私は次期アドラステア皇帝エ『レオノォォルゥゥ!!』   作:炭酸ソーダ

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感想返し
・コスタス生存ルート
→ルートというかね、炎帝の情報を得るためにはこうするしかなかったてっいうか……。

調べながら書いてるけどね。やっぱり教会って役に立たない気がする。


6月 メイドバイアビス

「コスタス君だよーん。仲良くしてあげてね」

 

ガルグ=マク大修道院には、最近ある噂が流布していた。

 

曰く「寮の地下に、邪教の隠れ家がある」と。

 

しかしながら、そもそも地下室の存在など生徒は知らない。よしんば知り得ようとも、どのようにして地下室に入るのかがわからない。それもそのはず、地下へと繋がる落とし戸は、とある教師の自室にあるからである。

 

教師の自室に侵入しようとする生徒など、そういるはずもない。それも女性であるとなれば、侵入はますます困難であろう。

 

「こんな薄汚い盗人、さっさと始末するべきです」

 

「おいおい、そりゃ俺にも言ってんのか?」

 

「……眠い」

 

しかし、そんな地下室にはいくらか人の姿があった。白髪の少女リシテア、薄紫色の髪の少年ユーリス、この部屋の門番でもある教師ベレス。

 

「いーじゃないの。いつまで生きてんのかわからないし、仲良くしてあげてよ」

 

そして、この部屋の主。総白髪の青年、フェイスレスである。

 

「で、だ。ドットーレに呼ばれて来たはいいが、俺に何の用だよ」

 

ユーリスは、自学級の生徒(?)であるドットーレにより、この部屋へと連れてこられていた。フェイスレスの呼び出しであること以外、知らされてはいない。

 

「ほれ」

 

フェイスレスから紙袋が飛んでくる。空中でキャッチするユーリス。

 

「5000Gあるよ。ちょっくらお使いに行ってきて欲しい」

 

「おいおい、しがない地下の住人にこんな大金掴ませて。……要件は?」

 

「炎帝の情報収集。それと、情報の喧伝。皇女、王子、次期盟主の暗殺未遂犯コスタス君がここに居ることを流してきてくれるかな?」

 

ユーリスは、炎帝という存在を知らない。それが故に、この依頼の難易度を測りかねていた。

 

「炎帝っつーのは?」

 

「さあ。一つ言えることは、その男……女?がコスタス君の依頼主ってことだね」

 

「いや無理だろ。そんな重要機密、そこらへんに転がってるわけねえよ」

 

当然である。フォドラを揺るがす大事件の首謀者の情報、それも明らかに裏世界の住人のものなど、易々と集まるわけがない。

 

「うん。だから主目的は情報の喧伝の方だよ。そっちさえやっとけば、多分炎帝に関係する人物はやってくるでしょ。コスタス君は、餌ってことだ」

 

「そりゃまた。つうか、そいつ生きてんのか?」

 

コスタスは椅子に座り、ずっと頭を垂れている。微塵も動く気配がない。

 

「レア君とかセテス君がうるさいのよ。だからまあ、お咎めなしっていうことにはならないよね。もちろん、まだ生きてはいるよ」

 

「……あんまり聞かねえことにしておくわ」

 

「あ、そうだ。帝国中心にやってね」

 

フェイスレスの補足に、ユーリスは首を傾げた。

 

「なんでだよ。そっちの方が楽で良いけどな」

 

「ルミール村は帝国領だからねえ。可能性としては、帝国を拠点にしている確立が高いと思うんだよね」

 

「そうかよ。んじゃ、さっさと行ってくるわ。ああそうだ、期間は?」

 

「一節くらいでいいよ。じゃ、お願いね」

 

 

 

 

「で、わたしは何で呼ばれたんですか?」

 

会話の蚊帳の外だったリシテアは、顔を膨らませて言う。

 

「君は健康診断さ。身長体重はともかく、問題は血糖だ。ちょびっと血をくれない?」

 

「はあ、まあいいですけど。どれくらいですか?」

 

そう聞かれたフェイスレスは、試験管を指でゆらゆらと揺らす。

 

「ちょ、ちょっと多くないですか?」

 

