集合した身体なのである。

何故そんなことになったのか。

それは武に原因があった。

武が純夏を選ばない選択肢を取り続けたことで、無意識領域下の純夏が自然にとった行動だったのだ。

だからそれを知った時、純夏は自己嫌悪をした。

だからそれを知った時、純夏は1人で出撃しようとしたのだ。

だからそれを知った時、彼女の存在を許したのだ。

 

話を元に戻そう。

 

「お前が異なる世界の鑑純夏の意識の集まった、集合意識体だってのは改めてよく分かったよ……ん?待てよ、ていうことは俺は今回どうして呼び出されるんだ?前は純夏が他の純夏を集めたから綱引きに勝った……だけど、今回はどうしてなんだ?普通に考えて、また別の純夏がまた純夏同士を集めてのか?」

「結論から言うとそういうことなんだけど、今回は更に特殊なんだよね……」

 

純夏がやや険しい表情を見せた。

 

「今回の私は、確立分岐を無視した私が集合してる。要は武ちゃんと結ばれなかった世界の全ての私がタケルちゃんを呼んでるんだよ」

「そんなことが可能なのか?」

「理由は私にも分からない――ただこれは確立時空が確実に変わり始めたことの第一歩だと思うの……」

 

それから純夏は黙った。

それを察した武は言った。

 

「それで……何か言いたいことがあるんだろ?」

 

武の言葉に純夏が身体を強張らせた。

どうやら図星だったようだ。

 

「鋭いね、タケルちゃん……」

「馬鹿野郎……何年の付き合いだと思ってる」

 

そう言って笑う武に、純夏は躊躇しながら話を切り出した。

 

「あのね、私のせいでタケルちゃんを呼び込めない世界……それをタケルちゃんに救ってほしいんだ」

「なにを……」

「これは私の最後の我儘、ねぇ……タケルちゃん。聞いてくれない?私の最後の願いを」

 

純夏は不安そうに視線を落としながら言った。

武は心底驚いた表情を見せた。

それを見た純夏はさらに視線を落とす。

 

「……やっぱりダメ、だよね……ううん、分かってたんだ。無理なお願いだってことは……「馬鹿野郎!」……えっ?」

 

諦めた様子の純夏に武が突如として割り込んだ。

 

「やってやろうじゃねぇか!残りの純夏を助けりゃいんだろ!あたぼうよ!」

「……で、でももうタケルちゃんは危ない目にはあう必要はないんだよ!?わたしの再構築した元の世界系列の世界で暮らしてくれれば……ッ!?」

 

そこで突如として武が純夏を抱きしめた。

 

「た、タケルちゃん!?」

「そんな顔すんなって。大丈夫。その世界の純夏もきっちり救ってやるよ!今度は誰一人死なせはしないでな!」

「……タケルちゃん」

 

純夏は目元を潤ませながら、武の腰に手を回す。

 

「どこの世界に大好きな人の頼みを断って、ぬるぬるとぬるま湯で生活するやつがいるんだよ」

「……タケルちゃん!」

「それにさ……」

 

武は純夏の肩を持って、純夏の身体を離しながら目を見て自信満々に言った。

 

「俺は白銀武。天下の因果導体様。全世界の鑑純夏を救う者だぜ?」

「ぷっ。タケルちゃん、カッコつけすぎだよ」

 

おどける武に、眦に涙を湛えつつ純夏が笑う。

 

「で、具体的にはどうするんだ?」

 

そう武が口にした時、どうしたことか……武の身体が徐々にかすみはじめた。

人体の輪郭が徐々にぼやけはじめ、今にも虚数時空間に溶け込んでしまいそうだった。

 

「もう時間だね……」

 

純夏が凄く寂しそうにいった。

 

「これは……?」

「世界がタケルちゃんを呼んでるんだよ……」

 

彼女は武から少し距離を取り、後ろで手を組んで心底嬉しそうに笑った。

 

「わたし、嬉しかったよ!あの世界と同じ(・・)タケルちゃんに会えて」

「純夏!」

 

武は純夏の手を掴もうとするが既に腕はなくなっており、顔立ちも曖昧で、何百年も雨風にさらされた彫像のようにかすんでいた。

 

「バイバイ、タケルちゃん……」

 

武が消える瞬間、何故かその時輪郭が一瞬だけ再度くっきりとした。

まるで最後の瞬間に自身の存在を確かめるかのように。

そんな中、彼は一言残した。

 

「純夏!また!またお前に会って見せるから!その時まで……ッ!?」

 

虚数時空間には風がないはずなのに、一瞬静かに風が吹き抜けるような感覚があった。

すると武の身体は砂のように細か砕け、粒子となって空間に舞い上がった。

粒子は空間に溶け込み、まるで夜空の星々へと吸い込まれるように消えていった。

それは、永遠に続く旅路の始まりを告げるかのようだった。

 

全てが終わり、虚数時空間には再び静寂と言う名の冷たいものだけが残された。

しかし、純夏の胸にはかすかな温もりが残り、何かが変わったことを確信させた。

そして1人ポツンと残された純夏はこう呟いた。

 

「タケルちゃん、ありがとう……愛してるよ――うん、また……ね」

 

武を見送った純夏は虚数時空間の空を見上げた。

その瞳には、一筋の涙と大きな笑みが浮かんでいた。

 

これはこうして始まった、語られなかった他なる結末。

とてもちいさな、とてもおおきな、とてもたいせつな、もうひとつの、あいとゆうきのおとぎばなし――。

 




皆様、本当にお久しぶりです。
また何度も申し上げますが、本当にお待たせし、尚且つご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
文句は私の精神衛生上よろしくないので、受け付けません(笑)

ようやく「Muv-Luv Alternative The Phantom Cemeter(改稿版)」の投稿を再開致します。
元々は一部を改稿するだけのつもりでしたが、いざ読み直してみると何ともまぁその場しのぎの内容に嫌気が指しました。
そこで、仕事で学んだ最終的なゴールを設定し、そこに向かって進むということを考えた際に、一度全話修正した方がよいと思いました。
その中で、とあるマブラヴ好きの古参の方から(私は現時点で27歳ですので、18歳年上の方ですね)、オルタネイティヴの新しい解釈を聞き、新たな視点でオルタネイティヴを見ることができたという要因もあり、最終的なゴールを改めて設定することが出来ました。
非情にありがたいお話でございます。

少し話はそれますが、私がオルタネイティヴにハマって早10年が経とうとしていることにもビックリで、本作を投稿開始から早5年半ほどにもなります。
これを機会にXアカウントを作りまして、ファンの方と交流していけたらなと思っております。
アンケート調査とかも実施しておりますので、是非宜しければフォローしてみてください。

因みに何故、ここまで時間がかかってしまったかと言いますと、仕事でそれどころかじゃなかったり、精神壊したり、入院したり、家族と絶縁したりと色々あったせいです。
時間が経過するのは早いですね……本当に申し訳ございません。

話を戻しまして、その方のお陰もありましてしっかりとしたゴールを見据えて、本作を引き継ぎ投稿していくつもりでございます。
何卒宜しくお願い致します。

いずれにせよ、一度始めた物語は完結させるのが主筋であると考えているので、引き継ぎ頑張ります。
皆様、今後とも宜しくお願い致します。

まずは2話目の方を投稿致します。
取り敢えず10話くらいまでは完成してます。
大筋は変わりませんが、細かいところは変わってますので、どうぞお楽しみ下さい。
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