「長生きしたいんでしょ?」

 

率直な指摘に、リシテアは押し黙ってしまう。

 

「……いや、やっぱり無理!失礼します!」

 

席を立ち、リシテアは小走りで階段へと向かっていった。

 

「やれやれ。麻酔でも使って採っておくかなあ」

 

『長い話は終わったかの?』

 

室内に音は響かない。しかし、フェイスレスにはそれが聞こえていた。

 

「うん。それで、なんだっけ?ザナドで何か感じたんだったけ?」

 

『そうじゃ。……おぬし、いつまで眠っておる!』

 

脳内で大音量が響いたのだろうか、ベレスは椅子からひっくり返った。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、パンタローネ」

 

「なんだ」

 

「あなた達のリーダーって、どんな人なのかしら?」

 

してやられた。先日の一件、まさか師があれを助けるなんて。しかもそれは、あの男の指示だったという。フェイスレス、彼の情報が必要ね。

 

「フェイスレス様は、我らの全てであり。かのお方こそ、我らの存在意義だ」

 

「要領を得ないわね。どんな人かと尋ねたのだけれど」

 

「この世の誰よりも賢く、誰よりも慈悲に溢れた方だ」

 

「……はあ。ありがとう」

 

パンタローネ。常に仮面を被っている、フェイスレスの部下のような存在。その仮面の下を見た者はいないと聞いているけれど、どんな顔なのかしら?

 

それはともかく、パンタローネでは話にならない。もっと客観的に彼を評価している人間に聞かなければいけないわね。

 

 

 

 

「ま!フェイスレスさんですこと?」

 

「ええ。彼は、どういった人間なのかしら?」

 

フレン。あのセテスの妹とのことだけど……。本当に妹なのかしら?兄妹にしては、些か年齢が離れすぎているように思えるわ。

 

「あの方は……恐ろしい方ですわ」

 

「!それは、どういうことかしら?」

 

「どう?……とにかく、恐ろしい方なのですわ!でも……優しい方ですわ。浴室を良くしてくださったり、釣りの道具をくださったり」

 

浴室。確かに、あれは素晴らしいものだわ。最近ではフルーツ牛乳という飲み物まで設置され、早くに行かないと完売してしまうほどの人気ね。

 

「その恐ろしいという部分を聞きたいのだけれど」

 

「……ま!お兄様に呼ばれているのでしたわ!すいません、これで失礼させていただきますわね!」

 

……逃げられたわね。

 

 

 

 

 

「師、少し良いかしら?」

 

「……何かな」

 

師は、フェイスレスに誑かされているのかもしれない。もしそうならば、私がその目を覚まさせてあげなければいけないわ。

 

「フェイスレスについて、どう思っているのかしら?」

 

……しまった!いくらなんでも直球すぎた!

 

「どう?……あえて言えば、共犯者かな」

 

共犯者?それはいったいどうい

 

 

 

 

「フェイスレスについて、どう思っているのかしら?」

 

……しまった!いくらなんでも直球すぎた!

 

「大事な人。彼に嫌われたら、私は死んでしまうかもしれない」

 

 

 

ありえない。

 

そんなことはありえない。

 

聞き間違いよ。

 

そんなことはありえないのだから。

 

聞き間違いよね?

 

 

 

「……彼に嫌われたら、私はきっと死んでしまう」

 

 

 

 

 

 

「エーデルガルト様」

 

「……」

 

「エーデルガルト様」

 

「……何よ、ヒューベルト」

 

師。親しくもない私の窮地を救ってくれた、命の恩人。貴族でもなく、碌な教育を受けたわけでもないのに、僅か2ヶ月で多くの生徒から慕われている人。私の望む世界に、彼女はいなくてはならない存在。

 

「……どうなされたのです。それほど悲しいことがおありでしたか」

 

「……いえ、ごめんなさい。それで、何の用かしら」

 

「彼らからの指示が届いております」

 

指示?何かあったかしら。

 

「……あの盗賊、コスタスでしたかな。覚えておいでですか」

 

「もちろんよ。フェイスレスに邪魔されて。……フェイスレス、フェイスレス……」

 

フェイスレス。師の心を弄ぶ下衆。師、なんで……。

 

「……先日、セイロス教団によって処刑されたはずの彼なのですが……。どうやら、密かに生かされているようなのです」

 

「そんなはずは……一体どういうことかしら?」

 

あの大司教が、偽の処刑で身柄を隠す? そんなわけないじゃない。あの女ほど人道を解さない存在はいないわ。

 

「帝国の市井で、噂になっていると。なんでも、修道院の地下に幽閉されているとか」

 

地下?そういえば、最近学校で流行っている噂があったわね。確か……

 

「寮の地下に、邪教の隠れ家……」

 

「ええ。そして、寮を改築した者といえば……」

 

フェイスレス……!あの得体の知れない男であれば、ありえる!

 

「それで、指示というのは?」

 

「『炎帝に告げる。我らアガルタに繋がる情報は、須臾であれ秘匿されねばならない。よしんばその男が生きていれば、必ず息の根を止めよ』とのことです」

 

「わかったわ。炎帝の名にかけて、目的を果たしましょう」

 

フェイスレス。その本性を見せてもらおうかしら。

 

「しかし、帝国の市井になぜそんな噂が立ったのか……。この情報は、何者かの罠である可能性もございますが……」

 

「そうだとして、フェイスレス以外にいるかしら?」

 

「……まあ、その可能性が高いですが……」

 

「罠であろうと、踏み潰していくわ。……死神にも伝えておきなさい」

 

 

 

 

 

 

「なんか今日、時間戻ったよね?」

 

「……」

 

『このうつけ、貴様との関係を問われて「共犯者」だと抜かしおったのじゃ! 馬鹿者め、それはわしらだけの秘密だと言ったじゃろう!』

 

ふーん。まあその単語からソティス君まではたどり着けないでしょ。むしろ、できたら褒めてあげたいくらいだね。

 

「……で、なぜここに呼んだの?」

 

逸らしたね。

 

「ああ、彼女が君と話したいらしくてね。コロンビーヌ!」

 

「ありがとうございます、フェイスレス様。それに、センセイも」

 

「……それで、何?」

 

「愛って、何なのかしら?」

 

これは聞く相手を間違えている。僕だってそれくらいわかるよ。コロンビーヌ、なぜベレス君に聞こうと思ったんだい。

 

「愛……」

 

「ええ、愛。人を愛するって、どういうことなの?」

 

『ううむ。愛、のう。』

 

こーいうのは、ドロテア君にでも聞けばいいじゃないか。なんでベレス君に聞こうと思ったのか、君の頭を覗いてみたい……覗けるか。やっぱいいや。

 

「人を愛するのは、つまり子を産むため。そのための、生殖をするため」

 

ほら、ロマンチックの欠片もない。

 

「でも、子を産まない、産めない夫婦だっているでしょう? そんな人たちは、愛し合っていないのかしら?」

 

「そんなことはない。愛し合うというのは前提」

 

「だったら、ディミトリはエーデルガルトを愛しているわ。彼は、彼女に子どもを産んで貰いたいのかしら?」

 

うそでしょ? 僕が作った自動人形なのに、僕が気がつかないことまで気づいてるよ。というか、何で別学級のことに詳しいんだい。

 

「……ディミトリのそれは、親愛。愛にも、色々な形がある」

 

「でも……」

 

「! フェイスレス様!」

 

なっ、殺気!? しまっ……

 

 

 

 

 

「……楽しいおしゃべりは終わりだ」

 

「ぐ……」

 

背後に現れた炎帝の斧を、かろうじて避けたフェイスレス。しかし完全には避けきれず、左腕に裂傷を負っている。

 

『こやつら、どこから……!』

 

「フェイスレス様!!」

 

「……なかなかの、逸楽……!」

 

援護に向かおうとした最古の四人は、髑髏の仮面の男によって遮られる。

 

「ほう、コスタス。本当に生きていたとはな……」

 

炎帝が、椅子に体を預けるコスタスに近づいていく。

 

『おぬし! 天刻を使え!』

 

ベレスは時を止め、時間を巻き戻そうとし……

 

「いーや、結構。そのまま進めちゃって良いよ」

 

フェイスレスの思念に遮られる。

 

『何を抜かす! おぬしとて、怪我をしておるではないか!』

 

「これは必要経費だよ。おかげで、あれは油断しているじゃあないか」

 

「……いいの?」

 

「いーとも。進めて進めて」

 

時間は巻き戻らず、そのまま時が動き出す。

 

「……コスタス。これで、終わり――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動けよ、ジャコ」

 

 

 

()()()()の足が、腕へと変わる。

 

「こ、これは……!」

 

後ろへ飛ぼうとする炎帝。それよりも速く、コスタスはその両腕と両足で炎帝に抱きついた。

 

「ふふふふふ。ふふふふふふ」

 

ゆらり、とフェイスレスが立ち上がる。その両手の指には指輪がはめられていた。その各々から糸が飛び出し、それはコスタスの全身と繋がっていた。

 

「ちょっとした不幸はあったが、概ね想定通りだよ。僕も舐められたもんだねえ」

 

自動人形を駆逐する者、しろがね。彼らが用いたものも又、人形だった。それは自動ではなく、手動であり。しかし糸を介して、主の思うとおりに行動する。

 

「僕はね、才賀貞義も識っているんだよ。ならこれくらい出来て当然だろう?」

 

誰に言うわけでもなく、フェイスレスはつぶやいた。

 

「さて、炎帝くん。……君以外と小さいんだね」

 

「くっ……」

 

炎帝は視線を死神騎士へと向ける。しかし、

 

「逸楽……!」

 

彼は、最古の四人との戦いに熱中していた。その目は眼前の敵にのみ注がれ、炎帝など見てはいない。

 

「さって、炎帝くん。その仮面、取らせて貰おっかな!」

 

「ぬ……おおおおおお!」

 

コスタスのような何かを、力ずくで体から剥ぎ取ろうともがく炎帝。

 

「うそお。ジャコを無理矢理突破するの?」

 

「ああああああ!」

 

炎帝は、とうとうコスタスもどきを剥ぎ取った。そのまま、床へと忌々しそうに叩き付ける。

 

「待ちたまえよ、ぶんか――――」

 

「今だ!」

 

突き出されたフェイスレスの腕は、虚空を貫いた。炎帝も死神騎士も、その痕跡を残さず消えていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってなわけよ。ガルグ=マクじゃあ、そんな噂があるらしいぜ?」

 

「へー! ねえねえ、他には?」

 

「こら! 旅の人に迷惑でしょ!」

 

帝国のとある村。ユーリスが訪れたそこは、のどかな自然に溢れた村だった。商人に扮して噂を流布するユーリスを疑う者はなく、子ども達は珍しい話をねだっている。

 

「はい、おしまい」

 

「ええー! もっと聞きたいのにい!」

 

「はっはっは。だったら、将来士官学校に入れば良いさ。わりと難関だぞう?」

 

「わかった! わたし、いつかしかんがっこう?に入る!」

 

「おう、だったらそん時は挨拶に来いよ?」

 

「え? でも、おにーちゃんは商人さんでしょ?」

 

「……あそこにも出入りするからな! たぶん会えるさ!」

 

 

 

 

 

 

 

「いい人だったわねえ」

 

「うん! また会えると良いな。……ごほっ」

 

「あら、風邪? もっと家事を手伝って体力つけないと。士官学校なんて絶対無理よ?」

 

「……はーい、頑張りまーす」

 

「さ、もう家にはいんなさい! 今日はシチューにするよ!」

 

「わーい! お母さん大好き!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                ぜひ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




わりかし自信作。書こうと思ったわけでもないのにエガちゃんの恋心(?)を煽れたのは気持ちよかったで。



からくりサーカスを知らない人が案外読んでくれてるみたいで。
ぜひともお薦めしたい。
どこぞのスタンド漫画みたいに絵で敬遠されがちですけどね、あっちもこれも良いですよ。ぜひとも読んでみてください。
感動のオンパレードですよ。フェイスレスが悪い奴って知ってても、それはそれで楽しく読めると思います。
からくりサーカス、ぜひどうぞ!














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